RIZAPーG Research Memo(7):スポーツとテクノロジーの融合を掲げて、ゴルフレッスン分野でソニーと提携
[18/03/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略の進捗状況
2. “SPORTS”への展開
スポーツ産業の市場規模については、2015年に5.5兆円だった市場を、政府主導により2020年に10兆円、2025年に15兆円に拡大させようという目標が日本政府から示されている(2016年6月2日発表『日本再興戦略2016』)。市場が政府目標どおりに拡大するかはともかく、スポーツ市場にとって“政府主導”という追い風が吹くことは確実であり、RIZAPグループ<2928>はそのチャンスを逃すことなく、スポーツ関連事業を急拡大させる狙いだ。
同社は既に、RIZAPボディメイク事業やRIZAP GOLF、スポーツアパレルなどの事業を展開しており、スポーツ産業市場とは密接な関係を有しているが、今第3四半期おいてもM&Aを含めいくつか新たな進捗があった。
(1) ソニーとの提携
同社は2018年2月8日、ソニー<6758>が提供する『スマートゴルフレッスンTM』をRIZAP GOLFに導入し、新サービス『RIZAP GOLF LESSON System』を4月1日より開始することを発表した。これはソニーの「スマートゴルフセンサー」をゴルフクラブに装着し、そこで得られたデータをもとに、RIZAP GOLFと組み合わせて、顧客のスコアアップ実現を目指す取り組みだ。
ソニーとの今回の提携は、同社が目指す方向性の1つである「Sports×Technology」(スポーツとテクノロジーの融合)の具体例の1つと言える。
(2) スポーツ関連企業の子会社化
同社は2017年12月28日付で、首都圏においてプロスポーツショップを展開する(株)ビーアンドディー(B&D)を子会社化した。B&Dは首都圏27店舗とeコマースを通じて、サッカー、ランニングを中心に、入門者からアスリート・上級者までカバーするプロショップだ。直近の2017年8月期の業績は売上高7,262百万円、営業損失292百万円だった。
同社はまた同日付で、(株)D&M(ディーエム)を子会社化した。D&Mはスポーツ用のサポーターの製造販売を手掛ける企業で、「D&M」ブランドでサポーター、テーピング、アイシング、フィットネス用品などを展開している。
3. “FOOD”への展開
食の領域もRIZAPグループ<2928>にとっては縁の深い分野と言える。同社の主力事業であるボディメイク事業の根幹はジムワークと食事管理の2つから成っているためだ。同社はこれまで、ボディメイクの重要な要素として会員の食事を管理してきたほか、食と運動についての大学との共同研究、低糖質フードの開発・販売、レシピ本の出版、RIZAP COOKの展開などを行ってきている。
今般、同社はより直接的に食の領域に踏み出す施策を複数発表した。これらは、膨大な食市場を攻略するための重要な布石と言えるものだ。
(1) デリバリー弁当への進出
同社は2018年1月30日付で、デリバリー弁当を手掛ける(株)ご馳走屋惣兵衛を子会社化した。ご馳走屋惣兵衛は流通チャネル、食品工場、宅配ノウハウを有し、同社の低糖質フードに関する知見などと補完関係を構築できることが決め手となったとみられる。
デリバリー弁当が含まれるいわゆる中食市場は、食市場全体(67.2兆円)のうち9.5兆円を占めている。市場規模では内食市場(32.5兆円)、外食市場(25.1兆円)に比較して小さいが成長率は3市場でも最も高い(2006年を100%として2015年は122.6%。数字の出典はすべて(一社)日本惣菜協会「2017年度版 惣菜白書」)。市場規模の大きさもさることながら、“弁当”、“デリバリー”というサービス形態は、今後、社会的ニーズが一段と高まる可能性があると弊社ではみている。
(2) タイガー魔法瓶との事業提携
同社は2018年14日、タイガー魔法瓶(株)が開発した米粒状加工食品「とらひめ」及び専用調理器を、同社の「RIZAP低糖質米プログラム(仮称)」を通じて販売することで、タイガー魔法瓶と合意したことを発表した。これは両社の事業提携における第1弾となる。
