ダイナムジャパンHD Research Memo(3):4つの強みを生かして強固な経営基盤を確立し、他社との差別化を実現
[17/12/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
2. ダイナムグループの特長と強み
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の様々な特長・強みの中で、弊社では1)国内トップの店舗数、2)ローコストオペレーション、3)顧客視点の経営、4)資金調達力の4点に注目している。ポイントはそれぞれの強みが互いにつながっていることだ。すなわち、他社が同社と同じ強さを実現するのは容易ではないということだ。
(1) 国内トップの450店舗を擁していること
同社はグループの店舗数が450店舗(2017年9月末現在)と国内トップを誇る。国内シェアは約4%となる。
店舗数が多いことのメリットは、いわゆる規模の利益(スケールメリット)の獲得にある。スケールメリットは、店舗の新規出店、改装、機械の導入、景品の仕入れ、物流など様々な面に及ぶ。なかでも重要なのは機械の導入だ。店舗数が多いことはパチンコ・パチスロ機の保有台数も当然多くなり、機械メーカーに対するバイイングパワー(価格交渉力)が強まることになる。
同社が2015年11月にグループ化した夢コーポレーション(株)を例に取ると、同社グループに入った後、遊技台購入、物流、金融費用などの各項目で総額約7億円の費用を削減した(年度換算ベース)。これは夢コーポレーションの従来費用の12%に相当する水準だ。
(2) チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション
ローコストオペレーションは同社の競争力の源泉であり、成長戦略を含めたすべての施策を実現し、かつ有効ならしめる裏付けとなっているというのが弊社の理解だ。
同社のローコストオペレーションの背景には、チェーンストア理論が理論的裏付けとして存在している。パチンコホール事業の2大経費は人件費と機械費であるが、その直接的な費用の削減だけでなく、少ない従業員数でのオペレーションを可能にする店舗設計や店舗運営システム(一例として“各台計数機”)の導入、新規出店の標準化など、様々な面にチェーンストア理論が生かされ、同社グループ全体としてのローコスト化につながっている。
前述のように同社は国内トップの450店舗を誇る。これは積極的な多店舗展開策の結果にほかならないが、それを可能ならしめたのもローコストオペレーションのノウハウだ。そこで店舗数増大⇒スケールメリットによるコスト削減という好循環が生まれて、現状の地位があるものと弊社では推測している。また、後述する顧客視点に立った経営も、ローコストオペレーションがあるからこそ実現できていると考えている。
同社がチェーンストア理論を経営に活用するに至った経緯は沿革で述べたとおりだ。同社はまた、志を同じくする同業者と、業界団体「パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)」を設立し、チェーンストア理論をパチンコホールの経営に生かす研究を重ねている。またPCSAの活動は、同業他社の経営基盤の強化に貢献しただけでなく、夢コーポレーションのグループ化という形で同社の業容拡大にも貢献した。
(3) 顧客視点に立った経営の実践
同社は5つの経営方針の1つに“顧客第一主義”を掲げ、現に実践している。同様の経営方針を掲げる同業他社はあっても、それを実践できているところは少ないと思われ、同社の特長の1つと弊社では考えている。
同社の様々な経営施策のうちでa)低貸玉営業と、b)射幸性に頼らない営業の2つを特に弊社では評価している。
a) 低貸玉営業
貸玉料(パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その料金)を通常の4円より安い、1円もしくは2円に引き下げた営業形態のことだ。同じ料金でも客はより多くの玉を借りることができ、それだけ長く遊ぶことが可能になる。低貸玉機の構成比を高くした低貸玉店舗を積極的に展開するほか、従来型店舗内でも低貸玉機の設置を増やし、現在では同社のパチンコ機71.0%、パチスロ機の56.1%が低貸玉機となっており、業界平均を大きく上回っている(2017年6月末時点)。
