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ダイナムジャパンHD Research Memo(5):店舗数の拡大と既存店売上高の拡大の2つの軸から成る成長戦略は不変

注目トピックス 日本株
■中期成長戦略と現在の取り組み状況

2. 成長戦略と取り組み状況ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の成長戦略は、従来からの店舗数の増大による成長という軸に、既存店売上高の拡大というもう1つの軸が加わり、2つの軸で構成されている。成長戦略として2つの軸の双方が同様に重要であることは言うまでもない。業界を取り巻く事業環境や競合他社の状況に応じて、柔軟に成長戦略を使い分けていくことがポイントになると考えている。

2018年3月期においては、この成長戦略に沿って、1)遊技客数の増加への取り組み、2)
店舗数の拡大による成長、3)ローコストオペレーションの推進、の3つに主に取り組んだ。それぞれの詳細は以下に詳述するが、既存店売上高の拡大や店舗数の拡大といったトップライングロース(売上高の成長)の施策は、事業環境の変化で成果が出にくい状況にある。そうした現実を踏まえて、同社は素早く切り替え、トップライングロースの追求以上に、ローコストオペレーションの徹底による増益の確保にまい進した。その結果、減収ながら4期ぶりの増益に転じたことは前述のとおりだ。弊社では、
2018年3月期の同社の対応には、柔軟な経営判断、450店舗を擁するスケールと体力、低コスト構造、といった同社の強みが凝縮されており、これをしっかり分析することで、同社のみならず業界全体の未来予想図をより具体的にイメージできるのではないかと考えている。

(1) 遊技客数の増加への取り組み遊技客数の増加は既存店売上高の拡大のために最も重要な施策だ。同社は客数の増加
(固定客の来店数増と新規顧客の獲得)に向けて、本部、現場、全社のそれぞれのレイヤーで取り組みを進めた。

本部は全450店舗から上がってくる顧客データを一括管理している。このビッグデータとも言うべき情報を分析し、集客・販促につなげるべく、データ分析の専門部門を設置した。今後、分析スキルの向上に取り組むとともに、顧客データの収集・分析を行い実際の販促・集客に活かしていくことになる。2019年3月期にはデータに基づく営業施策が具体化してくると期待される。

現場レベルでは、ここ1〜2年、個店毎に地域性や顧客属性などの実情に応じた広告宣伝や販促活動を行い、集客増を図ってきた。それ以前の全店舗一律の広告・販促活動から180度変わった形だ。来店客一人ひとりにフォーカスした接客や取り組みを推進し、個店における好事例は本部にて開催する発表会の場で共有するとともに、イントラネットや社内SNSでも紹介し各店で活用している。

全社レベルでは、低貸玉営業の推進に取り組んだ。消費金額を抑えた日常の娯楽としての存在をアピールし、集客増を図った。

(2) 店舗数の拡大による成長店舗数の拡大の具体策として、自社標準店での出店を基本とし、チェーンストア理論に基づくローコストオペレーションを効率的に推進することに加え、近年では同業他社の店舗売却や廃業が増加していることを受けて、他社の閉鎖店舗への居抜き出店や、他社のM&Aも出店戦略の選択肢としている。

そうして臨んだ2018年3月期ではあったが、出店は6店にとどまり、そのうち他社閉鎖店舗への居抜き出店は1店舗にとどまった。出店時期は6店舗の内5店舗が上期に集中しており、これらは前期から準備が進められたものだ。下期の新規出店が1店舗にとどまったということは、上期においては新規出店の活動が停滞したことを暗示している。

この理由は、他社閉鎖店舗の中で同社の基準にかなう物件がほとんどないということがある。M&Aについても同様だ。閉鎖物件や売り物の数は増加基調にあるが、現状はまだ高いポテンシャルを持つ案件がほとんどないということだ。

自社標準店での出店についても同様に基準をクリアする物件がなかったことに加え、規制強化の影響を見定めているためと弊社では推測している。前述のようにパチンコの射幸性規制自体は一旦落ち着いたが、店舗での対応は今後3年をかけてゆっくりと進行することになる。パチスロも同様だ。参加人口や市場規模の縮小基調が続いているなか、リスク抑制の判断が働いたものとみられる。

