クオール Research Memo(12):通期見通しを再度上方修正。保険薬局事業の各種施策の進捗で収益性が改善
[18/03/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績の動向
2. 2018年3月期通期の業績見通し
クオール<3034>は第3四半期決算に際して2018年3月期通期見通しを上方修正した。これは第1四半期決算時に続く今期2度目の修正となる。新たな通期予想は、売上高146,000百万円(前期比11.0%増)、営業利益9,000百万円(同31.1%増)、経常利益9,200百万円(同30.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,900百万円(同12.5%増)となっている。
同社が通期予想を引き上げた要因は保険薬局事業セグメントにおける業務改善の各種施策の進捗と、それによる業績、特に利益の拡大だ。同社はかかりつけ薬剤師・薬局の推進やジェネリック医薬品の使用促進を進めて調剤料の段階的引き上げに成功してきている。また、新在庫システムを全店舗に導入したことで、適正な在庫管理と医薬品の調達コストコントロールの機能が強化された。これら施策の利益インパクトは大きく、第3四半期までの利益を従来の想定以上に押し上げ、上方修正へとつながった。
上方修正後の新予想を達成するのに必要な第4四半期の業績は、売上高37,529百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益2,011百万円(同14.1%減)と増収減益で事足りる形となっている。通常、調剤薬局のビジネスでは、風邪やインフルエンザ等の影響もあって、第4四半期は需要期に該当する。また今期は診療報酬・薬価の改定スキップ年であり、第3四半期までの処方せん単価は前年同期を上回って推移している。こうした点に鑑みれば、上方修正後の新予想も同社の事業の実態に対して依然として控え目なものというのが弊社の評価だ。
一方で、今通期の同社の業績が、新予想を大幅に上回って着地するかどうかについては慎重に構える必要があると考えている。理由の1つは2018年10月に予定されている持株会社への移行だ。一例として、事業の主体が新会社に変更となるため許認可の再取得等の費用が発生することがある。こうした持株会社への移行に関する費用を今期中に前倒しで計上してくる可能性があると弊社ではみている。また、今期予定されている費用の一部で、発生が第4四半期にずれ込む見通しとなっているものがいくつかあるもようで、これも慎重なスタンスを取るべきと考える理由の1つだ。さらには2018年4月に予定される診療報酬・薬価の改定がある。診療報酬・薬価の改定は、通常は業績に対してマイナスインパクトとなる。その影響をこなして増収増益のトレンドを維持するためには、今期の業績を極端に高くしたくないという心理が働き、これもまた費用の前倒し計上の動機付けになると考えられる。
結論としては、今通期の業績は会社予想を上回る着地となる可能性は十分高いと期待されるものの、その超過幅は3度目の上方修正や市場にポジティブサプライズをもたらすほどには至らないというのが弊社の考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MW>
2. 2018年3月期通期の業績見通し
クオール<3034>は第3四半期決算に際して2018年3月期通期見通しを上方修正した。これは第1四半期決算時に続く今期2度目の修正となる。新たな通期予想は、売上高146,000百万円(前期比11.0%増)、営業利益9,000百万円(同31.1%増)、経常利益9,200百万円(同30.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,900百万円(同12.5%増)となっている。
同社が通期予想を引き上げた要因は保険薬局事業セグメントにおける業務改善の各種施策の進捗と、それによる業績、特に利益の拡大だ。同社はかかりつけ薬剤師・薬局の推進やジェネリック医薬品の使用促進を進めて調剤料の段階的引き上げに成功してきている。また、新在庫システムを全店舗に導入したことで、適正な在庫管理と医薬品の調達コストコントロールの機能が強化された。これら施策の利益インパクトは大きく、第3四半期までの利益を従来の想定以上に押し上げ、上方修正へとつながった。
上方修正後の新予想を達成するのに必要な第4四半期の業績は、売上高37,529百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益2,011百万円(同14.1%減)と増収減益で事足りる形となっている。通常、調剤薬局のビジネスでは、風邪やインフルエンザ等の影響もあって、第4四半期は需要期に該当する。また今期は診療報酬・薬価の改定スキップ年であり、第3四半期までの処方せん単価は前年同期を上回って推移している。こうした点に鑑みれば、上方修正後の新予想も同社の事業の実態に対して依然として控え目なものというのが弊社の評価だ。
一方で、今通期の同社の業績が、新予想を大幅に上回って着地するかどうかについては慎重に構える必要があると考えている。理由の1つは2018年10月に予定されている持株会社への移行だ。一例として、事業の主体が新会社に変更となるため許認可の再取得等の費用が発生することがある。こうした持株会社への移行に関する費用を今期中に前倒しで計上してくる可能性があると弊社ではみている。また、今期予定されている費用の一部で、発生が第4四半期にずれ込む見通しとなっているものがいくつかあるもようで、これも慎重なスタンスを取るべきと考える理由の1つだ。さらには2018年4月に予定される診療報酬・薬価の改定がある。診療報酬・薬価の改定は、通常は業績に対してマイナスインパクトとなる。その影響をこなして増収増益のトレンドを維持するためには、今期の業績を極端に高くしたくないという心理が働き、これもまた費用の前倒し計上の動機付けになると考えられる。
結論としては、今通期の業績は会社予想を上回る着地となる可能性は十分高いと期待されるものの、その超過幅は3度目の上方修正や市場にポジティブサプライズをもたらすほどには至らないというのが弊社の考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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