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ASJ Research Memo(6):画期的な独自技術の開発を進める

注目トピックス 日本株
■RNCDDS

ASJ<2351>を中長期的に展望する上で、見逃せないのがRNCDDS(Random Network Coded Distributed Data System)である。データ保護における堅牢性とデータ保存容量における高効率性を持つランダムネットワークコーディングを用いたデータシステムは、1)エンコード及びデコードにかかる時間の長さ、2)エンコードされたデータへのアクセスが難しい、という2点がネックになり、実用化が難しいとされていた。

ところが、同社の技術力が、そうした常識論を覆すことになる。開発したRNCDDSは、1)の問題を解決する高速演算ライブラリと、2)の問題を解決するJavaScriptプログラムを用い、クラウドサービス構築のために利用される主流のHadoopやGlusterFSよりも少ないデータ保存量で同等の堅牢さを実現。それだけではなく、これらよりも高速なデータのアップロード、ダウンロードを可能とした。さらに、開発したJavaScriptプログラムは、エンコードされた動画データをWebブラウザ上で直接HTML5 の機能を用いて再生することを可能としており、クラウドシステムや映像・音楽ストリーミングサービスのネットワークにおけるデータの保存量を劇的に減少させることが可能になった。

言わば、これまで使えないとされていたものを使えるようにした格好だ。既存のデータの保存量の3分の2を削減するとされ、将来的に基幹技術になる可能性を秘めている。それだけに、同社の収益構造を一変させることでも夢ではない。5月にこの新技術の論文に関するプレスリリースを公表した直後から、マーケットでの注目度が俄然高くなった。

具体的には、ASJグループの現地法人であるASUSA Corporationの代表 西田博史氏(Ph.D.)とオレゴン州立大学で共同開発したRNCDDSがIEEE主催のICME2017(香港開催)において、論文発表・講演が行われたというもの。IEEEはアメリカ合衆国に本部がある世界最大の電気工学・電気工学技術の学会で、対象とする分野は、電子工学を源流とする通信・電子・情報工学と非常に多岐にわたっている。日本においては、アイ・トリプル・イーと呼ばれており、日本を含む世界160か国以上で42万人を超す会員を擁する学会だ。

また、ICMEとは、2000年以来、IEEEが主催してきたフラグシップ・マルチメディアの国際会議であり、世界各国のIT関連技術者や研究者が一同に会して、様々な分野の最新技術を発表する場として、今年で第18回を迎えた。今年の主なテーマは、次世代3D/AR/VR、および、マルチメディアクラウド。いろいろなセッションやイベントが開催され、今年は7月に香港で行われた。会社側によると、RNCDDSは、クラウドサービスを構築するために利用される主流のストレージサーバと比較して、大幅な高速化が実現可能とし、ハードウェアの容量を最大3分の1にする画期的な技術として、研究論文として公表したという。そして、RNCDDSの研究内容が、国際的新規性や将来への発展の可能性が見込まれたことから、IEEEの論文誌に掲載されることになった。7月に開催されたICMEにおいては、マルチメディアクラウドとビッグデータの分野で、西田氏が講演を実施。日本企業発の独創性の高い、かつ画期的な技術として世界の研究者から注目を集めたのである。

株式市場では、このRNCDDSを5月に発表して以来、ASJに対する注目度が一気に高まることになってが、それから2か月足らず、さらにマーケット関係者の耳目を集めることになった。7月に、今度はRNCDDSに関する国際特許を出願したことを公表したのである。具体的には、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願を行った。

この特許出願は、技術の知的財産権の保護は言うに及ばず、将来的に世界中のクラウドサービス提供者と連携を行っていくことを考慮し実行したもの。各企業の所在国において効率的なビジネス展開を行うことが目的で、これによって独自性の高いサービス構築の基礎となることを見込んでいる。

PCTの国際出願を行った意味は、極めて大きい。1つのPCT国際出願を行うことで、PCT加盟国すべてに同時に出願した場合と同じ効果が得られる。今年6月の時点でのPCT加盟国は152か国。今後、PCTが定める機関によって、先行技術調査および、その特許性に関する見解が示されるようになり、各国の特許庁はこれらの調査結果、見解を参照して自国の審査を行うことが可能で、複数の国において特許を取得する際に大幅なコストの効率化、適正化が期待できるようになる。国際特許を出願しただけに、同社がRNCDDSにかける意気込みの大きさを感じることができよう。実用化された場合、世界に広がる技術の発信源として多大な収益をもたらすことは想像に難くない。実現性が難しいと言われていた画期的な技術であり、足下の収益とは別に、同社を評価して行く上での材料となろう。

このように夢が広がる技術であるが、今後はいかに事業化を進めるかが課題になりそうだ。現状では、会社側でも手探りの状態にあるという。いつ収益に貢献するか予想ができないため、当面の収益の計画にRNCDDSについては織り込んでいない。ただ、事業化した場合、同社の業容を激変させるのは間違いなく、いずれにしても今後の展開は要注目となる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)


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