芙蓉リース Research Memo(4):18/3期は大幅な増収増益により、過去最高益を更新
[18/07/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
3. 2018年3月期決算の概要
芙蓉総合リース<8424>の新中計初年度となる2018年3月期の業績は、売上高が前期比16.4%増の5,902億円、営業利益が同13.9%増の326億円、経常利益が同12.2%増の352億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.9%増の219億円と期初予想を上回る大幅な増収増益となり、過去最高益を更新した。中計の実現に向けて幸先の良いスタートを切ったと言える。
売上高が大きく伸びたのは、営業資産の積み上げによるリース料収入の拡大に加えて、大型案件(不動産リース・ブリッジ型案件※1)の解約・満了に伴う一括計上分が上乗せ要因※2となった。
※1 不動産等の売買において、買い主側の取得希望タイミングと売り主側の売却のタイミングのミスマッチを調整するため、同社が一時的に所有(介在)することで取引の間をつなぐものである。(銀行法の制約を受けない)同社にとっては、不動産を保有することができるアドバンテージを生かした新たな収益機会の確保(スキームの拡大)として捉えることができる。
※2 不動産リースを中心とした大型案件の売却等(航空機リースにおける1機売却分を含む)による一括計上の影響は約700億円と推定される。
もっとも、同社本来の業績の伸びを示す「差引利益」についても、前期比8.8%増の678億円(前期比55億円増)と順調に拡大している。その背景として、1)「契約実行高」の拡大とそれに伴う「営業資産」の積み上げ、2)ファイナンスの資産粗利率の改善、3)大型リース案件・ブリッジ型案件の解約・満了に伴う利益計上、の3つの要因が挙げられる。なお、1)及び2)には、アクリーティブによる連結効果(約19億円の増益要因)も含まれている。
リース業界全体がやや軟調に推移するなかで、「契約実行高」が前期比32.5%増の1兆1,050億円と大きく伸長(初めて1兆円を突破)するとともに、それに伴って「営業資産残高」も前期末比6.1%増の2兆1,687億円に拡大したことが「差引利益」の増加に寄与した。特に、「契約実行高」の伸びが大きいのは、連結化したアクリーティブのファクタリングによるところが大きい※。一方、主力の「リース」についても戦略分野である「建物等」(不動産リース)を中心に大きく伸びており、アクリーティブを除く実行高も全体で前期比12.2%増と順調に拡大した。
※2017年1月に連結子会社化したアクリーティブによる契約実行高は2,281億円(そのうち1,754億円が前期比増加分)となった。これは、契約実行高の増加分全体(2,708億円)の約65%を占める。一方、アクリーティブの2018年3月末の営業資産残高は164億円(前期末比17.1%増)となっている。営業資産の規模と比較して契約実行高が大きいのは、短期間で実行・回収を繰り返す(回転率の高い)ファクタリングならではの特性によるものであり、収益性や効率性の面でもプラスの効果が発揮されている。
一方、収益性(資産粗利率)については、「リース」が3.2%(前期は3.3%)とブリッジ型案件※の増加に伴って若干低下したものの、「ファイナンス」が2.4%(前期は2.1%)と大きく改善した。なお、「ファイナンス」における資産粗利率の改善は、案件の選別とアクリーティブの連結化によるものである。
※一般的にブリッジ型取引は、短期間で効率の良い運用ができる半面、高い資産粗利率は期待できない取引と言える。ただ、今後は持ち込まれる案件数も増加してきたことから、採算性の良いものを選別していく方針のようである。
また、経常利益についても、「差引利益」の増加に加えて、資金原価がほぼ横ばいで推移したことや販管費の増加を一定水準に抑えたことから、大幅な経常増益を実現した。特に、「貸倒関連費用」の減少も、計画の上振れ要因の1つとなっているようだ。
財務面では、営業資産の拡大により総資産が前期末比5.7%増の2兆4,308億円に拡大した一方、自己資本も内部留保等により同9.3%増の2,491億円に積増したことから、自己資本比率は10.2%(前期末は9.9%)に改善した。また、有利子負債は、営業資産の拡大に伴って同6.2%増の1兆9,649億円に増加したが、有利子負債(リース債務を除く)の長短比率は51.1%(前期末は51.5%)、流動比率も141.0%(前期末は143.7%)と高い水準にあることから、財務の安定性は維持されている。
各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。