(3) ローコストオペレーションの推進機械費や人件費などを効率的に運用して、ローコストオペレーションをさらに徹底しようという取り組みはこれまでも継続的に行われてきたことではあるが、2018年3月期は一段と強化された。

a) 機械費対策機械費は店舗経費の約4分の1を占め、項目別では人件費についで2番目に大きい項目となっている。同社は様々な角度から切り込んで機械費削減を図っている。

機械費の単価低減策としては、PB(プライベートブランド)機や中古機の導入がある。特に同社は450店舗を擁するスケールメリットを生かしてPB機の開発に力を入れている。PB機はNB(ナショナルブランド)機に比べて15%〜20%ほど単価が安いとみられる。ただ単価が安くても顧客の人気がなければ稼働率が上がらず、導入しても意味がないことになる。この点に対しては、自社保有のビッグデータを生かし、顧客の嗜好を把握・分析した上でそれを反映するような機種づくりを進めている。

直近では、2018年5月に『PAナナシーDXII88GO』の導入を発表した。これは1/88.92の低射幸機であると同時に、同社のPB機で初の新規則(2018年2月の出玉規制)適合機となっている。同社はこれを1,000台導入し、2018年6月中旬から順次店舗に設置していく計画だ。

2018年3月期末のPB機(パチンコ)の設置割合は5.2%で、前期末の3.5%から1.7ポイント上昇した。設置台数の総数は2018年3月期末で7,662台となっている。

機械費削減のもう1つの取り組みは、社内の2次使用(略して「社内流通」と称する)
による使用期間の長期化だ。通常、パチンコ台は導入後1〜2ヶ月で集客効果が低下する(すなわち、台の稼働率が低下する)。そこで同社は、集客力や稼働状況を見ながら、パチンコの台について、A店からB店へと移動させるオペレーションを行っている。これが社内流通だ。B店では当該機種が未導入であるため“新機種入荷”となり、集客効果が期待できるためだ。B店の次はC店に移動させることで、稼働期間が長期化し、パチンコ台1台当たりのライフタイムバリューはそれだけ拡大することになる。こうしたオペレーションも多店舗展開企業ならではの施策であり、450店舗を擁する同社はその効果を最大限に発揮し得る存在と言える。また、社内流通の強化は、それだけ社外からのパチンコ機の購入台数を減少させることにもつながる。

2018年2月の新規則の施行以降も既存の機種について認定を取得すれば使用期間を3年間延長できることが認められている。同社は総設置台数の約70%に当たる13万台について認定を取得済みだ。これによって集客力・収益力への規制強化の影響を最小限に抑えながら規制に適合していくことが可能になるとみられる。

b) 人件費対策本部(間接部門)においては業務フローの見直しやシステム化による書類作業軽減などを通じて業務量の削減を図った。また、本部から店舗やエリア統括への人員異動も積極的に行い、営業現場を強化するなど遊技客数増加への取り組みに注力した。

店舗の現場においてはシステム開発を強化して作業時間の短縮化を図った。具体的には同社が注力する競合店調査の入力作業を軽減したほか、デジタルサイネージの導入で販促物の掲示・撤去の作業を軽減した。

これらの施策の効果について同社では、間接部門の作業改善で生み出した原資を営業力強化に振り向けたことの効果を約1.8億円、システム開発による作業効率化で労働時間が短縮された効果を約3億円と試算している。

こうした機械費や人件費を始めとした様々なコスト削減への取り組みは、店舗運営費用にも着実に現れている。2015年3月期の1店舗当たり運営費用は約343百万円だった。
同社の継続的なコスト削減の結果、人件費、機械費、広告費、その他営業費用の4項目すべてが減少し、2018年3月期の1店舗当たり運営費用は約304百万円と、11%(年平均約4%)減少した。1店舗当たりのコスト削減額が10百万円でも450店舗集まれば4,500百万円となり、同社の業績への貢献度は非常に大きいと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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