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三和HD Research Memo(6):基幹商品(シャッター・ドア)での利益確保が成長戦略の根幹

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

2. 国内事業の成長戦略と進捗状況
国内事業における成長戦略は、1)基幹商品の利益確保と、2)多品種化の推進、の2つが根幹となっている。また、2019年3月期以降は、メンテ・サービス受注の拡大も大きな成長エンジンとして期待が高まっている。以下ではそれぞれについて概略を述べる。

(1) “基幹製品の利益確保”の取り組み
三和ホールディングス<5929>の国内事業における基幹製品は言うまでもなくシャッター製品(軽量・重量シャッター並びにシャッター関連製品)とドア製品だ。

東京オリンピックに向けた建設ラッシュと言われることも多いが、基幹製品の受注環境は必ずしも楽観はできない。非住宅分野の建築需要は同社が第2次中期経営計画を策定した時よりも低い状況だ。また2018年3月期の受注実績は前期比・計画比ともに下回った。こうしたなかで“利益確保”を実践するには、受注獲得は言うまでもないが、工事全体の進捗を見極めて計画どおりに納入していく工程管理も重要と考えられる。

それにもまして重要なポイントは諸々のコストアップ要因への対応だ。受注と納入の間に1年〜2年ものタイムラグがあるため、その間に鋼材を始めとする原材料価格や人件費・労務費等の変動リスクがある。国内の商慣習では、そうしたコスト変動を販売価格に転嫁するのは難しい。また、日本社会の構造問題から人手不足は常態化しており、施工費や物流費などの上昇を招いている状況にある。

こうした状況に対する同社の対応は、まず受注価格や施工費、物流費等の適正化が挙げられる。足元では、受注採算は改善傾向にあるほか、施工費、物流費についても、前期までに発生したコストアップ分に関しては、今期の販価に転嫁を進める方針だ。今期中に更なるコストアップがなければ、一旦は採算が従来水準に戻ることが期待される。

国内事業を担う三和シヤッター工業の過去業績を振り返ると、リーマンショックの影響を引きずった2010年代前半は営業利益率が1ケタ台前半で低迷していたが、半ば以降は急速に営業利益率を改善させ、その後は10%前後で推移している。利益率改善の過程を振り返ると、需要増加に伴う数量増加や販売価格上昇、コストコントロール強化の貢献など、年ごとに増益要因の顔ぶれが変わっている。利益率改善に向けた同社の取り組みが、事業環境にも支えられながら着実に進捗した結果と弊社では考えている。そうしたプロセスを経て、三和シヤッター工業は10%前後の営業利益率を安定的に確保する収益力を身に着けるに至ったと弊社ではみている。2018年3月期は9.1%に低下したが、コストアップ要因の価格転嫁が進捗すれば、営業利益率を早期に10%台に回復させることは十分可能だと弊社ではみている。

(2) “多品種化”の取り組み
多品種化の取り組みは従前より着実に進められてきている。間仕切では、2017年4月に、日本スピンドル製造(株)より、学校間仕切を主とする建材事業を譲り受け、三和スピンドル建材を設立した(その後、2018年4月に三和システムウォールに社名変更)。今後は三和システムウォールと他の国内グループ会社の製販連携を強化して収益拡大につなげる方針だ。

高速シートシャッターや防水シャッターは“環境建材”という視点から今後の成長が期待されている。高速シートシャッターは保温性の観点からニーズが高まっており、同社は商品ラインアップの拡充を進めている。防水シャッターはその施工実績が評価され、東京以外に京都、大阪、九州などに着実に拡大している。

(3) メンテ・サービス受注の拡大
現在、メンテ・サービス受注の拡大に大きな期待が高まっている状況だ。背景は建築基準法改正によって、防火設備(防火シャッター、防火ドアなど)の定期検査報告制度が変更されたことだ。具体的には、2016年6月から、防火設備の定期報告(検査)が年1回とされた。ただし、3年間は経過措置期間とされ、2016年6月から2019年3月末までの3年間に定期報告を行い、その後(2019年4月以降)は法に従い年1回の報告が求められることになる。

対象となる建築物は、終身福祉施設や、映画館、ホテル、商業施設、飲食店、など不特定多数の人が集まる商業施設等で一定の面積を有するものや、特定の階層にあるものとなっており、非常に幅広くカバーされている。

これらの施設は法改正を受けて防火設備の検査及び整備(不備があれば)が義務化されたが、前述のように3年間の経過措置があるため、当初の2年間は動きがスローだった。2018年度は経過期間の最終期にかかるため、点検需要が一気に拡大してくるとみられる。また経過期間が終わった後は高原(プラトー)状態が継続することになる。