(1) 不動産
2018年3月末の営業資産残高は前期末比50.7%増の3,620億円(前期末比1,218億円増)と大幅に拡大した。大型案件の成約を含め、同社が得意とする商業施設(大型ショッピングセンター等)のほか、不動産事業者との連携によるブリッジ型取引※の増加が、優良資産の積み上げにつながったものと評価できる。一方、ROAについては、前述のとおり、ブリッジ型取引の拡大(大型案件による一時的な影響を含む)に伴って1.8%(前期は1.9%)に若干低下したが、土地情報持込型提案営業など、今後の収益性改善に向けた活動においては一定の成果を残したと言える。なお、営業資産残高は中計目標値(2020年3月期3,800億円、2022年3月期4,800億円)に対して巡航ペースを上回る水準となっているが、今後、大型ブリッジ型案件の終了が予定されているため、目標値の変更はない。
※ヒューリック<3003>との連携による、商業施設「コレットマーレ」を中核とした複合ビル「ヒューリックみなとみらい」(横浜市中区)が挙げられる。
(2) エネルギー・環境
2018年3月末の太陽光発電事業の営業資産残高は前期末比14.5%増の197億円と増加した。2018年3月期は福島地区で1ヶ所(発電量25MW)が新たに稼働したことにより、現在は全国30ヶ所でメガソーラー(合計102MW)が発電中であるほか、福島・宮城の残り2ヶ所(合計38MW)でも大型メガソーラーの開発が進んでいる(ともに2018年9月に完成予定)。したがって、中計の中間目途値(2020年3月末135MW)は1年前倒しで達成できる見込みである。さらには、同社最大規模の事業を福島で検討中(今夏着工を目指して調整中)であり、実現すれば2022年3月期の目標値(165MW)も大きく上回ることになる。一方、ROAは5.1%(前期は6.1%)に落ち込んでいるが、開発中サイトの先行費用の影響によるものであり、それを除けば概算6.1%(既存サイトのみのROA)と前期並みの水準を確保しているようだ。
(3) 医療・福祉
具体的な数値目標は掲げていないが、主な活動実績として、1)研究開発型ベンチャー企業への出資、2)「高齢者施設」の建物リース推進、3)(株)FUJITAの連結化、などで成果を残すことができた。1)については、国産初の手術支援ロボットを開発するリバーフィールド(株)(2020年に商品化する計画)のほか、世界初の「ヘッドマウント型」視野検査装置を開発した(株)クリュートメディカルシステムズ、医用超音波技術を活用した乳がん検査機器を開発する(株)Lily MedTechに出資した。導入推進に当たって、リースなどファイナンス・スキームでのサポートを展開していく方針である。また、2)については、(株)ニチイケアパレスが運営する介護付有料老人ホームの建物リースを実行。高齢者向け施設の建物リースでは、業界をリードする取り組みとなっている。3)については、2016年12月に資本業務提携契約を締結したFUJITA(中古大型医療機器を中心に解体・撤去から買取・販売までをワンストップで請け負える強みを有する企業)の株式を追加取得したものであり、今後、さらに連携を深め、新しい商品・サービスの開発を推進していく方針である。
(4) 航空機
2018年3月末の営業資産残高は前期末比29.9%増の976億円に拡大した。デリバリ遅延の影響を受けたものの、自社保有型リースの年間組成数6機(1機売却)により、保有機体数は24機(前期末比5機増)に増加した。また、新たに航空機のエンジン・オペレーティングリースにも取り組み、今後の事業拡大に向けて間口を広げることができた。一方、ROAは1.9%(前期も1.9%)と横ばいで推移。マーケットの過熱が進む中で、リスクの明確化による取引エアラインの拡大(スーパーLCCなどを含む)や一部JOL化※を前提としたパッケージ(複数機体)案件への取り組みなどにより、ROAを維持・向上させながら、保有機体数の積み上げを推進していく方針である。
※日本型オペレーティングリースのこと。主に減価償却費による「利益の繰り延べ(課税の繰り延べ)」を目的とした運用手段として投資家(事業法人を含む)等が利用するケースが一般的である。同社は、パッケージ案件に取り組むとともに、その一部をJOL化して投資家等へ販売することを計画している。
(5) 海外
2018年3月末の営業資産残高は前期末比3.5%増の871億円と増加した。北米・アジアを中心としてインオーガニックな成長(出資や買収、提携等)を含めた拡大を目指しているが、2018年3月期はカナダにおいてピックアップトラック(法人向け小型商用車)のレンタル・リース会社を持分法関連会社化(持分比率50%、丸紅との共同事業)し、非日系資産の積み上げに成功した(利益貢献は2019年3月期から)。また、タイではアクリーティブがシナネン(株)現地法人に出資。今後、エネルギー分野に関するファイナンスニーズの取込みを狙う方針である。ROAは0.6%(前期も0.6%)と横ばいで推移している。
