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エニグモ Research Memo(3):新マーケティングミックスにより第4四半期売上高は過去最高を記録

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2018年1月期決算の概要
エニグモ<3665>の2018年1月期の業績は、総取扱高が前期比11.5%増の37,109百万円に拡大し、売上高も同8.3%増の4,492百万円と伸長した一方、損益面では営業利益が同11.0%減の1,574百万円、経常利益が同11.7%減の1,556百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同28.6%減の816百万円と先行投資の影響等により減益となった。ただ、2017年9月13日付の修正予想に対しては、売上高、各利益ともに上回る着地となっている。

主力の「BUYMA」において、会員数及びアクティブ会員数の伸びが増収に寄与した。会員数は498万人(前期末比24.8%増)、アクティブ会員数は96万人(前期末比9.5%増)に到達している。また、ARPUについても、重点施策として取り組んできた「1人当たりの平均購入件数」の伸長により前期比微増(1.8%増)ながらプラスに転じた。

ただ、総取扱高や売上高の伸びが2017年1月期までの高い水準※1と比べて緩やかなのは、アクティブ率の高い新規会員獲得が前期水準を下回ったことによりアクティブ率が低下したこと※2が理由である。特に、第3四半期までの苦戦が大きく影響したと言える。ただ、第4四半期だけを見ると新規会員獲得は前年同期を大きく上回っており、2017年10月より実施してきた新マーケティングミックスによる業績の伸びが顕著となっている。

※1 2017年1月期の総取扱高の伸び率は前期比36.2%増、売上高の伸び率は同45.1%増であった。
※2 会員数の伸びが前期末比24.8%増(2017年1月期の伸びは同33.1%増)と前期を下回ったことで、アクティブ率は前期比12%減に低下した。その結果、アクティブ会員数の伸びは前期末比9.5%増(2017年1月期の伸びは同39.6%増)にとどまった。


一方、損益面で営業減益となったのは、1)インフラ・決済基盤の強化に伴う人件費・システム関連費の拡大や、2)新マーケティングミックスに係る広告費の増加など先行投資の影響に加えて、3)子会社(メディア事業)の損益悪化、4)本社移転に伴う一時費用の発生等によるものであるが、すべて修正予想の範囲内である。営業利益率も35.1%(2017年1月期は42.6%)に低下したものの、依然高い水準を維持していると言える。また、最終利益(当期純利益)の減益幅が大きいのは、メディア事業の低迷を受けて、その運営子会社であるロケットベンチャーの株式に対する減損損失(のれん額426百万円の減損損失)を計上したことが理由である。なお、前述のとおり、ロケットベンチャーについては2018年1月29日付で全株式を譲渡(関係会社株式売却損30百万円)し、それに伴ってメディア事業は一旦清算する形となった。

財政状態については、総資産が、前述した「のれん」の減損処理や関係会社株式の売却により前期末比6.8%減の4,732百万円に縮小した一方、自己資本が内部留保の積み増しにより同25.5%増の4,010百万円に増加したことから、自己資本比率は84.7%(前期末は62.9%)に大きく改善した。資本効率を示すROEも一過性要因(減損損失の計上等)により22.7%(前期末は43.6%)に低下したものの、依然高い水準を維持しており、同社の財務内容は引き続き優良と言える。

2. 四半期業績の推移
四半期業績の推移を見ると、売上高は前期(2018年1月期)に入ってから第3四半期まで伸び悩んできたが、第4四半期は新マーケティングミックスの効果により大きく伸長し、過去最高(四半期ベース)を更新した。また、損益面でも、先行投資が年間を通じて高水準で推移したことに加え、下期には新マーケティングミックスにかかる広告費が大きく拡大したものの、増収効果によって第4四半期の営業利益率は大きく改善している。

なお、第3四半期までの業績の伸び悩みは、新規会員獲得が前期を下回ったことが最大の理由である。ただ、前述したとおり、第4四半期の新規会員獲得は前年同期を大きく上回っており、それが業績の伸びにつながったと言える。

3. 主な活動実績
前期(2018年1月期)の活動実績における最大の注目点は、2017年10月より実施してきた新マーケティングミックスが奏功し、第4四半期の著しい業績の伸びを実現したところにあると言える。また、インフラ・決済機能の強化やロイヤル顧客向け施策の拡充、オウンドメディア及びアプリによる集客強化などでも一定の成果を残し、それらが重点施策である「1人当たりの平均購入件数」の伸び(ARPU向上)に結び付いたものと評価できる。さらには、リセール事業や「GLOBAL BUYMA」など新たな収益ドライバーの育成でも前進がみられた。

