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シュッピン Research Memo(2):大幅増収増益で過去最高を更新。すべての販売チャネルがまんべんなく増収

注目トピックス 日本株
■業績の動向

1. 2018年3月期決算の概要
シュッピン<3179>の2018年3月期決算は、売上高30,921百万円(前期比23.7%増)、営業利益1,536百万円(同40.1%増)、経常利益1,521百万円(同41.1%増)、当期純利益1,077百万円(同45.4%増)と、大幅増収増益で着地した。同社は2018年2月5日に通期見通しについて上方修正を発表したが、それをさらに上回った。

製品別では主力のカメラが20%超、時計が30%超の大幅増収となった。販売チャネル別でも、EC、店舗、店舗における免税売上(インバウンド売上)のいずれもが前期比増収となり、同社の事業がほぼまんべんなく収益を拡大させた。

利益面では、売上総利益率が前期の16.8%から当期は16.5%へと0.3ポイント悪化したが、販管費のコントロールが今期も行き届き、売上高販管費率が前期の12.4%から当期は11.5%に0.9ポイント低下した。その結果、営業利益率は前期比0.6ポイント改善し、5.0%に達した。

売上総利益率の低下は、上期(第2四半期累計期間)決算に対する前回レポート(2017年12月22日付)で述べたところと同じだ。すなわち、時計の好調による売上構成比の変化と、中古カメラの買取が想定以上の好調だったことを受けて、在庫を適正かつフレッシュに保つべく販売促進を図ったことが主な要因だ。買取については、同社の事業モデルにおいて中古品の取扱いが果たす意義は極めて大きく、中古品をしっかりと買取ができていることこそが重要なことであるという従来からの考えに変化はない。

販管費は前年同期比14.9%増の3,568百万円だった。内容を見るとほとんどの費目が前期比では増額となっているものの、対売上高比率では逆に大半が低下している。費目の中で特に注目されるのは広告宣伝費で、当期は前期比15.0%(9百万円)減少し、対売上高比率は0.2%にまで低下している。売上高が300億円の大台を超えたなかで、同社の広告宣伝費の少なさは、同社の事業モデルの特異性と強みを改めて強調するものと言えるだろう。

2. 四半期別業績・主要KPIの動向
(1) 四半期ベースの業績推移
四半期別業績の推移を見ると、需要期の第3四半期に前年同期比32.0%増と順調に伸びたのち、第4四半期も前四半期比減少幅を3.6%と最小限にとどめることができた(前年同期比では15.4%の増収)。大型新商品がないなかで、第4四半期に勢いを維持できた背景には、カメラの買取と販売の好調が第4四半期も続いたことがある。シュッピン<3179>が進めたOne-To-Oneマーケティングなどの各種施策が、こうした結果に大きく貢献しているとみられる。

(2) 中古品買取額の状況
一部前述したところと重なるが、同社を初めリユース事業者全般に共通な最重要経営課題は中古品の買取だ。この点について同社は、ワンプライス買取や先取交換などの業界初の試みや斬新なアイデアを投入して買取額の増加に取り組んできた。2016年10月開始のOne-to-OneマーケティングのPhase 2には、買取増加のための仕組みとして買取価格の変動をメールで知らせる機能を盛り込んだ。これが予想以上の効果を発揮し、当期の買取額増加に大きく貢献した。

上記の要因から2018年3月期はカメラ在庫が想定以上に集まったが、同社はそれに臆することなく、販売を増やして在庫回転を速めることで対応したということだ。同社のビジネスモデルにあっては豊富な在庫こそが集客の最大のパワーであり武器であるという信念が一貫して貫かれている。販売数量増のためには販促策の強化を行い、それが粗利益率の低下を招いた側面もあったが、2018年3月期からは優待チケットという新たな取り組みをスタートさせており、今後は粗利益率低下を避けられる見通しだ(詳細は後述)。

(3) 販売における中古品比率の状況
売上に占める中古品比率は、2018年3月期は45%前後で安定的に推移した。同社にあっては、一般的には中古品の方が新品よりも利益率が高い傾向にあるため、中古品比率は高いに越したことはないと考える向きもあるだろう。しかしながら、同社にとっては新品販売も重要な要素であり、中古品比率が極端に高まることは必ずしも良いとは言えないというのが弊社の考えだ。2018年3月期に中古品比率が抑制された理由の1つは、時計の売上高が前期比32.6%増と大きく伸長したことがある。時計は新品の比率が高いため、ここが伸びると全体の中古品比率が下がる傾向にある。

