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キリン堂HD Research Memo(5):長年の課題である収益性の改善が中心テーマ

注目トピックス 日本株
■中期経営計画と進捗状況

1. 第2次中期経営計画の概要
キリン堂ホールディングス<3194>の長期業績推移を見ると、2008年2月期が1つの節目となったことがわかる。積極的な出店とニッショードラッグの子会社化で売上高は1,000億円の大台を突破し、営業利益は過去最高を記録した。その後、一時的に不振店の整理期を迎えて収益が停滞したが、2014年2月期からは売上高は明確に成長軌道に戻り現在に至っている。

一方営業利益は、事業整理期を抜けた後、第1次中期経営計画(2015年2月期−2017年2月期)において成長路線への回帰を目指したが、明確な回復基調を描くには至らなかった。直近の2018年2月期は大幅増益となり20億円に迫る営業利益となったが、2008年2月期の過去最高益には及ばなかった。

売上高の回復と営業利益の低迷は営業利益率の低下として表れている。2000年代初頭は2%台の営業利益を安定的に記録し3%台をうかがう勢いだったが、急成長の過程で営業利益率が低下し、2008年2月期に一時的に2%台を回復した後は1%台での推移が続いている状況だ。

同社は営業利益率に象徴される収益性の低さについて、その改善を常に経営の最優先課題と位置づけ取り組んできた。2017年2月期で終了した第1次中期経営計画でも営業利益率3%という目標を掲げたものの未達に終わった。

同社が現在取り組む第2次中期経営計画(2018年2月期−2020年2月期)では、この経営目標を引き継ぎ、営業利益率の改善を重点課題のテーマに据えて取り組んでいる。定量目標としては、最終の2020年2月期において売上高137,000百万円、営業利益4,000百万円、営業利益率3%、ROE10%以上という数値を掲げている。中期経営計画の着実な実行は、同社の成長戦略でもあると言える。

第2次中期経営計画は長期的な大目標である“国内営業基盤の再構築”の実現に至る通過点という位置付けだ。営業基盤の再構築の評価軸として収益性は極めて重要なポイントだ。これが確保されないと成長のための投資が難しくなるためだ。同社は代表的な収益性の指標でもある営業利益率を取り上げ、“営業利益率の改善と実現力の向上”を重点課題のテーマとした。

2018年2月期の進捗を受け、2019年2月期は1)既存店の活性化、2)ヘルス&ビューティの強化、3)作業システム改革、4)調剤事業の拡大、5)関西ドミナントの推進、の5つの重点課題を設定し、その着実な実行に取り組む方針だ。

第2次中期経営計画における同社の最大の関心事は、営業利益率改善もさることながら、“実行力の向上”にあると弊社ではみている。3%の営業利益率を継続的・安定的に達成することこそが重要であることは言うまでもない。初年度の2018年2月期は、前述のように、好調な決算となったが、その背後には重点課題それぞれにおいて、顧客一人ひとりと向き合った具体的取り組みがあった。2019年2月期はそれを踏まえてさらに深堀する形で各施策が進化したものとなっている。こうしたことが、弊社が同社の2019年2月期以降の持続的な収益拡大に自信を深めた大きな理由となっている。

以下では2019年2月期の重点課題の詳細について述べる。


店舗改装のペースを拡大するほか、顧客と自社がwin-winとなれる新型ポイントカードの導入で新規会員増加を目指す
2. 既存店の活性化
既存店の活性化については、前述のように、2018年2月期の既存店売上高が前期比3.2%増となったことで順調な進捗がうかがえる。

既存店の活性化に向けて同社が最重点で取り組んでいるのが店舗の改装だ。同社は第2次中計の3年間で計100店舗の改装を実施する計画だ。2018年2月期は計画どおり35店舗を実施した。店舗改装の効果は顕著で、改装前後の3ヶ月間の比較では、売上高で4.3%増、客数で3.1%増、客単価で1.0%増の実績を上げた(いずれも2018年2月期)。

2019年2月期は45店舗の改装を計画している。前期の好反応を受けて改装ペースを加速させたものと弊社ではみている。3年間で100店舗という当初計画に照らすと2020年2月期の改装店舗数は20店舗ということになるが、実際には100店舗以上の改装を行うことになると弊社では推測している。店舗改装⇒既存店の増収という図式が確立できれば、全店舗の定期的な改装という施策に乗り出す可能性もあるとみている。

同社が改装に積極的になった背景には、費用対効果の高さがあるとみている。効果は前述の通りだが、費用についても低水準に抑制できているのがポイントだ。現在の改装は通路の幅を縮小して陳列スペースを増設するというのが中心的内容であり、それに必要な什器類は閉店した店舗のものを活用して、最小限に抑えている。

改装と並ぶ活性化策の重要施策はポイントカード会員における販売増だ。2018年2月期は126万人のアクティブ会員(既存店ベースの会員数。前期比2.2%増)に対して、“会員向け販促の推進”を行った結果、来店回数が2.6回(同1.2%増)となり、会員客数は延べ327万人(同3.4%増)に達した。

2019年2月期においては、従来からの施策に加えて、自社電子マネー付きポイントカード「KiRiCa」の導入に取り組む方針だ。KiRiCaは顧客にとってはサービスや利便性向上のメリットがあり、他方同社側にとっては顧客の来店回数アップ、クレジット決済からの切り替わりによる支払手数料の抑制などのメリットがある。

同社はまた、未病対策サポートとして、店舗内での健康フェア(2018年2月期実績144回)、健康セミナー・介護セミナー等(同22回)、健康イベント(1回)などを行っている。2019年2月期もこの取り組みを継続する方針だ。こうした健康提案の発信はキリン堂のブランディングと認知度向上はもちろん、健康意識の高まりに基づく健康食品販売増や調剤薬局の取扱処方せん数増などにつながると期待される。


機能性表示の取得や顧客ニーズに基づいたPB商品の開発・リニューアルで、HBCの成長回帰を目指す
3. ヘルス&ビューティの強化
ヘルス&ビューティ(HBC)商品は売上構成比及び粗利益率がともに高く、また、PB(プライベートブランド)商品を投入して採算性向上を狙える重要な商品分野だ。こうしたことから、同社はHBCに占めるPB商品の売上構成比をKPI(重要経営評価指標)としている。

2018年2月期は、HBCのPB売上構成比が10.5%(前期比0.8p減)にとどまった。前述のように、他の事業者がダイエット食品の販売で景品表示法違反を指摘されたことの影響を受けたためとみられる。

2019年2月期はHBCのPB売上構成比を11.2%に引き上げる計画だ。そのための具体的な施策として、1)PB商品について機能性表示の取得、及びスペックアップリニューアル、2)健康志向食品PBの開発、3)新素材を入れたPB開発の3点に注力する方針だ。PBの機能性表示取得に関しては、2017年11月に「EPA&DHA」を取得したところ、売上高が前年比31%増となる実績を上げた。

PB商品の開発では、CRM(顧客マネジメント)の強化によって顧客ニーズのより精緻な把握と、それに基づく顧客視点の商品開発にも取り組んでいる。具体例として、PBのスキンケア化粧品ブランド「アインシアオーシェリー」について、顧客の真の要望をキャッチすることを目的に、顧客インタビューを実施(2018年1月)した。今後はこれをもとにSKUの整理やパッケージの一新を図り、リニューアル消費で攻勢をかける方針だ。

また販売施策についても、新規顧客向けとしてトライアルセットの継続販売やラインアップ追加、継続顧客向けとして継続購入特典導入やカウンセリングのための環境整備、全般的な施策としての情報発信強化に取り組む方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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