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千葉銀行 Research Memo(5):戦略的アライアンス推進や更なる営業基盤拡充、地域とともに持続的な成長へ(1)

注目トピックス 日本株
■中期経営計画の概要と進捗

千葉銀行<8331>は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「ベストバンク2020 Final Stage−価値共創の3年」に取り組んでいる。本中期経営計画は、前中期経営計画で掲げた2020年の目標である「リテール・ベストバンク」グループを作り上げる総仕上げと位置付けられる。「お客さまとの共通価値の創造」※、「全ての職員が輝く働き方改革の実現」、「持続的成長に向けた経営態勢の強化」の3つの主要課題に取り組むことにより、地域とともに持続的な成長を目指す。

※同行では、「お客さまの課題解決と地域活性化に注力し、それらが当行の成長や健全性維持につながる」という考え方を「価値共創」という言葉で表現している。「お客さま」「株主」「従業員」「地域社会」など多様なステークホルダーとともに、共通価値を創造することで、先進的かつ高い生産性と揺るぎない信頼を確立し、地域とともに持続的な成長を実現する方針である。


1. 計数目標
2020年3月期の計数目標として、「親会社株主に帰属する当期純利益600億円」、「連結ROE7%台」、「連結普通株式等Tier1比率12%台」、「貸出金残高10兆5,000億円」、「預金残高12兆5,000億円」、「グループ預かり資産残高2兆5,000億円」を掲げており、厳しい収益環境のなかにおいても、戦略的アライアンスによるシナジー創出や営業基盤の拡充、新たな価値創造により持続的な成長を目指す方針である。

特に、収益計画については、市場金利の穏やかな上昇を想定するなかで、預貸金残高の拡大と役務取引等利益の積み上げによりトップライン(業務粗利益)の拡大を計画している※1。一方、経費についても、業務効率化や将来に向けたIT投資等を行いつつ、徹底的なコスト削減※2により現状水準でコントロールする方針である。

※1 貸出金利回りについては、本中期経営計画期間中の底打ち(反転)を想定。
※2 「働き方改革による時間外労働時間削減」による人件費のほか、店舗軽量化・他行連携による物件費の削減等。


2. 各種施策とその進捗について
(1) 法人取引
事業性評価に基づく取引先企業の本業支援を軸として、資金需要への積極的な対応と課題解決に向けたソリューション提供により法人取引を拡大する。特に、中小企業向け貸出金残高を4兆9,000億円(3年間の平均伸び率5.8%)に伸ばす計画である。2018年3月期は、法人ソリューション関連収益※を90億円(前期比32.3%増)に大きく伸ばしたほか、中小企業向け貸出金残高も4兆4,109億円(同6.5%増)と順調に増加している。

※私募債、シンジケートローン、M&A、ビジネスマッチング、相続関連など


(2) 不動産賃貸業向け貸出
不動産賃貸業向け貸出についても、同行ならではのノウハウやデータベースに基づくリスク管理※1を徹底しながら、資金需要に積極的に対応する方針である。2018年3月期については、賃貸用不動産向けの貸出実行額は相続税対策の一巡等により3,429億円(前期比23.7%減)に減少したものの、貸出残高は2兆1,645億円(前期末比7.9%増)と着実に積み上げることができた。また、同行の融資対象物件の入居率は89.4%と高い水準を維持するとともに、デフォルト率は低い水準※2で推移している。

※1 同行の場合、賃貸物件に対する融資取引については、従前より事業者向け貸出として取り扱ってきたところに特徴がある(他行の場合は、アパートローンのような制度融資にて対応し、融資実行時の入り口審査しか行わないのが一般的である)。すなわち、融資実行後も入居率や収支の状況をモニタリングすることでデータベースを蓄積し、それを与信判断やリスク管理に生かせることが強みとなっている。
※2 同行の不動産賃貸業向けのデフォルト率は0.17%(貸出金全体のデフォルト率は0.85%)と圧倒的に低い水準にある(2018年3月期実績)。