低貸玉営業店舗は高貸玉営業店舗に比べて集客力があることは明白にデータに現れている。しかしこの戦略を採用するには、相応の企業体力が必要だ。低貸玉店舗は、高貸玉店舗よりも営業収入が低いのに対して営業費用はそれほど差がないので、利益率が低くなってしまうためだ。それをカバーする方策の1つが店舗数拡大による成長であり、同社はまさにそれを実践してきた。
b) 射幸性に頼らない営業
文字どおり、射幸性の高い機種を集客の中心的な戦略とはしないということだ。パチンコ機には大当たりの確率が高いものから低いものまでたくさんの種類がある。確率が低い機種ほど大当たりした場合の出玉数が多く、コアなパチンコファンほどそうした機種を好む傾向がある。したがってパチンコホールも低確率機種(すなわち高射幸性機種)の構成比を高めた店づくりをして集客を行っているところが多い。
しかしながら、2017年3月期にこの射幸性に規制が入り、確率の最低ラインが1/400から1/320へと引き上げられ、1/400機種は2016年12月末までに撤去された。射幸性に対する規制の背景には依存症対策という背景があり、2018年2月には新規則が施行される予定だ。射幸性を売り物に集客するというパチンコホールの経営スタイルは成り立たなくなりつつあるのが現状だ。
これに対して同社は、高射幸性機の割合が業界平均に比べて低く、反対に最も射幸性の低い確率1/100タイプの構成比が業界平均よりも20%も高い構成となっている。射幸性規制の強化の影響は同社も避けられないが、機種構成を反映して相対的にはマイナス影響が軽微であると弊社では考えている。
(4) 上場企業の強みを生かした資金調達力
同社は2012年にパチンコホール業界で初めて香港証券取引所に株式を上場した。約3,400社のパチンコホール企業の中で株式を上場しているのは同社を含めて3社だけだ。今後予想される業界再編において、買い手となれるかどうかの重要な条件の1つが資金調達力であることは議論の余地はないだろう。同社は2015年11月の夢コーポレーションのグループ化で、上場企業としての強みを生かし、全株式を株式交換により取得した。M&Aに限らず店舗投資や新事業展開などで潜在的資金需要は旺盛で、上場企業であることのメリットは非常に大きく働くと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MW>
2. ダイナムグループの特長と強み
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の様々な特長・強みの中で、弊社では1)国内トップの店舗数、2)ローコストオペレーション、3)顧客視点の経営、4)資金調達力の4点に注目している。ポイントはそれぞれの強みが互いにつながっていることだ。すなわち、他社が同社と同じ強さを実現するのは容易ではないということだ。
(1) 国内トップの450店舗を擁していること
同社はグループの店舗数が450店舗(2017年9月末現在)と国内トップを誇る。国内シェアは約4%となる。
店舗数が多いことのメリットは、いわゆる規模の利益(スケールメリット)の獲得にある。スケールメリットは、店舗の新規出店、改装、機械の導入、景品の仕入れ、物流など様々な面に及ぶ。なかでも重要なのは機械の導入だ。店舗数が多いことはパチンコ・パチスロ機の保有台数も当然多くなり、機械メーカーに対するバイイングパワー(価格交渉力)が強まることになる。
同社が2015年11月にグループ化した夢コーポレーション(株)を例に取ると、同社グループに入った後、遊技台購入、物流、金融費用などの各項目で総額約7億円の費用を削減した(年度換算ベース)。これは夢コーポレーションの従来費用の12%に相当する水準だ。
(2) チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション
ローコストオペレーションは同社の競争力の源泉であり、成長戦略を含めたすべての施策を実現し、かつ有効ならしめる裏付けとなっているというのが弊社の理解だ。
同社のローコストオペレーションの背景には、チェーンストア理論が理論的裏付けとして存在している。パチンコホール事業の2大経費は人件費と機械費であるが、その直接的な費用の削減だけでなく、少ない従業員数でのオペレーションを可能にする店舗設計や店舗運営システム(一例として“各台計数機”)の導入、新規出店の標準化など、様々な面にチェーンストア理論が生かされ、同社グループ全体としてのローコスト化につながっている。
