Hamee Research Memo(4):2018年4月期は2ケタ増収増益、過去最高業績を連続更新
[18/07/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2018年4月期の業績概要
Hamee<3134>の2018年4月期の連結業績は、売上高が前期比10.3%増の9,376百万円、営業利益が同24.7%増の1,379百万円、経常利益が同20.9%増の1,266百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同25.4%増の872百万円と2ケタ増収増益となり、過去最高業績を連続更新した。また、期初会社計画比でも売上高、利益ともに上回って着地した。
事業セグメント別で見ると、コマース事業の売上高は「iFace」の販売増と海外売上の拡大により前期比8.5%増となり、また、プラットフォーム事業も契約社数増加に伴い同21.6%増となった。売上総利益率は前期比3.4ポイント上昇の50.7%となった。自社企画商品の売上構成比上昇と卸販売比率の低下により、コマース事業の売上総利益率が同5.0ポイント上昇の50.1%となったことが主因だ。プラットフォーム事業については、成長加速に向けた機能開発やサポート人員の増員、及び契約社数5千社達成に向けたインフラ投資を実施したこと等により、同9.0ポイント低下の54.0%となった。
販管費率は前期比1.8ポイント上昇の36.1%となった。物流費率は前期比0.5ポイント低下したものの、人件費率が同0.6ポイント、支払手数料率が同1.0ポイント上昇したことが要因だ。支払手数料の増加はコマース事業におけるAmazon経由の販売増によりFABサービス※に関連する支払手数料が増加したことが主因となっており、FABサービスのコストも含めると、物流費率はほとんど変らない水準だったと見られる。一方、人件費については国内の営業体制強化や韓国子会社の人員増に加えて、2018年4月期より新たに中国、インドの子会社を連結対象としたことが増加要因となっている。
※FBA(フルフィルメント by Amazon)サービスとは、商品の注文処理から出荷・配送・返品までの物流工程を一括してAmazonが引き受けるフルフィルメントサービスのこと。
この結果、2018年4月期の売上高営業利益率は前期比1.7ポイント上昇の14.7%と過去最高水準となった。営業外収支が若干悪化したが、これは持分法による投資損失が前期の10百万円から71百万円に拡大したことが主因となっている。2017年4月期に持分法適用関連会社としたシッピーノ(株)(出資比率36.7%)※の業績改善が想定よりも遅れたことにより、のれん未償却残高に相当する金額等も含めて今回、持分法投資損失として計上したことによる。直近では単月ベースで黒字化しており、2019年4月期以降については持分法投資損益の改善が見込める状況となっている。
※シッピーノ…EC事業者の出荷業務を自動化するツール「シッピーノ」の運営開発会社。業務資本提携とともに、ネクストエンジンのFBA(フルフィルメント by Amazon)マルチチャネルサービスと「シッピーノ」を連携し、EC事業者の出荷作業の完全自動化を実現するサービスの提供を開始している。出資額は1億円だが、2018年4月期第2四半期の単独決算において関係会社株式評価損として80百万円を計上した。
「iFace」は旧機種向けが好調、「ネクストエンジン」は契約社数5,000社達成に向け順調に成長
2. 事業セグメント別動向
(1) コマース事業
コマース事業の売上高は前期比8.5%増の8,120百万円、セグメント利益は同31.9%増の1,780百万円となった。売上高の内訳を見ると、ECサイトを通じた小売販売が前期比20.4%増の3,637百万円、卸販売が同0.5%増の4,483百万円となり小売販売の好調が目立つ格好となった。また、会社計画比で見ても小売販売が6.0%上回ったのに対して卸販売は5.8%下回る結果となった。
卸販売が伸び悩んだ理由は、iPhoneの最新機種として2017年秋に投入されたiPhoneXの販売が当初の想定よりも伸び悩み、家電量販店等の実店舗でiPhoneX用の「iFace」の販売が計画を下回ったこと、また、iPhoneの旧機種が格安スマートフォンの人気機種として販売が好調だったが、実店舗では旧機種用ケースの在庫がなく、追加発注を行ったものの、時期が旧正月で中国の生産工場での供給体制が間に合わなかったことなどが要因となっている。逆に、実店舗にiPhone旧機種用ケースの在庫がなかったため、Amazon等のECサイト経由での購入が増えたことが、小売販売好調の要因となった。四半期ベースの売上高で見ると、第4四半期(2018年2月-4月)が前年同期比で2.3%減と減収となったが、これはiPhone旧機種用ケースの供給が間に合わず、受注残が積み上がったことが影響している。4月は供給体制も正常化し、売上高も月次ベースでは前年同月を上回る水準まで回復している。
