飯野海運 Research Memo(6):2019年3月期は増収増益予想、市況改善見込みが保守的で上振れ余地
[18/07/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2019年3月期連結業績見通しの概要
飯野海運<9119>の2019年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.3%増の84,000百万円、営業利益が同9.7%増の6,200百万円、経常利益が同8.0%増の5,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.5%増の6,600百万円としている。想定為替レートは1米ドル=110円、想定燃料油価格は410米ドル/MT(2018年3月期実績は平均為替レート1米ドル=111円19銭、平均燃料油価格337米ドル/MT)としている。
ケミカルタンカー運航隻数の増加に加えて、ケミカルタンカー、ドライバルクキャリア、小型ガスキャリアの市況改善効果を見込み、増収増益予想である。なお営業外収益で受取配当金の減少を見込んでいるため、経常利益の増益率は営業利益の増益率に比べてやや小幅となる見込みだ。また特別利益で老朽化した船舶の売却益の計上(上期に計上予定)を見込んでいるため、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅増益予想である。
全社ベースの営業利益増減(549百万円増益)分析は、増益要因がドライバルクキャリア1億円、内航・近海2億円、ケミカルタンカー12億円、減益要因がオイル・ガスキャリア8億円、不動産1億円、その他1億円としている。オイル・ガスキャリアについては、LPGの海上荷動きが増加基調だが、大型ガスキャリア(VLGC)の新造船供給が2019年まで続くため、市況回復が遅れる見込みだ。一方で、ドライバルクキャリアや、ケミカルタンカーの市況回復、燃料油価格上昇分の価格転嫁なども考慮すれば上振れ余地がありそうだ。
なお第2四半期累計の連結業績予想は、売上高が前年同期比3.9%増の42,000百万円、営業利益が同13.1%減の2,900百万円、経常利益が同25.3%減の2,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同21.9%増の4,200百万円としている。市況改善効果が期後半から寄与する計画である。親会社株主に帰属する当期純利益は上期に計上予定の特別利益が寄与して大幅増益予想である。
2. 事業別の外部環境と同社の取組み状況
事業別の外部環境と同社の取組み状況は以下のとおりである。
ケミカルタンカーは2018年3月期が市況低迷で減益だったが、石油化学製品の海上荷動きの増加基調に変化はなく、一方では新造船の供給が落ち着いているため、2019年3月期は市況改善が期待され、効率配船も寄与して増益見込みである。また成長に向けた布石という点では、2018年3月期に主要航路である中東から欧州向けのCOAを獲得し、トリニダード・トバゴの世界有数のメタノール製造会社であるMethanol Holdings(Trinidad)Ltd.とメタノール船定期用船契約を獲得した。
オイルタンカーの2018年3月期は中長期契約で安定収益を確保した。2019年3月期も中長期契約で安定収益を確保する見込みだ。成長に向けた布石という点では2018年3月期に石油会社向けに新造VLCC(大型オイルタンカー)を整備した。
ガスキャリアは近海船の市況が2018年3月期に改善し、2019年3月期も好調を見込んでいる。成長に向けた布石という点では2018年3月期に定期貸船契約4件を有利更改し、新造船1隻を整備した。一方でVLGCに関しては、LPGの海上荷動きが増加基調だが、新造船供給が2019年まで続くため、市況も低迷が続く見込みだ。
ドライバルクキャリアは海上荷動きが安定的に増加する一方で、新造船の供給が一服しているため、中型船(パナマックス型)、不定期船(ハンディ型)とも市況が回復基調である。成長に向けた布石という点では、2018年3月期に中型船で東北電力との専航船契約を含む中長期契約3件を獲得し、不定期船で28型から37〜38型への入替えがほぼ完了して効率配船を実現した。2019年3月期は中型船で中長期契約の積上げ、不定期船で効率配船を推進する。
不動産業は、新橋田村町地区市街地再開発事業(2018年4月建物着工、2021年3月建物竣工予定)が本格始動して稼働ビルが減少していることに加えて、2019年3月期は営繕費の増加なども影響して減益見込みだが、既存ビルの稼働は順調である。また西新橋・虎ノ門地区は、地下鉄日比谷線の新駅(2020年開業予定)や銀座線虎ノ門駅改修などで、オフィス街としての価値が一段と向上することが期待されている。そして新橋田村町地区市街地再開発事業が稼働する2022年3月期以降に収益が拡大する見込みだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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1. 2019年3月期連結業績見通しの概要
