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芙蓉リース Research Memo(7):営業資産残高の積み上げとROAの向上を目指す

注目トピックス 日本株
■成長戦略

1. 中期経営計画
芙蓉総合リース<8424>は、2018年3月期から2022年3月期を最終年度とする中期経営計画「Frontier Expansion 2021」をスタートした。「前例のない場所へ。」をスローガンに掲げ、新しいビジネス領域やビジネスモデルへ挑戦することにより、事業ポートフォリオの「フロンティア」を拡大し、国内リース事業を取り巻く環境が大きく変化するなかでも持続的に成長する企業グループを目指す方針である。また、フロンティア(新領域)の拡大に向けて5 年間の長期目線で策定している。

目標とする経営指標として、5年後の営業資産残高を2兆5,000億円(4,564億円の増加)、ROAを2.0%(0.4ptの改善)、経常利益を500億円(186億円の増加)と掲げている。なお、5年間における営業資産残高の伸び率は年率4.1%、経常利益は同9.8%となっている。特に、経常利益目標のハードルが高いが、営業資産残高の拡大とROA向上の両方の達成(掛け合わせ)により実現するシナリオとなっている。

また、戦略軸として、(1)戦略分野の選択と集中、(2)フロンティアへの挑戦、(3)グループシナジーの追求の3つを挙げている。

(1) 戦略分野の選択と集中
成長ドライバーとして経営資源を集中する分野(戦略分野)として、a)不動産、b)エネルギー・環境、c)医療・福祉、d)航空機、e)海外、f)新領域を選択する一方、g)オートリース、h)ベンダーリース、i)国内コーポレート、j)ファイナンスについては、グループ連携等効率的な営業でマーケット(顧客基盤)を維持・拡大する分野(コア分野)と位置付けた。

(2) フロンティアへの挑戦
他社(銀行系リース会社及び銀行本体)との差別化を明確に打ち出すため、銀行が提供できない付加価値やサービス、ビジネス領域へ軸足をシフトする。特に、オペレーティングリースや不動産リースを始めとするモノの価値(事業価値)等に重点を置いた領域への拡大を図る。また、新領域の拡大に当たっては、M&Aや資本・業務提携を活用するとともに、資産効率(ROA)向上に貢献するノンアセットビジネス(手数料収入等)を中心に注力していく。

(3) グループシナジーの追求
グループ各社の商品(サービス)をグループ各社のマーケット(顧客基盤)に展開することで、グループシナジーの最大化を目指す。特に、大企業向けの取引に強みに持つ同社、リテール中心のシャープファイナンス、あるいはファクタリングのプラットフォームで大企業と中小企業を結ぶアクリーティブなどの「機能」と「顧客基盤」を有機的に結ぶことで、営業のパフォーマンスを飛躍的に向上させる方針である。

2. 各戦略分野の方向性
a) 不動産
好調な契約実行高を維持・拡大により、5年後の営業資産残高は4,800億円(5年間で約2倍)、ROAは2.2%(0.3ptの改善)を目指す。引き続き、土地情報の持ち込みによるニーズの発掘や同社自らテナント付けを行うなどリスクテイクを拡大するとともに、不動産ファイナンス、REITへの投資、不動産投資などフロンティア拡大にも取り組む。一方で、シャープファイナンスでの不動産リース提案などグループでの取り組みを推進する。

b) エネルギー・環境
主力の太陽光発電事業は大型ソーラーを中心とする第2フェーズとして、案件数は絞り込むものの従来の数倍の規模を手掛ける方針である。5年後の発電量を165MW(5年間で2倍の電力供給)、営業資産残高を340億円(5年間で約2倍)に拡大するとともに、ROAも6.0%と高い水準を維持する。前述のとおり、「福島新エネ社会構想」に基づく大型太陽光発電所を含めて3ヶ所(発電量合計60MW)の工事を開始しており、滑り出しは順調と言える。

c) 医療・福祉
具体的な数値目標は掲げていないが、国が推進する「地域包括ケアシステム」の普及を含め、今後の需要拡大が見込める上、同社グループ各社によるシナジー創出が可能な分野として位置付けている。医療事業については、病院再生や経営管理などのコンサルタントへの参画、中古医療機器販売会社との提携※によるノウハウの活用、アクリーティブの診療・介護報酬ファクタリングなどフロンティア拡大を中心に推進する。一方、福祉(介護)事業についても、業界に先駆けて取り組みを始めた老人ホームなど介護施設の建物リースについて、介護業界大手であるニチイ学館とのパートナーシップを軸としてさらに推進していく。

※2017年3月29日、中古医療機器の解体・撤去や売買などを手掛ける(株)FUJITAとの資本業務提携を締結。


d) 航空機
航空機リースの組成数を年10機程度に加速させ、5年後の自社保有機体数を4倍規模の70機(51機の増加)に拡大する方針である。それに伴って営業資産残高も2,800億円(2,049億円の増加)に増加するとともに、ROAも2.3%(0.4ptの改善)を目指す。世界的な需要が拡大するなかで、中国等との競争も厳しくなってきたが、同社の強みを生かした付加価値の提供により、不動産リースと同様、規模の拡大と資産効率の向上の両方を実現する戦略である。特に、米航空会社への取引拡大やインオーガニックな成長(出資やジョイントベンチャーなど)にも取り組む。

e) 海外
北米・アジアを中心として非日系ビジネスをさらに推進するとともに、インオーガニック(出資や買収、提携等)を含めた事業拡大により、5年後の営業資産残高は約1.5倍の1,200億円(359億円の増加)、ROAは1.8%(1.2ptの改善)を目指す。インオーガニック戦略は、北米・アジア新興国の非日系リース会社(輸送機器リース、医療機器リース、オートローンなどの特化型)をターゲットにしているようだ。一方、オーガニック戦略には、海外拠点の拡大やアクリーティブの海外拠点活用(タイ・カンボジアにおける小口金融を展開)を挙げている。

f) 新領域
新領域は、新規事業やビジネス領域の拡大など「新しい取り組みとなるビジネス」の総称であり、ノンアセットビジネスの中心としたフロンティア拡大を目指し、5年後の経常利益額を40億円程度にまで引き上げる計画である。特に、アクリーティブのファクタリングや給与前払いシステムなどの事業、新たなM&Aや資本・業務提携による事業、中古物件販売や中古価値を織り込んだリーススキームの開発、リース資産流動化事業、SAPと共同開発した「FLOW Cube+」を中心とした会計サービス事業等に取り組み、収益性及び資産効率の向上を狙う戦略である。

以上から、中期経営計画の達成に向けては、引き続き、「不動産」と「航空機」分野による営業資産残高の拡大と収益性の向上が大きなカギを握ると言える。また、資産効率の高い「新領域」の拡大もROAの向上に貢献するものと考えられる。

弊社では、営業資産残高の拡大は、戦略分野における好調な外部環境やこれまでの実績、同社の優位性から判断して十分達成できる水準であると評価している。最大の注目点は、ROAの向上をいかに図っていくのか、その道筋にある。同社のROA向上への取り組みは、1)不動産や航空機、再生エネルギーなどROAの高い事業の拡大(構成比の変化)によるものと、2)不動産及び航空機自体のROA向上によるものの2つの要因に分けて進捗を見る必要がある。前者1)(構成比の変化)による ROA向上については、収益性の高い事業の拡大や資産効率の高い新領域による収益貢献により実現の可能性は高いと評価できる。一方、後者 2)(不動産及び航空機自体のROA向上をいかに図っていくのか)については、外部環境及び内部施策の両方から注意深く見守る必要があるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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