ダイキアクシス Research Memo(7):海外事業は、インドネシアの新設工場がフル稼働(1)
[17/09/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
2. 海外市場の開拓
アジア開発銀行(ADB)は、2030年までの15年間におけるアジアのインフラ需要を総額3,000兆円に上ると推定している。世界経済フォーラムは、2016年版の報告書において「最も影響が大きいと思われるグローバルリスク」の3番目に「水危機」を挙げている。アジア13ヶ国で構成する「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」は水質汚濁防止を進めている。水質汚濁防止には従来のし尿処理だけでは不十分なため、生活排水を併せて処理する方向で環境規制の強化に動いており、日本の技術・製品力及び施設運営・保守に関わるノウハウなどが評価される時代が到来したと言えるだろう。
ダイキアクシス<4245>は、新工場の本格稼働、代理店の選定、地域統括会社の設立などを経て、海外事業の急拡大を進めている。上下水道の普及率が低く、水質汚染が深刻化している東南アジアでは、環境保全を担保する水質検査など浄化システムの実証実験を環境省と行っている。日本品質の高性能浄化システムの運営・保守などのノウハウと一緒に、現地生産により競争力の高い価格で提供する体制を築きつつある。生活排水だけでなく、工場や商業施設、ホテル、病院などの事業場排水処理向けの浄化槽など中小規模の排水処理で、ASEANやインド、アフリカでの市場拡大に際して、先行者利得を得る可能性が大きい。
同社の海外事業は、急成長期入りしている。2017年12月期の海外売上高は、中国の大型物件完成に伴い、前期比2.2倍の成長が見込まれ、海外売上高比率が5%に到達すると予想されている。インドネシアの新工場は、フル稼働に入った。2016年から2017年にかけて、ミャンマー、インド、ベトナム、ケニアにおいて販売代理店契約を締結したことから、引き合いも急増している。
中長期的には、国内でも見られるようにメンテナンス事業が積み上がることになる。浄化槽を設置後も所定の性能が維持できるように保守管理が必要になる。そのためには、海外子会社や現地代理店の教育訓練が必要となるだろう。
(1) 環境省の「環境インフラ海外展開基本戦略」
環境省が「環境インフラ海外展開基本戦略」(2017年7月)を発表したことも追い風となる。日本の技術を途上国に提供し、環境問題の解決支援と日本企業の事業展開につなげることを企図している。2018年春までに、想定される市場規模などを盛り込んだ計画が提示される予定だ。
日本の環境省は、これまで途上国5ヶ国の環境省と環境協力覚書を交わし、17ヶ国と二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)を設けている。JCMは、優れた低炭素技術・製品・システム・サービス・インフラの普及や緩和活動の実施を加速し、途上国の持続可能な開発に貢献することで、温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本の削減目標の達成に活用するもの。同社が市場開拓を進めている、インドネシアとベトナムは、環境協力覚書とJCMの両方に該当する。
環境省の基本戦略には、6つの環境インフラの分野別アクションがある。そのうちの「浄化槽」に関わるものは、1)マスタープラン段階からの、下水道・浄化槽の包括的な汚水処理サービスの提案、2)FS支援、各途上国におけるビジネスモデルの確立、標準的な仕様書の作成、ADB等の金融機関との連携などによる案件組成を支援、3)アジア地域における浄化槽の制度面や維持管理体制整備にかかる働きかけを含めた支援を実施、4)産官学によるASEAN地域での浄化槽の標準化を目指し、製品仕様の現地化、公平な性能評価スキームの社会実装支援の4つのアクションプランを掲げられている。国レベルでの施策として、環境省による啓蒙活動への貢献に期待したい。途上国では、法規上の規制が強化されても、それを遵守するための設備投資や基準を維持し続けるための監視・運営体制が十分とは言い難い。
(2) 世界の水に関わるインフラビジネスのプレーヤー
水インフラビジネスは主要3業務で構成される。すなわち、部材・部品・機器製造と装置設計・組立・施工・運転、及び事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなど各分野に特化している。同社は、中小規模の排水処理をターゲットとして、主要3業務を一貫して提供する機能を持つことが独自性となる。生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化のいずれにも対応できる。