(6) 新領域
アクリーティブが展開するFPS(売掛債権早期支払サービス)及びFPSメディカル(診療・介護報酬債権早期支払サービス)が業績に大きく貢献した。特に、FPSでは同社の親密取引先※1との取引を開始するとともに、FPSメディカルにおいても、同社の親密先である地方銀行などとの間で顧客紹介等の業務協定を締結し、医療・介護分野向け取引が増加している。最先端技術の研究・開発への支援(提携・出資等)※2や中古ビジネスの展開※3でも一定の成果を残した。
※1 九州・関東エリアを中心にディスカウントストアを展開する(株)トライアルカンパニー(ディスカウントストア2位)との取引(FPS)が成立。本格的な業績貢献はこれからの模様。
※2 前述した「医療・福祉」分野におけるベンチャー出資(3社)のほか、(株)光コム(ノーベル賞受賞技術「光コム」を活用した非接触式三次元形状測定器を展開)との販売促進に関する業務提携や、日本初の産学連携型「GAPファンド」(東京工業大学の研究成果の事業化・商業化を支援)の設立などで実績を残した。
※3 前述した「医療・福祉」分野におけるFUJITAの連結化に加えて、中古物件処理ヤード「東京3Rセンター」(東京都八王子市)を増床し、中古ビジネス拡大に向けてインフラ整備なども行った。
以上、各戦略分野の進展に加えて、中計における重要な戦略軸の1つである「グループシナジーの追求」についても、グループ連携による新しい取り組みが着実に実を結んできた。特に、リテールに強いSFCとのシナジー創出を進めている。具体的には、同社のノウハウを活用した建物リースをSFCが自らの顧客基盤に展開し、連携開始後初めての契約締結に至ったほか、保険代理店やベンダーリースなど、グループで重複する事業をSFCに集約し、効率化を図ったことなどが挙げられる。また、オートリースについても、SFC内に「オートリース推進室」を設置し、芙蓉オートリース(株)との連携を強化(年間連携成約額は前期比47%増)するなど、商品・サービスの機能とマーケット(顧客基盤)とのクロスセルにより、シナジーの最大化を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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3. 2018年3月期決算の概要
芙蓉総合リース<8424>の新中計初年度となる2018年3月期の業績は、売上高が前期比16.4%増の5,902億円、営業利益が同13.9%増の326億円、経常利益が同12.2%増の352億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同9.9%増の219億円と期初予想を上回る大幅な増収増益となり、過去最高益を更新した。中計の実現に向けて幸先の良いスタートを切ったと言える。
売上高が大きく伸びたのは、営業資産の積み上げによるリース料収入の拡大に加えて、大型案件(不動産リース・ブリッジ型案件※1)の解約・満了に伴う一括計上分が上乗せ要因※2となった。
※1 不動産等の売買において、買い主側の取得希望タイミングと売り主側の売却のタイミングのミスマッチを調整するため、同社が一時的に所有(介在)することで取引の間をつなぐものである。(銀行法の制約を受けない)同社にとっては、不動産を保有することができるアドバンテージを生かした新たな収益機会の確保(スキームの拡大)として捉えることができる。
※2 不動産リースを中心とした大型案件の売却等(航空機リースにおける1機売却分を含む)による一括計上の影響は約700億円と推定される。
もっとも、同社本来の業績の伸びを示す「差引利益」についても、前期比8.8%増の678億円(前期比55億円増)と順調に拡大している。その背景として、1)「契約実行高」の拡大とそれに伴う「営業資産」の積み上げ、2)ファイナンスの資産粗利率の改善、3)大型リース案件・ブリッジ型案件の解約・満了に伴う利益計上、の3つの要因が挙げられる。なお、1)及び2)には、アクリーティブによる連結効果(約19億円の増益要因)も含まれている。
リース業界全体がやや軟調に推移するなかで、「契約実行高」が前期比32.5%増の1兆1,050億円と大きく伸長(初めて1兆円を突破)するとともに、それに伴って「営業資産残高」も前期末比6.1%増の2兆1,687億円に拡大したことが「差引利益」の増加に寄与した。特に、「契約実行高」の伸びが大きいのは、連結化したアクリーティブのファクタリングによるところが大きい※。一方、主力の「リース」についても戦略分野である「建物等」(不動産リース)を中心に大きく伸びており、アクリーティブを除く実行高も全体で前期比12.2%増と順調に拡大した。
