シノケンG Research Memo(3):不動産販売事業をコア事業に、M&Aを活用しながら周辺事業領域を拡大中(2)
[18/03/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■シノケングループ<8909>の会社概要
(3) ゼネコン事業
2014年2月に完全子会社化した(株)小川建設の事業となる。小川建設は明治42年創業の建築系の老舗ゼネコンで、関東圏を中心にマンションやオフィスビル、教育施設、病院、介護施設などの建築請負を幅広く行っている。売上高の約30%は同社グループのマンション受注で占められ、大手デベロッパーからの受注も請け負う中堅ゼネコンとなる。
小川建設を買収した主目的は、マンション施工の内製化にある。東日本大震災以降、東京オリンピック開催を控え建設技能労働者不足が深刻化し、ゼネコンが受注を渋る事態等を想定し、安定したマンション供給を行うためにグループ内に施工能力を確保することが狙いとなっている。ただ、コスト競争力を持たせるため約3割は外部のゼネコンに発注しており、内製化率は7割程度にとどめる方針としている。
(4) エネルギー事業
エネルギー事業の中心となるのはLPガスの小売販売で、そのほとんどは同社グループが販売したアパート、マンションの入居者に対するものとなる。担当する事業会社は(株)エスケーエナジー(福岡)、(株)エスケーエナジー名古屋、(株)エスケーエナジー東京、(株)エスケーエナジー仙台、(株)エスケーエナジー大阪の5社となり、各エリアで事業展開している。2017年12月期末のLPガス供給世帯数は26,849世帯となっているが、同社が販売するアパートではLPガスを使用するため、今後もアパートの累積販売数に連動して契約世帯数も増加していくものと予想される。
また、2017年4月より一般家庭向け電力の小売販売「シノケンでんき」も開始している。当面は同社が販売・管理を行うアパート、マンションの入居者約3万世帯を対象に順次切り替えを促し、3年内に5万世帯以上へ販売していくことを目標としている。2017年12月期末の契約世帯数は6,000世帯を超えており、順調に滑り出している。LPガスとのセット販売によりコストメリットを打ち出すほか、支払い手続きの簡素化なども訴求していく。
(5) 介護事業
2012年12月に(株)シノケンウェルネスを設立し、介護事業に進出している。2015年2月にはグループホーム施設運営及び介護サービスを展開する(株)フレンドを、2016年1月には訪問介護を東京、福岡で展開する(株)アップルケアをそれぞれ(株)シノケンウェルネスの完全子会社とした。
介護事業の統括会社となっている(株)シノケンウェルネスでは、既存の賃貸マンションやアパートの空室をリニューアルし、24時間介護サービスの付いた高齢者向け賃貸住宅とする「寿らいふプラン」というサービスを展開している。有料老人ホームよりも料金が格段にリーズナブルで、生活の自由度も高く、同サービスは2013年度にビジネスモデルのグッドデザイン賞も受賞している。また、東京と福岡で3棟のサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を所有、運営している。3棟合計で302戸(モデルルーム等含む)、入居率は2017年12月期末時点で97.6%(申込みベースでは99.6%)と高稼働率となっている。一方、フレンドでは東京、大阪、福岡にてグループホーム7施設(うち2施設で小規模多機能型居宅介護)で合計144居室を主として所有し、運営を行っている。2017年12月期末の入居率は97.9%だが、2018年3月時点では100%に達している。
このように同社グループは、要介護度に応じて幅広いサービスをワンストップで提供できるグループ体制を整備しており、今後、収益機会が広がっていくことが期待される。
(6) その他
その他には海外事業等が含まれる。海外は中国、シンガポール、インドネシアの3ヶ国で展開しているが、このうち中国とシンガポールは不動産賃貸・売買仲介事業を若干行っている程度で業績への影響は軽微となっている。一方、インドネシアについては小川建設による建設関連事業のほか、2018年3月に連結子会社化した地場ゼネコンのムスティカの事業が加わることになる。ムスティカは3年前より小川建設の現地駐在員事務所と技術アドバイザリー契約を締結し、建設技術及び工事品質の向上に取り組んできた会社で、その効果もあって高速道路工事や大規模発電所工事の受注を獲得するなどここ数年で飛躍的な成長を遂げている。今回、協業のシナジー効果を確認できたことや、インドネシアでの不動産開発事業を本格的に展開していくことから子会社化を決定した。
なお、ITを活用した新規事業として2017年7月に資本業務提携した(株)chaintopeとブロックチェーン技術を活用した革新的なサービスの共同開発を進めている。スマートフォンのアプリを通じてスマートロックや電子決済、家電製品の遠隔コントロール等、利便性の良いサービスを開発、提供していくことで、サービスの差別化やアパート等の入居率の維持・向上につなげていく戦略となっている。
