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芙蓉リース Research Memo(4):2018年3月期上期は大幅な増収増益(過去最高益)を実現

注目トピックス 日本株
■決算動向

3. 2018年3月期上期決算の概要
芙蓉総合リース<8424>の2018年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比23.6%増の3,026億円、営業利益が同23.3%増の175億円、経常利益が同20.3%増の188億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同14.0%増の117億円と2ケタの増収増益により、過去最高益(半期ベース)を更新した。新たな中期経営計画の達成に向けて力強いスタートを切ったものと評価できる。

なお、売上高が大きく伸びたのは、営業資産(リース資産)の積み上げのほか、大型リース案件(不動産リース及びブリッジ型案件)の解約(売却)に伴う一括計上が一時的な上乗せ要因(約400億円)となったことにも注意が必要である

もっとも、同社本来の業績の伸びを示す「差引利益」についても、前年同期比13.7%増の348億円(前年同期比42億円増)と順調に拡大した。1)「契約実行高」の拡大とそれに伴う「営業資産」の積み上げ、2)資産粗利率の改善、3)大型リース案件の解約(売却)に伴う利益計上、の3つの要因によるものである。また、1)及び2)には、アクリーティブによる連結効果(約13億円の増益要因)も含まれている。

リース業界全体がやや軟調に推移するなかで、「契約実行高」は前年同期比39.5%増の5,235億円と大きく拡大するとともに、「営業資産残高」も前期末比1.8%増の2兆813億円に伸びたことが「差引利益」の増加に寄与した。特に、「契約実行高」の伸びが大きいのは、連結化したアクリーティブのファクタリングによるところが大きい※。一方、主力の「リース」についても、戦略分野である「輸送用機器(航空機リース)」や「建物等」が順調に伸びている。

※2017年1月に連結子会社化したアクリーティブによる契約実行高1,045億円がすべて上乗せ要因となった。これは契約実行高の増加分全体(1,483億円)の約70%を占める。また、アクリーティブの2017年9月末の営業資産残高は149億円(前期末比6.4%増)となっている。営業資産の規模や伸び率と比較して契約実行高が大きいのは、短期間で実行・回収を繰り返す(回転率の高い)ファクタリングならではの特性によるものであり、収益性や効率性の面でもプラスの効果が発揮されている。


一方、収益性(資産粗利率)についても、「リース」が3.4%(前期末は3.3%)、「ファイナンス」が2.4%(前期末は2.1%)と、金利競争が厳しいなかでも改善を図ることができた。特に、「ファイナンス」の改善幅が大きいのは、アクリーティブの連結化によるものである※。また、「リース」についても、収益性の高い資産の伸びなどにより高い水準を維持したと言える。

※アクリーティブによるファクタリング事業の資産粗利率は、2017年9月末の営業資産残高149億円、差引利益13億円(上期)から概算すると17%(年換算)を超える水準と推定される。


また、経常利益についても、「差引利益」の増加に加えて、資金原価が横ばいで推移したことや販管費の増加を一定水準に抑えたことから、大幅な経常増益を実現した。

財務面では、営業資産残高の拡大により総資産が前期末比2.4%増の2兆3,543億円に拡大した一方、自己資本も内部留保等により同4.5%増の2,380億円に積み増したことから、自己資本比率は10.1%(前期末は9.9%)に若干改善した。また、有利子負債は、営業資産残高の拡大に伴って同3.4%増の1兆8,034億円に増加したが、有利子負債の長短比率は61.9%(前期末は60.3%)、流動比率も144.7%(前期末は143.7%)と高い水準にあることから、財務の安定性は維持されている。

各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。

a) 不動産
2017年9月末の営業資産残高は前期末比16.4%増の2,796億円(前期末比394億円増)と大きく伸びた。大型案件の成約※1を含め、同社が得意とする商業施設(大型ショッピングセンター等)のほか、インバウンド需要を背景に高稼働の続くビジネスホテルの建物リースが好調であった。また、下期についても、既に大型案件※2を成約しており、3,000億円を超える勢いで伸びている。一方、ROAについては1.8%(前期は1.9%)とやや低調であったものの、土地情報持込型の提案営業や賃貸事業の開始など、収益性の改善に結び付く活動では一定の成果を残した。