(3) 店舗戦略
千葉県を主要基盤としつつ、東京・埼玉・茨城などマーケットポテンシャルが高い成長地域への出店により営業基盤の拡充を図る。特に、「戦略的営業地域」※1については、さらに拠点新設を目指すとともに、千葉県内で培ってきた事業性評価に基づく課題解決型の営業活動により、適正な金利水準を確保しながら着実に実績を積み上げていく方針である。また、武蔵野銀行と共同での営業展開を検討しており、首都圏における取引シェアの更なる拡大を目指す。一方、顧客ニーズを踏まえつつ店舗運営の効率化にも着手。店舗機能の見直し(総合店舗から個人特化型やマネープラザ型など機能を絞り込んだ店舗へのシフト等)を行うとともに、昼休みの導入等を通じて効率化を進め、人員の再配置※2へと結び付けていく戦略である。

※1 マーケットポテンシャルの高い東京23区を「戦略的営業地域」と位置付け、積極的な営業展開を行っている(店舗数も14店舗に拡大)。2018年6月には秋葉原支店浜松町法人営業所を新たに設置(武蔵野銀行との共同設置)している。
※2 同行は、後述するように、業務改革等を通じて人員の再配置(成長分野や部門)を推進しているが、店舗機能やネットワークの見直しもその一環として位置付けられる。


(4) 住宅ローン
好調な外部要因(千葉県における持家・分譲住宅着工戸数の伸びなど)及び内部要因(インターネット受付など利便性の向上など)により住宅ローン残高を3兆6,000億円(3年間の平均伸び率3.1%)に伸ばす計画である。前期の住宅ローン実行額は過去最高を更新した2017年3月期に次ぐ過去2番目の水準を確保。住宅ローン残高も3兆4,311億円(前期比4.5%増)と計画を上回るペースで積み上がっている。

(5) 無担保ローン
適切な審査態勢や非対面チャネルの整備(インターネット支店やコールセンターなど)、クロスセル(住宅ローン利用者向け等)の推進などにより、無担保ローン残高を1,700億円(3年間の平均伸び率10.4%)に伸ばす計画である。前期末の無担保ローン残高は1,422億円(前期末比12.5%増)と順調なペースで伸びている。

(6) グループ預かり資産
「お客さま本位」の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の徹底に努めるなか、本部専門人員の活用や、銀証連携の強化、ちばぎんアセットマネジメント組成ファンドの他行への展開など、本部・営業店・グループ会社一体となった活動により、グループ預かり資産残高を2兆5,000億円(3年間の平均伸び率7.5%)に伸ばす計画である。また、ビッグデータ分析を活用したマーケティングやロボアドバイザーによる運用シミュレーションなど先進的なサービスを導入していく。2018年3月期末のグループ預かり資産は2兆499億円(前期比1.8%増)とやや苦戦しているが、取引先の裾野拡大(投信口座新規開設や投信積立新規申込など)や販売担当者の人材育成などにより巻き返しを図る方針である。

(7) グループ会社
グループ会社との連携強化に加えて、ちばぎん証券やちばぎんアセットマネジメントを中心にアライアンス各行との提携施策を推進する。2018年3月期は、ちばぎん証券が埼玉県内に4拠点を開設し、紹介型仲介業務を開始した。また、ちばぎんアセットマネジメントについても、既に武蔵野銀行、北洋銀行や東邦銀行から出資を受け入れており、専用ファンドの展開等を進めていく。

(8) 信託・相続関連業務
相続・資産承継・事業承継ニーズが高まるなか、地銀でありながら自ら信託・相続関連業務の取扱いが可能であることは同行の強みとなっている。2018年3月期の相続関連業務(同行のみ)の取扱件数は1,138件(前期比260件増、収益は555百万円(同16.1%増))と順調に拡大。また、他行との提携※による取扱件数についても、提携開始(2016年10月)から2018年3月末までの累計で800件に上っている。同行及び提携行の双方にメリットがあり、提携行の増加も含め、高齢化社会に対応したビジネスチャンスは今後もさらに拡大する見通しである。

※第四銀行との提携(2016年10月)を皮切りに、中国銀行(2016年10月)、武蔵野銀行(2017年4月)、東邦銀行(2017年6月)の4行と提携関係にある。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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