セグメント利益率は前期比3.9ポイント上昇の31.9%となった。主に「iFace」を中心とした自社企画商品の売上構成比が前期の約8割から9割弱に上昇したことが要因となっている。なお、2018年4月期は海外売上高が前期の5億円強から8億円強に拡大したことも収益増に貢献している。特に、米国向けがサンリオキャラクターのSQUISHIES商品の卸販売を中心に前期比2.4倍増の3.9億円と急増した。また、新たに連結対象に加わった中国及びインドの子会社で合わせて1億円強の増収要因となっている。
(2) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業の売上高は前期比21.6%増の1,238百万円、営業利益は同2.6%増の399百万円となった。セグメント利益率が前期比で6.0ポイント低下の32.2%となったが、前述したとおり成長加速に向けた先行投資を実施したことが要因となっている。
2018年4月期の取り組みとしては、新たに大手アパレル通販サイト「ZOZOTOWN」とのシステム連携を自動化する「アパレル全自動アプリ」の提供を2017年3月より開始したほか、同年10月にはGMOペイメントゲートウェイ<3769>が提供するEC事業者向け融資サービス「GMO-PGトランザクションレンディング」と「ネクストエンジン」のデータを連携する「GMO-PGトランザクションレンディング融資アプリ」をリリースした。「アパレル全自動アプリ」の提供によって「ZOZOTOWN」に出店するEC事業者のバックヤード業務の自動化を実現し、「GMO-PGトランザクションレンディング融資アプリ」の提供によって、ネクストエンジンユーザーは優遇金利かつスピーディーな融資をGMOペイメントゲートウェイから受けられるようにした。いずれもネクストエンジンの付加価値向上につながるサービスとなる。
また、契約件数拡大に向けた施策としてサポート体制の充実を図ったほか、パートナー企業による初期設定代行サービス等の取組みも開始した。初期設定代行サービスはユーザーに代わって同社がパートナー企業に5万円/件を支払い、初期設定を行うサービスとなる。30日間の無料トライアル期間中にユーザーがスムーズに「ネクストエンジン」を活用できるようにすることで、成約率の向上につなげていく施策となる。
こうした施策により2018年4月期の「ネクストエンジン」の契約社数は前期末比453社増の3,095社(OEM除く)、利用店舗数は同3,584店舗増の23,852店舗とそれぞれ約17%増加した。また、利用店舗の受注処理金額は前期比31.0%増の4,924億円、受注処理件数は同27.8%増の6,860万件となり、いずれも2ケタ成長を持続している。EC市場の拡大が追い風となっているが、2017年の国内BtoC市場の流通総額は前年比9%成長※となっており、同社は業界平均を上回る成長を続けていると言える。また、顧客当たり売上単価についても前年比2%程度の上昇(前年比600〜800円増)となっており、新規顧客件数の増加に加えて既存顧客からの売上げも増えていることが高成長の要因となっている。
※経済産業省「電子商取引に関する市場調査(2018年4月)」による。マーケットプレイス大手の楽天<4755>の2017年の国内BtoC流通総額は前年比13.6%増だった。
収益成長とともに財務の健全性も向上
3. 財務状況と経営指標
2018年4月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比802百万円増加の5,042百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が371百万円、棚卸資産が34百万円増加した。また、固定資産では関係会社株式が154百万円減少した一方で、本社移転に伴い有形固定資産が167百万円増加したほか、Hameeコンサルティングを2018年4月に子会社化したことによりのれんが189百万円増加した。
負債合計は前期末比38百万円減少の1,445百万円となった。主な増減要因を見ると、有利子負債が170百万円減少した一方で買掛金が158百万円増加した。また、純資産合計は同840百万円増加の3,596百万円となった。親会社株主に帰属する当期期純利益の計上により利益剰余金が779百万円増加したほか、新株予約権が70百万円増加した。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末の63.6%から68.8%に上昇し、有利子負債比率は有利子負債の減少により同17.3%から8.7%に低下するなど、収益成長とともに財務の健全性も着実に向上している。収益性について見れば、売上高営業利益率が前期比1.7ポイント上昇の14.7%と過去最高水準を更新した一方で、ROAやROEは前期比で1ポイント強低下した。ただ、いずれも20%を上回る水準にあり、収益性についても高水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MH>
