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シュッピン Research Memo(3):EC特化型という事業モデルを生かす効果的な施策を継続的に実施

注目トピックス 日本株
■成長に向けた施策と進捗状況

1. 成長への取り組みの流れ
シュッピン<3179>の事業モデルの特長・強みは、1)リユース事業者に分類されるが取扱商材を“価値あるもの”に絞り込んでいる、2)店舗を1店舗のみとしたEC特化型モデルである、3)中古品と新品の両方を伸ばすことで成長を目指している、の3点にあると弊社では理解している。同社の軌跡を振り返ると、成長のために施策について、同社が論理的かつ段階的に、正しい道筋をたどって実施してきたことが今日の成功につながっているというのが、弊社の一貫した評価だ。

同社はワンプライス買取や先取交換で買取機能の強化にまず取り組み、その後は売上拡大に舵を切り替え様々な施策を矢継ぎ早に繰り出してきた。特に同社はEC特化型の事業モデルと相性が良いCGM(Consumer Generated Media、消費者生成メディア)マーケティングに早期から注目し、活用に取り組んできた。具体的には、「見積りSNS」や「コミュレビ」のローンチが挙げられる。また、ECの生命線とも言える商品画像については、精密画像の採用と画像点数の大幅アップを実施した。これらの目に見える施策の裏側で、業務の効率性アップを図って基幹システムの一新も行った。そして2017年3月期からは、個人に向けたマーケティングの強化と、顧客の消費行動のサイクルのすべてに同社が関与する体制の構築を目指した。


Phase 3が終了。既存会員のアクティブ化におい効果が明確に発現
2. 『One-to-Oneマーケティング』の進捗状況
2017年3月期と2018年3月期は、特に売上拡大に向けた施策に取り組んだ。その中核が個人に向けたマーケティングの強化であるOne-to-Oneマーケティングだ。これはPhase(フェーズ)1から4までの4段階に分かれており、2018年3月期までにPhase 3までが終了している。

同社の売上高は2018年3月期で300億円の大台を超えた。売上高が100億円から300億円に至る過程では年20%の増収を続けてきたが、300億円を超えた現在では、15%増収でも年間の増収額は約50億円となる。このハードルは決して低くはない(業績計画の詳細は後述)。これまでの同社は、自社(及びECサイト)の認知度向上や信頼性向上に努め、ECでカメラや時計などの高額品を購入するニーズを掘り起こすことに注力し、成長を遂げてきた。しかし300億円を超えてくると、新規顧客(すなわち新規会員)の獲得だけでなく、既存会員を活性化させることが不可欠になってくる。One-to-Oneマーケティングの主眼はまさにそこにある。さらに言うと、既存会員でも眠れる会員を掘り起こすのではなく、現在アクティブな会員をさらに活性化させる点に力点が置かれているのがポイントだ。

One-to-OneマーケティングがPhase 3まで完了した結果、顧客1人ひとりに合わせたトップページパーソナライズ化が完成している。パーソナライズ化の具体的内容は、1)過去の閲覧履歴に基づくおすすめの表示、2)購入履歴・マイアイテムに基づくおすすめの表示、3)購入商品、保有商品の買取価格変更情報の掲載、4)欲しいリストに登録された商品の入荷情報・販売価格変更情報の掲載、の4点から成っている。

One-to-Oneマーケティングの効果は、数値データとして明確に表れている。

同社はWeb会員(既存会員のこと)のアクティブ率を計測している。アクティブ率の定義は各期間(四半期ベースの場合は当該四半期の期初)の総会員数に対するアクティブ会員(当該期間に1度以上購入した会員)の割合だ。アクティブ(購入)会員数、アクティブ率ともに四半期を追うごとに増加・上昇基調にあることがわかる。アクティブ率の上昇が緩やかであるのは、総会員数が毎月増加しているためであり、その中でアクティブ率が上昇をしていることは、“アクティブ会員の一段の活性化”という同社の狙いどおりの効果が上がっていることを証明していると弊社では分析している。

アクティブ率上昇に貢献しているのが「欲しいリスト」への商品登録と「入荷お知らせメール」への登録だ。欲しいリストは実際に購入されるとリストから外してリセットするので上下しているが、安定的に4万人前後が登録していることがわかる。入荷お知らせメール登録者数も毎月1,500人前後が安定的に積み上がっている状況にある。欲しいリストも入荷お知らせメールもともに、既存会員が購入方向の興味を有しているサインであり、これに向けて最後の一押しの情報(価格変動情報など)を提供することでコンバージョン率上昇につなげている。


エビフォトのローンチで収益拡大のプラットフォームが完成。今後はCGMマーケティングを本格運用して収益拡大を追求のステージへ
3. 『Everybody Photographer.com』とプラットフォームの完成
Everybody Photographer.com(以下、“エビフォト”と略すとは、カメラ愛好家が自身の作品をアップする場(専用サイト)の名称だ。同社の顧客がカメラやレンズを購入後に、それらを駆使して写真を楽しむ場所という位置付けでスタートしたが、現在はMap Cameraから独立した存在とし、同社の会員・非会員を問わず、ハイアマチュアのカメラマンに広く門戸を開いている。エビフォトはカメラを購入後に楽しむための“場”という位置付けだが、その先にはカメラ市場を活性化させ、売上増加につなげるという狙いがある。ローンチ後、2018年4月末時点で約24,000枚の写真がアップされている。ハイアマチュアによる質の高い作品がそろっているのが大きな特長だ。(エビフォトについては2017年12月22日付レポートに詳しい記述がある。)

エビフォトのローンチにより、カメラ利用者の「購入前」⇒「購入時」⇒「購入後」の流れのそれぞれにおいて同社のサービスが出そろい、同社(Map Camera)からカメラを購入しやすい環境(プラットフォーム)が完成したことになる。

プラットフォームは“何かを動かすための土台となる環境”を意味している。同社がプラットフォームで動かそうとしているのが前述のCGMマーケティングだ。前述の見積もりSNSやコミュレビなどもCGMマーケティングを行う環境であり、プラットフォームの構成要素だ。わかりやすく言えば、CGMマーケティングの効果を極大化するためには、同社がこれまで行ってきた仕組みや施策の連携・連動を図ることが重要であり、連携のリングを完成させる最後のピーズがエビフォトだったということだ。

プラットフォームの完成を受けて、同社はCGMマーケティングを本格的に活用して収益拡大を目指すことになる。見積りSNSやコミュレビはCGMマーケティングのプラットフォームとしてイメージしやすいだろう。エビフォトについては、カメラを購入後に楽しむための“場”であるのは前述のとおりだが、同社はエビフォトの中の写真の撮影データを活用し、Map Cameraの個別商品のページと紐付けしている。すなわち、Map Cameraの閲覧者は当該機種による作例を参考にすることができる。一般消費者から寄せられた作例写真が別の消費者によるカメラ購入に結び付くということで、エビフォトもまたCGMマーケティングで大きな効果を発揮すると期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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