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パイプドHD Research Memo(4):情報資産プラットフォーム事業がけん引し業績は計画線

注目トピックス 日本株
■業績動向

●2018年2月期第2四半期の業績概要
(1) 損益状況
パイプドHD<3919>の2018年2月期第2四半期は売上高2,517百万円(前年同期比7.2%増)、営業利益433百万円(同6.2%増)、経常利益431百万円(同4.0%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益292百万円(同56.4%増)となり、ほぼ期初予想どおりの結果となった。

主力製品である「SPIRAL®」を中心としたPaaSを提供する情報資産プラットフォーム事業が、売上高、営業利益の伸びをけん引した。広告事業は大型案件の取りこぼしなどがあり損益は赤字となったが金額は小さい。アパレルEC運営、BIM制作などを行うソリューション事業は黒字であったが同様に金額は小さかった。

また、今期から公益性の高い事業を「社会イノベーション事業」として新しいセグメントに区分けした。売上高、営業損益ともにまだ金額は小さいが、今後の成長が期待できることからセグメント分けされた。

(2) 有効アカウント数の推移
同社グループの主たる事業はクラウド型であることから、その有効アカウント数が業績動向に影響する。2018年2月期第2四半期末の有効アカウント数は10,419(前期末比257減)となった。高単価商材であり業績をけん引している「SPIRAL®」は堅調に増加傾向にあるが、既述のように一部の事業(「ネットde会計®」「ネットde青色申告®」)から撤退したことなどにより、総数は減少した。

(3) セグメント別損益状況
セグメント別売上高は情報資産プラットフォーム事業が1,722百万円(前年同期比5.6%増)となったが、既述のように主力製品である「SPIRAL®」が順調に増加したことが要因。広告事業の売上高は88百万円(同25.1%減)と前年同期比で減収となったが、競争環境の激化や一部大手クライアントの予算縮小が主要因。ソリューション事業の売上高は687百万円(同18.3%増)となったが、ペーパレススタジオジャパンや受託/制作事業が好調であったこと、EC運営が増収となったことが主要因。また今期から新たにセグメント分けされた社会イノベーション事業の売上高は18百万円(同6.4%増)であった。

また、セグメント別の営業利益は、主力の「SPIRAL®」が好調に推移したことなどから情報資産プラットフォーム事業が438百万円(同1.1%増)となった。広告事業は売上高が低迷したことなどから22百万円の営業損失(前年同期は31百万円の利益)を計上した。一方でソリューション事業では、ウェアハートを解散したことなどもあり28百万円(同33百万円の損失)となった。また社会イノベーション事業は10百万円の営業損失(同21百万円の損失)となった。

(4) 財務状況及びキャッシュ・フローの状況
2018年2月期第2四半期末の財務状況は、資産合計は5,038百万円(前期末比26百万円減)となった。流動資産は175百万円減少したが、主に現預金の減少68百万円、受取手形及び売掛金の減少116百万円による。固定資産は149百万円の増加となったが、無形固定資産の増加57百万円、投資その他の資産の増加85百万円による。負債合計は2,748百万円(同226百万円減)となったが、主に未払法人税等の減少97百万円、長期借入金の減少134百万円などによる。純資産は、200百万円増加して2,289百万円となったが、主に四半期純利益の計上による利益剰余金の増加201百万円による。

また、営業活動によるキャッシュ・フローは399百万円の収入となったが、主な収入は税引前四半期純利益の計上432百万円、減価償却費88百万円、売上債権の減少116百万円等で、主な支出はたな卸資産の増加49百万円等であった。投資活動によるキャッシュ・フローは250百万円の支出となったが、主にソフトウェアを中心とした無形固定資産の取得125百万円、投資有価証券の取得77百万円による。財務活動によるキャッシュ・フローは217百万円の支出となったが、主に借入金の返済135百万円、配当金支払い91百万円などによる。この結果、期間中の現金及び現金同等物は68百万円減少し、期末の残高は2,075百万円となった。

(5) 上半期中の主な施策及びトピックス
a) 連結子会社2社を設立(2017年3月)
以前からの社内カンパニーであったVOTE FOR及びアイラブの2社を連結子会社として設立。前者は、ネット投票の実現のために設立され、ブロックチェーンなどの新技術を生かした投票システムの構築を目指している。後者は地域活性化プロジェクト「I LOVE 下北沢」をさらに進めると同時に、スマートフォンの仮想通貨を活用した少額決済で投げ銭やチップなどの新しい取引の創造を目指すために、設立された。

b) (株)クロスリンクの第三者割当増資を引受け(2017年3月)
リラクゼーション市場を幅広くサポートするサイト(ひとさぽ、キャリさぽ、ワンモアハンド、らくりら等)を運営するクロスリンクの第三者割当増資(52百万円)を引受けた(非連結対象)。グループ会社と経験、ノウハウ、ナレッジ等を相互に共有し、双方のサービスの品質向上を目指す。

