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AOITYOHold Research Memo(5):利益率改善や成長領域への積極投資で大きな成果

注目トピックス 日本株
■AOI TYO Holdings<3975>の活動実績

1. 主力事業の状況と主な取り組み
(1) 広告映像制作事業
テレビCMなど従来メディアの広告制作市場が横ばい(ないし減少傾向)にて推移するなかで、「広告映像制作事業」の売上高は前期比1.2%増の49,339百万円と堅調に推移した。注目すべきは、採算性重視の営業管理体制(案件受注段階からの厳格な精査・選別、売上原価管理の徹底など)の構築により、売上高の伸びは緩やかであった一方、実行利益率※が33.4%(前期は31.2%)と改善したところであり、全社的な利益の上振れに大きく貢献した。また、そのうちプリント売上高については前期比9.6%減の2,654百万円に減少したものの、2017年10月から始まったプリントレスがあまり進行しなかったため、こちらも計画に対しては上振れる要因となった。

※実行利益とは、売上高から外部支出原価を差し引いた数値。


(2) ソリューション事業
成長領域として注力する「ソリューション事業」の売上高は、前期比123.6%増の8,071百万円と大きく拡大した。そのうち、TYO営業統括本部(現オファリングマネジメント部門)の売上高は前期比108.6%増の5,577百万円、AOI Pro.の子会社Quark tokyoによる売上高は同234.6%増の2,416百万円とそれぞれ大きく伸びている。前者については、得意とする「広告主直接取引」において、新規広告主からの大型案件受注があったことや、既存広告主の案件規模拡大が業績の伸びに寄与した。一方、後者についても、本格稼働から2期目となり案件受注が軌道に乗り始めた。特に、PDCAによる動画コンテンツマーケティングへの需要が拡大するなかで、強みとなる制作機能などで差別化を図りながら、大企業向け直接取引などが伸びているようだ。また、新しいマーケティング戦略に特化した専門チーム※を立ち上げ、2017年12月には同チームによる縦型動画メディア「Q16GiRL」をローンチ。第1弾コンテンツとして、(株)ロッテのチューインガムFit’sとのタイアップを実施した。

※ミレニアルズ(1980年〜2000年頃に生まれた世代)を中心とする新しいマーケティングコミュニケーションが必要なターゲットに対して、最適化されたマーケティング戦略の立案とクリエイティブディレクション、制作プロデュースを行う専門チーム。なお、ミレニアルズはデジタルネイティブ世代と重なり、SNSなどを通じたコミュニケーションが定着。モノよりも経験や体験、他人の共感や評価を重視する意識が高く、場所・モノを共有するシェアリング・エコノミーと親和性が高い。社会や消費のあり方に大きな影響を与える世代として注目されている。


また、AOI Pro.体験設計部が手掛けてきた事業については、2018年2月1日に新会社SOOTHを設立するに至った。これまで、1)VR/AR/MRをはじめとする最新テクノロジーを取り入れたコンテンツの企画・制作、2)新たなデータや感情データを含むナレッジの蓄積、などを進めてきたが、ここからさらに、3)統合マーケティング事業(ブランド戦略立案から効果測定・分析までを統合したソリューション提供)への展開、4)データ活用による高付加価値事業への発展を目指すことが、新会社設立(別会社化)の狙いであり、事業拡大への手応えをつかんだ証左とも言える。本格的な業績貢献には長期的視点が必要であるが、応用範囲を含めてポテンシャルは大きい。

(3) 海外事業
「海外事業」の売上高は、前期比11.1%増の2,842百万円とおおむね計画どおりに伸長した。また、2017年10月には、ベトナム最大手の映像プロダクション会社「VF MEDIA」をグループ会社(持分法適用会社)化※。その規模と経験からベトナム国内のクライアント・広告会社からの信頼の厚い「VF MEDIA」との業務連携により、広告市場が拡大しているベトナムで事業拡大することに狙いがある。将来的には、段階的な株式取得により連結化も視野に入れているようだ。さらに、2018年3月には、マレーシア大手テレビCM制作会社を傘下に持つ「Reserve Tank」を連結子会社とした。マレーシアのみならず、市場の大きいインドネシアや中国など近隣諸国の案件も数多く受注しており、本件を通じて東南アジア市場におけるさらなる事業拡大を目指す。

※「VIEWFINDER MEDIA JOINT STOCK COMPANY」の持株会社である「VF INVESTMENT JOINT STOCK COMPANY」の株式の36%を取得し、両社をグループ会社化した。


2. 統合効果の進捗
統合効果の早期実現に向け、コーポレート部門の再編や成長領域への積極投資、外部支出低減などに取り組んでいる。成長領域への投資(特に、VR関連やベンチャー投資など)や業務効率化などで一定の成果があったほか、足元では以下の取り組みを実施している。

(1) グループ事業の整理
2017年11月以降、事業環境の変化に伴う事業のリストラクチャリングを目的として、子会社((株)TYOアニメーションズ、(株)リアル・ティ、(株)ビジネス・アーキテクツ)の整理を行うとともに、安定した需要の増加が見込める照明機材レンタル事業については集約による強化を図った。

(2) コーポレート部門の集約
2018年1月には、AOI Pro.とTYOの管理部門の機能統合を行った。

(3) 本社移転、オフィス統合
2018年3月にコーポレート部門の機能集約に伴い、本社を白金から大崎へ移転するとともに、資産の効率化のためTYO本社(目黒)を売却した。

(4) ベンチャー投資
2017年8月に設立したベンチャー企業向けファンド「Ad Hack Ventures」※1については、比較的イグジット(IPOなど)の確率の高いステージにあり、継続して広告ニーズが見込めるベンチャー企業を対象としている。総額18億円(1案件当たり数億円規模まで)での運用を予定しているが、これまでの実績として、高い成長性が期待できるベンチャー企業3社※2に対して合計7億円強の投資を実施している。

※1 TYOと(株)フィールドマネジメントとの共同により設立
※2 (株)ログバー(世界初のウェアラブル音声翻訳デバイス「ili」の開発・販売)、(株)エブリー(日本最大級のレシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」などを提供)、(株)サマリー(クラウド収納サービス「サマリーポケット」を提供)の3社


また、2018年1月には、Spiral Ventures Pte. Ltd.(本社:シンガポール)が運用する「アジア事業創造ファンド1号」に対して500万USドルの出資を実施した。「ソリューション事業」及び「海外事業」の成長戦略の一環として位置付けており、成長可能性の高いアジアのベンチャー企業と早期の段階で関係性を築き、投資先との協業体制を構築することにより、さらなる海外市場の拡大を目指す方針である。また、その過程において同社グループの持つ広告・映像制作分野のノウハウを生かした事業展開も見込んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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