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Iスペース Research Memo(6):開発力強化による新規事業創出と海外事業の育成で更なる成長目指す

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

インタースペース<2122>は目標とする経営指標として、売上高と営業利益の2つを重視している。売上高についてはアフィリエイト市場の伸びを上回る成長を目指している。具体的な経営数値目標は発表していないが、2017年5月に発行した役員・従業員向けストック・オプション(行使価額1,467円)※において、その行使条件を「2020年9月期から2022年9月期のいずれかの事業年度で営業利益1,800百万円を達成すること」としており、同数値が1つの目安になると考えられる。

※同ストック・オプションは株式数で19万株相当となり希薄化率は2.7%となる。行使期間は2021年1月以降となっており、行使条件が達成された段階では企業価値(=時価総額)も上昇していることが予想されるため、既存株主にとっては影響がないものと考えられる。


同社は今後も持続的な収益拡大を実現していくために、「新規事業の創出」「利益の向上」「優秀な人材の採用・育成」の3点に取り組んでいく方針だ。特に、「新規事業の創出」には「優秀な人材の採用・育成」が欠かせない。このため、現在60名弱いるエンジニアをさらに増員していく方針となっている。2018年3月末の連結従業員数は404名で、エンジニアの比率は15%程度となるが、同社はこの比率を中長期的に30〜40%まで引き上げていくことを目指している。インターネット広告市場は技術革新のスピードが速く、今後は技術力の差が収益力の差に直結することが予想されるためで、エンジニアの増員による既存事業の強化、並びに新規事業の創出を目指していく方針となっている。

最近ではITP問題への対応策としてトラッキングツールの開発を早急に行い、マイナス影響を最小限にとどめたほか、データ分析に基づく需要予測システムを開発し、アフィリエイト広告の営業活動に生かすなど、その成果も見え始めている。また、新規事業については2020年までに5事業、2023年までに15事業の立ち上げを目指している。なお、海外事業については現在、東南アジア4ヶ国(ベトナム、タイ、インドネシア、シンガポール)と台湾でサービス展開している。現在、1%程度の売上構成比を早期に10%程度まで引き上げていくことを目標としている。


■アフィリエイト広告市場の見通しと同業他社比較

EV/EBITDA倍率では同業の中で最も過小評価されている

アフィリエイト運営会社の大手は同社のほかファンコミュニケーションズ、アドウェイズ、バリューコマース、リンクシェア・ジャパン(株)(楽天<4755>の子会社)の4社が挙げられる。売上高規模はその他の事業も展開しているため各社ばらつきがあるものの、同社も含めた5社合計のアフィリエイトサービスにおける業界シェアは6割程度とみられ、同社は1割強のシェアとなっている。

同業他社の特徴について見ると、ファンコミュニケーションズは2018年3月時点でパートナーサイト数が241万サイト、稼働広告主ID数で3,400件を超えており、業界最大規模となっている。中小企業向け広告ビジネスを長くやっており、eコマース向けの依存度が比較的高いのが特徴だ。業績面ではITP問題やアドネットワーク広告事業における広告単価下落の影響もあって低迷しており、2018年12月期の営業利益は前期比13.0%減と2期連続の減益を見込んでいる。ただ、営業利益率は13%と高く、高収益性は維持している。アドウェイズはモバイル向け比率が約5割(対国内広告売上高)となっており、ゲーム系に強みを持つ。海外事業やアプリ・メディア事業などまだ収益化していない事業を抱えていることから全体の利益率は低いが、広告事業だけの営業利益率は2018年3月期で約6%の水準となっている。バリューコマースはヤフー<4689>の子会社であり、2018年3月時点のパートナーサイト数は70万サイト、広告主数は1,539件となっている。業種別売上構成比で金融カテゴリーが3割強と高いことが特徴で、営業利益率も13%台と高い。

これら上場企業の中で、インタースペースのインターネット広告事業の営業利益率を見ると、2018年9月期第2四半期累計で3.1%と低水準となっている。海外事業がまだ収益化していないことや、提携サイト、広告主開拓のためのコスト、新規事業開発コストなどを積極的に投下していることなどが要因と見られる。ただ、海外事業については売上増に伴い収益性が改善し始めていること、国内ではデータ分析に基づく営業活動を開始するなど、生産性の向上が見込めること等から、今後の利益率向上余地は大きいと弊社では見ている。

なお、株価指標では2018年度の予想PERでは21倍と他3社と比較して特段の割安感は見られないものの、EV/EBITDA倍率で7.7倍台と他3社に比較して最も低い水準となっている。EV/EBITDA倍率とは、企業を買収する場合に、その企業価値(時価総額+有利子負債−現預金及び有価証券)に対して、期間収益(営業利益+償却費)の何年分で回収できるかを簡易的に指標化したものとなる。倍率が低いほど時価総額が過小に評価されていることになる。EBITDAについては今後の成長性も加味する必要があるため、単年度の数字だけで判断するのは早計だが、同社の業績は今後も増収増益が続く見通しであることから、EV/EBITDA倍率も見直される余地はある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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