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カルナバイオ Research Memo(1):BTK阻害剤2品目で2019年前半のIND(臨床試験届け)申請目指す

注目トピックス 日本株
■要約

カルナバイオサイエンス<4572>は、細胞内のシグナル伝達物質であるキナーゼの働きに着目した創薬及び創薬支援事業を行うバイオベンチャーである。創薬事業では主にがん領域やアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患を対象としたキナーゼ阻害薬の研究開発を行っている。2016年5月に、抗がん剤治療薬候補となるCDC7キナーゼ阻害薬を、北米のバイオベンチャーであるSierra Oncology, Inc.(旧ProNAi Therapeutics,Inc.以下、シエラ)へ導出、グローバルライセンス契約を締結している。

1. 2つのBTK阻害剤が前臨床試験へステージアップ
2017年12月期のトピックスとして、同社のパイプラインのうち2つの非共有結合型BTK阻害剤が前臨床試験段階にステージアップしたことが挙げられる。1つ目は、リウマチ等の免疫炎症疾患を対象に開発を進めている「AS-871」で、欧州にて前臨床試験を開始しており、2019年前半のIND(臨床試験開始届け)申請に向け準備を進めている。高いキナーゼ選択性を持ち副作用リスクが低いのが特長となっている。リウマチ治療薬は抗体医薬でアダリムマブがあるほか、低分子化合物でもトファシチニブ(JAK阻害薬)が販売されており、市場規模は2兆円規模と大きい。ただ、既存薬に関しては薬価や副作用など短所もあるため、より安全で薬効の高い治療薬の開発が望まれており、「AS-871」の開発が順調に進めば導出が期待される。2つ目は、血液がんを対象に開発を進めている「CB-1763」になる。こちらも欧州で前臨床試験を開始しており、2019年前半のIND申請に向け準備を進めている。特長は、高いキナーゼ選択性を持ち副作用リスクが低いことに加えて、BTK阻害薬の先発品であるイブルチニブに耐性が生じた患者に対しても効果が期待できる点にあり、次世代型BTK阻害薬として今後注目される。イブルチニブは2016年度の全世界の売上高で2,400億円を超える規模となっている。両開発品目ともブロックバスター候補と成り得るだけに、今後の開発動向が注目される。

2. 2017年12月期の業績概要
2017年12月期の連結業績は、売上高が前期比19.0%減の657百万円、営業損失が699百万円(前期は423百万円の損失)となった。創薬事業において前期に計上した契約一時金98百万円がなくなったほか、創薬支援事業も国内売上の減少が響いて前期比7.7%減収となった。費用面では主にAS-871の前臨床試験を開始したことに伴い研究開発費が前期比157百万円増加し、営業損失の拡大要因となった。

3. 2018年12月期の業績見通し
2018年12月期の売上高は前期比81.1%増の1,190百万円、営業損失は679百万円となる見通し。創薬支援事業については米国向けの売上増により前期比14.2%増収を見込んでいる。また、今期はシエラに導出したCDC7キナーゼ阻害薬の臨床試験入りに伴うマイルストーン収入440百万円が見込まれている。増収にもかかわらず営業損失の水準が前期並みにとどまるのは、前臨床試験入りした2つのBTK阻害剤について2019年上期のIND申請に向けたGLP基準に基づく前臨床試験などの研究開発に先行投資を実施するためだ。研究開発費としては前期比343百万円増加の1,014百万円を見込んでいる。

4. 臨床試験費用は新株予約権の行使や借入金で調達
同社では開発パイプラインについて、前期第2相臨床試験まで自社で開発を行い、市場価値を高めた上で製薬企業に導出する方針を示している。もちろん、開発品の価値が評価されてその前段階で導出する可能性もあるが、当面は臨床試験に向けた開発費用などにより年間で10億円規模の研究開発投資が続くものと予想される。創薬支援事業については年間で1〜2億円程度の利益を稼ぐと見られるが、導出に伴う契約一時金やマイルストーン収入が発生しなければ、営業損失が続く可能性が高い。このため、同社では2017年7月に第三者割当の新株予約権を発行し、予約権の行使によって資金調達を進めていく方針とした。すべて行使されれば23億円程度の調達(株式の希薄化率は15.0%)が可能となる(2018年1月末で287百万円を調達)。また、2018年1月には銀行から300百万円の借入を実施している。2017年12月末時点の現預金は1,856百万円となっており、当面の事業活動資金はこれらで賄っていく方針だ。

■Key Points
・キナーゼの働きに着目した創薬事業と創薬支援事業を手掛ける
・リウマチや血液がんを対象疾患としたBTK阻害剤の開発が前進する
・2018年12月期は前臨床試験の加速および自社臨床試験実施の体制を構築するための先行投資を実施

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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