弊社では、同社の成長はむしろ新品売上高の伸長によってもたらされ、中古品の取引(買取・販売)拡大は、新品売上増大の触媒の役目と理解している。2018年3月期の全体的な動き、なかでも時計の動きを見ると、現状の中古品比率は現状の同社にとって適切な水準だと弊社では考えている。

(4) 免税売上高の状況
2018年3月期の免税売上高は3,005百万円で前期比79.1%増となった。ピークの3,535百万円(2015年3月期)にはとどかないまでも、2016年3月期の2,947百万円をわずかに抜いて2位となった。店舗売上高に対する四半期ベースの動きを見ても、第1四半期から次第に増加基調をたどった。過去の急変動の経験もあって、同社自身は免税売上高については月商1億円〜1.5億円程度しか予算には織り込んでいなかったとみられるが、実態は過去のインバウンドバブル期に近づきつつあると言える。

現状の免税売上高の状況をどう評価するかは難しいところだ。方向性としては今後も増加基調が想定されるため、重要な成長エンジンの1つとしてポジティブに評価するか、過去にみられたような業績急変のリスク要因として考えるか、2つの方向性がある。弊社ではポジティブに評価して良いのではないかと考えている。理由は、店舗売上高に占める免税売上高の割合が、25%の水準にとどまっていることがある。2016年3月期はこれが30%に達した。この意味するところは、免税以外の店舗売上高も順調に拡大しているということだ。EC売上高も同様に成長しており、免税売上高の変動が及ぼす影響は従来に比べて減少しているとみている。


主力のカメラと時計が大幅増収。One-to-Oneマーケティングなどの取り組みが貢献
3. 事業セグメント別動向
(1) カメラ事業
カメラ事業の業績は、売上高21,937百万円(前期比21.0%増)、営業利益1,833百万円(同27.1%増)と増収増益となった。営業利益率は8.4%で前期の8.0%から0.4ポイント改善した。販路別内訳は、EC売上が15,545百万円(同21.4%増)、店舗売上が6,391百万円(同19.9%増)と同じような伸びとなった。同社が進めてきた各種施策は最大商材であるカメラを対象とするものが多いが、今期はOne-to-Oneマーケティングの各種施策が、販売面でも本格的に機能し、売上拡大につながった。具体的には、顧客が「欲しいリスト」に入れた商品に対して価格変更情報や入荷情報を送付するサービスで、前述の買取額増加とあいまって、「中古カメラの買取増⇒カメラの販売増⇒中古の買取増・・・」という正の循環ができ、売上増をもたらした。

(2) 時計事業
時計事業は、売上高7,974百万円(前期比32.6%増)、営業利益475百万円(同54.5%増)となった。営業利益率は6.0%で前期の5.1%から0.9%ポイント改善した。販路別ではEC売上が2,784百万円(同21.7%増)、店舗売上が5,190百万円(同39.3%増)と、主力の店舗売り上げがより高い伸びを示した。同社は2018年3月期、積極的に在庫投資を行った。同社が扱う高級機械時計の分野は、在庫(すなわち現物)の存在自体が大きな集客力を生む。同じことは同社の商材全般に言えるが、なかでも時計はその傾向が強い。ECでは画像30カット掲載策により、商品の状態を画面で確認できるようにしたことや、カメラ同様One-to-Oneマーケティングの効果によって販売を伸ばしたとみられる。

(3) 筆記具事業
筆記具事業は売上高573百万円(前期比12.2%増)、営業利益39百万円(同15.6%減)と増収減益となった。販路別売上高は、EC売上高395百万円(同13.7%増)、店舗売上177百万円(同8.9%増)となった。Kingdom Noteブランドの浸透に加え、「こだわり検索」の導入や画像データの拡充が奏功したとみられる。営業利益については、積極的な販売施策の実施で売上総利益率が低下し、減益となった。

(4) 自転車事業
自転車事業は売上高436百万円(前期比28.6%増)、営業損失4百万円(前期は14百万円の損失)となった。自転車では「こだわり検索」の導入や画像データの拡充に加え、オムニ戦略(ECサイトで集客を図り、店舗での販売を強化)で臨み、所期の増収を達成した。販路別ではEC売上が前期比32.1%増の337百万円、店舗売上の同18.0%増の99百万円とECがより高い増収率となった。営業利益については販促のための諸費用を積み増したため黒字転換にはわずかに及ばなかった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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