収益貢献という点では、検査自体の収益性は高くないとみられるが、検査の結果生じるであろう修理需要に期待が高まる。特に今来期はビルや施設の竣工以来初の点検となるケースが多いと想定され、修理需要が大きく立ち上がる可能性がある。

こうした状況に対して同社は、防火設備検査員資格保有者の確保を過去数年、着実に進めてきた。2018年3月末時点では社内に約2,100名の資格保有者を擁している。また、実際に修理を行う施工技術者の充足も同時に進めており、施工技術者数は約3,800名に達している。同社はこの体制で想定される需要には対応可能としている。


ディストリビューター網の強化でドア販売の拡大を目指す一方、カナダ子会社・ISDの回復で川下展開の進捗にも期待
3. 北米事業の成長戦略と進捗状況
北米事業では、“コア事業の拡大と基盤強化による成長”をスローガンに、ドア部門(製品タイプとしてはシャッターやオーバーヘッドドア)の強化や川下事業戦略、開閉機事業の強化に取り組んでいる。

ドア部門ではまず、大都市圏での売上拡大を目指し、代理店、ディーラーなどのディストリビューターのネットワーク強化を図っている。北米でも原材料価格の上昇は起きており、その価格転嫁も進めている。ODCは2018年1月と6月に価格改定を行った。生産効率化の点では、新ERPの順次導入を進めている最中にある。

川下事業戦略とは、前述のように施工やアフターサービスなど最終顧客に近い領域での事業を拡大し、収益機会の拡大につなげようというものだ。同社はこの強化を狙ってかつてはODCのディストリビューターであったカナダのISDを子会社化している。ISDはカナダが地盤であるが、住宅需要が不振なタイミングにあったこともあり、ここ数年は不振だった。2019年3月期はそれが持ち直しつつあり、ISDの回復が期待されている。米国内ではODC直営店が住宅市場の好調の恩恵を受けている状況にある。ただし、金利が上昇しているさなかにあるため、注意は必要と言えるだろう。

開閉器事業はODCの子会社のGENIE(ジニー)が手掛けている。プロチャネル向けは2019年3月期以降も順調に拡大が続くと期待されている。新製品としては、WiFi接続を可能にするアプリ及び対応製品の開発を進め、スマートフォンからの操作やログを可能とするものを発売開始した。


好調な需要が欧州全域に拡大するなか、M&Aや生産拠点整備を進めて重点商品を強化・拡充し、成長を目指す
4. 欧州事業の成長戦略と進捗状況
欧州事業では、“『NF3.0』による重点商品を軸にした利益ある成長基盤の確立”をスローガンに掲げている。

ヒンジドアでは、プロジェクトセールス強化に注力している。具体的には、設計事務所などへの営業強化や、プロジェクト関連の重要顧客には専任営業員の配置などを行っている。また、生産性向上を目的にレキシンガー工場(ドイツ)に建設した塗装ラインは順調な稼働が続いている状況だ。

産業用ドア事業(形態としてはオーバヘッドドア)では、アルファ(オランダ)、ノルスード(フランス)の買収とその後の生産拠点の集約で収益基盤が大きく改善した。製品的にも、アルファ製品や、ポーランド工場で生産するドックレベラー(床やプラットフォームと、トラックの荷台との段差をなくす稼働床装置)などは高い競争力があり、これらを核に事業拡大を図る計画だ。また直近では、英国のボルトン・ゲート・サービス(BGS)を2018年1月に子会社化し、英国事業を強化した。ノルスードやBGSは産業用ドアについて川下事業も自社で展開しており、今後の展開が注目される。

ガレージドアについては、2018年3月期まで欧州全般に市場環境が良好な状態が続き、業績拡大に寄与した。2019年3月期も同様な状態が続くと期待されている。ドイツのマクロ指標に弱さが出ていると指摘する声もあるが、これまでのところは顕在化していない。むしろ、フランスやイタリアなどに好況が拡大しているプラスの面が強く出ると期待されている。


規模拡大に向けた地道な取り組みが続く。黒字体質の定着に注力
5. アジア事業の成長戦略と進捗状況
アジア事業は中国本土のほか、香港、台湾、ベトナム、韓国、タイ、インドネシアに合計8社(持分法適用会社6社、関連会社2社)を展開している。いずれも業容はまだ小さく、収益インパクトとしても、合計の営業利益が2018年3月期において1.0億円に達したところだ。基本的には各社とも、売上を拡大し、黒字体質を定着させることが最終課題という状況だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)


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