シュッピン Research Memo(4):売上高は年15%前後、経常利益は年20%台の成長を計画
[18/06/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画
シュッピン<3179>は向こう3ヶ年の中期経営計画を策定し、毎年ローリング(見直し)している。2018年5月に発表されたローリング計画では、2019年3月期と2020年3月期については売上高、利益とも従来計画から上方修正され、2021年3月期計画が新たに公表された。
業績計画の詳細を見ると、新3ヶ年計画の考え方のポイントは、1)売上高については年15%前後の成長を達成する、2)売上総利益率については2018年3月期実績の16.5%を踏まえて、17.0%を継続する、3)費用については絶対額の増加ペースを抑制し売上高販管費率の低下基調継続を目指す、というものだ。詳細は以下のとおりだ。
1. 売上高について
売上高については年平均約15%の成長を目標としている。販路別内訳はEC売上高が年20%前後、店舗売上高が同8%前後となっている。EC売上高については足元の状況と同程度を見ていることになるが、店舗売上高については2018年3月期実績の27.5%増に比べればかなり低めとなっている。これはインバウンドの影響を固めに見たためではないかと弊社では推測している。
売上高の15%増収は決して低いハードルではない。増収額に直すと約50億円だ。現状の新規会員(購入者)獲得ペースが続き、購入単価も同程度が続くと仮定すると、これまでの実績から増収額は年間30億円程度と推定される。残りの20億円は既存会員のアクティブ化アップで稼ぐ必要がある。
このための具体的な施策としてまず挙げられるのは、前述のCGMマーケティングだ。プラットフォームが完成したことで、あとは個々のCGMマーケティングの実際においてPDCAサイクルを回し、精度を高めていくことになるとみられる。また、CGMマーケティングをサポートする施策の強化(エビフォトの掲載写真数の増大や、コミュレビ数の増大、見積りSNSの操作性改善など)も重要となってくるだろう。
なお、同社は2018年3月期から越境ECを開始した。現状は北米でECモールのeBayに出店している。足元の状況からみて19年3月期は年商5億円程度を狙える状況にはあるようだ。ただし現状は国内で売上げを確保できる状況であるため、あくまで軸足は国内事業であり、越境ECは将来を見据えた実験的取り組みという位置付けとみられる。
2. 売上総利益率と費用について
同社は中期経営計画における売上総利益率(粗利益率)を3年間いずれも17%と想定している。2018年3月期実績の16.5%から改善させるという意思と、一方で粗利益率の確保に楽観はしていないという、両方向のメッセージが込められていると弊社ではみている。
費用については、2019年3月期は新卒を含めて従業員数を約30人増強予定だ。この結果、同社の販管費の最大費目である人件費が増大するため、売上高販管費率は11.8%と前年から0.3ポイント悪化する見通しだ。しかしながらその後は人員増加ペースが抑制される計画となっており、売上高販管費率も再び低下基調をたどる計画となっている。
3. One-to-Oneマーケティング Phase4について
今後の施策で弊社が特に注目するのはOne-to-OneマーケティングのPhase4だ。前述のようにPhase1〜3までは販売続伸や買取の増加など、トップライングロースに軸足を置いた施策だったが、Phase4は業務効率の改善を図る、バックヤード側の施策だ。しかし、フロントとバックのバランスの取れた強化こそが重要だと弊社では考えており、こうした施策を行う同社の経営力は非常に高いと評価している。
Phase4が具体的に目指すのは、需給バランスを見ながら買取価格と販売価格をタイムリーに変更する業務のオートメーション化だ。これまではこの作業を人間が行っていた。同社が扱う約20,000アイテムについて、この作業を継続的に人手で行うことは決して効率的とは言えない。この点に改善のためのメスを入れたことは、1つの大きな転換点になると弊社では考えている。
それ以上に重要なことは、Phase4の業務内容がPhase1〜3の施策と密接に結びついているということだ。値付けの前提となる需給バランスの判断には、同社のシステム上を流れる物流量だけでなく、「欲しいものリスト」や「入荷お知らせメール」、「買取価格変更メール」の登録状況も活用されるような仕組みとなる。要は、潜在的買い手と潜在的売り手の情報を有しており、市場価格や取引実績のデータも蓄積しているため、それらをフル活用することで、売り手と買い手をマッチングさせることが可能になる。これこそがPhase4の最大の特長・強みであり、Phase4がOne-to-Oneマーケティングの中に組み込まれている理由と言える。Phase4は業務効率化の取り組みに見えて、実は収益拡大のための施策ということだ。
■今後の見通し
● 2019年3月期業績見通し
