サムティ Research Memo(5):2017年11月期は2度の増額修正予算をほぼ達成
[18/02/27]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■業績動向
2. 2017年11月期決算の概要
サムティ<3244>の2017年11月期の業績は、売上高が前期比15.4%増の60,479百万円、営業利益が同18.0%増の10,131百万円、経常利益が同24.6%増の8,461百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.3%増の5,661百万円と順調に拡大し、増額修正予算をほぼ達成することができた。
売上高は、3つの事業がそれぞれ計画を上回って伸長した。特に、物件売却が好調であった「不動産事業」が大きく拡大。都内を中心に外資系ファンドや富裕層などからの強い投資意欲が続く開発流動化(「S-RESIDENCE」の販売)や再生不動産(既存の収益不動産等の再生・販売)が想定よりも高い価格で販売できたようだ。また、投資分譲(投資用マンションの企画開発・販売)も個人投資家などからの根強い需要に支えられ好調であった。一方、安定収益源である「不動産賃貸事業」や「その他の事業」についても堅調に推移した。
利益面では、販売価格の上振れや建築費の安定により原価率が大きく改善した(前期比0.6ポイントの低下)。一方、知名度向上を目的としたテレビCMの実施、人員増や賃金ベースアップに伴う人件費の増加などにより販管費は拡大したものの、増収効果や原価率の改善により営業増益を実現。営業利益率も16.8%(前期は16.4%)に上昇している。また、経常利益の伸び率が大きいのは、市中金利低下の恩恵などにより支払金利が減少したことが要因である。
また、今後の成長につながる仕入れの状況についても、開発用地22物件(想定売上高510億円/取得価額170億円)、収益不動産46物件(取得価額320億円)を取得※し、計画どおりに着地できたと言える。特に、開発用地については、都心を中心に取得困難な状況にあると一般的には言われているが、同社の事業領域であるワンルームマンションについては、比較的手狭な用地であっても開発可能であるため、大手との競合が少ないものと考えられる。
※2016年11月期の実績は、開発用地20物件(想定売上高282億円相当、取得価額115億円)、収益不動産35物件(取得価額290億円)であった。
財政状態は、「仕掛販売用不動産」(流動資産)や「有形固定資産」(固定資産)の増加により、総資産が前期末比17.9%増の166,449百万円に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより前期末比19.9%増の39,017百万円に増えたことから、自己資本比率は23.4%(前期末は23.1%)に若干改善した。一方、有利子負債も前期末比20.1%増の114,786百万円に拡大し、初めて1,000億円を超えたが、そのうち長期負債の比率は73.3%を占めており、財務の安定性に懸念はない。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1) 不動産事業
売上高は前期比17.7%増の51,522百万円、セグメント利益は同31.3%増の10,600百万円と順調に拡大した。特に、「開発流動化」が前期比66.0%増の1,5402百万円と大きく伸びた。「S-RESIDENCE」8物件※(前期は7物件)を売却したが、低金利の継続や政情の安定などを背景として、外資系ファンドからの強い買い意欲が続いており、販売価格の上振れが業績の伸びに寄与した。「再生流動化」も29物件(前期は大型を含む18物件)を売却し、売上高は前期比0.5%増の23,632百万円とほぼ横ばいにとどまったが、「開発流動化」と同様、外資系ファンドへのバルク販売等により、利益面での貢献は大きかったようだ。また、「投資分譲」についても690戸(前期は628戸、計画では663戸)の販売により、前期比19.2%増の12,049百万円と好調であった。将来の年金不安や相続税対策などを背景として、個人投資家からの根強い需要に支えられている。
※「S-RESIDENCE」8物件のうち、SRR向け(ブリッジファンドを含む)は2物件であった。
利益面でも、販売価格の上振れや建築費の安定のほか、外資系ファンドや富裕層への直接販売が増えたことによりセグメント利益率は20.6%(前期は18.4%)と大きく改善しており、大幅な増益を実現した。
(2) 不動産賃貸事業
売上高は前期比5.2%増の7,386百万円、セグメント利益は同8.2%減の2,094百万円と増収減益となった。保有物件数の増加※に加えて、稼働率も高い水準で推移したことから順調に伸長した。
※29物件を売却した一方、46物件を取得したことで保有物件は88物件に増加した。
利益面では、大型物件※等の取得に伴う減価償却費の増加により減益となったが想定内である。