3. ビジネスモデルと強み
(1) 土地を持たないサラリーマン・公務員層をターゲットとした投資用アパート経営のパイオニア
アパート経営と言うと地主が相続税対策や遊休資産の活用のために行うものというイメージが強く、実際、大手ハウスメーカーや大東建託(株)<1878>などでは地主に対し、そのような提案をし、アパート建築を請負っている。こうしたなか、同社では土地を持たず自己資金も少ない普通の会社員、公務員層を主要ターゲットに、老後に向けた資産形成の一手段として土地付きアパートを提案するという業界の常識を覆す独自のビジネスモデルを展開してきた。地主向けのアパート建築請負も地主から特に要望があった場合などに限り行っているが、年に数棟程度に過ぎない。経営資源の効率活用の観点から、同社から地主に積極的に営業をかけることはしていない。
(2) 約27年のトラックレコードを背景に競争優位性を維持している
土地から購入して果たしてアパート経営が成立するのかという疑念が持たれるところだが、創業来約27年にわたり、同社グループが販売してきた4,000棟以上のアパートで経営破綻を起こしたことは一例もない。高い入居率を維持してきたこと、アパートローンは変動金利だが、創業来、総じて低金利が続いてきたことなどによる。高い入居率の維持を可能としているのは、1)大都市圏の市街地で駅から10分圏内で賃貸需要が確実に見込めるエリアに限って物件供給をしてきたこと、2)若年層に訴求するデザイン性に優れた物件を供給してきたこと、3)狭小地や変形地などを生かすプラニング力に優れ(木造はプレハブに比べ土地の形状に合わせて設計しやすい)、比較的用地を安く取得してきたこと、4)大手ハウスメーカーに比べ建築費が安いため競争力の高い家賃設定が可能なこと、などによる。
居住用の住宅ローンと異なり、アパートローンについては、借り手の信用力だけでなく販売会社の実績を金融機関は重視する傾向にある。こうした約27年のトラックレコードを背景に、2014年から年収が500万円程度あれば、頭金ゼロ(全額ローン)、融資期間35年、金利2%程度という破格の好条件でアパートローンの利用が可能になっている。
土地付きアパート販売の競合会社としては、2016年12月に東証1部に上場した(株)インベスターズクラウド<1435>や、比較的大きな未上場企業、同社グループからスピンアウトした社員が起業した小規模な会社など増えてきているが、フロントランナーとしての実績を背景にしたアパートローンの融資条件の優位性、狭小地や変形地におけるプラニング力などの点において競争優位性は高いと言える。
また、同社では一旦、用地を自ら取得するのに対し、(株)インベスターズクラウドは自らのB/Sを通さず仲介の形で投資家に土地を紹介している。B/Sを通すビジネスモデルの方が、当然資金負担は重くなるが、1)迅速な用地仕入れができる、2)用地を分筆して複数棟開発するなど柔軟な企画が可能、3)顧客投資家がアパートローンの審査を否認されたような場合、その後の対応が容易、などの利点がある。
(3) コンプライアンス重視のプル型の営業スタイル
投資用マンションの営業スタイルは、業界では電話営業が一般的となっているが、電話営業は消費者とのトラブルを引き起こしやすいという側面がある。また、地主向けのアパート建築の営業スタイルは、訪問営業(飛び込み営業)が基本であり、これも過去、度々メディア等で批判にさらされてきた。
これらに対して同社の営業スタイルは、創業時からセミナーの開催やインターネット広告、自社Webサイトを中心としたプル型営業を貫いてきた。特に、2016年からはテレビCMで俳優の佐々木蔵之介(ささきくらのすけ)氏を起用するなど、メディア戦略を強化したことで認知度も一段と向上し、現在は毎月安定して約3千件の反響を獲得、その中から顧客獲得を進めている。また、同社からアパート、マンションを購入した顧客の満足度も高く、販売物件の約30%が既存顧客のリピート・紹介で占められていることも特徴で、営業面でのコンプライアンス体制がしっかりと構築されていることの裏返しとも言える。
(4) フロービジネスでの販売に連れて自動的にストックビジネスが積み上がる
ストックビジネスのうち、不動産管理関連事業とエネルギー事業は、不動産販売事業で販売するアパートやマンションのオーナーまたは入居者が契約者となるため、販売に連動して自動的に積み上がる仕組みとなっている。フロービジネスの急成長により、これらストックビジネスの伸びが目立たないが、収益は年率2ケタ増収増益ペースが続いている。今後、市場環境が悪化しフロービジネスの収益が落ち込んだとしても、ストックビジネスについては成長が続く見通しで業績の下支え役になるものとして期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MW>