(3) 同社の水に関わるインフラの海外事業
2015年末に、「ASEAN(東南アジア諸国連合)経済共同体(AEC)」が発足した。域内人口は欧州連合(EU)を上回る6億2,000万人、域内総生産は2兆5000億ドルに達する。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムのASEAN諸国では、品目ベースで98%以上の域内関税が撤廃された。2014年のAEC域内貿易額は6,083億ドルと10年間で2.3倍に増えた。目下、鉄道や国際幹線道路などの輸送網に関するインフラ整備が進められている。
同社は、2013年10月にインドネシアの現地企業、PT.BESTINDO AQUATEK SEJAHTERA(現 PT. DAIKI AXIS INDONESIA)を買収・連結子会社とし、東南アジア地域の橋頭堡を獲得した。同社はインドネシアに生産拠点を有することが、他のASEAN諸国であるミャンマーやベトナムにおける販売に際し強みとなる。
インドネシアでは、約6億円を投入して新工場を建設した。2015年7月に本格稼働を開始し、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。2017年は大型・中型・小型槽で各200〜250基の生産稼働を見込んでいる。すでにフル操業の状態のため、今後は稼働時間を延ばして生産増加を図る。
途上国において排水処理に関する規制が強化されているが、現地製品では新しい基準をクリアーすることが難しい。中小規模分野では海外メーカーの競合製品が見当たらず、同社製品への引合いが急増している。ただし、新たな規制のレベルがかなり高く、実際に地元企業が速やかに遵守するかは、国によってばらつきが出そうだ。一方、外資に対しては厳格な適用が行われるのは共通した傾向と言える。同社は、グローバル事業本部を新設し、傘下に海外子会社を置き、社長自らが本部長として陣頭指揮を執ることで海外展開のスピード化を図っている。日系企業で現地に進出して、工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける企業に対して、日本国内でも顧客企業に採用を働きかけている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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2. 海外市場の開拓
アジア開発銀行(ADB)は、2030年までの15年間におけるアジアのインフラ需要を総額3,000兆円に上ると推定している。世界経済フォーラムは、2016年版の報告書において「最も影響が大きいと思われるグローバルリスク」の3番目に「水危機」を挙げている。アジア13ヶ国で構成する「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」は水質汚濁防止を進めている。水質汚濁防止には従来のし尿処理だけでは不十分なため、生活排水を併せて処理する方向で環境規制の強化に動いており、日本の技術・製品力及び施設運営・保守に関わるノウハウなどが評価される時代が到来したと言えるだろう。
ダイキアクシス<4245>は、新工場の本格稼働、代理店の選定、地域統括会社の設立などを経て、海外事業の急拡大を進めている。上下水道の普及率が低く、水質汚染が深刻化している東南アジアでは、環境保全を担保する水質検査など浄化システムの実証実験を環境省と行っている。日本品質の高性能浄化システムの運営・保守などのノウハウと一緒に、現地生産により競争力の高い価格で提供する体制を築きつつある。生活排水だけでなく、工場や商業施設、ホテル、病院などの事業場排水処理向けの浄化槽など中小規模の排水処理で、ASEANやインド、アフリカでの市場拡大に際して、先行者利得を得る可能性が大きい。
同社の海外事業は、急成長期入りしている。2017年12月期の海外売上高は、中国の大型物件完成に伴い、前期比2.2倍の成長が見込まれ、海外売上高比率が5%に到達すると予想されている。インドネシアの新工場は、フル稼働に入った。2016年から2017年にかけて、ミャンマー、インド、ベトナム、ケニアにおいて販売代理店契約を締結したことから、引き合いも急増している。
中長期的には、国内でも見られるようにメンテナンス事業が積み上がることになる。浄化槽を設置後も所定の性能が維持できるように保守管理が必要になる。そのためには、海外子会社や現地代理店の教育訓練が必要となるだろう。
(1) 環境省の「環境インフラ海外展開基本戦略」
環境省が「環境インフラ海外展開基本戦略」(2017年7月)を発表したことも追い風となる。日本の技術を途上国に提供し、環境問題の解決支援と日本企業の事業展開につなげることを企図している。2018年春までに、想定される市場規模などを盛り込んだ計画が提示される予定だ。
