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エニグモ Research Memo(5):18年1月期上期は増収ながら減益。新規会員獲得やアクティブ率は想定を下回る

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2018年1月期上期決算の概要
エニグモ<3665>の2018年1月期上期の業績は、総取扱高が前年同期比12.4%増の16,673百万円と拡大し、売上高も同7.8%増の2,058百万円と伸長したものの、営業利益は同16.9%減の682百万円、経常利益は同18.5%減の671百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同17.3%減の454百万円と先行費用等により減益となった。また、計画に対しても全般的に想定を下回る進捗となったようだ。

主力の「BUYMA」(ソーシャルコマース事業)において、会員数及びアクティブ会員数の伸びが増収に寄与した。会員数は445万人(前年同期比27.7%増)に到達するとともに、アクティブ会員数も93万人(同21.3%増)に増加している。また、ARPUについても、2018年1月期に注力している「1人当たりの平均購入件数」の伸長により横ばいを確保した。総取扱高や売上高の伸びが計画を下回ったのは、新規会員獲得が想定を下回ったことと、アクティブ率の低下(前年同期比12%減)によるものである。すなわち、2016年1月期に実施した大規模なマスキャンペーン効果の一巡に加えて、2017年1月期好調であったスニーカーのような間口の広い普段使い商品の取扱いがなかったことがライトユーザーをつかまえきれず、結果的に新規会員獲得やアクティブ率に影響を及ぼしたものと考えられる。もっとも、ファッション感度の高いヘビーユーザーについては総取扱高が伸びており、「BUYMA」自体の価値(トレンドを捉えた品ぞろえなど)に変調を来たしているわけではない。したがって、「深堀り」の施策はうまく機能している一方で、「入り口」の部分に不具合があったと言える。また、メディア事業についても、一時的な外部要因※の影響により低調に推移した。足元では、回復傾向にあるものの依然業績の足を引っ張る要因となっている。

※2016 年末に発生した他社キュレーションメディアサービスにおける問題に起因する関連市場での広告出稿数の減少。


一方、損益面で営業減益となったのは、1)インフラ・決済基盤の強化に伴う人件費の拡大のほか、補償サービスの浸透によるポイント発行額の増加、本社移転に伴う一時費用の発生により販管費が増加したこと、2)メディア事業の落ち込み(72百万円の減益要因)、3)エニグモコリアの連結化が利益を圧迫したこと(17百万円の減益要因)が要因である。もっとも、1)は先行投資として予定していたものであることから、営業利益が計画を下回ったのは、売上高が未達となったことと、2)及び3)によるものである。営業利益率も33.2%(前年同期は43.0%)と依然高い水準ではあるものの、前年同期との比較では大きく低下している。

財政状態については、総資産が「現金及び預金」の減少等により前期末比5.7%減の4,789百万円に縮小した一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同13.9%増の3,639百万円に拡大したことから、自己資本比率は76.0%(前期末は62.9%)に改善した。流動比率も362.9%(前期末は236.0%)と高い水準を維持しており、同社の財務基盤の安定性に懸念はない。


2. 四半期業績の推移
四半期業績の推移を見ると、売上高は年末商戦による寄与があった2017年1月期第4四半期をピークとしてダウントレンドにあり、前年同期比(2017年1月期第2四半期との比較)ではプラスを維持しているものの、伸び率では緩やかな水準に収束してきた。もっとも、マスキャンペーン効果を享受する前(2016年1月期第2四半期)と比較すると、高い業績水準を維持しており、明らかに巡航ペースの底上げが図られている。一方、足元の営業利益率が低下しているのは、前述した先行投資によるものであるが、依然高い水準で推移していると言える。

また、会員数及びアクティブ会員数も伸びているものの、伸び率(前年同期末比)で見ると、マスキャンペーン効果を生かした2017年1月期と比べて鈍化傾向がみられる。アクティブ率の低下には、前述した要因(間口の広い商品の取扱い等)も影響しているが、今後も成長速度を落とさずに、もう一段上のステージへ向かうためには、更なるマスキャンペーンの実施などカンフル剤が必要になるものと考えられる。

