プラザクリエイト Research Memo(5):FC店への切り替えは店舗売上大幅増を実現
[17/12/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■成長戦略と進捗状況
1. プリント事業の成長戦略
(1) 直営店からFC店への全面転換
プラザクリエイト本社<7502>は2017年3月期第4四半期から直営店による営業体制を見直し、直営店からFC店への切り替えを進めている。同社は3年ほど前から直営店にフォト&モアという新コンセプトを導入し、店舗の改装やディスプレイの変更、商材の充実などを図ってきた。このフォト&モア化した店舗は原則としてFC化し、フォト&モア化できない店舗については閉鎖する方針だ。この動きが、前述のように今上期に起こったことだ。全店FC化の完了にはもう少し時間がかかる見込みだ。
FC化の狙いは、前回(2017年7月14日付)レポートで詳しく述べたが、弊社なりの理解と表現で言えば“資本主義への本格参入”だ。直営店の場合、全店均一の商品・サービスを展開していた。現場の店長も本部から降りてくる指令をこなすことが意識の中心を占めていた。FC店では店長自身がバイヤーとして自分の店舗の立地・顧客層にマッチした商材・サービスを自由選択により仕入れることができる。一国一城の主という意識で動くことになる。
FC化の効果は今第2四半期において早くも売上高の前年同期比増収となって表れている模様だ。直営店の既存店売上高が前年同期比96.3%であったのに対し、FC店の売上高は前年同期(すなわち直営店時代)と比べて100%を大きく超えており、120%〜130%という大幅な伸びを記録したFC店も少なからずあるようだ。
店舗のFC化により同社のプリント事業の収益構造も大きく変わる。全店が直営店の場合は、各店舗の売上高を総計したものがプリント事業の売上高になる。売上原価には商材と店舗人件費、店舗の賃料や光熱費などが計上される。加えて販管費において、各地域の店舗をコントロールするスーパーバイザーの人件費などが入ることになる。それに対して全店がFC化すると、FC店に対する商材卸売の売上高と、FC店からのロイヤリティ収入が同社の売上高になる。売上原価は商材の仕入・製造原価だ。販管費ではスーパーバイザーの人件費が削減されることになる。結果的に、売上高は大きく縮小するが安定的に営業利益を計上できると期待される。また、現在は収益の季節性が非常に大きい(上期の損失を下期の利益で埋め合わせる構造)が、FC化完了後は売上高の中身が商材卸売とロイヤリティ収入となるため、季節性がほぼなくなるとみられる。
(2) オンラインビジネスの拡大
店舗のFC化により、プリント事業における同社の位置付け・役割も当然に変わってくる。まず同社が取り組まねばならないのは、商材の充実だ。これについては写真プリントを中核とし、周辺商材として紙系(フォトブック、アルバム、文具等)、アパレル系(Tシャツプリント等)及びその他の領域の商材を2019年3月期以降、続々と投入する予定だ。
もう1つの取り組みとして注目されるのがオンラインビジネスの強化・拡大だ。弊社ではこれが同社の事業構造改革の第2ステージに該当すると考えている。これまでは同社の販売窓口は店舗でしかなかった。それゆえ店舗数やその内訳として直営店・FC店の別などが経営戦略策定や企業分析の切り口となっていた。今後は、オンラインビジネスと店舗ビジネスという切り口へと変わることになる見通しだ。店舗ビジネスはFCオーナーであり、同社が携わるのはオンラインビジネスということだ。
現状でもパレットプラザのサイトからデジタルカメラやスマートフォンの写真プリント、「なんでもダビング」、「お名前シール&スタンプ」等のサービスが利用できる。しかし、2018年3月期第4四半期に工場が本格稼働してくると取扱商材がアパレル系、紙系ともに大きく拡張されることになる。同社はこれらの商材をあたかも店頭にいるかのように自宅から注文可能なオンラインサイトの立ち上げを準備している。順調にいけば2018年夏ごろには稼働してくると予想される。
(3) 同社が目指す方向性と今後の視点
同社がプリント事業で目指す方向性というのは、2014年3月に蘭Cimpress(当時はVistaprint)と合弁でシンプレスジャパン(当時はビスタプリントジャパン(株))を立ち上げた時から一貫していると弊社ではみている。すなわち、“プリント”の持つ可能性や楽しさを一般消費者がより簡単に享受できるよう、商材やサービスを充実させ、それを自社の収益につなげていくというものだ。
Cimpressとの合弁事業は2016年12月に解消されたが、3年近い協業の中で、同社は多くのことを学び、自社で展開する自信を持つに至った。同時に、何が不足しているかも悟ったと思われる。それは“創造性”だったというのが弊社の理解だ。同社の事業においては魅力ある商材を開発し提供することがすべての原点と言える。そのために必要不可欠な創造性が、創業以来数十年が経つうちに失われつつあったことを認識し、それを取り戻すための施策がFC化であるということだ。500を超える直営店を運営していくなかでは全店展開できることなどが優先され、真に顧客ニーズに応える視点が後回しになっていた可能性がある。
前述のようにFC化の狙いは店舗側の自由度を高めて売上拡大につなげることが狙いだったが、同時にまた、同社自身の自由度も高め、創造性にあふれた魅力ある商品開発を可能にする効果もあったと弊社ではみている。
同社によれば、商品開発と並行して自社のプリント工場の設備増強も着実に進んでおり、2019年3月期には現状とは比較にならないほどの様々な商材を市場投入できる見通しが立った模様だ。足かせから解き放たれた同社の今後の展開を見守りたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MH>
