オンコリス Research Memo(6):遺伝子改変アデノウイルスを用いたウイルス療法のプラットフォームを拡充
[18/03/20]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■開発パイプラインの動向
4. 米国バイオベンチャー2社に出資
オンコリスバイオファーマ<4588>は2017年以降、米国のバイオベンチャー2社に出資し、資本業務提携を締結した。1件目は、2017年3月に出資した米ワシントン大学発のウイルス治療ベンチャー企業であるPrecision Virologics Inc.(以下、プレシジョン)となる。具体的には、50万米ドル(議決権比率約14%)を出資し、プレシジョンが開発するすべてのプロジェクトに関して、アジア地域での第一拒否権を獲得した。また、プレシジョンに取締役1名を派遣している。
出資の目的は、世界トップクラスのアデノウイルス改変技術を有するプレシジョンとの提携により、同社が国内外で推進するテロメライシンを始めとする遺伝子改変アデノウイルスを用いたがんのウイルス療法に加え、治療法のない熱帯病ワクチンを重症感染症パイプラインに追加し、将来的なビジネスチャンスの拡大につなげていくことにある。
プレシジョンでは2018年に前臨床試験、2019年に第1相臨床試験の開始を目指している。ジカ熱は主に中南米やアフリカ、南アジアなど84の国と地域で感染が報告されている。大手製薬企業も予防ワクチンを開発しているが、副作用があるほかデング熱にかかりやすくなるといったデメリットが指摘されている。プレシジョンの開発品はそういったデメリットがないため、開発に成功すれば大手製薬企業にライセンスアウトできるものと予想される。同社にとってはアジア地域における販売権に相当するライセンス収入を獲得できることになる。
また、2件目は、2018年2月に出資した米バイオベンチャーのアンリーシュとなる。具体的には、アンリーシュの発行する転換社債3百万米ドル(すべて行使すれば議決権比率は約27%)を引き受けたほか、アンリーシュが保有するプレシジョンの株式(約8.4%)を33万米ドルで取得した。これにより、同社のプレシジョンへの議決権比率は約23%となる。また、アンリ?シュには研究開発状況を把握する目的で、取締役1名を派遣している。
アンリーシュは2015年にアデノウイルス研究の専門家であるワシントン大学医学部教授が設立したベンチャーで、保有する腫瘍溶解ウイルス「UIO-512」は遺伝子改変アデノウイルスで、難治性固形がんを対象として研究開発が進められている。また、同様に「UIO-702」はウイルスファイバーにラクダの抗体を付加することで、ヒト免疫を回避できるように改変されたウイルスで、これまで実現できなかった全身投与による転移性腫瘍への適応の可能性を探索している。同社が現在開発を進める次世代テロメライシンも全身療法を目指しており、開発の方向性は同じであるため、今後、「UIO-702」の可能性も見極めながら次世代テロメライシンの開発戦略を練っていくものと見られる。
今回の2件の出資により、「遺伝子改変アデノウイルスを用いたがんのウイルス療法」のプラットフォームは大きく拡充されたと言える。今後は「がんと重症感染症」を対象としたパイプラインを推進していくことで、将来的なビジネスチャンスの拡大につなげていく考えだ。
主要パイプラインの物質特許を各国で取得済み
5. 各パイプラインの特許取得状況
主要パイプラインであるテロメライシンの特許権は同社と関西TLO(株)が共同保有しており、海外では同社が単独で保有権を持っている。現在、日米欧を含む24ヶ国で特許を取得している。また、テロメスキャンについては同社が特許権を保有しており、日欧含む10ヶ国で特許を取得している。そのほか、テロメスキャンF35について2017年に米国、中国、ロシア、2018年に欧州で特許を取得、センサブジンについて2017年に欧州で特許を取得しており、知財戦略についても着々と進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
4. 米国バイオベンチャー2社に出資
オンコリスバイオファーマ<4588>は2017年以降、米国のバイオベンチャー2社に出資し、資本業務提携を締結した。1件目は、2017年3月に出資した米ワシントン大学発のウイルス治療ベンチャー企業であるPrecision Virologics Inc.(以下、プレシジョン)となる。具体的には、50万米ドル(議決権比率約14%)を出資し、プレシジョンが開発するすべてのプロジェクトに関して、アジア地域での第一拒否権を獲得した。また、プレシジョンに取締役1名を派遣している。
出資の目的は、世界トップクラスのアデノウイルス改変技術を有するプレシジョンとの提携により、同社が国内外で推進するテロメライシンを始めとする遺伝子改変アデノウイルスを用いたがんのウイルス療法に加え、治療法のない熱帯病ワクチンを重症感染症パイプラインに追加し、将来的なビジネスチャンスの拡大につなげていくことにある。
プレシジョンでは2018年に前臨床試験、2019年に第1相臨床試験の開始を目指している。ジカ熱は主に中南米やアフリカ、南アジアなど84の国と地域で感染が報告されている。大手製薬企業も予防ワクチンを開発しているが、副作用があるほかデング熱にかかりやすくなるといったデメリットが指摘されている。プレシジョンの開発品はそういったデメリットがないため、開発に成功すれば大手製薬企業にライセンスアウトできるものと予想される。同社にとってはアジア地域における販売権に相当するライセンス収入を獲得できることになる。
また、2件目は、2018年2月に出資した米バイオベンチャーのアンリーシュとなる。具体的には、アンリーシュの発行する転換社債3百万米ドル(すべて行使すれば議決権比率は約27%)を引き受けたほか、アンリーシュが保有するプレシジョンの株式(約8.4%)を33万米ドルで取得した。これにより、同社のプレシジョンへの議決権比率は約23%となる。また、アンリ?シュには研究開発状況を把握する目的で、取締役1名を派遣している。
アンリーシュは2015年にアデノウイルス研究の専門家であるワシントン大学医学部教授が設立したベンチャーで、保有する腫瘍溶解ウイルス「UIO-512」は遺伝子改変アデノウイルスで、難治性固形がんを対象として研究開発が進められている。また、同様に「UIO-702」はウイルスファイバーにラクダの抗体を付加することで、ヒト免疫を回避できるように改変されたウイルスで、これまで実現できなかった全身投与による転移性腫瘍への適応の可能性を探索している。同社が現在開発を進める次世代テロメライシンも全身療法を目指しており、開発の方向性は同じであるため、今後、「UIO-702」の可能性も見極めながら次世代テロメライシンの開発戦略を練っていくものと見られる。
今回の2件の出資により、「遺伝子改変アデノウイルスを用いたがんのウイルス療法」のプラットフォームは大きく拡充されたと言える。今後は「がんと重症感染症」を対象としたパイプラインを推進していくことで、将来的なビジネスチャンスの拡大につなげていく考えだ。
主要パイプラインの物質特許を各国で取得済み
5. 各パイプラインの特許取得状況
主要パイプラインであるテロメライシンの特許権は同社と関西TLO(株)が共同保有しており、海外では同社が単独で保有権を持っている。現在、日米欧を含む24ヶ国で特許を取得している。また、テロメスキャンについては同社が特許権を保有しており、日欧含む10ヶ国で特許を取得している。そのほか、テロメスキャンF35について2017年に米国、中国、ロシア、2018年に欧州で特許を取得、センサブジンについて2017年に欧州で特許を取得しており、知財戦略についても着々と進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>