カンロ Research Memo(7):目指すはキャンディNo.1企業
[18/05/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画
1. 中期経営計画の考え方
カンロ<2216>は、2016年に策定した中期経営計画「NewKANRO 2021」で、2021年12月期に売上高260億円、経常利益26億円を達成し、キャンディNo.1企業への進化を目指している。そして、同社は2018年12月期を「変化」と位置付け、中期経営計画後半に向けて、本社移転や子会社吸収による生産性の向上、新グミライン投資や新CI戦略に基づく商品開発による売上拡大など、比較的大掛かりな施策を進めている。そのための戦略が、売上拡大戦略と経営基盤の強化ということになる。
売上拡大戦略では、市場拡大の続いているグミの大幅な売上高増加を狙う。新製品の開発と新規設備投資がセットになった戦略である。飴については、既存主力ブランドのリニューアルや高機能性による付加価値化を大胆に進める。リテールサポートによる既存取引先の深耕、新販路の開拓も売上増加に寄与するだろう。経営基盤の強化では、経営企画本部の新設、原価低減担当役員の設置、経営判断の迅速化など経営体制を見直した。今後は原価低減を徹底的に進める一方、新人事制度や情報システム環境なども整備していく方針である。
中期経営計画の前半は飴、後半はグミがけん引する計画
2. 売上拡大戦略の詳細
売上拡大戦略の中で、成長エンジンとなるのがグミである。グミは1990年代に普及したため、子供のころに食べたことのないシニア層向けや、若い母親が咀嚼のサポートとして子供向けに市場が拡大している。同社は、グミを知らないシニア世代とグミに慣れ親しんだ世代の双方へアプローチする方針である。
このため、松本工場内に27億円を投資してグミの製造ラインを新設する計画である。2018年着工、2019年稼働の予定で、生産能力の倍増と原価低減を見込んでいる。足元で建築費が高騰しているが、グミの新ラインは何よりも優先する考えであるため、スケジュールのずれはほとんどないと考える。そして、グミ生産がこれまでボトルネック気味だったことから、新ジャンルのグミなど新たな製品の開発もままならず、アイデアは溜まっている。市場拡大余地に加え、地方スーパーやドラッグストアなど新たな販売見込み先も開拓中である。ただし、稼働計画から分かるように、収益貢献は中期経営計画の後半になる見込みである。
したがって、中期経営計画の前半は飴の収益貢献に期待を寄せることになる。飴の需要は低迷気味だが依然大きな市場であり、近年も同社の「金のミルク」や「ボイスケアのど飴」など新しい美味しさや機能を持つ製品が受け入れられている。このため、多様化する消費者ニーズに応えて付加価値の高い製品を開発していけば、引き続き収益貢献することは可能と思われる。同社は、2018年12月期に「カンロ飴」と「健康のど飴」のブランド再生をスタートさせ、飴についても積極的に動き出した。また、手軽に持ち歩きやすいサイズや形態のパッケージへの改良余地も大きいと考えられ、需要を喚起する製品を思い切って投入する可能性もあるだろう。
ある程度収益力が回復すれば、カルピスブランドの販売中止の際に一旦中止となった海外進出や新規菓子開発の計画が復活することも考えられる。ドメインの拡大は成長戦略に欠かせないので、いつまでも中止したままでいいはずはないからである。海外では、日本の飴への需要が強いアジアが、今まさに進出のチャンスである。新規菓子については、例えば錠菓だが、利便性や携帯性に優れることから拡大しているカテゴリーなのに、同社は手を付けていない。こうした新たなドメインに打って出ることこそ、「老舗」の進化を象徴することと言えるだろう。その際、三菱商事と連携している強みが一層発揮されるものと期待する。
競争激化を乗り越えシェアアップ
3. 事業リスク
同社の事業リスクの中で、もっとも直接的なのが菓子業界における競争である。卸売業や小売業の競争が激化、系列化や統合が加速、小売業(特にコンビニエンスストア)では頻繁に製品が入れ替えられ、大手小売のPBがメーカーの販売価格に影響を与え、消費者の選択眼も一層厳しくなっている。このためメーカー間の競争は一層熾烈になっている。また、人気ブランドがライセンスの移動などによって突然販売中止になることもある。こうした激しい競合や環境変化が同社の収益や財務に影響を及ぼす可能性はあるが、現状、積極的な営業活動や既存製品のブラッシュアップ、優位性のある新製品の開発によって、むしろシェアを拡大しているところである。競争激化が同社にとってはむしろ好機になっていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<NB>
