カイオム Research Memo(6):開発パイプラインの動向
[17/09/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■カイオム・バイオサイエンス<4583>の今後の見通し
2. 開発パイプラインの動向
現在の開発パイプラインとしては、LIV-1205、LIV-2008/LIV-2008b、抗セマフォリン3A抗体などがあり、いずれも非臨床試験段階にある。また、基礎・探索研究段階の新規開発についても複数のプロジェクトを進めている。このうち、LIV-1205のADC開発用途に関してはADCTと独占開発・製造・販売に関するライセンス契約の締結に向けて協議を行っている段階にあり、その他のパイプラインについては並行して導出活動も行っている。各パイプラインの取り組み状況については以下のとおり。
(1) LIV-1205
LIV-1205は、肝臓がん等の難治性がんを標的としたファースト・イン・クラス※の治療用抗体候補で、がん細胞に発現するDLK-1と呼ばれる細胞膜タンパク質と結合することで、がん細胞の増殖活性を阻害する薬効が動物実験で確認されている。DLK-1は正常な細胞ではほとんど発現しないため副作用も少ないことが期待される。また、DLK-1は、幹細胞や前駆細胞のような未熟な細胞の増殖・分化も制御すると考えられている。
※新しい薬効として初めて承認される「画期的新薬」のことを指す。
現在の状況は、ADC開発用途でADCTとライセンス契約を締結する予定となっているほか、通常抗体として自社臨床開発及び導出活動を行っている段階にある。ADCTではライセンス契約締結後、臨床開発を進めていくことになるが、対象疾患や今後の開発スケジュールに関しては明示されていない。通常、臨床開発の期間は5〜7年と言われているが、ファースト・イン・クラスの治療用抗体候補であり、対象疾患によっては第2相臨床試験を終わった段階で市販ができる早期承認制度を活用する可能性もある。
一方、通常抗体での自社臨床開発に向けた準備を今後進めていく予定だが、対象疾患については肝臓がんや小細胞肺がんのほか小児がん等の可能性も視野に入れている。2016年10月に、米国国立がん研究所が運営する組織であるPediatric Preclinical Testing Consortium(小児がんのための非臨床試験組合、以下、PPTC)で行っている小児がんを対象とした非臨床試験の実施プログラムの1つとしてLIV-1205が採択され、現在、非臨床試験が行われているためだ。2017年内には同試験の結果が一部判明する見込みで、データ結果が良ければ小児がんを対象に開発を進めていく可能性もある。なお、PPTCでは小児がんを対象とした非臨床試験の実施プログラムで10年の実績があり、年間10〜12個の新薬候補品の評価を多くの製薬企業と協力して実施している。
(2) LIV-2008/LIV-2008b
LIV-2008は多くの固形がんを標的としたベスト・イン・クラス※1の治療用抗体候補となる。乳がんや肺がん等の固形がんに多く発現するTROP-2と呼ばれる細胞膜タンパク質と結合することで、がん細胞の増殖活性を阻害する働きを示す。異なるエピトープ※2を認識する2つの開発候補品(LIV-2008、LIV-2008b)がある。
※1 同一薬効、同一メカニズムの中で2番手以降であっても、最も優れている新薬のこと(薬効が強い、毒性が低い、安定性が高い等)を指す。
※2 抗体は抗原の特定の構造を認識して結合するが、その構造の一部分のこと。
TROP-2は、様々な固形がんで発現が増強することが確認されており、がん治療のターゲットとして注目されている分子の1つである。このうち、LIV-2008は動物モデルにおいて、単独でも複数のがん種に対し、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示すことが確認されおり、現在、導出活動を行っている。また、LIV-2008bは、標的抗原であるTROP-2に結合した後でがん細胞内に取り込まれるインターナリゼーション活性を有しているため、ADC(抗体薬物複合体)抗体としての開発も期待されている。ADCTがオプション権を行使しなかったため、同プログラムの研究開発及び導出活動を継続することとなる。
(3) 抗セマフォリン3A抗体
抗セマフォリン3A抗体は、神経軸索の伸長を抑制するセマフォリン3Aを標的としたヒト化モノクローナル抗体で、ADLib®システムによって作製された抗体となる。セマフォリン3Aを阻害することにより、神経再生の活性化や炎症、糖尿病合併症等の幅広い疾患領域での適応が期待されている。過去においてアルツハイマー症や敗血症、がん疾患などでの開発を進めてきたが、良好な結果が得られなかったことから、これら疾患以外での適応疾患を探索している段階にある。アンメットニーズの観点から開発の可能性が高い疾患での評価を動物実験で進めると同時に、今後の導出を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 開発パイプラインの動向
