アクロディア Research Memo(4):2018年8月期は10期振りに経常黒字に転じる見通し
[18/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2018年8月期業績見通し
アクロディア<3823>の2018年8月期の連結業績は売上高で前期比44.1%減の1,487百万円、営業利益で52百万円(前期は363百万円の損失)、経常利益で28百万円(同401百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で40百万円(同891百万円の損失)となり、利益ベースで10期ぶりの黒字転化を見込んでいる。第2四半期までの進捗率は売上高で45.3%とおおむね計画どおりのペースとなっているが、営業利益に関しては109.8%と計画を既に超過している。
現在集計中の第3四半期については、IoT野球ボールが在庫払拭により2018年1月途中から2018年2月中旬まで販売を停止していたこともあって前四半期比で減収減益となるが、EBITDAベースでの黒字は維持したもようだ。IoT野球ボールに関しては、2018年6月6日付でスポーツ用品メーカーのSSKとの協業を発表しており、2018年9月より「SSK・i・Ball」(価格は税抜27,500円)として全国のスポーツ用品店で販売を開始する。同社の売上げとしては8月に貢献することが見込まれ、売上高の一段の拡大が期待される。また、ソーシャルゲーム「サッカー日本代表2020ヒーローズ」についても、ワールドカップ効果を追い風に新規ユーザーの獲得と同時に収益力向上のための施策を展開し、過去最高の売上を目指している(2019年8月期は課金ユーザー数の拡大により2倍の売上を目指す)。スマートフォン向けプラットフォームでは、大手キャリア1社で下期からMPIの新規導入が開始され、売上増が見込まれる。MPIについてはこれで大手3キャリアすべてのショップに導入されることになる。
その他、サブリース事業では4月に「しゃぶ鍋八八八」をプレオープンしたほか、6月には「渋谷肉横丁」に出店している26店舗のうち収益力の高い3店舗を譲受け、直営で展開していくことを発表している。直営店舗はサブリース事業よりも利益率が高いため、同事業の売上増並びに収益性向上に貢献する見通しだ。なお、3店舗の直近事業年度における売上高は71百万円となっている。
こうした状況から判断すると、2018年8月期の営業利益や経常利益については会社計画を上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
IoT等の高成長分野に重点投資し、再成長を目指す
2. 今後の成長戦略
同社は2017年までに不採算事業等の整理を終え、今後はスマートフォン向けプラットフォーム事業やサブリース事業などの安定収益基盤を固めつつ、これら事業で獲得した利益で成長分野であるIoTやブロックチェーン、AI事業に重点投資を行い、業績を再び成長軌道に乗せていく方針となっている。
(1) IoT野球ボール
IoT野球ボールについては、国内での拡大に加えて海外への展開も進めていく方針で、2019年8月期は2万個を販売目標として掲げている。2017年9月の販売開始以来、日本の独立リーグ2球団及び社会人野球チーム1球団で採用されたほか、プロ野球選手が自主トレ用で利用するなど、その性能は高く評価されている。従来はAmazon経由の販売のみであったが、SSKとの協業を発表したことで今後はSSKの販売ネットワークを使って全国のスポーツ用品店や学校、リトルリーグ、社会人野球チーム向けへの販売拡大も期待できる。製造については、従来どおり同社の生産委託先の中国工場で行う。
また、韓国プロ野球の公式球指定メーカーであるスカイラインとの協業も発表しており、今後、韓国向けの販売拡大も見込まれる。スカイライン向けにはセンサモジュールを供給する格好となるが、販売価格はほとんど変らない見込みだ。最大市場である米国についてもメジャーリーグ2チームで採用を検討しているなど、今後の動向が注目される。
また、同社はIoT野球ボールの販売だけでなく、IoTで収集した投球データを分析するアプリについても、2018年中に機能をバージョンアップし、有料サービスの提供を開始する予定となっている。自身で蓄積した投球データの分析や他人との比較分析機能など、投手の育成指導に有効なサービスの開発を進めている。利用者の増加とともに有料課金収入の増加が見込まれるため、同事業の収益性もさらに向上することが予想される。
なお、IoT野球ボールはミズノ<8022>やアシックス<7936>などが商品化を発表しているが、同社製品は角速度センサ、地磁気センサ、加速度センサの9軸センサを内蔵し、精度の高い計測データを収集できるほか(国内で特許取得済み)、乾電池内蔵のため充電不要(約1万回投球可能)で利便性も高く、公式球とほぼ同じ使用感に仕上がっているのが特徴で、アプリのサービス機能等も含めて考えると競合品と比較して優位性は高いと言える。
(2) IoTインターホン