2019年3月期通期についてシュッピン<3179>は、売上高35,381百万円(前期比14.4%増)、営業利益1,842百万円(同19.9%)、経常利益1,833百万円(同20.5%増)、当期純利益1,251百万円(同16.1%増)を予想している。
2019年3月期の業績数値や、業績予想達成に向けた取り組みの大枠は上記のとおりだ。
同社は前述した以外にも収益拡大の施策を2018年3月期末に複数開始した。また2019年3月期中に新たに開始を予定している施策もある。その主なものを以下に紹介する。これらの効果の出方次第では、会社予想に対して収益上振れも十分期待できると弊社ではみている。
「BEST CHOICE」・「GOOD CHOICE」の表示:人気商品の中古品は、同一ランクのものが多数並ぶことがある。こうした状況は消費者の迷いや買い控えにつながる可能性をあるほか、その迷いに対するソリューション提案は、店頭にあってECにないものの最たるものと言える(それがコンバージョン率の差にもつながっている)。そこで同社はキズの位置や付属品の状況などを基準に、「BEST CHOICE」・「GOOD CHOICE」の表示をする取り組みを開始した(2018年3月開始)。
「ご優待チケット」機能の開始:同社はこれまで、販売促進策としてセールを行ってきた。しかしこれはダイレクトに粗利益率低下につながるうえ、買い控えという形で数量減や回転率低下を招く可能性がある。そこで同社は「ご優待チケット」機能をスタートさせた。これはサイト利用者の全員に一斉に付与することもでき、その場合はセールと同じ効果が期待できる。しかし建値は崩れないことになる。また、一定の条件を満たした顧客にだけ付与することはもちろん、ある商品の購入者に対して関連商品について「ご優待チケット」を付与し、ついで買い、まとめ買いを誘発することも可能となる(2018年3月開始)。
商品紹介の動画を掲載:ECでは商品画像は極めて重要であり、同社は高精細画像を多数(20点〜30点)掲載する取り組みを行っている。しかしそれでも静止画では伝えきれない部分があり、それを補完する目的で動画による商品情報を追加する計画だ。上期中に効果が最も高いと期待される時計(中古時計)と自転車(中古完成車のみ)からスタートし、下期にはカメラと筆記具にも拡大する予定だ。また、YouTubeで配信を行うことで、グローバルも含めた認知度拡大を推し進めていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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シュッピン<3179>は向こう3ヶ年の中期経営計画を策定し、毎年ローリング(見直し)している。2018年5月に発表されたローリング計画では、2019年3月期と2020年3月期については売上高、利益とも従来計画から上方修正され、2021年3月期計画が新たに公表された。
業績計画の詳細を見ると、新3ヶ年計画の考え方のポイントは、1)売上高については年15%前後の成長を達成する、2)売上総利益率については2018年3月期実績の16.5%を踏まえて、17.0%を継続する、3)費用については絶対額の増加ペースを抑制し売上高販管費率の低下基調継続を目指す、というものだ。詳細は以下のとおりだ。
1. 売上高について
売上高については年平均約15%の成長を目標としている。販路別内訳はEC売上高が年20%前後、店舗売上高が同8%前後となっている。EC売上高については足元の状況と同程度を見ていることになるが、店舗売上高については2018年3月期実績の27.5%増に比べればかなり低めとなっている。これはインバウンドの影響を固めに見たためではないかと弊社では推測している。
売上高の15%増収は決して低いハードルではない。増収額に直すと約50億円だ。現状の新規会員(購入者)獲得ペースが続き、購入単価も同程度が続くと仮定すると、これまでの実績から増収額は年間30億円程度と推定される。残りの20億円は既存会員のアクティブ化アップで稼ぐ必要がある。
このための具体的な施策としてまず挙げられるのは、前述のCGMマーケティングだ。プラットフォームが完成したことで、あとは個々のCGMマーケティングの実際においてPDCAサイクルを回し、精度を高めていくことになるとみられる。また、CGMマーケティングをサポートする施策の強化(エビフォトの掲載写真数の増大や、コミュレビ数の増大、見積りSNSの操作性改善など)も重要となってくるだろう。
なお、同社は2018年3月期から越境ECを開始した。現状は北米でECモールのeBayに出店している。足元の状況からみて19年3月期は年商5億円程度を狙える状況にはあるようだ。ただし現状は国内で売上げを確保できる状況であるため、あくまで軸足は国内事業であり、越境ECは将来を見据えた実験的取り組みという位置付けとみられる。
2. 売上総利益率と費用について