(3) ゼネコン事業
2014年2月に完全子会社化した(株)小川建設の事業となる。小川建設は明治42年創業の建築系の老舗ゼネコンで、関東圏を中心にマンションやオフィスビル、教育施設、病院、介護施設などの建築請負を幅広く行っている。売上高の約30%は同社グループのマンション受注で占められ、大手デベロッパーからの受注も請け負う中堅ゼネコンとなる。
小川建設を買収した主目的は、マンション施工の内製化にある。東日本大震災以降、東京オリンピック開催を控え建設技能労働者不足が深刻化し、ゼネコンが受注を渋る事態等を想定し、安定したマンション供給を行うためにグループ内に施工能力を確保することが狙いとなっている。ただ、コスト競争力を持たせるため約3割は外部のゼネコンに発注しており、内製化率は7割程度にとどめる方針としている。
(4) エネルギー事業
エネルギー事業の中心となるのはLPガスの小売販売で、そのほとんどは同社グループが販売したアパート、マンションの入居者に対するものとなる。担当する事業会社は(株)エスケーエナジー(福岡)、(株)エスケーエナジー名古屋、(株)エスケーエナジー東京、(株)エスケーエナジー仙台、(株)エスケーエナジー大阪の5社となり、各エリアで事業展開している。2017年12月期末のLPガス供給世帯数は26,849世帯となっているが、同社が販売するアパートではLPガスを使用するため、今後もアパートの累積販売数に連動して契約世帯数も増加していくものと予想される。
また、2017年4月より一般家庭向け電力の小売販売「シノケンでんき」も開始している。当面は同社が販売・管理を行うアパート、マンションの入居者約3万世帯を対象に順次切り替えを促し、3年内に5万世帯以上へ販売していくことを目標としている。2017年12月期末の契約世帯数は6,000世帯を超えており、順調に滑り出している。LPガスとのセット販売によりコストメリットを打ち出すほか、支払い手続きの簡素化なども訴求していく。
(5) 介護事業
2012年12月に(株)シノケンウェルネスを設立し、介護事業に進出している。2015年2月にはグループホーム施設運営及び介護サービスを展開する(株)フレンドを、2016年1月には訪問介護を東京、福岡で展開する(株)アップルケアをそれぞれ(株)シノケンウェルネスの完全子会社とした。
介護事業の統括会社となっている(株)シノケンウェルネスでは、既存の賃貸マンションやアパートの空室をリニューアルし、24時間介護サービスの付いた高齢者向け賃貸住宅とする「寿らいふプラン」というサービスを展開している。有料老人ホームよりも料金が格段にリーズナブルで、生活の自由度も高く、同サービスは2013年度にビジネスモデルのグッドデザイン賞も受賞している。また、東京と福岡で3棟のサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を所有、運営している。3棟合計で302戸(モデルルーム等含む)、入居率は2017年12月期末時点で97.6%(申込みベースでは99.6%)と高稼働率となっている。一方、フレンドでは東京、大阪、福岡にてグループホーム7施設(うち2施設で小規模多機能型居宅介護)で合計144居室を主として所有し、運営を行っている。2017年12月期末の入居率は97.9%だが、2018年3月時点では100%に達している。
このように同社グループは、要介護度に応じて幅広いサービスをワンストップで提供できるグループ体制を整備しており、今後、収益機会が広がっていくことが期待される。
(6) その他
その他には海外事業等が含まれる。海外は中国、シンガポール、インドネシアの3ヶ国で展開しているが、このうち中国とシンガポールは不動産賃貸・売買仲介事業を若干行っている程度で業績への影響は軽微となっている。一方、インドネシアについては小川建設による建設関連事業のほか、2018年3月に連結子会社化した地場ゼネコンのムスティカの事業が加わることになる。ムスティカは3年前より小川建設の現地駐在員事務所と技術アドバイザリー契約を締結し、建設技術及び工事品質の向上に取り組んできた会社で、その効果もあって高速道路工事や大規模発電所工事の受注を獲得するなどここ数年で飛躍的な成長を遂げている。今回、協業のシナジー効果を確認できたことや、インドネシアでの不動産開発事業を本格的に展開していくことから子会社化を決定した。
なお、ITを活用した新規事業として2017年7月に資本業務提携した(株)chaintopeとブロックチェーン技術を活用した革新的なサービスの共同開発を進めている。スマートフォンのアプリを通じてスマートロックや電子決済、家電製品の遠隔コントロール等、利便性の良いサービスを開発、提供していくことで、サービスの差別化やアパート等の入居率の維持・向上につなげていく戦略となっている。