前述のように同社は国内トップの450店舗を誇る。これは積極的な多店舗展開策の結果にほかならないが、それを可能ならしめたのもローコストオペレーションのノウハウだ。そこで店舗数増大⇒スケールメリットによるコスト削減という好循環が生まれて、現状の地位があるものと弊社では推測している。また、後述する顧客視点に立った経営も、ローコストオペレーションがあるからこそ実現できていると考えている。
同社がチェーンストア理論を経営に活用するに至った経緯は沿革で述べたとおりだ。同社はまた、志を同じくする同業者と、業界団体「パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)」を設立し、チェーンストア理論をパチンコホールの経営に生かす研究を重ねている。またPCSAの活動は、同業他社の経営基盤の強化に貢献しただけでなく、夢コーポレーションのグループ化という形で同社の業容拡大にも貢献した。
(3) 顧客視点に立った経営の実践
同社は5つの経営方針の1つに“顧客第一主義”を掲げ、現に実践している。同様の経営方針を掲げる同業他社はあっても、それを実践できているところは少ないと思われ、同社の特長の1つと弊社では考えている。
同社の様々な経営施策のうちでa)低貸玉営業と、b)射幸性に頼らない営業の2つを特に弊社では評価している。
a) 低貸玉営業
貸玉料(パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その料金)を通常の4円より安い、1円もしくは2円に引き下げた営業形態のことだ。同じ料金でも客はより多くの玉を借りることができ、それだけ長く遊ぶことが可能になる。低貸玉機の構成比を高くした低貸玉店舗を積極的に展開するほか、従来型店舗内でも低貸玉機の設置を増やし、現在では同社のパチンコ機71.0%、パチスロ機の56.1%が低貸玉機となっており、業界平均を大きく上回っている(2017年6月末時点)。
低貸玉営業店舗は高貸玉営業店舗に比べて集客力があることは明白にデータに現れている。しかしこの戦略を採用するには、相応の企業体力が必要だ。低貸玉店舗は、高貸玉店舗よりも営業収入が低いのに対して営業費用はそれほど差がないので、利益率が低くなってしまうためだ。それをカバーする方策の1つが店舗数拡大による成長であり、同社はまさにそれを実践してきた。
b) 射幸性に頼らない営業
文字どおり、射幸性の高い機種を集客の中心的な戦略とはしないということだ。パチンコ機には大当たりの確率が高いものから低いものまでたくさんの種類がある。確率が低い機種ほど大当たりした場合の出玉数が多く、コアなパチンコファンほどそうした機種を好む傾向がある。したがってパチンコホールも低確率機種(すなわち高射幸性機種)の構成比を高めた店づくりをして集客を行っているところが多い。
しかしながら、2017年3月期にこの射幸性に規制が入り、確率の最低ラインが1/400から1/320へと引き上げられ、1/400機種は2016年12月末までに撤去された。射幸性に対する規制の背景には依存症対策という背景があり、2018年2月には新規則が施行される予定だ。射幸性を売り物に集客するというパチンコホールの経営スタイルは成り立たなくなりつつあるのが現状だ。
これに対して同社は、高射幸性機の割合が業界平均に比べて低く、反対に最も射幸性の低い確率1/100タイプの構成比が業界平均よりも20%も高い構成となっている。射幸性規制の強化の影響は同社も避けられないが、機種構成を反映して相対的にはマイナス影響が軽微であると弊社では考えている。
(4) 上場企業の強みを生かした資金調達力
同社は2012年にパチンコホール業界で初めて香港証券取引所に株式を上場した。約3,400社のパチンコホール企業の中で株式を上場しているのは同社を含めて3社だけだ。今後予想される業界再編において、買い手となれるかどうかの重要な条件の1つが資金調達力であることは議論の余地はないだろう。同社は2015年11月の夢コーポレーションのグループ化で、上場企業としての強みを生かし、全株式を株式交換により取得した。M&Aに限らず店舗投資や新事業展開などで潜在的資金需要は旺盛で、上場企業であることのメリットは非常に大きく働くと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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