UMN Research Memo(2):感染症予防ワクチン開発のバイオベンチャーで、塩野義製薬と資本業務提携を締結
[18/08/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
1. 会社沿革
UMNファーマ<4585>は2004年に未充足医療ニーズを満たす新規医療用医薬品の開発・製造販売を目的に設立された。社名である「UMNファーマ」のUMNはUnmet Medical Needs(有効な治療法や薬剤がない疾患領域における医療ニーズ)の略である。
現在、同社は感染症予防ワクチンを対象領域として事業展開しているが、2006年に米国のバイオベンチャーであるPSC(Protein Sciences Co.)と組換えインフルエンザHAワクチンの日本における開発・製造販売の独占的実施権許諾契約を締結したことがきっかけとなっている。PSCが保有するタンパク質の独自製造技術BEVS(バキュロウイルスによるタンパク質発現システムを用いたバイオ医薬品大量製造技術)は既存の鶏卵培養法よりも高い有効性と生産性が期待できる技術であるとの評価から、同技術を用いてインフルエンザワクチン等の感染症予防ワクチンの開発を進めていくことになる(2017年12月に契約を解除)。
2010年にアステラス製薬<4503>と国内におけるインフルエンザワクチンの共同開発契約を締結。アステラス製薬で治験を進めていくのと並行して、同社は原薬を製造するための拠点として子会社であった(株)UNIGENで岐阜工場の建設を進めるなど、国内のバイオベンチャーとしては珍しく原薬製造まで行うビジネスモデルを指向し、2013年12月期には有形固定資産で120億円を超える規模にまで資産を膨らませていた。しかし、2014年5月に季節性インフルエンザワクチンの販売承認申請を行っていたアステラス製薬が2017年1月に申請を取り下げ、共同開発契約の解約を決定したことで経営環境が一変し、業績面では2016年12月期に岐阜工場等にかかる多額の事業整理損の計上を迫られたことで140億円の最終損失を計上し、債務超過に陥った。なお、申請取り下げの理由については、「リスク・ベネフィットの観点から、本剤の臨床的意義が極めて乏しく審査の継続ができない」との見解がPMDAから示されたためとしている。なお、米国ではPSCの同成分のワクチンが2013年に承認されており、国内でも承認される可能性は高いと見られていたことから、申請取り下げの発表は株式市場でも驚きをもって受け止められた。治験データを見ても、既存品との比較において高い有効性を示していたとされているだけに、疑問の残る結果となった。
アステラス製薬との共同開発契約の解約などで、事業戦略の再構築と資金調達の必要性に迫られることとなったが、2017年10月に塩野義製薬と資本業務提携契約を締結し(出資比率は2017年12月末時点で4.6%)、増資等による資金援助を得たことで当面の経営危機から脱し、現在は再出発のフェーズに入っている。塩野義製薬では感染症領域を今後の重点戦略市場と位置付けており、その中で空白部分であった予防ワクチン領域での創薬開発を推進するために、中長期的な経営戦略面から同社へ資本参加することを決定したと見られる。
2. 事業内容
同社の事業は、次世代バイオ医薬品自社開発事業とバイオ医薬品等受託製造事業の2つの事業を展開しているが、現在は塩野義製薬との業務提携を進めるなかで次世代バイオ医薬品自社開発事業に経営リソースを集中して事業を進めている。
次世代バイオ医薬品自社開発事業では、同社が蓄積してきたヒト用感染症予防ワクチンを始めとする次世代バイオ医薬品原薬製造技術に、アジュバント技術や製剤/ドラッグ・デリバリー技術等を統合して、次世代ロジカルワクチンの創製を目指して研究開発を行っている。同社で基礎研究を進め開発候補品を絞り込んだ上で、提携先の塩野義製薬と協議し開発パイプラインを選定、共同開発を進めていくことになる。現在はインフルエンザウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなど従来から開発してきた開発候補品だけでなく、その他の感染症なども対象に新規予防ワクチンの開発候補品の基礎的研究を推進している。同社は共同開発による契約一時金や開発マイルストーン、販売開始後の原薬/製品供給もしくはランニングロイヤリティ等により収益を獲得するビジネスモデルとなる。
同社では自社でラボスケールから中規模(パイロットスケール)の原薬を製造する秋田工場を保有しており、また、大規模商用スケールまで一貫した品質を維持しつつスケールアップに成功した経験を有していることから、今後、塩野義製薬との共同開発を進めていく際にも秋田工場を活用していく意向となっている。
一方、バイオ医薬品等受託製造事業は将来の開発パイプライン候補と成り得るアカデミア等からの案件に絞って受託しており、検討用サンプルや治験薬の製造、各種評価試験などを主に横浜研究所や秋田研究所、秋田工場などで行っている。
医薬品の一般的な開発プロセスは、基礎研究によって開発候補品の絞り込みを行い、動物モデルを使った非臨床試験を実施して問題がなければ、ヒトによる臨床試験を実施し、所望の試験結果が得られれば厚生労働省に製造販売承認申請を行う流れとなる。同社は開発プロセスの中で主に基礎研究、CMC開発及び治験薬供給を行い、試験費用が多額となる臨床試験は共同開発先である塩野義製薬で進めていくことになると想定される。予防ワクチンの臨床試験の開始から承認申請までの期間としては一般的に4〜5年程度、アジュバントを使用する場合は必要データ数が増加するため5〜6年程度かかると言われている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 会社沿革
