ケネディクス Research Memo(6):前中計は定量・定性ともに大きな成果
[18/03/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■成長戦略
ケネディクス<4321>は、2015年に定めた長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」及び中期経営計画「Partners in Growth 2017」を推進してきた。中期経営計画については、2017年12月期をもって終了(目標達成)したことから、新たに3ヶ年の中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」を公表した。
1. 前中期経営計画の振り返り
「ケネディクスは不動産の限りなき可能性を切り拓きます」というミッションステートメントのもと、自ら不動産を所有せず(グループで組成・運用するファンドが保有)に、安定的な収益力を追求する「ケネディクスモデルの確立」に取り組んできた。具体的には1)アセットマネジメント事業を中心とする安定収益の成長、2)共同投資を中心とする不動産投資事業の推進、3)財務の健全性と株主還元の最適なバランスの追求を基本方針として、最終年度である2017年12月期には、「ベース利益」40億円、3年平均ROE 8.0%を目標としてきた。その結果、各基本方針ともに十分な成果を残すことができたほか、定量計画についても、2017年12月期の「ベース利益」は67億円(特殊要因を除いても45億円程度を確保)、ROEも3年間にわたって常に12%前後の水準を維持しており、計画を大幅に達成することができた。
各基本方針における実績は以下のとおりである。
(1) アセットマネジメント事業を中心とする安定収益の成長
受託資産残高は3年間で約5,000億円の純増を実現し、2017年12月末残高は2兆33億円と大きく拡大した。特に、積極的な物件供給によりREIT(メインスポンサー)が順調に成長したことや、コアファンドの組成等により私募ファンドが増加に転じたところは、今後に向けても評価できる。その結果、AMフィーやPMフィーなどの安定収益が着実に増加し、安定収益のみで全社販管費をカバーできる収益構造を実現した。
(2) 共同投資を中心とする不動産投資事業の推進
過去における含み損を有したレガシーアセットの処分を完了するとともに、自己資本の範囲内で投資利益と回収資金の回転により、受託資産を積み上げるための投資(将来的なファンド組成やファンドに供給するための投資)を積極的に行ってきた。特に、顧客投資家と共同投資を推進し、ブリッジやコアを始め、開発(ホテルや商業施設等)、インフラ(太陽光発電所等)、海外など、ポテンシャルの大きな分野を中心として、分散された投資エクスポージャーを構築してきた。
(3) 財務の健全性と株主還元の最適なバランスの追求
安定的な収益である「ベース利益」に基づいた継続的な配当と増配を実施する一方、自社株買いについては、外部環境の影響が大きい「不動産投資損益」に基づき、累計約170億円の取得を決定した。すなわち、財務の健全性を保ちながら、積極的な株主還元を実施し、資本効率性(ROE)も高い水準を維持することができたところは大いに評価できる。
2. 新中期経営計画の方向性
新たな中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」は、前中期経営計画の方向性を継承し、「ケネディクスモデルの確立」に続く第2段階として、「ケネディクスの発展期」と位置付けられている。すなわち、同社の強みである投資案件の組成力と運用力を高め、顧客投資家層を拡大し、ケネディクスモデルを多方面に発展・深化させることで、同社の収益基盤を一層強化する。また、機動的な投資と健全な財務体質を維持しながら、資本の有効活用と株主還元の充実を図り、不動産アセットマネジメントのリーディングカンパニーとして企業価値の一層の向上を目指す方針である。定量計画として、ROE(3年平均)10%以上、総還元性向(3年平均)50%以上を掲げている。
基本方針と重点施策は以下のとおりである。
(1) 不動産アセットマネジメントを中心とするビジネス領域の拡充
a)受託資産残高(AUM)と安定収益の拡大につながる多様な投資機会の創出
b)国内外における顧客投資家層の拡大と投資家リレーションの深化
c)投資案件の組成力と運用力を向上させる運用体制の強化
d)アセットマネジメントの付加価値を高める関連サービスの強化
e)ビジネス領域の拡充に資する戦略的M&Aや事業提携の模索
(2) 機動的かつ戦略的な投資の推進
a)顧客投資家との共同投資の推進
b)当社グループ運用ファンドの成長につなげる機動的な投資の実行
c)海外や成長分野でのビジネス拡大に資する戦略的な投資の実行