3. 活動実績及び進捗
(1) インフラ・決済基盤の強化
今後の事業拡大に向けて、インフラ・決済基盤の強化(人件費の拡大)や補償サービスの浸透(ポイント発行額の増加)※1、本社移転(一時的費用の発生)などを実施し、それに伴って販管費が前年同期比29.6%増(232百万円増)と拡大した。特に、インフラ・決済基盤の強化については、4つの新規決済サービス※2の提供開始により顧客の利便性を高めており、それが「1人当たりの平均購入件数」の伸びにもつながっているものと考えられる。今後もさらに充実させる計画のようだ。

※1 到着した商品がイメージと違ったり、サイズが合わなかった場合など(同社の品質ガイドラインに基づく)に、合計商品価格に相当する金額を「BUYMAポイント」で返還する補償制度によるものである。
※2 「楽天ペイ」(2017年3月リリース)、「dケータイ払いプラス」(2017年3月リリース)、「auかんたん決済」(2017年5月リリース)、「paidy(ペイディー)」(2017年7月リリース)。


(2) 既存顧客への「深堀り」
同社は、前述のとおり、重要な指標の1つである「ARPU(1人当たりの年間購入額)」の維持・向上を図るため、2018年1月期はその構成要素である「1人当たりの平均購入件数」の拡大に注力している。すなわち、既存顧客への「深堀り」の施策と言える。特に、ポイント施策やクーポン施策、まとめ買い施策などの内部施策が奏功したことにより、前年同期比2.3%増と伸ばすことができた。また、ヘビーユーザー(ロイヤル顧客)向けサービスである「プレミアム メンバーズ」の施策も拡充(限定クーポン施策や出張買取サービスなど)しており、それによって「プレミアム メンバーズ」の総取扱高は前年同期比27%増と大きく拡大した。

(3) オウンドメディア及びアプリによる集客強化
同社は、前述のとおり、独自のWebメディアを活用した集客にも注力しており、「POST」や「STYLE HAUS」などオウンドメディア経由の新規会員数は前年同期比77%増、総取扱高は同46%増と順調に拡大した。SEOに次ぐ独自の新しい流入経路として確立してきたと言える。また、コンバージョン率が高いアプリのDL数も拡大しており、それに伴ってアプリ経由の総取扱高も前年同期比79%増と大きく伸び、「1人当たりの平均購入件数」の向上にも貢献しているものと考えられる。

(4) リセール事業の進捗
「ALL-IN(オールイン)」で展開しているリセール事業についても、まだ本格的な業績貢献には達していないものの、サイト内露出を強化したことから申し込み件数が大きく拡大するとともに、申込時に付与された「BUYMAポイント」を利用した取引件数も増加してきた。同社では、今後も「ALL-IN」で売り、「BUYMA」で買う流れを着実に作っていくことで、「BUYMA経済圏」の実現を目指す方針である。

(5) 「GLOBAL BUYMA」の進捗
2016年7月から本格的なマーケティングを開始した「GLOBAL BUYMA」についても、まだ本格的な業績貢献には達していないものの、会員登録が順調に拡大してきた。会員数は前年同期比166%増、アクティブ率は同15%増、1人当たりの購入金額は同67%増と各指標ともに大きく成長している。特に、香港が好調であり、現地のマーケット需要に適したMDや露出を強化したことが奏功したようだ。今後は、香港での手応えを踏まえ、閉鎖した「BUYMA KOREA」のリソースを「GLOBAL BUYMA」に集約することにより、グローバル市場でのアジア系富裕層を狙う戦略である。また、2019年1月期中の単月黒字化を目指している。

4. 上期実績の総括
以上から、上期実績を総括すると、業績面では全般的に想定を下回ったものの、今後の事業拡大に向けた先行投資や既存顧客への「深堀り」の施策には一定の成果を残したと評価できる。また、次世代の成長ドライバーが着実に伸びてきたところにも注目すべきだろう。一方、業績の足を引っ張る要因となった「入り口」の部分についても、課題が明確になったことにより、今後に向けては十分に巻き返しが図れるものとみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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