日本の環境省は、これまで途上国5ヶ国の環境省と環境協力覚書を交わし、17ヶ国と二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)を設けている。JCMは、優れた低炭素技術・製品・システム・サービス・インフラの普及や緩和活動の実施を加速し、途上国の持続可能な開発に貢献することで、温室効果ガス排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価するとともに、日本の削減目標の達成に活用するもの。同社が市場開拓を進めている、インドネシアとベトナムは、環境協力覚書とJCMの両方に該当する。
環境省の基本戦略には、6つの環境インフラの分野別アクションがある。そのうちの「浄化槽」に関わるものは、1)マスタープラン段階からの、下水道・浄化槽の包括的な汚水処理サービスの提案、2)FS支援、各途上国におけるビジネスモデルの確立、標準的な仕様書の作成、ADB等の金融機関との連携などによる案件組成を支援、3)アジア地域における浄化槽の制度面や維持管理体制整備にかかる働きかけを含めた支援を実施、4)産官学によるASEAN地域での浄化槽の標準化を目指し、製品仕様の現地化、公平な性能評価スキームの社会実装支援の4つのアクションプランを掲げられている。国レベルでの施策として、環境省による啓蒙活動への貢献に期待したい。途上国では、法規上の規制が強化されても、それを遵守するための設備投資や基準を維持し続けるための監視・運営体制が十分とは言い難い。
(2) 世界の水に関わるインフラビジネスのプレーヤー
水インフラビジネスは主要3業務で構成される。すなわち、部材・部品・機器製造と装置設計・組立・施工・運転、及び事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなど各分野に特化している。同社は、中小規模の排水処理をターゲットとして、主要3業務を一貫して提供する機能を持つことが独自性となる。生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化のいずれにも対応できる。
(3) 同社の水に関わるインフラの海外事業
2015年末に、「ASEAN(東南アジア諸国連合)経済共同体(AEC)」が発足した。域内人口は欧州連合(EU)を上回る6億2,000万人、域内総生産は2兆5000億ドルに達する。シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムのASEAN諸国では、品目ベースで98%以上の域内関税が撤廃された。2014年のAEC域内貿易額は6,083億ドルと10年間で2.3倍に増えた。目下、鉄道や国際幹線道路などの輸送網に関するインフラ整備が進められている。
同社は、2013年10月にインドネシアの現地企業、PT.BESTINDO AQUATEK SEJAHTERA(現 PT. DAIKI AXIS INDONESIA)を買収・連結子会社とし、東南アジア地域の橋頭堡を獲得した。同社はインドネシアに生産拠点を有することが、他のASEAN諸国であるミャンマーやベトナムにおける販売に際し強みとなる。
インドネシアでは、約6億円を投入して新工場を建設した。2015年7月に本格稼働を開始し、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。2017年は大型・中型・小型槽で各200〜250基の生産稼働を見込んでいる。すでにフル操業の状態のため、今後は稼働時間を延ばして生産増加を図る。
途上国において排水処理に関する規制が強化されているが、現地製品では新しい基準をクリアーすることが難しい。中小規模分野では海外メーカーの競合製品が見当たらず、同社製品への引合いが急増している。ただし、新たな規制のレベルがかなり高く、実際に地元企業が速やかに遵守するかは、国によってばらつきが出そうだ。一方、外資に対しては厳格な適用が行われるのは共通した傾向と言える。同社は、グローバル事業本部を新設し、傘下に海外子会社を置き、社長自らが本部長として陣頭指揮を執ることで海外展開のスピード化を図っている。日系企業で現地に進出して、工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける企業に対して、日本国内でも顧客企業に採用を働きかけている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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