(1) 新マーケティングミックスの実施
同社は、2016年1月期に実施した大規模なマスキャンペーン(約12億円の投資)の効果が一巡した一方で、各指標を高める内部施策がうまく機能していることから、2017年10月より再度マスキャンペーンを起点した一連のマーケティング施策を実施し、それによって第4四半期での著しい業績の伸び(過去最高の売上高)を実現することができた。特に、今回については、前回の経験則から効率的な要素をコンパクトにまとめたところにポイントがある。すなわち、マスキャンペーンの規模を前回よりも低予算(1億円弱)に抑えるとともに、TVCM(認知度向上、会員数の拡大)→刈り取り広告を展開(アクティブ率の向上)→取扱件数向上施策(1人当たりの平均購入件数の向上)をショートスパンで繰り返しながら大きな成果を生み出したことは、業績の波をつくらずに成長を加速する新たな試みとして大きな意味があったと言えるだろう。今期は、さらにBIG DATAやAIの活用など連続的なアプローチを行うことで、持続的かつ加速度的な成長につながるような施策に取り組む方針であり、その成果にも注目したい。

(2) インフラ・決済基盤等の強化
今後の事業拡大に向けて、インフラ・決済基盤の強化にも取り組んだ。特に、4つの新規決済サービス※1の提供開始が顧客の利便性を高めたことにより、それが新規会員獲得や「1 人当たりの平均購入件数」の伸びにつながったと言える※2。

※1 「楽天ペイ」(2017年3月リリース)、「dケータイ払いプラス」(2017年3月リリース)、「auかんたん決済」(2017年5月リリース)、「paidy(ペイディー)」(2017年7月リリース)。
※2 新規決済サービスにおける初回購入者の利用比率は既存決済サービスよりも6ポイント高い結果となっている。また、新規決済サービスの構成比は第1四半期の3%から第4四半期には18%にまで拡大しており、その間の新規会員獲得に大きく貢献してきたものと評価できる。


また、2017年12月には、Virtusize(バーチャサイズ(株)東京都渋谷区)※1が提供するオンライン試着機能である「バーチャサイズ」の導入を発表した。これまでオンラインでファッションアイテムを購入する際には、サイズやフィット感がわからないことが大きなハードルとなっていたが、その課題を解消するところに狙いがある。具体的には、理想的なフィット感を持つ手持ちアイテム※2との比較が可能になったことにより、これまで以上にサイズに不安なく、安心して購入できるようになった。まだ、対応可能アイテムは限定的(10%〜20%)であるが、今後さらに拡大を図っていく方針である。

※1 2011年にスウェーデンで生まれ、オンライン試着サービスを提供。2013年より日本でのサービス提供を開始し、ユナイテッドアローズ、マガシーク、Shoplist等、多くの企業から利用されており、オンライン試着サービスの市場ではシェアNo.1の実績を誇る。
※2 比較アイテムには、バーチャサイズが連携しているサイト(BUYMA含む)の購入履歴アイテムも対応可能となっている。


(3) ロイヤル顧客向け施策の拡充
ロイヤル顧客「プレミアムメンバーズ」向け※施策の拡充(限定クーポン施策や出張買取サービスなど)にも取り組み、それによって「プレミアムメンバーズ」の総取扱高は前期比15%増と大きく拡大した。ファッション感度の高いロイヤル顧客との取引拡大は、ARPU向上や収益構造の安定化に貢献するだけでなく、「BUYMA」自体の価値のバロメーターとして注目に値する。

※過去6ヶ月間の購入金額によってクラス分けされた登録会員。プラチナステージ(30万以上)、ゴールドステージ(15万円〜30万円)、ブロンズステージ(7万円〜15万円)に分類されている。


(4) オウンドメディア及びアプリによる集客強化
同社は、独自のWebメディアを活用した集客にも注力しており、「POST」や「STYLE HAUS」などオウンドメディア経由の新規会員数は前期比31%増、総取扱高は同30.0%増と順調に拡大している。SEOに次ぐ独自の新しい流入経路として確立してきた。また、コンバージョン率が高いアプリのDL数(累計)も前期比56%増に拡大。それに伴ってアプリ経由の総取扱高も同59%増と大きく伸び、「1人当たりの平均購入件数」の向上にも貢献しているものと考えられる。デバイス別総取扱高構成比でも、アプリのシェアは上期の36%から下期は39%にまで拡大してきた。2018年2月にはiOSアプリのリニューアルを実施し、アプリ機能向上(商品検索の簡易化による商品閲覧数の向上)を図っている。

(5) リセール事業の進捗
「ALL-IN(オールイン)」で展開しているリセール事業についても、まだ本格的な業績貢献には達していないものの、サイト内露出を強化したことから申し込み件数が大きく拡大するとともに、申込時に付与された「BUYMAポイント」を利用した取引件数も増加してきた。同社では、今後も「ALL-IN」で売り、「BUYMA」で買う流れを着実に作っていくことで、「BUYMA経済圏」の実現を目指す方針である。

(6) 「GLOBAL BUYMA」の進捗
2016年7月から本格的なマーケティングを開始した「GLOBAL BUYMA」についても、まだ本格的な業績貢献には達していないものの、登録会員数が順調に拡大してきた。特に、「BUYMA KOREA」からの移行もあり、配送国は78ヶ国にまで拡大し、登録会員数も前期比75%増(アクティブ会員数は同62%増)と大きく伸長した。特に、ターゲット国である香港が好調であり、現地のマーケット需要に適した施策やMDが奏功したことにより、登録会員数は前期比240%増(アクティブ会員数は同322%増)と急拡大している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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