クオール Research Memo(5):国の健康保険制度に組み込まれ、市場規模は約8兆円
[18/03/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
クオール<3034>
■保険薬局事業の概要と成長戦略
1. 調剤薬局の市場と収益構造
調剤薬局は病院(医師)とともに国の健康保険制度に組み込まれており、それゆえ保険薬局とも称される。日本において「薬局」を名乗れるのは、原則として「薬機法」に基づいて開設許可を受けた施設のみとなっている。そこでは、薬剤師が常駐して、調剤室において医師の処方せんに基づいた医薬品を調剤する医療サービスを提供している。薬剤師や調剤室といった要件を欠いた施設は店舗名に「薬局」を名乗ることはできないが、逆に言えば、これらの要件を満たせばコンビニエンスストアやドラッグストア等の小売店舗であっても「薬局」と称することができる。
調剤薬局にとっての市場規模は、それが国の健康保険制度に組み込まれているため、国民医療費の中の「薬局調剤医療費」(定義:処方せんにより保険薬局を通じて支給される薬剤等の額で、調剤基本料等技術料と薬剤料の合計)に表象されると言うことができる(実際にはこれに一般用医薬品の販売など周辺サービスからの売上げも加わる)。その推移を見ると、高齢化社会の進行などの影響もあって、その額は右肩上がりが続いており、2015年度における薬局調剤医療費は7兆9,831億円(前年度比9.6%増)に達した。
2005年度を起点に2015年度までの10年間の薬局調剤医療費の年平均成長率は5.8%であった。これは同期間における国民医療費全体の年平均成長率2.5%を大きく上回っている。国民医療費の増大は国民経済の観点からは好ましいことではないため、将来の伸び率は過去に比べて鈍化する可能性は高いが、高齢化社会の進行を考えれば拡大基調は続くと考えられる。
調剤薬局売上高は、簡単に言えば処方せん応需枚数と処方せん単価の積で決まる。このうち、処方せん単価は、その中身が「調剤技術料」、「薬学管理料」及び「薬剤料」の3要素から成っている。このうち薬剤料については、医薬品の原価が占める割合が大きいことや、高額医薬品の影響を受けて変動しやすいことに注意が必要だ。利益の観点では調剤技術料と薬学管理料が重要な意味を持っている。一方、国(厚生労働省)は、医療費の伸びの抑制や国の医療政策の実現の動機付けへとつなげるべく、調剤技術料や薬学管理料を含めた「診療報酬」の定期的な見直しを行っている。処方せん単価を考えるうえでは、表面上の処方せん単価の変動よりも、薬剤料における粗利益と、調剤報酬(調剤技術料と薬学管理料)の変化がより大きなポイントと言える。
処方せん応需枚数については、通常の小売業で言えば来店客数に相当する。調剤薬局事業においては、処方せん単価(より正確には“処方せん粗利益”)の急激な拡大は期待しにくい面があるため、各社とも経営の中心施策は処方せん応需枚数の増加策、すなわち客数拡大に取り組んでいる。1店舗当たりの客数増大も限界があるため、全社ベースで見た場合には、客数拡大の中心的施策は、店舗数の拡大戦略となると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MW>
■保険薬局事業の概要と成長戦略
1. 調剤薬局の市場と収益構造
調剤薬局は病院(医師)とともに国の健康保険制度に組み込まれており、それゆえ保険薬局とも称される。日本において「薬局」を名乗れるのは、原則として「薬機法」に基づいて開設許可を受けた施設のみとなっている。そこでは、薬剤師が常駐して、調剤室において医師の処方せんに基づいた医薬品を調剤する医療サービスを提供している。薬剤師や調剤室といった要件を欠いた施設は店舗名に「薬局」を名乗ることはできないが、逆に言えば、これらの要件を満たせばコンビニエンスストアやドラッグストア等の小売店舗であっても「薬局」と称することができる。
調剤薬局にとっての市場規模は、それが国の健康保険制度に組み込まれているため、国民医療費の中の「薬局調剤医療費」(定義:処方せんにより保険薬局を通じて支給される薬剤等の額で、調剤基本料等技術料と薬剤料の合計)に表象されると言うことができる(実際にはこれに一般用医薬品の販売など周辺サービスからの売上げも加わる)。その推移を見ると、高齢化社会の進行などの影響もあって、その額は右肩上がりが続いており、2015年度における薬局調剤医療費は7兆9,831億円(前年度比9.6%増)に達した。
2005年度を起点に2015年度までの10年間の薬局調剤医療費の年平均成長率は5.8%であった。これは同期間における国民医療費全体の年平均成長率2.5%を大きく上回っている。国民医療費の増大は国民経済の観点からは好ましいことではないため、将来の伸び率は過去に比べて鈍化する可能性は高いが、高齢化社会の進行を考えれば拡大基調は続くと考えられる。
調剤薬局売上高は、簡単に言えば処方せん応需枚数と処方せん単価の積で決まる。このうち、処方せん単価は、その中身が「調剤技術料」、「薬学管理料」及び「薬剤料」の3要素から成っている。このうち薬剤料については、医薬品の原価が占める割合が大きいことや、高額医薬品の影響を受けて変動しやすいことに注意が必要だ。利益の観点では調剤技術料と薬学管理料が重要な意味を持っている。一方、国(厚生労働省)は、医療費の伸びの抑制や国の医療政策の実現の動機付けへとつなげるべく、調剤技術料や薬学管理料を含めた「診療報酬」の定期的な見直しを行っている。処方せん単価を考えるうえでは、表面上の処方せん単価の変動よりも、薬剤料における粗利益と、調剤報酬(調剤技術料と薬学管理料)の変化がより大きなポイントと言える。
処方せん応需枚数については、通常の小売業で言えば来店客数に相当する。調剤薬局事業においては、処方せん単価(より正確には“処方せん粗利益”)の急激な拡大は期待しにくい面があるため、各社とも経営の中心施策は処方せん応需枚数の増加策、すなわち客数拡大に取り組んでいる。1店舗当たりの客数増大も限界があるため、全社ベースで見た場合には、客数拡大の中心的施策は、店舗数の拡大戦略となると考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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