3. ビジネスモデルと強み
(1) 土地を持たないサラリーマン・公務員層をターゲットとした投資用アパート経営のパイオニア
アパート経営と言うと地主が相続税対策や遊休資産の活用のために行うものというイメージが強く、実際、大手ハウスメーカーや大東建託(株)<1878>などでは地主に対し、そのような提案をし、アパート建築を請負っている。こうしたなか、同社では土地を持たず自己資金も少ない普通の会社員、公務員層を主要ターゲットに、老後に向けた資産形成の一手段として土地付きアパートを提案するという業界の常識を覆す独自のビジネスモデルを展開してきた。地主向けのアパート建築請負も地主から特に要望があった場合などに限り行っているが、年に数棟程度に過ぎない。経営資源の効率活用の観点から、同社から地主に積極的に営業をかけることはしていない。
(2) 約27年のトラックレコードを背景に競争優位性を維持している
土地から購入して果たしてアパート経営が成立するのかという疑念が持たれるところだが、創業来約27年にわたり、同社グループが販売してきた4,000棟以上のアパートで経営破綻を起こしたことは一例もない。高い入居率を維持してきたこと、アパートローンは変動金利だが、創業来、総じて低金利が続いてきたことなどによる。高い入居率の維持を可能としているのは、1)大都市圏の市街地で駅から10分圏内で賃貸需要が確実に見込めるエリアに限って物件供給をしてきたこと、2)若年層に訴求するデザイン性に優れた物件を供給してきたこと、3)狭小地や変形地などを生かすプラニング力に優れ(木造はプレハブに比べ土地の形状に合わせて設計しやすい)、比較的用地を安く取得してきたこと、4)大手ハウスメーカーに比べ建築費が安いため競争力の高い家賃設定が可能なこと、などによる。
居住用の住宅ローンと異なり、アパートローンについては、借り手の信用力だけでなく販売会社の実績を金融機関は重視する傾向にある。こうした約27年のトラックレコードを背景に、2014年から年収が500万円程度あれば、頭金ゼロ(全額ローン)、融資期間35年、金利2%程度という破格の好条件でアパートローンの利用が可能になっている。
土地付きアパート販売の競合会社としては、2016年12月に東証1部に上場した(株)インベスターズクラウド<1435>や、比較的大きな未上場企業、同社グループからスピンアウトした社員が起業した小規模な会社など増えてきているが、フロントランナーとしての実績を背景にしたアパートローンの融資条件の優位性、狭小地や変形地におけるプラニング力などの点において競争優位性は高いと言える。
また、同社では一旦、用地を自ら取得するのに対し、(株)インベスターズクラウドは自らのB/Sを通さず仲介の形で投資家に土地を紹介している。B/Sを通すビジネスモデルの方が、当然資金負担は重くなるが、1)迅速な用地仕入れができる、2)用地を分筆して複数棟開発するなど柔軟な企画が可能、3)顧客投資家がアパートローンの審査を否認されたような場合、その後の対応が容易、などの利点がある。
(3) コンプライアンス重視のプル型の営業スタイル
投資用マンションの営業スタイルは、業界では電話営業が一般的となっているが、電話営業は消費者とのトラブルを引き起こしやすいという側面がある。また、地主向けのアパート建築の営業スタイルは、訪問営業(飛び込み営業)が基本であり、これも過去、度々メディア等で批判にさらされてきた。
これらに対して同社の営業スタイルは、創業時からセミナーの開催やインターネット広告、自社Webサイトを中心としたプル型営業を貫いてきた。特に、2016年からはテレビCMで俳優の佐々木蔵之介(ささきくらのすけ)氏を起用するなど、メディア戦略を強化したことで認知度も一段と向上し、現在は毎月安定して約3千件の反響を獲得、その中から顧客獲得を進めている。また、同社からアパート、マンションを購入した顧客の満足度も高く、販売物件の約30%が既存顧客のリピート・紹介で占められていることも特徴で、営業面でのコンプライアンス体制がしっかりと構築されていることの裏返しとも言える。
(4) フロービジネスでの販売に連れて自動的にストックビジネスが積み上がる
ストックビジネスのうち、不動産管理関連事業とエネルギー事業は、不動産販売事業で販売するアパートやマンションのオーナーまたは入居者が契約者となるため、販売に連動して自動的に積み上がる仕組みとなっている。フロービジネスの急成長により、これらストックビジネスの伸びが目立たないが、収益は年率2ケタ増収増益ペースが続いている。今後、市場環境が悪化しフロービジネスの収益が落ち込んだとしても、ストックビジネスについては成長が続く見通しで業績の下支え役になるものとして期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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