1. 中期経営計画の考え方
カンロ<2216>は、2016年に策定した中期経営計画「NewKANRO 2021」で、2021年12月期に売上高260億円、経常利益26億円を達成し、キャンディNo.1企業への進化を目指している。そして、同社は2018年12月期を「変化」と位置付け、中期経営計画後半に向けて、本社移転や子会社吸収による生産性の向上、新グミライン投資や新CI戦略に基づく商品開発による売上拡大など、比較的大掛かりな施策を進めている。そのための戦略が、売上拡大戦略と経営基盤の強化ということになる。
売上拡大戦略では、市場拡大の続いているグミの大幅な売上高増加を狙う。新製品の開発と新規設備投資がセットになった戦略である。飴については、既存主力ブランドのリニューアルや高機能性による付加価値化を大胆に進める。リテールサポートによる既存取引先の深耕、新販路の開拓も売上増加に寄与するだろう。経営基盤の強化では、経営企画本部の新設、原価低減担当役員の設置、経営判断の迅速化など経営体制を見直した。今後は原価低減を徹底的に進める一方、新人事制度や情報システム環境なども整備していく方針である。
中期経営計画の前半は飴、後半はグミがけん引する計画
2. 売上拡大戦略の詳細
売上拡大戦略の中で、成長エンジンとなるのがグミである。グミは1990年代に普及したため、子供のころに食べたことのないシニア層向けや、若い母親が咀嚼のサポートとして子供向けに市場が拡大している。同社は、グミを知らないシニア世代とグミに慣れ親しんだ世代の双方へアプローチする方針である。
このため、松本工場内に27億円を投資してグミの製造ラインを新設する計画である。2018年着工、2019年稼働の予定で、生産能力の倍増と原価低減を見込んでいる。足元で建築費が高騰しているが、グミの新ラインは何よりも優先する考えであるため、スケジュールのずれはほとんどないと考える。そして、グミ生産がこれまでボトルネック気味だったことから、新ジャンルのグミなど新たな製品の開発もままならず、アイデアは溜まっている。市場拡大余地に加え、地方スーパーやドラッグストアなど新たな販売見込み先も開拓中である。ただし、稼働計画から分かるように、収益貢献は中期経営計画の後半になる見込みである。
したがって、中期経営計画の前半は飴の収益貢献に期待を寄せることになる。飴の需要は低迷気味だが依然大きな市場であり、近年も同社の「金のミルク」や「ボイスケアのど飴」など新しい美味しさや機能を持つ製品が受け入れられている。このため、多様化する消費者ニーズに応えて付加価値の高い製品を開発していけば、引き続き収益貢献することは可能と思われる。同社は、2018年12月期に「カンロ飴」と「健康のど飴」のブランド再生をスタートさせ、飴についても積極的に動き出した。また、手軽に持ち歩きやすいサイズや形態のパッケージへの改良余地も大きいと考えられ、需要を喚起する製品を思い切って投入する可能性もあるだろう。
ある程度収益力が回復すれば、カルピスブランドの販売中止の際に一旦中止となった海外進出や新規菓子開発の計画が復活することも考えられる。ドメインの拡大は成長戦略に欠かせないので、いつまでも中止したままでいいはずはないからである。海外では、日本の飴への需要が強いアジアが、今まさに進出のチャンスである。新規菓子については、例えば錠菓だが、利便性や携帯性に優れることから拡大しているカテゴリーなのに、同社は手を付けていない。こうした新たなドメインに打って出ることこそ、「老舗」の進化を象徴することと言えるだろう。その際、三菱商事と連携している強みが一層発揮されるものと期待する。
競争激化を乗り越えシェアアップ
3. 事業リスク
同社の事業リスクの中で、もっとも直接的なのが菓子業界における競争である。卸売業や小売業の競争が激化、系列化や統合が加速、小売業(特にコンビニエンスストア)では頻繁に製品が入れ替えられ、大手小売のPBがメーカーの販売価格に影響を与え、消費者の選択眼も一層厳しくなっている。このためメーカー間の競争は一層熾烈になっている。また、人気ブランドがライセンスの移動などによって突然販売中止になることもある。こうした激しい競合や環境変化が同社の収益や財務に影響を及ぼす可能性はあるが、現状、積極的な営業活動や既存製品のブラッシュアップ、優位性のある新製品の開発によって、むしろシェアを拡大しているところである。競争激化が同社にとってはむしろ好機になっていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<NB>