IoTインターホンでは2019年8月期より次世代型インターホンを自社ブランド並びにOEMブランドで販売する計画となっている。LTE SIM搭載のIPインターホンとなり、インターネット回線工事が不要なほか、個人のスマートフォンで来訪者の確認・対応ができるようになる。また、顔認証機能や録画機能等も備えており、防犯対策用としての使い方も可能となる。用途先としては新築マンションや一戸建て住宅のほか、警備会社、無人駅や病院・介護施設、調剤薬局など来客時に対応者が不在となっている場所での利用が想定されている。
2018年3月には不動産デベロッパーのラ・アトレ<8885>とWi-Fiシステムの構築、運営サービス等を行うファイバーゲート<9450>との協業を発表しており、ラ・アトレが開発する新築及び再生マンション向けに同社のIoTインターホンを導入していく。また、住宅メーカー数社とOEM供給の協議を進めている段階にある。その他にも、大手運送会社と共同でIoTインターホンを使って、配達不在時の再配達ロスを削減する実証実験を今後進めていく予定にしている。
(3) ビンゴ向けシステム事業
グアム政府公認のビンゴ向けシステムについては、既に安定収益源となっているが、現在は専用会場でしかビンゴができないことから売上げの伸びも限られていた。このため同社ではスマートフォンでビンゴに参加できるシステムを開発中で、2018年8月期末頃に完成する予定となっている。2019年8月期にはインターネットを介して会場以外からもビンゴに参加できるようになり、参加者数の増加と自社システムの提供により収益拡大が見込まれる。
5ヶ年中期経営計画は順調な滑り出し
3. 中期経営計画
同社は2017年11月に中期5ヶ年経営計画における業績目標値を発表している。同社想定のシナリオに対して25%〜100%達成した場合の計画をレンジでは発表している。前述したIoT関連事業やビンゴ向けシステムにサブリース事業等の成長も盛り込み、2022年8月期には売上高で8,310〜28,718百万円、営業利益で740〜2,943百万円、EBITDAで871〜3,074百万円を目指す計画だ。中期経営計画初年度となる2018年8月期は、期中に上方修正を発表するなど順調な滑り出しを見せている。
同社はミドルウェアの開発力に定評があったが、ここ数年はその開発力を生かせる市場を見出しきれず苦戦を強いられてきた。しかし、ここにきてIoTやブロックチェーンなどミドルウェアの開発力を生かせる市場が立ち上がってきたこと、また、これらソリューションで提供するサービスの企画力や運営ノウハウも蓄積できたことから、再成長に向けた環境は整ったと言え、今後の成長分野での事業展開に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MW>
1. 2018年8月期業績見通し
アクロディア<3823>の2018年8月期の連結業績は売上高で前期比44.1%減の1,487百万円、営業利益で52百万円(前期は363百万円の損失)、経常利益で28百万円(同401百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で40百万円(同891百万円の損失)となり、利益ベースで10期ぶりの黒字転化を見込んでいる。第2四半期までの進捗率は売上高で45.3%とおおむね計画どおりのペースとなっているが、営業利益に関しては109.8%と計画を既に超過している。
現在集計中の第3四半期については、IoT野球ボールが在庫払拭により2018年1月途中から2018年2月中旬まで販売を停止していたこともあって前四半期比で減収減益となるが、EBITDAベースでの黒字は維持したもようだ。IoT野球ボールに関しては、2018年6月6日付でスポーツ用品メーカーのSSKとの協業を発表しており、2018年9月より「SSK・i・Ball」(価格は税抜27,500円)として全国のスポーツ用品店で販売を開始する。同社の売上げとしては8月に貢献することが見込まれ、売上高の一段の拡大が期待される。また、ソーシャルゲーム「サッカー日本代表2020ヒーローズ」についても、ワールドカップ効果を追い風に新規ユーザーの獲得と同時に収益力向上のための施策を展開し、過去最高の売上を目指している(2019年8月期は課金ユーザー数の拡大により2倍の売上を目指す)。スマートフォン向けプラットフォームでは、大手キャリア1社で下期からMPIの新規導入が開始され、売上増が見込まれる。MPIについてはこれで大手3キャリアすべてのショップに導入されることになる。
その他、サブリース事業では4月に「しゃぶ鍋八八八」をプレオープンしたほか、6月には「渋谷肉横丁」に出店している26店舗のうち収益力の高い3店舗を譲受け、直営で展開していくことを発表している。直営店舗はサブリース事業よりも利益率が高いため、同事業の売上増並びに収益性向上に貢献する見通しだ。なお、3店舗の直近事業年度における売上高は71百万円となっている。
こうした状況から判断すると、2018年8月期の営業利益や経常利益については会社計画を上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
IoT等の高成長分野に重点投資し、再成長を目指す
2. 今後の成長戦略
