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日本調剤 Research Memo(3):2018年改定は厳しい内容だが、店舗戦略を生かして追い風に変えることは可能

注目トピックス 日本株
■2018年度調剤報酬改定の内容と影響について

1. 2018年改定の概要と考え方
2018年4月に2年ぶりの薬価及び調剤報酬改定が実施された。その業績インパクトは非常に厳しく、日本調剤<3341>は2019年3月期の調剤薬局事業の営業利益について前期比24.0%の減益を予想している。

しかしながら、弊社では2018年改定について、短期的な業績へのマイナス影響は否定できないものの、中期的な時間軸で見た場合は、同社の相対的優位性を強調することになるのではないかと考えている。今後の同社の企業努力に依存する部分も多いので「同社にとって追い風だ」とまでは言わないが、将来振り返った時に2018年改定が1つの転機だったということになる可能性は十分あると考えている。

2018年改定の最大のポイントは、国(厚労省)が目指す方向性が一段とクリアになったことと、内容の厳しさにより調剤薬局業界の再編が加速されると期待されることの2つだと弊社では理解している。この点同社は、国が理想とする薬局のあり方(「患者のための薬局ビジョン」)に沿った店舗づくりを、業界をリードする形で推進してきている。詳細は中長期の成長戦略の項で述べるが、同社が一貫して追求してきた店舗当たり売上高の最大化という戦略がいよいよ真価を発揮してくると期待される。目論見どおりに業界再編が加速すれば、同社は高機能かつ高効率の店舗を武器に、勝ち組として再編に臨むことができるとみている。ピンチとチャンスは裏腹の関係にあると言われるが、同社は厳しい2018年改定を追い風に変えることができる企業の一社であると弊社では考えている。

以下では、2018年改定の中で、特に影響が大きいと思われる調剤基本料、後発医薬品調剤体制加算、及び基準調剤加算の廃止と地域支援体制加算の新設の3点について詳述する。これ以外の改定項目は処方箋ごとに影響が発生するのに対し、これら3項目の影響は、各店舗が取り扱うすべての処方箋に影響するためだ。また、地域支援体制加算の算定要件8項目には、国が薬局に要求する事項がすべて詰まっていると言え、これへの対応の進捗状況は、業界再編での生き残りの可能性や投資対象としての適否を判断するうえで重要な役割を果たすと考えている。


門前薬局の評価見直しが継続し、調剤基本料が大きく低下
2. 調剤基本料の改定
国は薬局の形態に応じて調剤基本料に差を設けている。薬局の形態に対する国の認識は、1)大型を含む門前薬局が多数であり、面分業(様々な医療機関からの処方箋を受け付けること)を行っている薬局は少数、2)大手調剤チェーン(20店舗以上の店舗を持つ大手保険薬局)が増加し、多店舗展開により収益率が高くなる傾向がある、というものだ。その上で、こうした現状は国が目指すべき「かかりつけ薬剤師・薬局」が実現しているとは言えないとの判断に至っている。そこで、門前薬局の調剤報酬適正化を目的に調剤基本料を特例的に引き下げる施策が導入されている。

具体的には、集中率と処方箋枚数に応じて、調剤基本料を1(41点)〜3(20点または15点)の4段階に分けている。調剤基本料1と3の差は最大26点であるが、この調剤基本料は当該店舗で取り扱うすべての処方箋に適用されるため、1日200枚の処方箋を取り扱う店舗を例にとると、「200枚×26点×22日(週休2日と仮定)×12ヶ月×10円/点=13,728,000円」の収入(それはほぼ利益に等しい)差が生じることになる。

2018年改定においては、集中率の基準が引き下げられ、これまで調剤基本料1を算定されていた店舗が2に算定されやすくなったほか、調剤基本料3がさらに2段階に分けられ、月40万枚超のグループは“3−ロ”として点数が15点に引き下げられることとなった。また病院の敷地内に立地する薬局を対象に、特別調剤基本料(10点)が新設された。

改定直前の2018年3月において同社の全店舗に占める調剤基本料1算定店舗割合は85%だった。2018年改定を当てはめるとその割合は48%に大きく低下する。反対に調剤基本料3−ロの割合は50%に増加するほか、新設された敷地内薬局に対する特別調剤基本料の算定店舗の割合が1%となる。2018年3月末の調剤薬局店舗数583店舗をベースにした加重平均点数は、改定前が38.1点であったのに対して改定後は27.5点と10.6点低下することになる。