「とらひめ」はタピオカやこんにゃくなどを原料とする米粒状加工食品で、白米に比べて糖質が47%オフというのが特徴だ。調理には専用調理器が必要となるが、「とらひめ」と専用調理器をセットで、RIZAPの各店舗及びRIZAPグループの販売チャネルで、3月下旬から発売する計画だ(ほかの販売チャネルはタイガー魔法瓶の公式通販サイトのみ)。
弊社では、同社のビジネスモデルと食の領域は非常に関連性・親和性が高いと考えており、食市場への本格進出については、極めて興味深く見守っていきたいと考えている。今回の施策の中では、デリバリー弁当企業の買収に注目している。今回買収したご馳走屋惣兵衛は、企業規模は小さいが、デリバリー弁当についてのインフラ一式とノウハウを有しているため、同社にとっては得るものは大きいとみている。同社は「ビジネスパーソンのヘルシーランチ改革」プロジェクトを2018年春から開始予定であるが、ここでも弁当に関するノウハウが必要となる。また、同社がかねてより取り組んでいるシニア市場においても食は重要な問題であり、大きな潜在力を有している。今回の買収や事業提携は、まだ序章の段階であり、今後どのような形で展開を深耕させていくのか、見守りたい。
4. 新たなM&A:ワンダーコーポレーションとの戦略的資本業務提携
RIZAPグループ<2928>は2018年2月19日、東証JASDAQに上場するワンダーコーポレーション<3344>(以下、ワンダー)と戦略的資本業務提携契約を締結し、ワンダーの株式を公開買付(TOB)により取得すること及び第三者割当増資を引き受けることを発表した。一連の株式取得を通じて、ワンダーは2018年3月29日をもって同社の連結子会社となる予定だ。
TOBについては1株980円で、ワンダーの筆頭株主である(株)カスミとの間で、その所有株式(約240万株、所有割合43.11%)を取得する契約(応募契約)を締結済みだ。買付予定株数の上限を設定していないが、これまでの実績を踏まえて、RIZAPグループの傘下でワンダーが業績を拡大させることを期待する株主が多いと推測されることから、一般株主による応募は限定的と弊社ではみている。なお、応募契約にかかる約240万株(43.11%)の取得費用は2,356百万円となる。
第三者割当増資は、TOBの成立を条件に実施されるもので、同社はワンダーの株式を1株835円で198万株引き受けることになる。TOB応募契約にかかる約240万株と合わせて同社は約438万株を取得し、その所有割合は58.02%となる見通しだ。第三者割当増資における同社の払込金額は1,653百万円となり、TOBの買付金額との合計額は約40億円となる。
ワンダーとの資本業務提携について、弊社では、多様なシナジー効果シナリオが想定でき、非常にポテンシャルの大きいディールだと評価している。リリース資料の中でもその一端が紹介されているが、代表的な1つは、ワンダーが有する300店舗(2018年1月末時点)のネットワークを活用して、同社の中核事業であるRIZAP関連事業の展開スピードを一気に加速させる事業戦略だ。具体的に、同社はワンダーのWonderGOO店舗内に、来期にRIZAP関連事業を20店出店する計画を表明している。今期のRIZAP関連事業の売上高は320億円前後と見られるが、来期には前期比50%増とすることを同社は計画している。ワンダーはまた、WonderREX事業(リユース事業)を展開しているが、ここでも同社のボディメイク事業やアパレル事業などを通じてシナジーの追求が可能になると期待される。
ワンダーの側から見た場合には、商品力強化(PB商品の導入など)や新たな店舗戦略(ハイブリッド店舗の展開など)などを通じて収益成長を実現することが期待される。また、RIZAPグループが事業基盤固めとして水面下で取り組む「グローバルSPA」の枠組みを活用することで、在庫管理や物流などのコストを削減でき、収益性の改善も可能になるとみられる。
業績面では、2019年3月期の同社の業績が高成長を続ける見通しとなった。両社の2017年度の売上高見通しを単純合算すると2,200億円を大きく超える。利益面では、ワンダー社の2018年2月期の営業利益予想値が300百万円で、インパクトが小さいように見えるが、前述のように、即効性のあるシナジー追求の施策が複数存在しているため、直接・間接を合わせた利益面の貢献度は想像以上に拡大する可能性がある。なお、ワンダーの業績は住生活ライフスタイルセグメントに組み込まれる見通しだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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2. “SPORTS”への展開