c) 「美歴®」のオリジナルアイコンプランを開始(2017年4月)
美容室がより自身のブランドを訴求できるように、美容室ごとに独自デザインのアプリにできる「オリジナルアイコンプラン」の提供を開始した。導入第1号として、大阪市を中心に展開する「luve heart's And Be(ラブハーツアンドビー)」にて運用が開始されている。

d) 「ネットde会計®」事業などから撤退(2017年5月)
クラウド会計業界の競争激化、機能面でのサービス競争力の低下により「ネットde会計®」「ネットde青色申告®」の事業から撤退した。これによりアカウント数では影響があるが、業績への影響は軽微(同事業の2017年2月期売上高18百万円、営業損失12百万円)である。

e) 「政治山®」に都議選特集を掲載(2017年6月)
政治・選挙情報サイト「政治山®」に、東京都議会議員選挙(2017年6月23日告示、7月2日投票)についての特集ページ「東京都議会議員選挙2017」と「重点政策・公約比較表」を公開した。同サイトに対する現在の需要は小さいが、今後ネット選挙が進むにつれて需要増が期待される。

f) 「SPIRAL®」と他システムとの連携を強化
(株)アズベイスの「Biz Base®」との連携により、別システムで管理される営業部門とインサイドセールス部門の情報一元化による営業活動の効率化を実現する。(2017年7月)

またLINE<3938>との連携も開始した(2017年8月)。名城大学の学生向け属性別配信システムを「SPIRAL®」と「LINE」で構築し、学生への連絡手段として利用している。これを事例として、他の学校へも展開を図る。

g) マイ広報紙を「iコンシェル®」へ配信(2017年8月)
全国320自治体が発行する「マイ広報紙」をNTTドコモ<9437>の情報サービス「iコンシェル®」で閲覧できるよう記事データの配信を開始した。今まで紙媒体で発行されていた各自治体の広報紙の内容を同社がデータ化して「iコンシェル®」で配信・閲覧可能にするもので、デジタル化されたことで今後さらに多くの自治体からの需要が期待される。

h) 「ArchiSymphonyVBP」の提供を開始(2017年9月)
建設設計データをリアルタイムに共有できる国内初のBIM/CIMコラボレーション専用クラウドサービスを開発し、サービスの提供を開始した。

アメリカやイギリスなどの主要先進国においては、BIM※1/CIM※2に代表される建設業改革は義務化され、国家レベルで進んでいる。日本においても国土交通省がBIM/CIMに関するガイドラインを策定し、急速に普及しつつあるが、主要先進国のBIM/CIMのようにBIM/CIMに適した建設ワークフローへの業界全体の業務変革には至っておらず、BIM/CIMの最大のメリットを生かしきれていないのが現状だ。この要因としては、1)導入コストが高い、2)システム運用が極めて困難、3)運用できるノウハウがない、4)関係各社の情報ポリシーが異なり、三次元建設設計データ等の情報を関係者間で共有することに極めて抵抗がある、などが考えられる。

※1 BIM(Building Information Modeling):建築分野において、コンピューター上に作成した3次元の形状情報に加え、仕上げ、材料・部材の仕様・性能、コスト情報等、建築の属性情報を併せ持つ建物情報モデル(BIMモデル)を構築すること。BIMの活用により、設計から施工、維持管理に至るまでの建築ライフサイクルのあらゆる工程の効率化につながる。国際的にも試行プロジェクトが数多くなされ、国際標準化が進んでいる。
※2 CIM(Construction Information Modeling):建築分野でのBIMを建設分野に拡大導入して、建設事業全体での生産性の向上を図るもの。


このような環境の中で、今回提供を開始したBIM/CIMコラボレーション専用クラウドサービス「ArchiSymphonyVBP」は、GPU仮想技術をリードするエヌビディア合同会社と仮想デスクトップ(VDI)技術をリードするVMware, Inc.の技術協力のもと、クラウドデータセンターを運営するアイネット<9600>と連携することにより、国内で初めての試みとして、建設プロジェクトに関わる各社の情報セキュリティポリシーを包括管理し、仮想環境における三次元建設設計データのリアルタイム共有と永続的管理を実現している。これにより、国内建設業改革の情報プラットフォームのデファクトスタンダードとなることを目指しており、近い将来同社の業績にも大きく寄与することが期待される。

i) 「SPIRAL EC®」が「Amazon Pay」に対応
総合オンラインストアAmazon.co.jpのアカウントを利用して簡単に商品が購入できる決済サービス「Amazon Pay」に対応した「SPIRAL EC®」の新バージョン3.3.0の提供を開始した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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