1. プリント事業の成長戦略
(1) 直営店からFC店への全面転換
プラザクリエイト本社<7502>は2017年3月期第4四半期から直営店による営業体制を見直し、直営店からFC店への切り替えを進めている。同社は3年ほど前から直営店にフォト&モアという新コンセプトを導入し、店舗の改装やディスプレイの変更、商材の充実などを図ってきた。このフォト&モア化した店舗は原則としてFC化し、フォト&モア化できない店舗については閉鎖する方針だ。この動きが、前述のように今上期に起こったことだ。全店FC化の完了にはもう少し時間がかかる見込みだ。
FC化の狙いは、前回(2017年7月14日付)レポートで詳しく述べたが、弊社なりの理解と表現で言えば“資本主義への本格参入”だ。直営店の場合、全店均一の商品・サービスを展開していた。現場の店長も本部から降りてくる指令をこなすことが意識の中心を占めていた。FC店では店長自身がバイヤーとして自分の店舗の立地・顧客層にマッチした商材・サービスを自由選択により仕入れることができる。一国一城の主という意識で動くことになる。
FC化の効果は今第2四半期において早くも売上高の前年同期比増収となって表れている模様だ。直営店の既存店売上高が前年同期比96.3%であったのに対し、FC店の売上高は前年同期(すなわち直営店時代)と比べて100%を大きく超えており、120%〜130%という大幅な伸びを記録したFC店も少なからずあるようだ。
店舗のFC化により同社のプリント事業の収益構造も大きく変わる。全店が直営店の場合は、各店舗の売上高を総計したものがプリント事業の売上高になる。売上原価には商材と店舗人件費、店舗の賃料や光熱費などが計上される。加えて販管費において、各地域の店舗をコントロールするスーパーバイザーの人件費などが入ることになる。それに対して全店がFC化すると、FC店に対する商材卸売の売上高と、FC店からのロイヤリティ収入が同社の売上高になる。売上原価は商材の仕入・製造原価だ。販管費ではスーパーバイザーの人件費が削減されることになる。結果的に、売上高は大きく縮小するが安定的に営業利益を計上できると期待される。また、現在は収益の季節性が非常に大きい(上期の損失を下期の利益で埋め合わせる構造)が、FC化完了後は売上高の中身が商材卸売とロイヤリティ収入となるため、季節性がほぼなくなるとみられる。
(2) オンラインビジネスの拡大
店舗のFC化により、プリント事業における同社の位置付け・役割も当然に変わってくる。まず同社が取り組まねばならないのは、商材の充実だ。これについては写真プリントを中核とし、周辺商材として紙系(フォトブック、アルバム、文具等)、アパレル系(Tシャツプリント等)及びその他の領域の商材を2019年3月期以降、続々と投入する予定だ。
もう1つの取り組みとして注目されるのがオンラインビジネスの強化・拡大だ。弊社ではこれが同社の事業構造改革の第2ステージに該当すると考えている。これまでは同社の販売窓口は店舗でしかなかった。それゆえ店舗数やその内訳として直営店・FC店の別などが経営戦略策定や企業分析の切り口となっていた。今後は、オンラインビジネスと店舗ビジネスという切り口へと変わることになる見通しだ。店舗ビジネスはFCオーナーであり、同社が携わるのはオンラインビジネスということだ。
現状でもパレットプラザのサイトからデジタルカメラやスマートフォンの写真プリント、「なんでもダビング」、「お名前シール&スタンプ」等のサービスが利用できる。しかし、2018年3月期第4四半期に工場が本格稼働してくると取扱商材がアパレル系、紙系ともに大きく拡張されることになる。同社はこれらの商材をあたかも店頭にいるかのように自宅から注文可能なオンラインサイトの立ち上げを準備している。順調にいけば2018年夏ごろには稼働してくると予想される。
(3) 同社が目指す方向性と今後の視点
同社がプリント事業で目指す方向性というのは、2014年3月に蘭Cimpress(当時はVistaprint)と合弁でシンプレスジャパン(当時はビスタプリントジャパン(株))を立ち上げた時から一貫していると弊社ではみている。すなわち、“プリント”の持つ可能性や楽しさを一般消費者がより簡単に享受できるよう、商材やサービスを充実させ、それを自社の収益につなげていくというものだ。
Cimpressとの合弁事業は2016年12月に解消されたが、3年近い協業の中で、同社は多くのことを学び、自社で展開する自信を持つに至った。同時に、何が不足しているかも悟ったと思われる。それは“創造性”だったというのが弊社の理解だ。同社の事業においては魅力ある商材を開発し提供することがすべての原点と言える。そのために必要不可欠な創造性が、創業以来数十年が経つうちに失われつつあったことを認識し、それを取り戻すための施策がFC化であるということだ。500を超える直営店を運営していくなかでは全店展開できることなどが優先され、真に顧客ニーズに応える視点が後回しになっていた可能性がある。
前述のようにFC化の狙いは店舗側の自由度を高めて売上拡大につなげることが狙いだったが、同時にまた、同社自身の自由度も高め、創造性にあふれた魅力ある商品開発を可能にする効果もあったと弊社ではみている。
同社によれば、商品開発と並行して自社のプリント工場の設備増強も着実に進んでおり、2019年3月期には現状とは比較にならないほどの様々な商材を市場投入できる見通しが立った模様だ。足かせから解き放たれた同社の今後の展開を見守りたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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