スポーツ産業の市場規模については、2015年に5.5兆円だった市場を、政府主導により2020年に10兆円、2025年に15兆円に拡大させようという目標が日本政府から示されている(2016年6月2日発表『日本再興戦略2016』)。市場が政府目標どおりに拡大するかはともかく、スポーツ市場にとって“政府主導”という追い風が吹くことは確実であり、RIZAPグループ<2928>はそのチャンスを逃すことなく、スポーツ関連事業を急拡大させる狙いだ。
同社は既に、RIZAPボディメイク事業やRIZAP GOLF、スポーツアパレルなどの事業を展開しており、スポーツ産業市場とは密接な関係を有しているが、今第3四半期おいてもM&Aを含めいくつか新たな進捗があった。
(1) ソニーとの提携
同社は2018年2月8日、ソニー<6758>が提供する『スマートゴルフレッスンTM』をRIZAP GOLFに導入し、新サービス『RIZAP GOLF LESSON System』を4月1日より開始することを発表した。これはソニーの「スマートゴルフセンサー」をゴルフクラブに装着し、そこで得られたデータをもとに、RIZAP GOLFと組み合わせて、顧客のスコアアップ実現を目指す取り組みだ。
ソニーとの今回の提携は、同社が目指す方向性の1つである「Sports×Technology」(スポーツとテクノロジーの融合)の具体例の1つと言える。
(2) スポーツ関連企業の子会社化
同社は2017年12月28日付で、首都圏においてプロスポーツショップを展開する(株)ビーアンドディー(B&D)を子会社化した。B&Dは首都圏27店舗とeコマースを通じて、サッカー、ランニングを中心に、入門者からアスリート・上級者までカバーするプロショップだ。直近の2017年8月期の業績は売上高7,262百万円、営業損失292百万円だった。
同社はまた同日付で、(株)D&M(ディーエム)を子会社化した。D&Mはスポーツ用のサポーターの製造販売を手掛ける企業で、「D&M」ブランドでサポーター、テーピング、アイシング、フィットネス用品などを展開している。
3. “FOOD”への展開
食の領域もRIZAPグループ<2928>にとっては縁の深い分野と言える。同社の主力事業であるボディメイク事業の根幹はジムワークと食事管理の2つから成っているためだ。同社はこれまで、ボディメイクの重要な要素として会員の食事を管理してきたほか、食と運動についての大学との共同研究、低糖質フードの開発・販売、レシピ本の出版、RIZAP COOKの展開などを行ってきている。
今般、同社はより直接的に食の領域に踏み出す施策を複数発表した。これらは、膨大な食市場を攻略するための重要な布石と言えるものだ。
(1) デリバリー弁当への進出
同社は2018年1月30日付で、デリバリー弁当を手掛ける(株)ご馳走屋惣兵衛を子会社化した。ご馳走屋惣兵衛は流通チャネル、食品工場、宅配ノウハウを有し、同社の低糖質フードに関する知見などと補完関係を構築できることが決め手となったとみられる。
デリバリー弁当が含まれるいわゆる中食市場は、食市場全体(67.2兆円)のうち9.5兆円を占めている。市場規模では内食市場(32.5兆円)、外食市場(25.1兆円)に比較して小さいが成長率は3市場でも最も高い(2006年を100%として2015年は122.6%。数字の出典はすべて(一社)日本惣菜協会「2017年度版 惣菜白書」)。市場規模の大きさもさることながら、“弁当”、“デリバリー”というサービス形態は、今後、社会的ニーズが一段と高まる可能性があると弊社ではみている。
(2) タイガー魔法瓶との事業提携
同社は2018年14日、タイガー魔法瓶(株)が開発した米粒状加工食品「とらひめ」及び専用調理器を、同社の「RIZAP低糖質米プログラム(仮称)」を通じて販売することで、タイガー魔法瓶と合意したことを発表した。これは両社の事業提携における第1弾となる。
「とらひめ」はタピオカやこんにゃくなどを原料とする米粒状加工食品で、白米に比べて糖質が47%オフというのが特徴だ。調理には専用調理器が必要となるが、「とらひめ」と専用調理器をセットで、RIZAPの各店舗及びRIZAPグループの販売チャネルで、3月下旬から発売する計画だ(ほかの販売チャネルはタイガー魔法瓶の公式通販サイトのみ)。
