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デリカフHD Research Memo(5):20/3期に連結売上高400億円、経常利益11億円を目指す

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

2. 中期経営計画について
(1) 経営目標値
デリカフーズホールディングス<3392>は2017年2月に第三次中期経営計画「Next Change 2020」を発表している。計画最終年度となる2020年3月期までを、将来の成長を実現していくための事業基盤を構築する期間と位置付けており、2020年3月期の連結経営目標値は、売上高で40,000百万円、経常利益で1,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で680百万円としている。

2018年3月期実績比で見ると、売上高についてはやや上回るペースで推移しており、達成は十分可能と見られる。一方、経常利益については2018年3月期が天候不順の影響で計画を下回ったこともあるが、ややハードルが高くなっている。カット野菜や真空加熱野菜など高付加価値商品の成長、並びに物流の内製化や業務効率の改善効果によって目標を達成していく方針に変わりないが、新拠点(工場1拠点、物流センター2拠点)に投下する設備投資額が当初の想定(約30億円)に対して約50億円まで膨らみそうなこともあり、償却負担の増加分だけ未達となる可能性がある。

2020年3月期までの財務戦略としては、財務の健全性を図りつつ成長への積極投資を行っていくことを基本方針としている。具体的には、キャッシュフローの効率的配分(財務の健全性、成長投資、株主還元)を図りながら、連結ベースでの資金管理を強化し、グループ内資金の効率化を進めていく。また、ROEを重要な経営指標として位置付け、目標を8.0%に設定している。主に親会社株主に帰属する当期純利益の拡大によってROEの向上を図るが、徹底した経営効率・業務効率の改善により資本効率の向上にも取り組んでいく方針だ。

(2) 中期経営計画の基本戦略
a) 経営基盤の改革
経営基盤の改革として、グループ機能の最適化による収益体質の強化を図るため、東京、名古屋、大阪にそれぞれ配置していたデリカフーズの会社を1社に統一した。従来は、営業活動や消耗品の購買、仕入調達、受発注機能も各会社で組織化されていたが、これを1社に統一したことで営業効率並びに業務効率の改善が図られている。例えば、全国展開する外食企業に対して、従来はエリアごとに営業を行っていたが、一本化することで全エリアを見渡した営業提案を行うことができるようになり、取引シェアの拡大が期待できるようになったほか、消耗品については一括購買することで年間0.5億円ほどの削減効果が期待できる。

また、人財の育成にも取り組んでおり、とりわけ、工場や営業現場等で若手社員を指導する中間層の人財育成に注力している。そのほか、働き方改革や労働環境改革による能率向上及び従業員満足度の向上を図るなど、次世代への継承も含めた改革プロジェクトを推進している。

b) 成長基盤の構築
成長基盤の構築に向けて、商品力・顧客対応力の強化、事業拠点の拡大、物流事業の強化・拡大、垂直統合型事業への展開等に取り組んでいる。

1) 商品力・顧客対応力の強化
商品力の強化では、需要が拡大しているカット野菜や真空加熱野菜、個食対応商品などの高付加価値商品を中心に、外食及び外食以外の分野へと積極展開を進めている。真空加熱野菜の売上高については、2018年3月期の237百万円から1,000百万円に拡大することを当面の目標としている。顧客対応力の強化としては、同社が推進する「デポ※化」を関東圏から全国へと展開していくほか、顧客に対してメニューや食材・産地提案だけでなく、物流やCSR(社会貢献)支援等も含めた総合提案力を強化することで、既存顧客内での取引シェア拡大や新規顧客の開拓を進めていく。大手ファストフード企業や居酒屋チェーン等の既存顧客でも、取引シェアを拡大していく余地があるとこをもまだ多く残されており、また、中食業界の開拓にも注力していく方針だ。

※デポ…物流センターの受託業務のことで、顧客の青果物配送センターとしての機能を受託する仕組み


2) 事業拠点の拡大
売上を拡大するに当たっては、工場、物流センターの新設が必要だが、同社は当中期経営計画期間内において、工場1ヶ所、物流センター2ヶ所の新設を予定している。このうち物流センター2ヶ所については既に発表済みで、工場1ヶ所についても2018年12月までに候補地の選定と着工を開始し、2019年秋の稼働を目指している。

同社ではカット野菜の需要拡大を見越して、2010年以降、FSセンターを相次いで新設してきた。この結果、2010年以降は外食業界の成長率が微増だったのに対して、同社の売上高は年率9%の成長を遂げてきた。同社の積極的な投資戦略によって既存顧客の取引シェア拡大と新規顧客の開拓が進んだことが要因と考えられる。このため、2020年以降についても積極的な拠点展開を推進していくことによって、売上規模を拡大していく戦略となっている。

3) 物流事業の強化・拡大
物流に関しては、前述したように自社物流の比率を全社で3割程度まで高めていくことを目標としている。物流費の上昇や物流委託先の経営破たんといったリスクに備えるだけでなく、東名阪の幹線物流や各エリアの店舗配送網について自社物流インフラを構築することで、物流の効率化を推進していく。

将来的には仕入調達ルートにおいても自社物流を活用していくほか、契約産地での選果・包装・梱包等といった工程までサービスの範囲を広げていくことも視野に入れている。契約産地の農家でも収穫から選果・包装・梱包といった工程は人手不足が深刻化しているためで、こうした工程を自動化することでサービス提供が可能になると見ている。

4) 調達力の強化、垂直統合型事業への展開
天候不順や自然災害に起因する野菜価格の高騰や、野菜品質の低下によるカット野菜の生産効率低下が、ここ数年の利益圧迫要因となっていたが、こうした課題を改善することを目的に前述した貯蔵センターの開設以外にも調達力の強化を推進している。

具体的には、「商品統括本部」を新設し、調達量と仕入価格の安定化に取り組んでいるほか、調達難の際のリスクヘッジを目的とした国内及び海外産地の開拓と育成も継続して推進している。現在の海外調達比率は1〜2割の水準で、日本でほとんど収獲されないフルーツ類や価格が安い野菜などが多いが、大型の貯蔵機能を持った施設を2018年に2拠点開設することで、今後はリスクヘッジ用の野菜(サニーレタス等)の調達も増やしていく予定となっている。また、前述したJA全農との業務提携や収量予測システムの構築により、優良生産者の囲い込みも進めていく方針だ。

c) 研究開発部門の強化
同社の強みでもある研究開発についても、引き続き強化していく。健康志向の高まりにより、野菜の機能性についての関心が高まるなかで、次世代に向けた「農・食・健康」をつなぐ新規研究分野の開拓を推進していく。また、ビッグデータを活用した抗酸化研究の強化及び外部研究機関との連携も推進する。

メディカル青果物研究所では、現在、大手光学機器メーカーと中腐検出装置の共同開発を進めている。従来は、全量検品が困難なため一部を半割り検品して出荷していたが、一定割合で中腐商品が混じるため、返品コストがかかっていた。実用化までにはまだしばらく時間を要するが、将来的には契約産地での選果・包装・梱包サービス等で利用できる可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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