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ネクステージ Research Memo(6):事業機会をプロアクティブに創出

注目トピックス 日本株
■事業概要

4. 総合店のビジネスモデル
中古車のビジネスサイクルは、車両販売→用品販売(クロスセル)→保険→整備→点検→車検→買取で完結する。ネクステージ<3186>の従来型店では、車両販売や用品販売、保険までを重点的に行い、整備・車検から買取までのビジネスが手薄であった。総合店及びSUV LANDの大型店は、整備ピットを備え、買取店も併設していることから、ビジネスサイクルをフルにカバーできる。

中型店の中古車販売では、品ぞろえなどで他店に対し大きな優位性を築けないことから、集客力を高める最大の要因は車両の販売価格になる。低価格を実現するため、ローコスト・オペレーションやクロスセル、高効率経営を行ってきた。ただし、顧客の来店を待つ営業では、天候などに左右され、業績達成のためのグリップが弱い。総合店など大型店による顧客との生涯取引を実現するマーケティングは、顧客が来店するための複数の動機付けを用意することでプロアクティブに事業機会を創出することができる。

同社は、顧客の購買アクションにつながる、来店動機、契約動機、販売後の滞留動機、買替動機を高めるための施策を行っている。

(1) 来店動機(集客)
a) 商品・品ぞろえ
集客力を高める来店動機付けは、価格と品質、品ぞろえになる。中古車販売は、仕入が売行きの8割方を決めると言われる。同社は、販売店舗で売りやすい、年式が新しく、走行距離の少ない無事故の高品質商品の仕入に努めている。品ぞろえでは、単に量の確保ではなく、仕入部門が人気三車種の欠品が起きないようにし、売れ筋車種が常時展示されるようにしている。仕入れは本部の専門部署が行うが、地域特性も鑑み、3割程度を店長裁量としている。仕入部は、全体の売れ行きを常時ウォッチし、店長の分も含めた仕入れの巧拙をチェックする徹底した管理を行っている。

b) 店舗の立地
同社は、出店費用を抑えるため、他業種が撤退した店舗を居抜きで借りる。物件所有者も構築物を壊さず、そのまま使用してくれるテナントを歓迎する。同社が居抜きで利用する店舗は、パチンコホールが多い。最近のパチンコホールは、駐車場が1,000〜2,000台と大型化しており、従来の300〜400台規模の店舗は中途半端なサイズとなっている。2018年2月に出玉規制が強化される予定のため、パチンコホールの淘汰が一層進むと予想される。「SUV LAND金沢」は、パチンコホールからの業態転換になる。構築物を壊さずに利用することで出店コストを抑えた。立体駐車場は、悪天候に影響されない展示スペースとして活用されている。複合エンターテインメント施設や大手ディスカウント店にとっては中途半端な大きさのため、店舗開発でバッティングしづらい。

(2) 契約動機
a) 店構え・立地
同社大型店舗は、路面認知がしやすい立地にあり、店舗外観や店舗内も入りやすい綺麗なショールームとなっており、地域一番の在庫量と売れ筋を含む品ぞろえで顧客ニーズに応える。

b) 接客対応
好感が持たれる綺麗な店舗を維持している。丁寧な説明と接客マナーを実現するため、店舗及びエリア単位で社員教育をできるようにマニュアルを整備している。マニュアルは、現場のボトムアップにより継続的に改善するようにしている。

(3) 販売後の滞留動機(既納顧客化)
a) 整備
新車販売は自動車メーカーから制約を受けるが、それ以降のビジネスサイクルでは専門店となるカテゴリーキラーが登場した。自動車用品小売、買取専門店、車検専門店が、チェーン店展開されている。これらの競合先に対し、同社は多段階のプロアクティブな来店動機付けにより、既納顧客化を図っている。車検専門店であれば、2年に1度、車検時期に合わせてダイレクトメールを発送するが、同社はオイル交換、季節のタイヤ交換、自動車保険などで顧客とのコンタクト頻度を上げ、車検契約率の引上げを図っている。車検サービスの認知度を高め、来店を誘発するため、通常なら工賃込みで5,000円前後のオイル交換サービスを500円で提供している。

多店舗展開のバイイングパワーと店舗施設の稼働率向上により、各ビジネスサイクルにおける価格競争力を維持している。販売車両の車検防衛率として7〜8割を目指している。高い車検防衛率が維持できれば、人的及び設備の稼働率が上昇し、全体の収益性改善に寄与することになる。

車検では、地域最安値に挑戦している。車検割引は、最大7,000円(早期予約割:時期に応じて1,000〜3,000円、早期入庫割引、代車なし割、ペア予約割引、平日入庫割引が各1,000円)となる。

b) 顧客サポート体制
車両販売後は、ガソリンなどの給油以外の消費行動となるオイル交換などの整備、点検、車検及び中古車買取のすべての事業機会に関わることを目指している。来店の頻度を増やすことで、同社店舗への顧客ロイヤリティを高める。

(4) 買替動機
a) 買取専門店
買取専門店は、主に既存店舗に併設し、専門部隊を置く。単独店の出店に比べ、初期投資が少なく、減価償却費などの費用も抑えられる。同社から中古車を購入する顧客の35%が買い替えであるため、下取りのビジネスチャンスがある。また、買取店を利用する顧客の65%は次のクルマを決めていないため、売主に対してタブレットや携帯電話などの情報端末で在庫車両の紹介をして販売機会に結び付けるようにしている。買取専門店は、第一義的には販売店舗の安定的仕入網となるが、オークションへの出品でも利益が得られる。買取では、オークションで入手しにくい車種も入ってくる。買取車両のうち、約4割が販売に回る。小売りが前提となる車両であれば、オークション出品を前提とした水準より高い買取価格の設定が可能になる。

最近は、車の保有者が買取店を1店1店回って買取価格を出してもらうのではなく、ネットで一括査定を請求する出張査定が増えている。同社は、買取査定を希望する顧客の指定場所になるべく早く駆け付けるよう心掛けている。

5. 高効率経営
中古車は時間の経過とともに鮮度が落ち価値が下がるが、仕入れから販売までの時間を短縮することで、鮮度の良い商品を魅力的な価格で提供し、収益性を確保することができる。通常、仕入れから店頭に展示するまでのリードタイムは約1週間かかるが、同社は陸送を含むすべての作業工程において時間を削減し2日程度に短縮している。

入庫から販売までの一貫した高速オペレーションが出来上がる前は、在庫回転率を上げるために行った値下げやオークションへの出品で売上総利益が圧迫されるという在庫回転率と売上総利益率がトレードオフの関係にあった。2017年11月期は、体制が整い、両立に成功した。2013年11月期のたな卸資産回転日数は77日であったが、2017年11月期は56日に短縮された。一方、売上総利益率は2013年11月期の15.9%からその後落ち込んだ時期もあったが、2017年11月期は16.0%へ回復した。たな卸資産回転日数は、最終的には40日を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)


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