1. 2018年4月期の業績概要
Hamee<3134>の2018年4月期の連結業績は、売上高が前期比10.3%増の9,376百万円、営業利益が同24.7%増の1,379百万円、経常利益が同20.9%増の1,266百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同25.4%増の872百万円と2ケタ増収増益となり、過去最高業績を連続更新した。また、期初会社計画比でも売上高、利益ともに上回って着地した。
事業セグメント別で見ると、コマース事業の売上高は「iFace」の販売増と海外売上の拡大により前期比8.5%増となり、また、プラットフォーム事業も契約社数増加に伴い同21.6%増となった。売上総利益率は前期比3.4ポイント上昇の50.7%となった。自社企画商品の売上構成比上昇と卸販売比率の低下により、コマース事業の売上総利益率が同5.0ポイント上昇の50.1%となったことが主因だ。プラットフォーム事業については、成長加速に向けた機能開発やサポート人員の増員、及び契約社数5千社達成に向けたインフラ投資を実施したこと等により、同9.0ポイント低下の54.0%となった。
販管費率は前期比1.8ポイント上昇の36.1%となった。物流費率は前期比0.5ポイント低下したものの、人件費率が同0.6ポイント、支払手数料率が同1.0ポイント上昇したことが要因だ。支払手数料の増加はコマース事業におけるAmazon経由の販売増によりFABサービス※に関連する支払手数料が増加したことが主因となっており、FABサービスのコストも含めると、物流費率はほとんど変らない水準だったと見られる。一方、人件費については国内の営業体制強化や韓国子会社の人員増に加えて、2018年4月期より新たに中国、インドの子会社を連結対象としたことが増加要因となっている。
※FBA(フルフィルメント by Amazon)サービスとは、商品の注文処理から出荷・配送・返品までの物流工程を一括してAmazonが引き受けるフルフィルメントサービスのこと。
この結果、2018年4月期の売上高営業利益率は前期比1.7ポイント上昇の14.7%と過去最高水準となった。営業外収支が若干悪化したが、これは持分法による投資損失が前期の10百万円から71百万円に拡大したことが主因となっている。2017年4月期に持分法適用関連会社としたシッピーノ(株)(出資比率36.7%)※の業績改善が想定よりも遅れたことにより、のれん未償却残高に相当する金額等も含めて今回、持分法投資損失として計上したことによる。直近では単月ベースで黒字化しており、2019年4月期以降については持分法投資損益の改善が見込める状況となっている。
※シッピーノ…EC事業者の出荷業務を自動化するツール「シッピーノ」の運営開発会社。業務資本提携とともに、ネクストエンジンのFBA(フルフィルメント by Amazon)マルチチャネルサービスと「シッピーノ」を連携し、EC事業者の出荷作業の完全自動化を実現するサービスの提供を開始している。出資額は1億円だが、2018年4月期第2四半期の単独決算において関係会社株式評価損として80百万円を計上した。
「iFace」は旧機種向けが好調、「ネクストエンジン」は契約社数5,000社達成に向け順調に成長
2. 事業セグメント別動向
(1) コマース事業
コマース事業の売上高は前期比8.5%増の8,120百万円、セグメント利益は同31.9%増の1,780百万円となった。売上高の内訳を見ると、ECサイトを通じた小売販売が前期比20.4%増の3,637百万円、卸販売が同0.5%増の4,483百万円となり小売販売の好調が目立つ格好となった。また、会社計画比で見ても小売販売が6.0%上回ったのに対して卸販売は5.8%下回る結果となった。
卸販売が伸び悩んだ理由は、iPhoneの最新機種として2017年秋に投入されたiPhoneXの販売が当初の想定よりも伸び悩み、家電量販店等の実店舗でiPhoneX用の「iFace」の販売が計画を下回ったこと、また、iPhoneの旧機種が格安スマートフォンの人気機種として販売が好調だったが、実店舗では旧機種用ケースの在庫がなく、追加発注を行ったものの、時期が旧正月で中国の生産工場での供給体制が間に合わなかったことなどが要因となっている。逆に、実店舗にiPhone旧機種用ケースの在庫がなかったため、Amazon等のECサイト経由での購入が増えたことが、小売販売好調の要因となった。四半期ベースの売上高で見ると、第4四半期(2018年2月-4月)が前年同期比で2.3%減と減収となったが、これはiPhone旧機種用ケースの供給が間に合わず、受注残が積み上がったことが影響している。4月は供給体制も正常化し、売上高も月次ベースでは前年同月を上回る水準まで回復している。
