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飯野海運 Research Memo(3):海運業はケミカルタンカーやガスキャリアが主力

注目トピックス 日本株
■飯野海運<9119>の事業概要と特徴・強み

1. 業界最大級の船隊を誇るケミカルタンカーに特徴・強み
海運業のうち外航海運業は、全世界にわたる水域において、原油や石油製品を輸送するオイルタンカー、石油化学製品を輸送するケミカルタンカー、LNG(液化天然ガス)・LPG(液化石油ガス)を輸送する大型ガスキャリア、石炭・木材チップを輸送する専用船及び穀物・鋼材・肥料などを輸送する小型〜中型ドライバルクキャリア(ばら積み貨物船)を運航している。内航・近海海運業は、国内及び近海を中心とした水域において、LNG・LPG・石油化学系ガスを輸送する小型ガスキャリアなどを運航している。また、国内外における船舶管理業や船用品販売業なども行っている。

ケミカルタンカーやガスキャリアなどによる資源・エネルギー関連輸送を主力として、グローバル・ネットワークを駆使した効率的な輸送で、遠洋から近海にわたる幅広い水域で海上輸送サービスを提供している。また、LPG・石油化学系ガスの国内輸送シェアは業界トップクラスである。さらに国内では数少ない内航LNGキャリアも運航している。

2018年3月期末のグループ運航船舶数(共有相手持分含む)は合計106隻である。内訳は外航海運業が78隻(オイルタンカー3隻、ケミカルタンカー41隻、大型ガスキャリア18隻、ドライバルクキャリア16隻)で、内航・近海海運業が小型ガスキャリアなど28隻である。ケミカルタンカーは業界最大級の船隊規模を誇っている。

主要取引先には、アストモスエネルギー(株)(出光興産<5019>グループと三菱商事<8058>グループのLPG部門が統合したLPG商社)、出光興産<5019>、王子ホールディングス<3861>、JXTGエネルギー(株)<5020>、全国農業協同組合連合会、電源開発(J-POWER<9513>)、東ソー<4042>、日本ゼオン<4205>、北海道瓦斯(北海道ガス<9534>)、SABIC(Saudi Arabia Basic Industries Corporation)などがある。

なお2017年10月には、トリニダード・トバゴの世界有数のメタノール製造会社であるMethanol Holdings(Trinidad)Ltd.と、メタノール輸送の定期用船契約を締結した。本契約には37,000DWT型ケミカルタンカー1隻を投入する。中期経営計画において、ケミカルタンカー事業の世界展開、特に米州への定期配船によるシェール由来貨物の取込みを重点強化策としており、本契約はその足掛かりとなる。また2018年2月には、世界最大のメタノール生産者であるMethanex Corp.100%出資の海運会社であるWaterfront Shipping Company Ltd.と新造メタノール船定期用船契約を締結した。本船には、従来の重油のみならず、メタノールを燃料とすることのできる二元燃料主機関を搭載しており、環境負荷低減のため次世代燃料船実用化に向けた取り組みを推進している。さらに2018年4月には東北電力<9506>と、2018年2月に竣工した88,000DWT型石炭船「PEGASUS ISLAND」の専航船輸送契約を締結した。東北電力の石炭安定調達の一翼を担う。

同社のケミカルタンカーは業界最大級の船隊を擁し、特に中東積み石油化学製品の輸送量はトップクラスのシェアを誇っている。

同社が運航するケミカルタンカーの多くはステンレス製タンクを有していることが特徴・強みである。ステンレス製タンクは通常の鉄製タンクに比べて耐腐食性が強いため、硫酸なども輸送できるメリットがある。また、同社はケミカルタンカーで石油化学製品だけでなくパーム油などの輸送も行い効率的な運航を図っている。

また、ステンレス製タンクに加え、タンク洗浄など、石油化学製品輸送に要求される高度な船舶管理ノウハウ、さらには効率的な輸送ノウハウを有していることが、同社の競争優位性につながっている。

