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高千穂交易 Research Memo(4):18/3期は増収増益ながら計画は下回る、無借金経営続き財務基盤は安定

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2018年3月期の業績概要
(1) 損益状況
高千穂交易<2676>の2018年3月期は、売上高19,570百万円(前期比2.8%増)、営業利益663百万円(同32.6%増)、経常利益706百万円(同0.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益130百万円(同53.2%減)となった。

売上総利益率は24.5%となり、前期の25.3%からやや低下したが、主に商品構成の変化による。販管費は、のれん償却額が192百万円(前期は346百万円)へ減少したこともあり4,130百万円(前期比4.2%減)となった。この結果、営業利益は前期比32.6%増と大幅な伸びとなったが、計画値(1,000百万円)を大きく下回った。さらに、前期に発生した為替差益が114百万円から12百万円へ大幅減となったことから、経常利益は前期比で0.9%増の706百万円にとどまった。

さらに原油価格の下落の影響でタイの子会社GF社の業績が計画未達成の状態にあることから、のれん等の固定資産の一部について減損損失(253百万円)を特別損失として計上したことなどから親会社株主に帰属する当期純利益は130百万円(前期比53.2%減)となった。

(2) 財務状況
2018年3月期末の財務状況を見ると、流動資産は15,679百万円(前期末比20百万円減)となった。主要科目では受取手形及び売掛金288百万円増、たな卸資産113百万円増であった。固定資産は2,886百万円(同25百万円増)となったが、内訳は有形固定資産が302百万円(同2百万円減)、無形固定資産729百万円(同418百万円減)、投資その他の資産1,854百万円(同445百万円増)となった。無形固定資産の減少は主にのれんの減少399百万円による。この結果、資産合計は18,566百万円(同5百万円増)となった。

流動負債は3,887百万円(同147百万円減)となったが、主な変動は支払手形及び買掛金の減少109百万円などであった。固定負債は719百万円(同28百万円増)となったが、主な変動は退職給付に係る負債の増加27百万円などである。純資産は13,958百万円(同124百万円増)となった。期末で827,990株(777百万円)の自己株式を所有している。なお、長年無借金経営を続けており、財務基盤は安定していると言えるだろう。

(3) キャッシュ・フローの状況
2018年3月期のキャッシュ・フローは以下のようであった。営業活動によるキャッシュ・フローは143百万円の収入(前期898百万円の収入)となった。主な収入は税金等調整前当期純利益の計上453百万円、減価償却費103百万円、のれん償却額192百万円等であった。一方で、主な支出は売上債権の増加177百万円、たな卸資産の増加106百万円、仕入債務の減少113百万円等であった。投資活動によるキャッシュ・フローは435百万円の支出(同122百万円の支出)となったが、主に有形固定資産の取得による支出63百万円、投資有価証券の取得による支出227百万円など。財務活動によるキャッシュ・フローは218百万円の支出となったが、主に配当金の支払いによる支出224百万円による。この結果、期中の現金及び現金同等物は494百万円減少し、期末残高は5,069百万円となった。

2. 2018年3月期のセグメント別状況
セグメント及びサブセグメント別の状況は以下のようであった。

(1) システム事業
システム事業の売上高は11,980百万円(前期比5.6%増)、営業利益は粗利益の増加、販管費の削減(のれん償却費の減少154百万円含む)によって543百万円(同84.7%増)と大幅増益となった。サブセグメントの状況は以下のようであった。

a) セキュリティ
売上高は7,651百万円(同6.6%増)となりセグメントの増収をけん引した。国内では、ドラッグストア向けに商品監視システムの更新需要により好調に推移した。オフィス向けは、外資系企業を中心に入退室管理システムが増収となった。

海外ではタイにおいて防火規制の強化により、TKFS※が一般工場向け等に防火システムが好調に推移した。一方でTKFSと同様にタイを主な拠点にプラント建設等の高度防火システムを取り扱うGF社は計画未達成の状況にありのれんの減損損失を計上した。その内容は次の通り。

※TKFS:Takachiho Fire, Security & Services(Thailand) Ltd.


GF社買収の目的
国内市場の大きな成長は、期待出来ない状況にある中で、「グローバルビジネスの拡大」を中期戦略の1つとして掲げ、経済成長力のあるASEAN地域全体に高度防火システムを展開し、設計力や商品供給力を高く評価されているGF社をグループ事業の柱の一つとして確立させることを目的に買収。

事業環境と減損損失
買収後、原油価額が値下がりし一時1バレル30ドル台まで下落。石油・発電プラントの建設計画が先送りや縮小などにより、買収当初の計画が未達成の状態にあるため、のれん等の固定資産についてその一部を回収可能額まで減額し、減損損失253百万円を計上。

今後の見通し
のれんについては今後5年弱で定期償却することになるが、償却負担は年間50百万円程度軽減される。また現時点で、原油価格が1バレル70ドル前後まで回復しており、石油関係のプラント建設は非常に活発化している。また発電プラントについても、建設計画が動き出しており、今後の事業展開として重視している分野である。

b) その他ソリューション
売上高は1,668百万円(同3.5%増)となった。期待されていたRFID関連は、顧客の要求複雑化と効果検証の長期化に伴い売上高は518百万円(同13.6%増)にとどまった。メーリングは、期待されている大型案件が後ずれしたことなどで、売上高は472百万円(同14.0%減)と減収になった。その一方で、ネットワークは引き続きクラウド型無線LANシステム(Meraki製)が好調に推移し売上高は676百万円(同11.6%増)となった。

c) カストマ・サービス
セキュリティ、その他ソリューションの販売増に伴い、設置料収入や保守収入などが増加したことから、売上高は2,661百万円(同3.9%増)となった。

(2) デバイス事業
デバイス事業の売上高は7,589百万円(同1.3%減)、営業利益は91百万円(同56.7%減)となった。産機プロダクトの苦戦により減収減益となった。サブセグメントの状況は以下のようであった。

a) 電子プロダクト
売上高は3,529百万円(同15.3%増)となった。重点市場にしている産業機器市場では、鉄道通信インフラ(新幹線トンネル内基地局)向けや半導体製造装置向けが好調で、売上高は1,624百万円(同17.0%増)となった。テレマティックス関連は、車載用マイクなどが好調であったことから売上高は293百万円(同215.1%増)と大幅増となった。その一方で、アミューズメントや家電向けは低調に推移した。

b) 産機プロダクト
売上高は4,060百万円(同12.3%減)と大幅な減収となった。向け先別では、自動機が1,235百万円(同21.5%減)と大幅減となったが、これは、これまで業績をけん引してきた中国のATM市場で自国製品へのシフトが進みつつあり、日本のATMメーカーの出荷が低減したことに連動したものである。遊技機向けは新規制が施行され市場が縮小傾向であることや競争激化により売上高は214百万円(同55.7%減)とほぼ半減した。住設の売上高は732百万円(同3.5%増)と微増収であったが、今後は米国市場での販売を本格的に開始する計画だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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