※2017年1月に連結子会社化したアクリーティブによる契約実行高は2,281億円(そのうち1,754億円が前期比増加分)となった。これは、契約実行高の増加分全体(2,708億円)の約65%を占める。一方、アクリーティブの2018年3月末の営業資産残高は164億円(前期末比17.1%増)となっている。営業資産の規模と比較して契約実行高が大きいのは、短期間で実行・回収を繰り返す(回転率の高い)ファクタリングならではの特性によるものであり、収益性や効率性の面でもプラスの効果が発揮されている。
一方、収益性(資産粗利率)については、「リース」が3.2%(前期は3.3%)とブリッジ型案件※の増加に伴って若干低下したものの、「ファイナンス」が2.4%(前期は2.1%)と大きく改善した。なお、「ファイナンス」における資産粗利率の改善は、案件の選別とアクリーティブの連結化によるものである。
※一般的にブリッジ型取引は、短期間で効率の良い運用ができる半面、高い資産粗利率は期待できない取引と言える。ただ、今後は持ち込まれる案件数も増加してきたことから、採算性の良いものを選別していく方針のようである。
また、経常利益についても、「差引利益」の増加に加えて、資金原価がほぼ横ばいで推移したことや販管費の増加を一定水準に抑えたことから、大幅な経常増益を実現した。特に、「貸倒関連費用」の減少も、計画の上振れ要因の1つとなっているようだ。
財務面では、営業資産の拡大により総資産が前期末比5.7%増の2兆4,308億円に拡大した一方、自己資本も内部留保等により同9.3%増の2,491億円に積増したことから、自己資本比率は10.2%(前期末は9.9%)に改善した。また、有利子負債は、営業資産の拡大に伴って同6.2%増の1兆9,649億円に増加したが、有利子負債(リース債務を除く)の長短比率は51.1%(前期末は51.5%)、流動比率も141.0%(前期末は143.7%)と高い水準にあることから、財務の安定性は維持されている。
各戦略分野における業績や活動実績は以下のとおりである。
(1) 不動産
2018年3月末の営業資産残高は前期末比50.7%増の3,620億円(前期末比1,218億円増)と大幅に拡大した。大型案件の成約を含め、同社が得意とする商業施設(大型ショッピングセンター等)のほか、不動産事業者との連携によるブリッジ型取引※の増加が、優良資産の積み上げにつながったものと評価できる。一方、ROAについては、前述のとおり、ブリッジ型取引の拡大(大型案件による一時的な影響を含む)に伴って1.8%(前期は1.9%)に若干低下したが、土地情報持込型提案営業など、今後の収益性改善に向けた活動においては一定の成果を残したと言える。なお、営業資産残高は中計目標値(2020年3月期3,800億円、2022年3月期4,800億円)に対して巡航ペースを上回る水準となっているが、今後、大型ブリッジ型案件の終了が予定されているため、目標値の変更はない。
※ヒューリック<3003>との連携による、商業施設「コレットマーレ」を中核とした複合ビル「ヒューリックみなとみらい」(横浜市中区)が挙げられる。
(2) エネルギー・環境
2018年3月末の太陽光発電事業の営業資産残高は前期末比14.5%増の197億円と増加した。2018年3月期は福島地区で1ヶ所(発電量25MW)が新たに稼働したことにより、現在は全国30ヶ所でメガソーラー(合計102MW)が発電中であるほか、福島・宮城の残り2ヶ所(合計38MW)でも大型メガソーラーの開発が進んでいる(ともに2018年9月に完成予定)。したがって、中計の中間目途値(2020年3月末135MW)は1年前倒しで達成できる見込みである。さらには、同社最大規模の事業を福島で検討中(今夏着工を目指して調整中)であり、実現すれば2022年3月期の目標値(165MW)も大きく上回ることになる。一方、ROAは5.1%(前期は6.1%)に落ち込んでいるが、開発中サイトの先行費用の影響によるものであり、それを除けば概算6.1%(既存サイトのみのROA)と前期並みの水準を確保しているようだ。
(3) 医療・福祉