UMNファーマ<4585>は2004年に未充足医療ニーズを満たす新規医療用医薬品の開発・製造販売を目的に設立された。社名である「UMNファーマ」のUMNはUnmet Medical Needs(有効な治療法や薬剤がない疾患領域における医療ニーズ)の略である。
現在、同社は感染症予防ワクチンを対象領域として事業展開しているが、2006年に米国のバイオベンチャーであるPSC(Protein Sciences Co.)と組換えインフルエンザHAワクチンの日本における開発・製造販売の独占的実施権許諾契約を締結したことがきっかけとなっている。PSCが保有するタンパク質の独自製造技術BEVS(バキュロウイルスによるタンパク質発現システムを用いたバイオ医薬品大量製造技術)は既存の鶏卵培養法よりも高い有効性と生産性が期待できる技術であるとの評価から、同技術を用いてインフルエンザワクチン等の感染症予防ワクチンの開発を進めていくことになる(2017年12月に契約を解除)。
2010年にアステラス製薬<4503>と国内におけるインフルエンザワクチンの共同開発契約を締結。アステラス製薬で治験を進めていくのと並行して、同社は原薬を製造するための拠点として子会社であった(株)UNIGENで岐阜工場の建設を進めるなど、国内のバイオベンチャーとしては珍しく原薬製造まで行うビジネスモデルを指向し、2013年12月期には有形固定資産で120億円を超える規模にまで資産を膨らませていた。しかし、2014年5月に季節性インフルエンザワクチンの販売承認申請を行っていたアステラス製薬が2017年1月に申請を取り下げ、共同開発契約の解約を決定したことで経営環境が一変し、業績面では2016年12月期に岐阜工場等にかかる多額の事業整理損の計上を迫られたことで140億円の最終損失を計上し、債務超過に陥った。なお、申請取り下げの理由については、「リスク・ベネフィットの観点から、本剤の臨床的意義が極めて乏しく審査の継続ができない」との見解がPMDAから示されたためとしている。なお、米国ではPSCの同成分のワクチンが2013年に承認されており、国内でも承認される可能性は高いと見られていたことから、申請取り下げの発表は株式市場でも驚きをもって受け止められた。治験データを見ても、既存品との比較において高い有効性を示していたとされているだけに、疑問の残る結果となった。
アステラス製薬との共同開発契約の解約などで、事業戦略の再構築と資金調達の必要性に迫られることとなったが、2017年10月に塩野義製薬と資本業務提携契約を締結し(出資比率は2017年12月末時点で4.6%)、増資等による資金援助を得たことで当面の経営危機から脱し、現在は再出発のフェーズに入っている。塩野義製薬では感染症領域を今後の重点戦略市場と位置付けており、その中で空白部分であった予防ワクチン領域での創薬開発を推進するために、中長期的な経営戦略面から同社へ資本参加することを決定したと見られる。
2. 事業内容
同社の事業は、次世代バイオ医薬品自社開発事業とバイオ医薬品等受託製造事業の2つの事業を展開しているが、現在は塩野義製薬との業務提携を進めるなかで次世代バイオ医薬品自社開発事業に経営リソースを集中して事業を進めている。
次世代バイオ医薬品自社開発事業では、同社が蓄積してきたヒト用感染症予防ワクチンを始めとする次世代バイオ医薬品原薬製造技術に、アジュバント技術や製剤/ドラッグ・デリバリー技術等を統合して、次世代ロジカルワクチンの創製を目指して研究開発を行っている。同社で基礎研究を進め開発候補品を絞り込んだ上で、提携先の塩野義製薬と協議し開発パイプラインを選定、共同開発を進めていくことになる。現在はインフルエンザウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなど従来から開発してきた開発候補品だけでなく、その他の感染症なども対象に新規予防ワクチンの開発候補品の基礎的研究を推進している。同社は共同開発による契約一時金や開発マイルストーン、販売開始後の原薬/製品供給もしくはランニングロイヤリティ等により収益を獲得するビジネスモデルとなる。
同社では自社でラボスケールから中規模(パイロットスケール)の原薬を製造する秋田工場を保有しており、また、大規模商用スケールまで一貫した品質を維持しつつスケールアップに成功した経験を有していることから、今後、塩野義製薬との共同開発を進めていく際にも秋田工場を活用していく意向となっている。
一方、バイオ医薬品等受託製造事業は将来の開発パイプライン候補と成り得るアカデミア等からの案件に絞って受託しており、検討用サンプルや治験薬の製造、各種評価試験などを主に横浜研究所や秋田研究所、秋田工場などで行っている。
医薬品の一般的な開発プロセスは、基礎研究によって開発候補品の絞り込みを行い、動物モデルを使った非臨床試験を実施して問題がなければ、ヒトによる臨床試験を実施し、所望の試験結果が得られれば厚生労働省に製造販売承認申請を行う流れとなる。同社は開発プロセスの中で主に基礎研究、CMC開発及び治験薬供給を行い、試験費用が多額となる臨床試験は共同開発先である塩野義製薬で進めていくことになると想定される。予防ワクチンの臨床試験の開始から承認申請までの期間としては一般的に4〜5年程度、アジュバントを使用する場合は必要データ数が増加するため5〜6年程度かかると言われている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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