2. 為替・市況・燃料油価格の影響受けるがオイルタンカーやガスキャリアは中長期契約中心
海運業の収益は、特に外航海運業が為替、海運市況、燃料油価格の影響を受け、主力のケミカルタンカーにおけるスポット貨物も市況変動の影響が避けられない。ただしケミカルタンカーでは、全体の約7割を占める1年程度の複数のCOA(数量輸送契約)やスポット貨物を組み合わせることで、利益の最大化を図っている。またオイルタンカーやガスキャリアは中長期契約が中心であり、不動産業とあわせて安定収益源となっている。


不動産業は東京都心部の一等地でのオフィスビル賃貸
3. 不動産業は飯野ビルディングなど東京都心部の一等地でのオフィスビル賃貸が主力
不動産業はオフィスビル賃貸を主力としている。本社ビルである飯野ビルディング(イイノホール&カンファレンスセンター含む)など、東京都心部の一等地に賃貸オフィスビルを所有していることが特徴だ。また、レンタルフォトスタジオ事業(広尾スタジオ、南青山スタジオ)も展開している。

1983年竣工の東京富士見ビル(東京都千代田区)、1988年竣工の飯野竹早ビル(東京都文京区)、2006年竣工の汐留芝離宮ビルディング(東京都港区)のほか、2009年には飯野ビルディング(東京都千代田区)の建替え工事に着手、2011年10月には飯野ビルディング1期工事が完了して開業、2014年11月には飯野ビルディング2期工事が完了してグランドオープン、そして2017年12月に2016年竣工のNS虎ノ門ビルの一部持分を取得している。

なお前中期経営計画「STEP FORWARD 2020」で掲げた不動産業のターゲットエリア戦略及び所有ビルのポートフォリオ見直しに伴い、2017年3月に笹塚センタービルを売却している。また新橋田村町地区市街地再開発事業(2018年4月建物着工、2021年3月建物竣工予定)への参画のため、2018年3月期に東京桜田ビルを解体した。一方でNS虎ノ門ビルの一部持分を取得したことで、2018年3月期末時点の所有賃貸ビルは5棟(飯野ビルディング、東京富士見ビル、飯野竹早ビル、汐留芝離宮ビルディング、NS虎ノ門ビル)となっている。

4. 飯野ビルディングは高度な環境性能を追求
2011年開業(2014年グランドオープン)した収益柱の飯野ビルディングは、「100年先にも愛されるビル」をコンセプトとして、ホール&カンファレンス機能も備えている。通常の外壁(インナースキン)の外側に、もう1つの外壁(アウタースキン)を設けて、断熱空気層を作ることで熱負荷を軽減する「ダブルスキン外装」を採用するなど、高度な環境性能を追求したビルである。

そしてLEED-CI(米国グルーンビルディング協会による環境対応評価システム)の最高位であるプラチナ認証を日本で初めて取得した。また2015年には、生物多様性保全に取組むオフィスビルや商業施設を評価する「いきもの共生事業所認証」(ABINC認証)を取得し、2016年にはABINC認証事業所のうち特にABINCの普及啓発や生物多様性の主流化への貢献度の高い施設として「第1回ABINC特別賞」を受賞した。また、2016年には東京都環境確保条例における2015年度「優良特定地球温暖化対策事業所(トップレベル事業所)」に認定された。

さらに2018年2月には、東京消防庁による優良防火対象物認定表示制度に基づく「優良防火対象物認定証」(優マーク)を取得、2018年3月には東京都環境局の在来種植栽登録制度「江戸のみどり登録緑地」の優良緑地として登録された。

5. ターゲットエリア戦略に基づいた保有資産入替えや再開発への参画を推進
不動産業の収益は、不動産市況、空室率、賃料などの影響を受けやすいが、同社保有の賃貸ビルはいずれも東京都心部の一等地に立地している。そして東京都心部(千代田・中央・港・新宿・渋谷の5区)のオフィスビル賃貸市況は、空室率の低下傾向や平均賃料の上昇傾向を継続している。また収益柱の飯野ビルディングのオフィス部分のテナントには、ゆうちょ銀行<7182>、かんぽ生命保険<7181>、双日<2768>、川崎汽船<9107>という大手優良企業が入居し、2011年の開業時から満床状態である。

さらにターゲットエリア戦略に基づいて保有資産の入替えや再開発事業への参画も推進している。引続き同社グループ経営をより磐石にする安定収益基盤として推移するだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)



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