セグメント利益率は前期比3.9ポイント上昇の31.9%となった。主に「iFace」を中心とした自社企画商品の売上構成比が前期の約8割から9割弱に上昇したことが要因となっている。なお、2018年4月期は海外売上高が前期の5億円強から8億円強に拡大したことも収益増に貢献している。特に、米国向けがサンリオキャラクターのSQUISHIES商品の卸販売を中心に前期比2.4倍増の3.9億円と急増した。また、新たに連結対象に加わった中国及びインドの子会社で合わせて1億円強の増収要因となっている。
(2) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業の売上高は前期比21.6%増の1,238百万円、営業利益は同2.6%増の399百万円となった。セグメント利益率が前期比で6.0ポイント低下の32.2%となったが、前述したとおり成長加速に向けた先行投資を実施したことが要因となっている。
2018年4月期の取り組みとしては、新たに大手アパレル通販サイト「ZOZOTOWN」とのシステム連携を自動化する「アパレル全自動アプリ」の提供を2017年3月より開始したほか、同年10月にはGMOペイメントゲートウェイ<3769>が提供するEC事業者向け融資サービス「GMO-PGトランザクションレンディング」と「ネクストエンジン」のデータを連携する「GMO-PGトランザクションレンディング融資アプリ」をリリースした。「アパレル全自動アプリ」の提供によって「ZOZOTOWN」に出店するEC事業者のバックヤード業務の自動化を実現し、「GMO-PGトランザクションレンディング融資アプリ」の提供によって、ネクストエンジンユーザーは優遇金利かつスピーディーな融資をGMOペイメントゲートウェイから受けられるようにした。いずれもネクストエンジンの付加価値向上につながるサービスとなる。
また、契約件数拡大に向けた施策としてサポート体制の充実を図ったほか、パートナー企業による初期設定代行サービス等の取組みも開始した。初期設定代行サービスはユーザーに代わって同社がパートナー企業に5万円/件を支払い、初期設定を行うサービスとなる。30日間の無料トライアル期間中にユーザーがスムーズに「ネクストエンジン」を活用できるようにすることで、成約率の向上につなげていく施策となる。
こうした施策により2018年4月期の「ネクストエンジン」の契約社数は前期末比453社増の3,095社(OEM除く)、利用店舗数は同3,584店舗増の23,852店舗とそれぞれ約17%増加した。また、利用店舗の受注処理金額は前期比31.0%増の4,924億円、受注処理件数は同27.8%増の6,860万件となり、いずれも2ケタ成長を持続している。EC市場の拡大が追い風となっているが、2017年の国内BtoC市場の流通総額は前年比9%成長※となっており、同社は業界平均を上回る成長を続けていると言える。また、顧客当たり売上単価についても前年比2%程度の上昇(前年比600〜800円増)となっており、新規顧客件数の増加に加えて既存顧客からの売上げも増えていることが高成長の要因となっている。
※経済産業省「電子商取引に関する市場調査(2018年4月)」による。マーケットプレイス大手の楽天<4755>の2017年の国内BtoC流通総額は前年比13.6%増だった。
収益成長とともに財務の健全性も向上
3. 財務状況と経営指標
2018年4月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比802百万円増加の5,042百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では現金及び預金が371百万円、棚卸資産が34百万円増加した。また、固定資産では関係会社株式が154百万円減少した一方で、本社移転に伴い有形固定資産が167百万円増加したほか、Hameeコンサルティングを2018年4月に子会社化したことによりのれんが189百万円増加した。
負債合計は前期末比38百万円減少の1,445百万円となった。主な増減要因を見ると、有利子負債が170百万円減少した一方で買掛金が158百万円増加した。また、純資産合計は同840百万円増加の3,596百万円となった。親会社株主に帰属する当期期純利益の計上により利益剰余金が779百万円増加したほか、新株予約権が70百万円増加した。
経営指標を見ると、経営の安全性を示す自己資本比率は前期末の63.6%から68.8%に上昇し、有利子負債比率は有利子負債の減少により同17.3%から8.7%に低下するなど、収益成長とともに財務の健全性も着実に向上している。収益性について見れば、売上高営業利益率が前期比1.7ポイント上昇の14.7%と過去最高水準を更新した一方で、ROAやROEは前期比で1ポイント強低下した。ただ、いずれも20%を上回る水準にあり、収益性についても高水準を維持している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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