飯野海運<9119>の2019年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.3%増の84,000百万円、営業利益が同9.7%増の6,200百万円、経常利益が同8.0%増の5,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.5%増の6,600百万円としている。想定為替レートは1米ドル=110円、想定燃料油価格は410米ドル/MT(2018年3月期実績は平均為替レート1米ドル=111円19銭、平均燃料油価格337米ドル/MT)としている。
ケミカルタンカー運航隻数の増加に加えて、ケミカルタンカー、ドライバルクキャリア、小型ガスキャリアの市況改善効果を見込み、増収増益予想である。なお営業外収益で受取配当金の減少を見込んでいるため、経常利益の増益率は営業利益の増益率に比べてやや小幅となる見込みだ。また特別利益で老朽化した船舶の売却益の計上(上期に計上予定)を見込んでいるため、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅増益予想である。
全社ベースの営業利益増減(549百万円増益)分析は、増益要因がドライバルクキャリア1億円、内航・近海2億円、ケミカルタンカー12億円、減益要因がオイル・ガスキャリア8億円、不動産1億円、その他1億円としている。オイル・ガスキャリアについては、LPGの海上荷動きが増加基調だが、大型ガスキャリア(VLGC)の新造船供給が2019年まで続くため、市況回復が遅れる見込みだ。一方で、ドライバルクキャリアや、ケミカルタンカーの市況回復、燃料油価格上昇分の価格転嫁なども考慮すれば上振れ余地がありそうだ。
なお第2四半期累計の連結業績予想は、売上高が前年同期比3.9%増の42,000百万円、営業利益が同13.1%減の2,900百万円、経常利益が同25.3%減の2,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同21.9%増の4,200百万円としている。市況改善効果が期後半から寄与する計画である。親会社株主に帰属する当期純利益は上期に計上予定の特別利益が寄与して大幅増益予想である。
2. 事業別の外部環境と同社の取組み状況
事業別の外部環境と同社の取組み状況は以下のとおりである。
ケミカルタンカーは2018年3月期が市況低迷で減益だったが、石油化学製品の海上荷動きの増加基調に変化はなく、一方では新造船の供給が落ち着いているため、2019年3月期は市況改善が期待され、効率配船も寄与して増益見込みである。また成長に向けた布石という点では、2018年3月期に主要航路である中東から欧州向けのCOAを獲得し、トリニダード・トバゴの世界有数のメタノール製造会社であるMethanol Holdings(Trinidad)Ltd.とメタノール船定期用船契約を獲得した。
オイルタンカーの2018年3月期は中長期契約で安定収益を確保した。2019年3月期も中長期契約で安定収益を確保する見込みだ。成長に向けた布石という点では2018年3月期に石油会社向けに新造VLCC(大型オイルタンカー)を整備した。
ガスキャリアは近海船の市況が2018年3月期に改善し、2019年3月期も好調を見込んでいる。成長に向けた布石という点では2018年3月期に定期貸船契約4件を有利更改し、新造船1隻を整備した。一方でVLGCに関しては、LPGの海上荷動きが増加基調だが、新造船供給が2019年まで続くため、市況も低迷が続く見込みだ。
ドライバルクキャリアは海上荷動きが安定的に増加する一方で、新造船の供給が一服しているため、中型船(パナマックス型)、不定期船(ハンディ型)とも市況が回復基調である。成長に向けた布石という点では、2018年3月期に中型船で東北電力との専航船契約を含む中長期契約3件を獲得し、不定期船で28型から37〜38型への入替えがほぼ完了して効率配船を実現した。2019年3月期は中型船で中長期契約の積上げ、不定期船で効率配船を推進する。
不動産業は、新橋田村町地区市街地再開発事業(2018年4月建物着工、2021年3月建物竣工予定)が本格始動して稼働ビルが減少していることに加えて、2019年3月期は営繕費の増加なども影響して減益見込みだが、既存ビルの稼働は順調である。また西新橋・虎ノ門地区は、地下鉄日比谷線の新駅(2020年開業予定)や銀座線虎ノ門駅改修などで、オフィス街としての価値が一段と向上することが期待されている。そして新橋田村町地区市街地再開発事業が稼働する2022年3月期以降に収益が拡大する見込みだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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