現在の開発パイプラインとしては、LIV-1205、LIV-2008/LIV-2008b、抗セマフォリン3A抗体などがあり、いずれも非臨床試験段階にある。また、基礎・探索研究段階の新規開発についても複数のプロジェクトを進めている。このうち、LIV-1205のADC開発用途に関してはADCTと独占開発・製造・販売に関するライセンス契約の締結に向けて協議を行っている段階にあり、その他のパイプラインについては並行して導出活動も行っている。各パイプラインの取り組み状況については以下のとおり。
(1) LIV-1205
LIV-1205は、肝臓がん等の難治性がんを標的としたファースト・イン・クラス※の治療用抗体候補で、がん細胞に発現するDLK-1と呼ばれる細胞膜タンパク質と結合することで、がん細胞の増殖活性を阻害する薬効が動物実験で確認されている。DLK-1は正常な細胞ではほとんど発現しないため副作用も少ないことが期待される。また、DLK-1は、幹細胞や前駆細胞のような未熟な細胞の増殖・分化も制御すると考えられている。
※新しい薬効として初めて承認される「画期的新薬」のことを指す。
現在の状況は、ADC開発用途でADCTとライセンス契約を締結する予定となっているほか、通常抗体として自社臨床開発及び導出活動を行っている段階にある。ADCTではライセンス契約締結後、臨床開発を進めていくことになるが、対象疾患や今後の開発スケジュールに関しては明示されていない。通常、臨床開発の期間は5〜7年と言われているが、ファースト・イン・クラスの治療用抗体候補であり、対象疾患によっては第2相臨床試験を終わった段階で市販ができる早期承認制度を活用する可能性もある。
一方、通常抗体での自社臨床開発に向けた準備を今後進めていく予定だが、対象疾患については肝臓がんや小細胞肺がんのほか小児がん等の可能性も視野に入れている。2016年10月に、米国国立がん研究所が運営する組織であるPediatric Preclinical Testing Consortium(小児がんのための非臨床試験組合、以下、PPTC)で行っている小児がんを対象とした非臨床試験の実施プログラムの1つとしてLIV-1205が採択され、現在、非臨床試験が行われているためだ。2017年内には同試験の結果が一部判明する見込みで、データ結果が良ければ小児がんを対象に開発を進めていく可能性もある。なお、PPTCでは小児がんを対象とした非臨床試験の実施プログラムで10年の実績があり、年間10〜12個の新薬候補品の評価を多くの製薬企業と協力して実施している。
(2) LIV-2008/LIV-2008b
LIV-2008は多くの固形がんを標的としたベスト・イン・クラス※1の治療用抗体候補となる。乳がんや肺がん等の固形がんに多く発現するTROP-2と呼ばれる細胞膜タンパク質と結合することで、がん細胞の増殖活性を阻害する働きを示す。異なるエピトープ※2を認識する2つの開発候補品(LIV-2008、LIV-2008b)がある。
※1 同一薬効、同一メカニズムの中で2番手以降であっても、最も優れている新薬のこと(薬効が強い、毒性が低い、安定性が高い等)を指す。
※2 抗体は抗原の特定の構造を認識して結合するが、その構造の一部分のこと。
TROP-2は、様々な固形がんで発現が増強することが確認されており、がん治療のターゲットとして注目されている分子の1つである。このうち、LIV-2008は動物モデルにおいて、単独でも複数のがん種に対し、顕著な腫瘍増殖阻害効果を示すことが確認されおり、現在、導出活動を行っている。また、LIV-2008bは、標的抗原であるTROP-2に結合した後でがん細胞内に取り込まれるインターナリゼーション活性を有しているため、ADC(抗体薬物複合体)抗体としての開発も期待されている。ADCTがオプション権を行使しなかったため、同プログラムの研究開発及び導出活動を継続することとなる。
(3) 抗セマフォリン3A抗体
抗セマフォリン3A抗体は、神経軸索の伸長を抑制するセマフォリン3Aを標的としたヒト化モノクローナル抗体で、ADLib®システムによって作製された抗体となる。セマフォリン3Aを阻害することにより、神経再生の活性化や炎症、糖尿病合併症等の幅広い疾患領域での適応が期待されている。過去においてアルツハイマー症や敗血症、がん疾患などでの開発を進めてきたが、良好な結果が得られなかったことから、これら疾患以外での適応疾患を探索している段階にある。アンメットニーズの観点から開発の可能性が高い疾患での評価を動物実験で進めると同時に、今後の導出を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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