※2016年11月に取得したサムティ警固タワー(福岡市のタワーマンション)のほか、2017年3月に取得した大型物流倉庫(水戸市)、2017年11月に竣工したファミリー賃貸マンション「S-RESIDENCE宮の森」(札幌市、「S-RESIDENCE」ブランドでは初めてのファミリー向けマンション)など。
(3) その他の事業
売上高は前期比1.7%増の1,885百万円、セグメント利益は同38.1%減の243百万円と増収減益となった。マンション管理戸数の増加に加えて、ホテル事業についても、新たに取得した「GOZAN HOTEL」による寄与のほか、稼働率も高水準を確保※したことから売上高は計画を上回って推移した。
※第4四半期の平均稼働率は、「センターホテル東京」が96.4%、「センターホテル大阪」が94.5%、「S-PERIAホテル長崎」が94.4%となっている。特に、第2四半期にやや落ち込んでいた「S-PERIAホテル長崎」の稼働率が順調に回復している。
一方、利益面で減益となったのは、1)2016年12月期に売却し、運営のみを行っている「センターホテル東京」の家賃費用が発生したこと、2)前期における高採算の工事案件(一時的要因)がはく落したことが理由とみられるが想定内である。
以上から、2017年11月期の業績を総括すると、1)好調な不動産市況を追い風として、不動産事業が想定以上に大きく伸びたこと(特に、販売価格の上振れにより利益面が好調)、2)今後の成長につながる仕入れ(開発用地及び収益不動産)についても順調に進捗していることから、好調に推移したと評価できる。
3. 開発計画(パイプライン)の状況
「S-RESIDENCE」シリーズの開発状況は、2017年竣工分が8棟(420戸)、2018年竣工分が13棟(949戸)、2019年竣工分は既に仕入れ済の3棟(368戸)に加え現在仕入れを進めており順調に積み上がっている模様である。地域的には、首都圏14棟(東京11、神奈川1、千葉2)、関西5棟(大阪)のほか、愛知5棟(名古屋)となっている。
一方、投資分譲の開発案件の状況は、2017年竣工分が1棟(96戸)、2018年竣工分が7棟(328戸)、2019年竣工分が7棟(424戸)と合計15棟(848戸)が進行しており、販売予定価格では合計約170億円となっている。
「S-RESIDENCE」(開発流動化)に比べて、「投資用マンション」(投資分譲)の積み上げが少ないのは、外資系ファンドや富裕層からの強い需要に対応するため、当初投資分譲として開発を進めていた物件を利益率の高い「S-RESIDENCE」(1棟売り)シリーズへ変更していることが背景にある。いずれにしても、パイプライン全体では順調に積み上がっていると言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<HN>
2. 2017年11月期決算の概要
サムティ<3244>の2017年11月期の業績は、売上高が前期比15.4%増の60,479百万円、営業利益が同18.0%増の10,131百万円、経常利益が同24.6%増の8,461百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.3%増の5,661百万円と順調に拡大し、増額修正予算をほぼ達成することができた。
売上高は、3つの事業がそれぞれ計画を上回って伸長した。特に、物件売却が好調であった「不動産事業」が大きく拡大。都内を中心に外資系ファンドや富裕層などからの強い投資意欲が続く開発流動化(「S-RESIDENCE」の販売)や再生不動産(既存の収益不動産等の再生・販売)が想定よりも高い価格で販売できたようだ。また、投資分譲(投資用マンションの企画開発・販売)も個人投資家などからの根強い需要に支えられ好調であった。一方、安定収益源である「不動産賃貸事業」や「その他の事業」についても堅調に推移した。
利益面では、販売価格の上振れや建築費の安定により原価率が大きく改善した(前期比0.6ポイントの低下)。一方、知名度向上を目的としたテレビCMの実施、人員増や賃金ベースアップに伴う人件費の増加などにより販管費は拡大したものの、増収効果や原価率の改善により営業増益を実現。営業利益率も16.8%(前期は16.4%)に上昇している。また、経常利益の伸び率が大きいのは、市中金利低下の恩恵などにより支払金利が減少したことが要因である。
また、今後の成長につながる仕入れの状況についても、開発用地22物件(想定売上高510億円/取得価額170億円)、収益不動産46物件(取得価額320億円)を取得※し、計画どおりに着地できたと言える。特に、開発用地については、都心を中心に取得困難な状況にあると一般的には言われているが、同社の事業領域であるワンルームマンションについては、比較的手狭な用地であっても開発可能であるため、大手との競合が少ないものと考えられる。
※2016年11月期の実績は、開発用地20物件(想定売上高282億円相当、取得価額115億円)、収益不動産35物件(取得価額290億円)であった。