弊社では、同社のビジネスモデルと食の領域は非常に関連性・親和性が高いと考えており、食市場への本格進出については、極めて興味深く見守っていきたいと考えている。今回の施策の中では、デリバリー弁当企業の買収に注目している。今回買収したご馳走屋惣兵衛は、企業規模は小さいが、デリバリー弁当についてのインフラ一式とノウハウを有しているため、同社にとっては得るものは大きいとみている。同社は「ビジネスパーソンのヘルシーランチ改革」プロジェクトを2018年春から開始予定であるが、ここでも弁当に関するノウハウが必要となる。また、同社がかねてより取り組んでいるシニア市場においても食は重要な問題であり、大きな潜在力を有している。今回の買収や事業提携は、まだ序章の段階であり、今後どのような形で展開を深耕させていくのか、見守りたい。
4. 新たなM&A:ワンダーコーポレーションとの戦略的資本業務提携
RIZAPグループ<2928>は2018年2月19日、東証JASDAQに上場するワンダーコーポレーション<3344>(以下、ワンダー)と戦略的資本業務提携契約を締結し、ワンダーの株式を公開買付(TOB)により取得すること及び第三者割当増資を引き受けることを発表した。一連の株式取得を通じて、ワンダーは2018年3月29日をもって同社の連結子会社となる予定だ。
TOBについては1株980円で、ワンダーの筆頭株主である(株)カスミとの間で、その所有株式(約240万株、所有割合43.11%)を取得する契約(応募契約)を締結済みだ。買付予定株数の上限を設定していないが、これまでの実績を踏まえて、RIZAPグループの傘下でワンダーが業績を拡大させることを期待する株主が多いと推測されることから、一般株主による応募は限定的と弊社ではみている。なお、応募契約にかかる約240万株(43.11%)の取得費用は2,356百万円となる。
第三者割当増資は、TOBの成立を条件に実施されるもので、同社はワンダーの株式を1株835円で198万株引き受けることになる。TOB応募契約にかかる約240万株と合わせて同社は約438万株を取得し、その所有割合は58.02%となる見通しだ。第三者割当増資における同社の払込金額は1,653百万円となり、TOBの買付金額との合計額は約40億円となる。
ワンダーとの資本業務提携について、弊社では、多様なシナジー効果シナリオが想定でき、非常にポテンシャルの大きいディールだと評価している。リリース資料の中でもその一端が紹介されているが、代表的な1つは、ワンダーが有する300店舗(2018年1月末時点)のネットワークを活用して、同社の中核事業であるRIZAP関連事業の展開スピードを一気に加速させる事業戦略だ。具体的に、同社はワンダーのWonderGOO店舗内に、来期にRIZAP関連事業を20店出店する計画を表明している。今期のRIZAP関連事業の売上高は320億円前後と見られるが、来期には前期比50%増とすることを同社は計画している。ワンダーはまた、WonderREX事業(リユース事業)を展開しているが、ここでも同社のボディメイク事業やアパレル事業などを通じてシナジーの追求が可能になると期待される。
ワンダーの側から見た場合には、商品力強化(PB商品の導入など)や新たな店舗戦略(ハイブリッド店舗の展開など)などを通じて収益成長を実現することが期待される。また、RIZAPグループが事業基盤固めとして水面下で取り組む「グローバルSPA」の枠組みを活用することで、在庫管理や物流などのコストを削減でき、収益性の改善も可能になるとみられる。
業績面では、2019年3月期の同社の業績が高成長を続ける見通しとなった。両社の2017年度の売上高見通しを単純合算すると2,200億円を大きく超える。利益面では、ワンダー社の2018年2月期の営業利益予想値が300百万円で、インパクトが小さいように見えるが、前述のように、即効性のあるシナジー追求の施策が複数存在しているため、直接・間接を合わせた利益面の貢献度は想像以上に拡大する可能性がある。なお、ワンダーの業績は住生活ライフスタイルセグメントに組み込まれる見通しだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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