d)分散と規律の保たれた投資ポートフォリオの維持とモニタリング体制の強化
e)財務の健全性と透明性の堅持
(3) 時代の変化を捉えた新たな成長分野の開拓
a)アジア市場における事業の拡大
b)米国市場でのアウトバウンド投資ビジネスの推進
c)ホテル、民泊、サービスアパート等の滞在型施設運営ビジネスの推進
d)「不動産×金融×テクノロジー」に焦点を当てた新ビジネスの立ち上げ
(4) 持続的成長と社会的責任の両立に向けた経営基盤の強化
a)組織と個人の生産性を高める社内インフラの進化
b)ケネディクスモデルの礎となる多様な人材の確保・育成
c)社会の変化に応じた柔軟な働き方の追求
d) ESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組み推進
3. 長期ビジョン
同社は引き続き、2025年の長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」として、受託資産残高4 兆円、グループ時価総額2兆円(2017年12月末時点で7,309億円)、ROE 15%を掲げている。注目すべき点は、総資産の規模や財務レバレッジ(有利子負債比率)を現状から大きく拡大することなく、受託資産残高を積み上げることで収益性(資本効率)を高める方向性が示されているところであり、まさに「ケネディクスモデル」ならではの独自の成長シナリオとなっている。
弊社でも、景気循環や不動産市況等の影響をある程度受けながらも、「ケネディクスモデル」を確立してきた同社にとっては、好調な外部環境(投資対象としての不動産への注目度の高まり等)を追い風としながら、持続的な成長を実現することは可能であると評価している。注目すべきは、「ケネディクスモデル」をさらに発展させるための具体的な施策とその成果にある。その意味では、潤沢なキャッシュポジションを生かした戦略的M&Aや事業提携の方向性はもちろん、新たな成長分野への取り組み(アジア市場への展開、民泊やサービスアパートメントを含めた滞在型施設運営ビジネスの推進、不動産を対象とするクラウドファンディング等)など、社会の構造変化や技術革新をいかに自らの成長や「ケネディクスモデル」の発展に結び付けられるかがカギを握ると言えるだろう。また、それらが同社の成長性や収益性がどのような影響を及ぼすのかについても今後の動向を見守る必要がある。独自のポジショニングやビジネスモデルを展開する同社ならではの価値創造に期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<NB>
ケネディクス<4321>は、2015年に定めた長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」及び中期経営計画「Partners in Growth 2017」を推進してきた。中期経営計画については、2017年12月期をもって終了(目標達成)したことから、新たに3ヶ年の中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」を公表した。
1. 前中期経営計画の振り返り
「ケネディクスは不動産の限りなき可能性を切り拓きます」というミッションステートメントのもと、自ら不動産を所有せず(グループで組成・運用するファンドが保有)に、安定的な収益力を追求する「ケネディクスモデルの確立」に取り組んできた。具体的には1)アセットマネジメント事業を中心とする安定収益の成長、2)共同投資を中心とする不動産投資事業の推進、3)財務の健全性と株主還元の最適なバランスの追求を基本方針として、最終年度である2017年12月期には、「ベース利益」40億円、3年平均ROE 8.0%を目標としてきた。その結果、各基本方針ともに十分な成果を残すことができたほか、定量計画についても、2017年12月期の「ベース利益」は67億円(特殊要因を除いても45億円程度を確保)、ROEも3年間にわたって常に12%前後の水準を維持しており、計画を大幅に達成することができた。
各基本方針における実績は以下のとおりである。
(1) アセットマネジメント事業を中心とする安定収益の成長
受託資産残高は3年間で約5,000億円の純増を実現し、2017年12月末残高は2兆33億円と大きく拡大した。特に、積極的な物件供給によりREIT(メインスポンサー)が順調に成長したことや、コアファンドの組成等により私募ファンドが増加に転じたところは、今後に向けても評価できる。その結果、AMフィーやPMフィーなどの安定収益が着実に増加し、安定収益のみで全社販管費をカバーできる収益構造を実現した。
(2) 共同投資を中心とする不動産投資事業の推進
