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宇徳 Research Memo(5):邦船3社がコンテナ船事業を統合へ

注目トピックス 日本株
■事業概要

5. 日本のコンテナ船業界の再編
宇徳<9358>は京浜港において商船三井のコンテナターミナルオペレーターを務めているが、商船三井のコンテナ船事業のセグメント別経常利益は2012年3月期以来赤字が続いている。コンテナ船事業では、規模の経済の重要性が決定的に増しており、内陸輸送費など交渉力やコスト競争力での優位性を発揮する。市場は、新造大型船の竣工が相次ぎ、世界的な船腹過剰という構造的問題を抱えている。

(1) 海運会社の国際共同運航連合の再編
海運業界では、世界網のコンテナ定期航路の維持と巨額の造船投資をシェアする海運アライアンスが進んでいる。デンマークのAPM-マークスが約15.6%のトップシェアを持ち、スイスのMSCが13.4%で続く。この2社で世界最大の国際共同運航連合体である「2M」を組成していた。同アライアンスに、2017年4月から韓国の現代商船が加入し、名称が「2M+H」となった。従来は、圧倒的なシェアを誇る「2M」と「G6」、「OCEAN 3」及び「CKYHE」が存在していた。各アライアンスが再編されて、2017年4月に「オーシャン・アライアンス」と日本企業が加入する「ザ・アライアンス“THE Alliance”」が結成され、サービスを始動した。

邦船3社の統合新会社が加盟する「ザ・アライアンス」は、航路のマイナーチェンジを発表した。同連合は、約240隻のコンテナ船を運航し、75港を超える直接寄港地、32サービスによる広範なネットワークを組成する。そのうちは、東京港に寄港するのは6サービスで、1サービス当たり1回か2回の寄港になる。具体的には、アジア/北欧州航路が1サービス(1回のみ)、アジア/北米西岸航路が4サービス(1サービスが1回、3サービスが2回)、アジア/北米東岸航路が1サービス(2回)である。

(2) 邦船3社のコンテナ船事業の収益
邦船3社は、コンテナ事業を主体に構造改革に関連する特別損失が発生し、当期純損失の合算額が2016年3月期に△2,037億円、2017年3月期に△4,000億円に上った。2018年3月期は、日本郵船<9101>と川崎汽船<9107>がコンテナ船事業の黒字化を果たし、商船三井は損失を前期比3分の1の106億円に縮小した。北米航路往航及び欧州航路往航とも荷動きが過去最高水準に復活した。2019年3月期は、事業を統合会社に移管したため、コンテナ船の売上高計上がなくなり、営業外収益に持分法投資損益が反映されることになる。

(3) 日本海運3社がコンテナ船事業の共同出資会社を設立へ
同社港湾事業の主要顧客である商船三井は、日本郵船並びに川崎汽船と定期コンテナ船事業の統合を決めた。船隊規模は約140万TEU(20フィート・コンテナ換算)となり、世界シェアは約7%と6位に上昇する。2018年度の売上高は13,160百万米ドルが見込まれている。2017年7月に、共同出資会社「OCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)」が設立された。合弁企業への出資額は現物出資を含め約3,000億円で、出資比率は日本郵船が38%、商船三井と川崎汽船が各31%となる。同年8月にはベストプラクティスを結集した基幹システムの構築を完了。より効率的な資金管理のため、グローバル・キャッシュ・マネジメントシステムの採用を決定している。2017年10月より営業を始め、2018年4月から新会社としてのサービスをスタートした。

統合新会社は、全体のガバナンスを担う組織となる持株会社オーシャン ネットワーク エクスプレス ホールディングス(株)を日本に置く。同社の会長には商船三井出身の田邊昌宏(たなべまさひろ)氏が就任し、川崎汽船と日本郵船出身者が副会長となった。事業運営は、シンガポールのOcean Network Express Pte. Ltd.が担い、日本郵船のジェラミー・ニクソン氏がCEOに就いた。また、各地域の事業を統括する会社を、香港、シンガポール、英国、米国、ブラジルに設けた。6月に、田邊氏が同社代表取締役社長に就任するため、ONE社持株会社の会長職を退くことになる。

ONE社の3ヶ年事業計画における損益計画は、初年度の2018年度に売上高を13,160百万米ドル(上期6,269百万米ドル:下期6,891百万米ドル)、連結当期純利益を110百万米ドル(同3百万米ドル:107百万米ドル)としている。売上高は、2019年度に前期比5.5%増の13,879百万米ドルへ、2020年度に同2.3%増の14,193百万米ドルを予想している。当期純利益は、それぞれ前期比2.8倍の313百万円、同2.1倍の648百万米ドルを見込む。売上高当期純利益率は、初年度の0.8%から、2年目に2.3%へ、3年目は4.6%へ向上すると予想している。事業統合によるシナジー効果は、当初見込みの年間1,028百万米ドル(1,100億円)から1,050百万米ドル(1,124億円)に引き上げられた。シナジー効果の現出ペースは、初年度に60%程度、2年目に80%程度、3年目にフルに寄与すると見ている。

年間1,050百万米ドルが予想されているシナジー効果の内訳は、変動費削減が430百万米ドル、一般管理費削減が370百万米ドル、配船・運航費効率化が250百万米ドルとなる。ターミナルは、変動費削減に含まれている。邦船3社のコンテナ船事業統合による同社への影響を推測することは難しい。商船三井の場合、東京港の貨物取扱量は全世界の1割に満たない。東京港大井ふ頭のコンテナターミナルは、川崎汽船が1−2号バース、商船三井が3−4号、日本郵船が6−7号を使用している。コンテナ船事業の再編は、海外から始まり、その進展を見てから国内事業を検討すると思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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