財政状態は、「仕掛販売用不動産」(流動資産)や「有形固定資産」(固定資産)の増加により、総資産が前期末比17.9%増の166,449百万円に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより前期末比19.9%増の39,017百万円に増えたことから、自己資本比率は23.4%(前期末は23.1%)に若干改善した。一方、有利子負債も前期末比20.1%増の114,786百万円に拡大し、初めて1,000億円を超えたが、そのうち長期負債の比率は73.3%を占めており、財務の安定性に懸念はない。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1) 不動産事業
売上高は前期比17.7%増の51,522百万円、セグメント利益は同31.3%増の10,600百万円と順調に拡大した。特に、「開発流動化」が前期比66.0%増の1,5402百万円と大きく伸びた。「S-RESIDENCE」8物件※(前期は7物件)を売却したが、低金利の継続や政情の安定などを背景として、外資系ファンドからの強い買い意欲が続いており、販売価格の上振れが業績の伸びに寄与した。「再生流動化」も29物件(前期は大型を含む18物件)を売却し、売上高は前期比0.5%増の23,632百万円とほぼ横ばいにとどまったが、「開発流動化」と同様、外資系ファンドへのバルク販売等により、利益面での貢献は大きかったようだ。また、「投資分譲」についても690戸(前期は628戸、計画では663戸)の販売により、前期比19.2%増の12,049百万円と好調であった。将来の年金不安や相続税対策などを背景として、個人投資家からの根強い需要に支えられている。
※「S-RESIDENCE」8物件のうち、SRR向け(ブリッジファンドを含む)は2物件であった。
利益面でも、販売価格の上振れや建築費の安定のほか、外資系ファンドや富裕層への直接販売が増えたことによりセグメント利益率は20.6%(前期は18.4%)と大きく改善しており、大幅な増益を実現した。
(2) 不動産賃貸事業
売上高は前期比5.2%増の7,386百万円、セグメント利益は同8.2%減の2,094百万円と増収減益となった。保有物件数の増加※に加えて、稼働率も高い水準で推移したことから順調に伸長した。
※29物件を売却した一方、46物件を取得したことで保有物件は88物件に増加した。
利益面では、大型物件※等の取得に伴う減価償却費の増加により減益となったが想定内である。
※2016年11月に取得したサムティ警固タワー(福岡市のタワーマンション)のほか、2017年3月に取得した大型物流倉庫(水戸市)、2017年11月に竣工したファミリー賃貸マンション「S-RESIDENCE宮の森」(札幌市、「S-RESIDENCE」ブランドでは初めてのファミリー向けマンション)など。
(3) その他の事業
売上高は前期比1.7%増の1,885百万円、セグメント利益は同38.1%減の243百万円と増収減益となった。マンション管理戸数の増加に加えて、ホテル事業についても、新たに取得した「GOZAN HOTEL」による寄与のほか、稼働率も高水準を確保※したことから売上高は計画を上回って推移した。
※第4四半期の平均稼働率は、「センターホテル東京」が96.4%、「センターホテル大阪」が94.5%、「S-PERIAホテル長崎」が94.4%となっている。特に、第2四半期にやや落ち込んでいた「S-PERIAホテル長崎」の稼働率が順調に回復している。
一方、利益面で減益となったのは、1)2016年12月期に売却し、運営のみを行っている「センターホテル東京」の家賃費用が発生したこと、2)前期における高採算の工事案件(一時的要因)がはく落したことが理由とみられるが想定内である。
以上から、2017年11月期の業績を総括すると、1)好調な不動産市況を追い風として、不動産事業が想定以上に大きく伸びたこと(特に、販売価格の上振れにより利益面が好調)、2)今後の成長につながる仕入れ(開発用地及び収益不動産)についても順調に進捗していることから、好調に推移したと評価できる。
3. 開発計画(パイプライン)の状況
「S-RESIDENCE」シリーズの開発状況は、2017年竣工分が8棟(420戸)、2018年竣工分が13棟(949戸)、2019年竣工分は既に仕入れ済の3棟(368戸)に加え現在仕入れを進めており順調に積み上がっている模様である。地域的には、首都圏14棟(東京11、神奈川1、千葉2)、関西5棟(大阪)のほか、愛知5棟(名古屋)となっている。
一方、投資分譲の開発案件の状況は、2017年竣工分が1棟(96戸)、2018年竣工分が7棟(328戸)、2019年竣工分が7棟(424戸)と合計15棟(848戸)が進行しており、販売予定価格では合計約170億円となっている。
「S-RESIDENCE」(開発流動化)に比べて、「投資用マンション」(投資分譲)の積み上げが少ないのは、外資系ファンドや富裕層からの強い需要に対応するため、当初投資分譲として開発を進めていた物件を利益率の高い「S-RESIDENCE」(1棟売り)シリーズへ変更していることが背景にある。いずれにしても、パイプライン全体では順調に積み上がっていると言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<HN>