同社は中期経営計画における売上総利益率(粗利益率)を3年間いずれも17%と想定している。2018年3月期実績の16.5%から改善させるという意思と、一方で粗利益率の確保に楽観はしていないという、両方向のメッセージが込められていると弊社ではみている。
費用については、2019年3月期は新卒を含めて従業員数を約30人増強予定だ。この結果、同社の販管費の最大費目である人件費が増大するため、売上高販管費率は11.8%と前年から0.3ポイント悪化する見通しだ。しかしながらその後は人員増加ペースが抑制される計画となっており、売上高販管費率も再び低下基調をたどる計画となっている。
3. One-to-Oneマーケティング Phase4について
今後の施策で弊社が特に注目するのはOne-to-OneマーケティングのPhase4だ。前述のようにPhase1〜3までは販売続伸や買取の増加など、トップライングロースに軸足を置いた施策だったが、Phase4は業務効率の改善を図る、バックヤード側の施策だ。しかし、フロントとバックのバランスの取れた強化こそが重要だと弊社では考えており、こうした施策を行う同社の経営力は非常に高いと評価している。
Phase4が具体的に目指すのは、需給バランスを見ながら買取価格と販売価格をタイムリーに変更する業務のオートメーション化だ。これまではこの作業を人間が行っていた。同社が扱う約20,000アイテムについて、この作業を継続的に人手で行うことは決して効率的とは言えない。この点に改善のためのメスを入れたことは、1つの大きな転換点になると弊社では考えている。
それ以上に重要なことは、Phase4の業務内容がPhase1〜3の施策と密接に結びついているということだ。値付けの前提となる需給バランスの判断には、同社のシステム上を流れる物流量だけでなく、「欲しいものリスト」や「入荷お知らせメール」、「買取価格変更メール」の登録状況も活用されるような仕組みとなる。要は、潜在的買い手と潜在的売り手の情報を有しており、市場価格や取引実績のデータも蓄積しているため、それらをフル活用することで、売り手と買い手をマッチングさせることが可能になる。これこそがPhase4の最大の特長・強みであり、Phase4がOne-to-Oneマーケティングの中に組み込まれている理由と言える。Phase4は業務効率化の取り組みに見えて、実は収益拡大のための施策ということだ。
■今後の見通し
● 2019年3月期業績見通し
2019年3月期通期についてシュッピン<3179>は、売上高35,381百万円(前期比14.4%増)、営業利益1,842百万円(同19.9%)、経常利益1,833百万円(同20.5%増)、当期純利益1,251百万円(同16.1%増)を予想している。
2019年3月期の業績数値や、業績予想達成に向けた取り組みの大枠は上記のとおりだ。
同社は前述した以外にも収益拡大の施策を2018年3月期末に複数開始した。また2019年3月期中に新たに開始を予定している施策もある。その主なものを以下に紹介する。これらの効果の出方次第では、会社予想に対して収益上振れも十分期待できると弊社ではみている。
「BEST CHOICE」・「GOOD CHOICE」の表示:人気商品の中古品は、同一ランクのものが多数並ぶことがある。こうした状況は消費者の迷いや買い控えにつながる可能性をあるほか、その迷いに対するソリューション提案は、店頭にあってECにないものの最たるものと言える(それがコンバージョン率の差にもつながっている)。そこで同社はキズの位置や付属品の状況などを基準に、「BEST CHOICE」・「GOOD CHOICE」の表示をする取り組みを開始した(2018年3月開始)。
「ご優待チケット」機能の開始:同社はこれまで、販売促進策としてセールを行ってきた。しかしこれはダイレクトに粗利益率低下につながるうえ、買い控えという形で数量減や回転率低下を招く可能性がある。そこで同社は「ご優待チケット」機能をスタートさせた。これはサイト利用者の全員に一斉に付与することもでき、その場合はセールと同じ効果が期待できる。しかし建値は崩れないことになる。また、一定の条件を満たした顧客にだけ付与することはもちろん、ある商品の購入者に対して関連商品について「ご優待チケット」を付与し、ついで買い、まとめ買いを誘発することも可能となる(2018年3月開始)。
商品紹介の動画を掲載:ECでは商品画像は極めて重要であり、同社は高精細画像を多数(20点〜30点)掲載する取り組みを行っている。しかしそれでも静止画では伝えきれない部分があり、それを補完する目的で動画による商品情報を追加する計画だ。上期中に効果が最も高いと期待される時計(中古時計)と自転車(中古完成車のみ)からスタートし、下期にはカメラと筆記具にも拡大する予定だ。また、YouTubeで配信を行うことで、グローバルも含めた認知度拡大を推し進めていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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