過去における含み損を有したレガシーアセットの処分を完了するとともに、自己資本の範囲内で投資利益と回収資金の回転により、受託資産を積み上げるための投資(将来的なファンド組成やファンドに供給するための投資)を積極的に行ってきた。特に、顧客投資家と共同投資を推進し、ブリッジやコアを始め、開発(ホテルや商業施設等)、インフラ(太陽光発電所等)、海外など、ポテンシャルの大きな分野を中心として、分散された投資エクスポージャーを構築してきた。
(3) 財務の健全性と株主還元の最適なバランスの追求
安定的な収益である「ベース利益」に基づいた継続的な配当と増配を実施する一方、自社株買いについては、外部環境の影響が大きい「不動産投資損益」に基づき、累計約170億円の取得を決定した。すなわち、財務の健全性を保ちながら、積極的な株主還元を実施し、資本効率性(ROE)も高い水準を維持することができたところは大いに評価できる。
2. 新中期経営計画の方向性
新たな中期経営計画「Partners in Growth, Next 2020」は、前中期経営計画の方向性を継承し、「ケネディクスモデルの確立」に続く第2段階として、「ケネディクスの発展期」と位置付けられている。すなわち、同社の強みである投資案件の組成力と運用力を高め、顧客投資家層を拡大し、ケネディクスモデルを多方面に発展・深化させることで、同社の収益基盤を一層強化する。また、機動的な投資と健全な財務体質を維持しながら、資本の有効活用と株主還元の充実を図り、不動産アセットマネジメントのリーディングカンパニーとして企業価値の一層の向上を目指す方針である。定量計画として、ROE(3年平均)10%以上、総還元性向(3年平均)50%以上を掲げている。
基本方針と重点施策は以下のとおりである。
(1) 不動産アセットマネジメントを中心とするビジネス領域の拡充
a)受託資産残高(AUM)と安定収益の拡大につながる多様な投資機会の創出
b)国内外における顧客投資家層の拡大と投資家リレーションの深化
c)投資案件の組成力と運用力を向上させる運用体制の強化
d)アセットマネジメントの付加価値を高める関連サービスの強化
e)ビジネス領域の拡充に資する戦略的M&Aや事業提携の模索
(2) 機動的かつ戦略的な投資の推進
a)顧客投資家との共同投資の推進
b)当社グループ運用ファンドの成長につなげる機動的な投資の実行
c)海外や成長分野でのビジネス拡大に資する戦略的な投資の実行
d)分散と規律の保たれた投資ポートフォリオの維持とモニタリング体制の強化
e)財務の健全性と透明性の堅持
(3) 時代の変化を捉えた新たな成長分野の開拓
a)アジア市場における事業の拡大
b)米国市場でのアウトバウンド投資ビジネスの推進
c)ホテル、民泊、サービスアパート等の滞在型施設運営ビジネスの推進
d)「不動産×金融×テクノロジー」に焦点を当てた新ビジネスの立ち上げ
(4) 持続的成長と社会的責任の両立に向けた経営基盤の強化
a)組織と個人の生産性を高める社内インフラの進化
b)ケネディクスモデルの礎となる多様な人材の確保・育成
c)社会の変化に応じた柔軟な働き方の追求
d) ESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組み推進
3. 長期ビジョン
同社は引き続き、2025年の長期ビジョン「Kenedix Vision 2025」として、受託資産残高4 兆円、グループ時価総額2兆円(2017年12月末時点で7,309億円)、ROE 15%を掲げている。注目すべき点は、総資産の規模や財務レバレッジ(有利子負債比率)を現状から大きく拡大することなく、受託資産残高を積み上げることで収益性(資本効率)を高める方向性が示されているところであり、まさに「ケネディクスモデル」ならではの独自の成長シナリオとなっている。
弊社でも、景気循環や不動産市況等の影響をある程度受けながらも、「ケネディクスモデル」を確立してきた同社にとっては、好調な外部環境(投資対象としての不動産への注目度の高まり等)を追い風としながら、持続的な成長を実現することは可能であると評価している。注目すべきは、「ケネディクスモデル」をさらに発展させるための具体的な施策とその成果にある。その意味では、潤沢なキャッシュポジションを生かした戦略的M&Aや事業提携の方向性はもちろん、新たな成長分野への取り組み(アジア市場への展開、民泊やサービスアパートメントを含めた滞在型施設運営ビジネスの推進、不動産を対象とするクラウドファンディング等)など、社会の構造変化や技術革新をいかに自らの成長や「ケネディクスモデル」の発展に結び付けられるかがカギを握ると言えるだろう。また、それらが同社の成長性や収益性がどのような影響を及ぼすのかについても今後の動向を見守る必要がある。独自のポジショニングやビジネスモデルを展開する同社ならではの価値創造に期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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