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全国保証 Research Memo(7):保証債務残高13兆円達成によりトップ地位確立を目指す

注目トピックス 日本株
■中期経営計画

全国保証<7164>は、2018年3月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画「Best route to 2020」を推進している。「住宅ローン保証事業におけるトップ地位確立」をスローガンに掲げ、1. 事業規模の拡大、2. 企業価値の向上、3. 事業領域の拡大(長期的課題)に取り組む。特に、保証債務残高13兆円を達成することにより保証債務残高No.1の企業を目指すところに強いメッセージを打ち出すとともに※、2020年3月期で民間住宅ローン貸出残高シェア8%、民間住宅ローン新規実行額でシェア11%と着実な市場シェア向上を目指している。

※保証債務残高の上位企業には大手銀行系の保証会社がランキングされている。


また、2020年3月期の目標として、営業収益45,100百万円(3年間の平均成長率7.9%)、営業利益33,510 百万円(同6.0%)、経常利益34,410百万円(同5.9%)、当期純利益23,690百万円(同6.6%)を掲げている。

好調な外部環境(低金利政策や住宅市場の堅調な推移、良好な雇用環境など)が継続する想定のもと、保証債務残高の拡大が業績の伸びをけん引する想定である。

また、費用面においては、与信関連費用は保証債務残高の伸びに伴って増加する想定となっている。最低水準となった過去3期と比べると費用増加要因となっているが、それでも低位に推移する前提と捉えるのが妥当だろう。また、その他費用においても、システム投資にかかる費用増が想定されるものの、システム化に伴う業務の効率化の推進により、人件費やその他経費に大きな増加は見込んでいないようだ。

一方、財務面でも、利益成長に伴う内部留保の積み増しにより、財務基盤はさらに強化される見通しである。半面、資本効率を示すROEは高い水準を維持しつつも、2020年3月期には17.1%へ緩やかに低下する想定となっている。資本の充実は、保証事業拡大のための優先事項であるものの、中長期的な視点からは資本効率を意識した動き(株主還元の充実や新規事業への投資など)にも注意が必要だろう。

各取り組みに対する進捗は以下のとおりである。

1. 事業規模の拡大
(1) 未提携金融機関との新規契約締結
2018年3月期は、前述のとおり、銀行2行、JA11組合の合計13機関と提携を開始。今後も銀行などを中心に新規契約の締結を推進する方針である。

(2) 付加価値向上の取り組み
2018年3月期は、金融機関との「申込データ連携システム」の稼働開始※やインターネットを活用した申し込みスキームの構築を行うとともに、両サービスの導入に向けた提案活動を実施した。今後も案件の多い銀行を中心に提案活動を継続し、取引拡大(利便性向上による利用促進)に結び付ける戦略である。

※提携金融機関と同社の情報をつなぐ新たなネットワークシステム(ZEBRAシステム)を開発し、2017年7月より稼働開始。ZEBRAシステム導入により、従来のFAXや郵送に加え、専用回線やインターネット回線を通じた保証審査申込が可能となる。また、審査の進捗状況確認など様々なサービスも利用できる。


(3) 業務効率化
審査業務におけるペーパーレス化を2018年2月より一部支店で導入したほか、審査受付業務の子会社への集中化を推進。今後はペーパーレス化を全店で導入するとともに、審査受付業務の集中化を通じて審査業務の効率化を図る。

2. 企業価値の向上
危機管理・業務継続体制の見直しや「働き方改革」の推進、新人事制度の構築、財務基盤・株主還元の強化(配当性向の引き上げ)などで一定の実績を残した。今後も内部統制システムの機能強化(充実)、新人事制度の導入など、企業価値の向上に向けた取り組みを推進する。

3. 事業領域の拡大
長期的な課題への対応として、同社の事業基盤(審査ノウハウやデータベース、740を超える金融機関とのネットワーク等)を生かせる新たな事業領域への進出に向けた調査・検討を行っている。具体的には、これまで外部委託していた関連事業の内製化(周辺サービスへの参入)や住宅ローン以外の保証業務の拡大などが考えられる。M&Aや他社との提携の可能性も視野に入れ慎重に検討を重ね、この中期経営計画の期間中に第2の柱となる事業についての検討を進めるようだ。

弊社では、好調な外部環境や足元の業績、同社の優位性などから判断して、中期経営計画の達成は十分に可能であり、計画の上方修正にも注意する必要であるとみている。特に、保証債務残高の拡大のためには、大型銀行など既存提携金融機関との取引拡大が最も重要であるが、前述した同社施策(システム連携などによる利便性の向上)が利用率の向上(顧客内シェアの拡大)に結び付く可能性は高い。加えて、これまでグループ内の保証会社を利用してきた金融機関にとって、リスク管理の強化や業務効率の向上は今後益々重要な経営課題になるものと想定され、同社を活用するインセンティブ(メリット)は高まる方向にあると考えられる。それが顕在化してくれば、各銀行における顧客内シェアも拡大に向かい、同社の成長余地は非常に大きい。

また、政府の後押しが期待される中古住宅・リフォーム市場の拡大についても、同社にとって追い風となる可能性が高い。特に、中古住宅やリフォームは物件の評価は難しく、銀行のローンがつきにくい分野であるため、物件の評価ノウハウを有している同社保証の活用が市場の拡大に貢献するとともに、同社自身の成長に結び付く余地も大きい。

一方、費用面においても、与信関連費用の前提には現時点で合理性があるものの、更なる与信関連費用の減少が利益計画の上振れ要因になる可能性にも注意が必要である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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