具体的な数値目標は掲げていないが、主な活動実績として、1)研究開発型ベンチャー企業への出資、2)「高齢者施設」の建物リース推進、3)(株)FUJITAの連結化、などで成果を残すことができた。1)については、国産初の手術支援ロボットを開発するリバーフィールド(株)(2020年に商品化する計画)のほか、世界初の「ヘッドマウント型」視野検査装置を開発した(株)クリュートメディカルシステムズ、医用超音波技術を活用した乳がん検査機器を開発する(株)Lily MedTechに出資した。導入推進に当たって、リースなどファイナンス・スキームでのサポートを展開していく方針である。また、2)については、(株)ニチイケアパレスが運営する介護付有料老人ホームの建物リースを実行。高齢者向け施設の建物リースでは、業界をリードする取り組みとなっている。3)については、2016年12月に資本業務提携契約を締結したFUJITA(中古大型医療機器を中心に解体・撤去から買取・販売までをワンストップで請け負える強みを有する企業)の株式を追加取得したものであり、今後、さらに連携を深め、新しい商品・サービスの開発を推進していく方針である。
(4) 航空機
2018年3月末の営業資産残高は前期末比29.9%増の976億円に拡大した。デリバリ遅延の影響を受けたものの、自社保有型リースの年間組成数6機(1機売却)により、保有機体数は24機(前期末比5機増)に増加した。また、新たに航空機のエンジン・オペレーティングリースにも取り組み、今後の事業拡大に向けて間口を広げることができた。一方、ROAは1.9%(前期も1.9%)と横ばいで推移。マーケットの過熱が進む中で、リスクの明確化による取引エアラインの拡大(スーパーLCCなどを含む)や一部JOL化※を前提としたパッケージ(複数機体)案件への取り組みなどにより、ROAを維持・向上させながら、保有機体数の積み上げを推進していく方針である。
※日本型オペレーティングリースのこと。主に減価償却費による「利益の繰り延べ(課税の繰り延べ)」を目的とした運用手段として投資家(事業法人を含む)等が利用するケースが一般的である。同社は、パッケージ案件に取り組むとともに、その一部をJOL化して投資家等へ販売することを計画している。
(5) 海外
2018年3月末の営業資産残高は前期末比3.5%増の871億円と増加した。北米・アジアを中心としてインオーガニックな成長(出資や買収、提携等)を含めた拡大を目指しているが、2018年3月期はカナダにおいてピックアップトラック(法人向け小型商用車)のレンタル・リース会社を持分法関連会社化(持分比率50%、丸紅との共同事業)し、非日系資産の積み上げに成功した(利益貢献は2019年3月期から)。また、タイではアクリーティブがシナネン(株)現地法人に出資。今後、エネルギー分野に関するファイナンスニーズの取込みを狙う方針である。ROAは0.6%(前期も0.6%)と横ばいで推移している。
(6) 新領域
アクリーティブが展開するFPS(売掛債権早期支払サービス)及びFPSメディカル(診療・介護報酬債権早期支払サービス)が業績に大きく貢献した。特に、FPSでは同社の親密取引先※1との取引を開始するとともに、FPSメディカルにおいても、同社の親密先である地方銀行などとの間で顧客紹介等の業務協定を締結し、医療・介護分野向け取引が増加している。最先端技術の研究・開発への支援(提携・出資等)※2や中古ビジネスの展開※3でも一定の成果を残した。
※1 九州・関東エリアを中心にディスカウントストアを展開する(株)トライアルカンパニー(ディスカウントストア2位)との取引(FPS)が成立。本格的な業績貢献はこれからの模様。
※2 前述した「医療・福祉」分野におけるベンチャー出資(3社)のほか、(株)光コム(ノーベル賞受賞技術「光コム」を活用した非接触式三次元形状測定器を展開)との販売促進に関する業務提携や、日本初の産学連携型「GAPファンド」(東京工業大学の研究成果の事業化・商業化を支援)の設立などで実績を残した。
※3 前述した「医療・福祉」分野におけるFUJITAの連結化に加えて、中古物件処理ヤード「東京3Rセンター」(東京都八王子市)を増床し、中古ビジネス拡大に向けてインフラ整備なども行った。
以上、各戦略分野の進展に加えて、中計における重要な戦略軸の1つである「グループシナジーの追求」についても、グループ連携による新しい取り組みが着実に実を結んできた。特に、リテールに強いSFCとのシナジー創出を進めている。具体的には、同社のノウハウを活用した建物リースをSFCが自らの顧客基盤に展開し、連携開始後初めての契約締結に至ったほか、保険代理店やベンダーリースなど、グループで重複する事業をSFCに集約し、効率化を図ったことなどが挙げられる。また、オートリースについても、SFC内に「オートリース推進室」を設置し、芙蓉オートリース(株)との連携を強化(年間連携成約額は前期比47%増)するなど、商品・サービスの機能とマーケット(顧客基盤)とのクロスセルにより、シナジーの最大化を進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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