※1 商業施設「コレットマーレ」を中核とした複合ビル「TOCみなとみらい」(横浜市中区)を2017年5月に実行。
※2 2017年11月には、セブン& アイ・ホールディングス<3382>による大型ショッピングモール「プライムツリー赤池」(愛知県日進市)を実行済み。


b) エネルギー・環境
2017年9月末の太陽光発電事業の営業資産残高は前期末比11.0%増の191億円と増加した(新規稼働案件はなし)。現在は、全国29ヶ所でメガソーラー(発電量合計77MW)が稼働しているほか、新たに福島地区を中心に3ヶ所で超大型メガソーラー(発電量合計60MW)※が建設中である(2018年度に完成予定)。また、ROAは7.9%(前期は6.1%)に大きく改善しているが、季節要因(夏場は太陽光発電の稼働が高まる)によるものであり、通期ではほぼ前期並みの水準に収束する見通しである。

※2040年頃を目途に県内のエネルギー需要量すべてを再生可能エネルギーとする「福島県再生可能エネルギー推進ビジョン」を支援する「福島新エネ社会構想」に基づくものが含まれる。


c) 医療・福祉
具体的な数値目標は掲げていないが、主な活動実績として、1)研究開発型ベンチャー企業への出資や、2)「高齢者施設」の建物リース推進などで成果を残すことができた。1)については、手術支援ロボットを開発するリバーフィールド(株)に出資。国産初の手術支援ロボットを2020年に商品化する計画である。導入推進に当たって、リースなどファイナンス・スキームでのサポートを展開していく方針である。また、2)については、(株)ニチイケアパレスが運営する介護付き有料法人ホームの建物リースを実行。高齢者向け施設の建物リースでは、業界をリードする取り組みとなっている。

d) 航空機
2017年9月末の営業資産残高は前期末比18.0%増の886億円に拡大した。自社保有5機を組成(1機売却)し、保有機体数も23機(前期末比4機増)に増加している。また、日本初の導入となる最新型エンジン搭載「エアバスA321neo」4機のリース契約を締結(そのうち1機は上期実績。残り3機は下期から来期にかけて実績計上される見通し)。さらには、新たに航空機のエンジン・オペレーティングリースにも取り組み、今後の事業拡大に向けて間口を広げた格好である。一方、ROAは1.9%(前期は1.9%)と横ばいで推移した。規模の拡大(ポートフォリオの厚み)とともに、収益性も高めていく方針である。

e) 海外
2017年9月末の営業資産残高は前期末比3.0%減の816億円と縮小した。北米、アジアを中心としてインオーガニックな成長(出資や買収、提携等)を含めた拡大を目指しているが、まだ準備段階と言える。ただ、これまで無人としていたシンガポール現地法人へ人員を派遣し、近隣諸国での事業展開や情報収集に向けて強化を図っている。

f) 新領域
アクリーティブが展開するFPS(売掛債権早期支払サービス)及びFPSメディカル(診療・介護報酬債権早期支払サービス)が業績に大きく貢献した。特に、FPSでは同社の親密取引先※1との取引を開始するとともに、FPSメディカルにおいても、同社の親密先である地方銀行などとの間で顧客紹介※2等の業務協定を締結。クロスセルなどシナジー追求に向けて順調に進捗している。また、2017年4月からスタートしたSAPジャパン(株)との会計サービスについても本格的な業績貢献には時間を要するものの、順調に立ち上がったようだ。最先端技術の研究・開発への支援(提携・出資等)※3や中古ビジネスの展開※4でも一定の成果を残した。

※1 九州・関東エリアを中心にディスカウントストアを展開する(株)トライアルカンパニー(ディスカウントストア2位)との取引(FPS)が成立。
※2 病院・診療所などの医療機関の紹介。
※3 手術支援ロボット開発メーカーであるリバーフィールドへの出資のほか、ベンチャービジネス投資ファンド「みらい創造一号」(東京工業大学発の最先端技術を活用するベンチャー企業を中心に投資・経営支援を行うファンド)に出資したほか、日本初の産学連携型「GAPファンド」(東工大の研究成果の事業化・商業化を支援)を設立した。
※4 中古物件処理ヤード「東京3Rセンター」(東京都八王子市)を増床。中古ビジネス拡大に向けてインフラ整備を行った。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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