同社は2017年までに不採算事業等の整理を終え、今後はスマートフォン向けプラットフォーム事業やサブリース事業などの安定収益基盤を固めつつ、これら事業で獲得した利益で成長分野であるIoTやブロックチェーン、AI事業に重点投資を行い、業績を再び成長軌道に乗せていく方針となっている。
(1) IoT野球ボール
IoT野球ボールについては、国内での拡大に加えて海外への展開も進めていく方針で、2019年8月期は2万個を販売目標として掲げている。2017年9月の販売開始以来、日本の独立リーグ2球団及び社会人野球チーム1球団で採用されたほか、プロ野球選手が自主トレ用で利用するなど、その性能は高く評価されている。従来はAmazon経由の販売のみであったが、SSKとの協業を発表したことで今後はSSKの販売ネットワークを使って全国のスポーツ用品店や学校、リトルリーグ、社会人野球チーム向けへの販売拡大も期待できる。製造については、従来どおり同社の生産委託先の中国工場で行う。
また、韓国プロ野球の公式球指定メーカーであるスカイラインとの協業も発表しており、今後、韓国向けの販売拡大も見込まれる。スカイライン向けにはセンサモジュールを供給する格好となるが、販売価格はほとんど変らない見込みだ。最大市場である米国についてもメジャーリーグ2チームで採用を検討しているなど、今後の動向が注目される。
また、同社はIoT野球ボールの販売だけでなく、IoTで収集した投球データを分析するアプリについても、2018年中に機能をバージョンアップし、有料サービスの提供を開始する予定となっている。自身で蓄積した投球データの分析や他人との比較分析機能など、投手の育成指導に有効なサービスの開発を進めている。利用者の増加とともに有料課金収入の増加が見込まれるため、同事業の収益性もさらに向上することが予想される。
なお、IoT野球ボールはミズノ<8022>やアシックス<7936>などが商品化を発表しているが、同社製品は角速度センサ、地磁気センサ、加速度センサの9軸センサを内蔵し、精度の高い計測データを収集できるほか(国内で特許取得済み)、乾電池内蔵のため充電不要(約1万回投球可能)で利便性も高く、公式球とほぼ同じ使用感に仕上がっているのが特徴で、アプリのサービス機能等も含めて考えると競合品と比較して優位性は高いと言える。
(2) IoTインターホン
IoTインターホンでは2019年8月期より次世代型インターホンを自社ブランド並びにOEMブランドで販売する計画となっている。LTE SIM搭載のIPインターホンとなり、インターネット回線工事が不要なほか、個人のスマートフォンで来訪者の確認・対応ができるようになる。また、顔認証機能や録画機能等も備えており、防犯対策用としての使い方も可能となる。用途先としては新築マンションや一戸建て住宅のほか、警備会社、無人駅や病院・介護施設、調剤薬局など来客時に対応者が不在となっている場所での利用が想定されている。
2018年3月には不動産デベロッパーのラ・アトレ<8885>とWi-Fiシステムの構築、運営サービス等を行うファイバーゲート<9450>との協業を発表しており、ラ・アトレが開発する新築及び再生マンション向けに同社のIoTインターホンを導入していく。また、住宅メーカー数社とOEM供給の協議を進めている段階にある。その他にも、大手運送会社と共同でIoTインターホンを使って、配達不在時の再配達ロスを削減する実証実験を今後進めていく予定にしている。
(3) ビンゴ向けシステム事業
グアム政府公認のビンゴ向けシステムについては、既に安定収益源となっているが、現在は専用会場でしかビンゴができないことから売上げの伸びも限られていた。このため同社ではスマートフォンでビンゴに参加できるシステムを開発中で、2018年8月期末頃に完成する予定となっている。2019年8月期にはインターネットを介して会場以外からもビンゴに参加できるようになり、参加者数の増加と自社システムの提供により収益拡大が見込まれる。
5ヶ年中期経営計画は順調な滑り出し
3. 中期経営計画
同社は2017年11月に中期5ヶ年経営計画における業績目標値を発表している。同社想定のシナリオに対して25%〜100%達成した場合の計画をレンジでは発表している。前述したIoT関連事業やビンゴ向けシステムにサブリース事業等の成長も盛り込み、2022年8月期には売上高で8,310〜28,718百万円、営業利益で740〜2,943百万円、EBITDAで871〜3,074百万円を目指す計画だ。中期経営計画初年度となる2018年8月期は、期中に上方修正を発表するなど順調な滑り出しを見せている。
同社はミドルウェアの開発力に定評があったが、ここ数年はその開発力を生かせる市場を見出しきれず苦戦を強いられてきた。しかし、ここにきてIoTやブロックチェーンなどミドルウェアの開発力を生かせる市場が立ち上がってきたこと、また、これらソリューションで提供するサービスの企画力や運営ノウハウも蓄積できたことから、再成長に向けた環境は整ったと言え、今後の成長分野での事業展開に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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