これへの対応策は多くはない。昨年までは調剤基本料2、3の算定となった店舗については、かかりつけ薬剤師・薬局としての対応を充実させることで、調剤基本料引き下げの特例の適用を除外する(すなわち、調剤基本料1に算定される)規定があったが、これは2018年改定で廃止された。そのため、調剤基本料1以外の店舗については、後述する地域支援体制加算の獲得が残されたリカバリー策ということになる。ただしこれは、従来の特例適用除外に比べて非常にハードルが高いものとなっている。


ジェネリック医薬品の使用割合目標を達成済みの同社にとっては、改定の影響は限定的
3. 後発医薬品調剤体制加算
後発医薬品(ジェネリック医薬品)の調剤状況に応じて各店舗は加算を受けることができる。加算点数はジェネリック医薬品の調剤割合(数量ベース)によって、異なり、従来は75%以上の店舗は加算2が算定され22点を加算できていた。しかし、2018年改定により、その基準が80%以上へと引き上げられた。80%という数値は国(厚労省)が2020年までの全体目標とする水準だ。また、新たに85%以上の店舗には加算3(26点)が算定されることとなった一方、加算1(18点)を獲得する水準を75%に引き上げた。いわばアメとムチの戦略であり、目標達成に向けた国の意気込みの強さがうかがえる。

同社は国の掲げるジェネリック医薬品の使用割合目標を既に達成済みで、調剤薬局業界の中でトップを走る企業とみられる。加算1の算定基準が従来の65%から75%へと切り上げられた結果、加算なし店舗割合が改定直前の4%から改定後は12%に上昇するものの、新設された加算3の店舗割合が38%に達するため、2018年3月末の583店を対象とした加重平均点数は、改定前後で20.7点から20.0点に、0.7点の低下にとどまる。ジェネリック医薬品の使用拡大に従来から注力してきた同社にとって、今回の改定の影響は限定的であり、遠くない将来に解消されると弊社ではみている。


地域支援体制加算の新設で、国が薬局に求める役割が一段と明確に
4. 基準調剤加算の廃止と地域支援体制加算の新設
これまでは、調剤基本料について1の算定を受けた店舗については、一定の要件を満たすことで基準調剤加算(32点)が算定された。しかし2018年改定ではこれが廃止され、地域支援体制加算(35点)が新設された。

その算定要件として11項目の施設基準が設定されているが、その中の最大のポイントは「地域医療に貢献する体制を有することを示す相当の実績」という要件(以下、「実績要件」と略す)だ。実績要件の具体的内容は、1年間に常勤薬剤師1人当たりとして8項目をすべて満たすことが必要とされている。

調剤基本料1の店舗については実績要件の適用はなく、従来の基準調剤加算と同じ要件をクリアすればよいことになっている。前述したように、国の方針は門前薬局については調剤基本料1の算定を厳格化する方針を明確にしており、調剤基本料1が適用されるのは街中の個人薬局や面対応薬局などが中心になると思われる。門前薬局の割合が高い大手調剤チェーンは調剤基本料が引き下げられた分を地域支援体制加算によって補わざるを得ず、加算獲得の取り組みを通じて各薬局を国が目指す薬局像に近づけようというのが国の目指すところとみられる。

同社は、改定前の2018年3月時点で、58%の店舗で基準調剤加算を獲得していた。しかし、新たな地域支援体制加算の要件を適用すると加算獲得店舗割合は32%に低下する。これは、前述のように調剤基本料1の算定店舗割合が改定後の基準では大きく低下することが影響している。調剤基本料が1以外の店舗が地域支援体制加算を獲得するためには1年間の実績要件8項目をクリアする必要があるため、一定の時間が必要だ(1年間の実績は毎年4月に直前1年間について評価が基本。2018年は制度導入初年度のため7月に算定)。同社は「患者のための薬局ビジョン」に沿った店舗運営を推進してきたため、実績要件のクリアについて、同業他社に比べて相対的には優位な位置にあるとみられるが、その同社にしても加算獲得店舗割合を従来レベルに戻すことは容易ではないとみられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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