エリアリンク Research Memo(5):土地仕入から出口戦略まで土地付きストレージの全プロセスで万全の対応で臨む
[18/08/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
2. ストレージ事業の成長戦略
(1) ストレージ市場の状況
国内のストレージ市場(コンテナ収納、レンタル収納の賃料収入)の市場規模は、2017年において約657億円だったと推測されている。同年におけるエリアリンク<8914>のストレージの賃料収入(管理費等も含む)は、不動産運用サービスセグメントの中のストレージ運用の売上高9,886百万円であった。これをもとに、同社のストレージ市場における市場シェアは15.1%と推計されている。
国内ストレージ市場については2020年には約778億円にまで拡大するという見方があり、2017年を起点として2020年までの3年間の年平均成長率は5.8%となる。前述のように、同社はストレージ運用の売上高について年平均10.6%の成長を計画しており、市場見通しや同社の収益計画に基づく2020年12月期の同社の市場シェアは17.2%に高まることになる。
ストレージ事業では米国が日本に大きく先行している。同社の調査・推計によれば、2015年におけるストレージの供給量(室数)は、米国が約2,000万室であったのに対して、日本のそれは約45万室であり、その差は約44.4倍であった。同時期における世帯数は、米国の約1億1,459万世帯に対し日本は約5,641万世帯で、その差は約2.0倍であった。世帯数を供給室数で割ると、米国が6世帯に1室の割合であるのに対して日本は125世帯に1室の割合であり、ストレージの普及度合いが両国で大きな開きがあることが分かる。
日本と米国とでは住宅事情やライフスタイルが異なるため、ストレージの普及度合いが米国並みになるとは断言できないが、日本よりも住宅の面積が広いとみられる米国において、日本以上にストレージが普及している現状は興味深く、示唆に富んでいると言えるだろう。
(2) 不動産投資としてのストレージの特長・強み
沿革の項でも述べたように、同社は設立以来、不動産投資という大きな枠の中で様々な業態を展開したが、現在ではストレージ事業に集中している。その大きな理由として同社は、ストレージが不動産投資における選択肢として普及が進むと考えていることを挙げている。
同社のこうした見方は説得力があると弊社では考えている。不動産投資において最も重要なのは集客であるが、この点でストレージは大きなアドバンテージがあると考えられる。前述のように、米国と比較した場合日本のストレージの認知度や普及度はまだ低い。住宅事情なども含めて考えれば、社会構造的にストレージへの潜在需要は非常に大きいと言えるだろう。日本は人口減少のステージに入ったが、人口減少の進行がストレージ市場の需給バランスに与える影響は、居住用不動産に対するそれよりも小さいと弊社では見ている。また、人口減少下でも居住用不動産とストレージの競合は起こらないと考えられる。アパートの居住者が、隣室が空室になったからと言って物置代わりにそこを借りるケースは極めてまれだろう。
ストレージはまた、初期投資や維持管理の点でも利点が多いと考えられる。これは、アパートやマンションなどの居住用不動産への投資と比較するとわかりやすいだろう。居住用不動産には水回りが不可欠なのは言うまでもない。内装にも一定水準の投資が必要となる。また入居者が退去した場合には原状回復費用が必要となる。それに対して、ストレージは収納対象がモノであるため、これらの負担は基本的に不要だ。
立地についてもストレージは優位がある。駅や商店街からの距離は問題にはならない。商圏は半径2km程度と考えられるが、自動車利用を前提に生活道路沿いなど利用のしやすさ、アクセスのしやすさが重要なポイントとなる。こうしたストレージの特性は、土地の確保において居住用や駐車場などとの競合が少なく、相対的に安価な土地を、合理的な価格で取得・活用できる点で初期投資の抑制と投資利回り向上に寄与すると期待される。
(3) ストレージ事業の特長・強み
同社のストレージ事業は屋外型コンテナタイプなど大きく3つの形態に分かれるが、以下では現在同社が最も注力する土地付きストレージについて述べる。
土地付きストレージは、同社が一旦土地を取得してその上にストレージの上物を建築し、土地建物一体で投資家(富裕層、事業会社等)に売却し、それを賃料保証で一括借り上げして運用(募集・運営・管理)収入を得るという事業モデルだ。それゆえ一連のプロセスとして、土地仕入からエンドユーザー集客後の運営管理まで、大きく5つのプロセスに分けられる。
土地仕入は事業のスタートで非常に重要な部分だ。前述のように立地の特性が居住用や駐車場用の用地とは重ならないため、実態に即した合理的な価格で仕入れが可能とみられる。仕入用の資金については、2018年6月の増資に加えて銀行借入などによって対応している。土地仕入については建物完成後の集客を念頭に、非常に細かいガイドラインを設定し、厳格に審査を行っている。2018年12月期は50棟の出店計画に対してそのすべての土地の調達を上期中に終えており、下期は2019年12月期の出店用地の確保に取り組んでいる。
上物の建築では立地条件(周辺環境、用途地域・地域地区等)に応じて鉄骨造と木造(ツーバイフォー工法)を適宜使い分けている。コンテナタイプに比べて工期が長く、それだけ資金効率が悪いことになる。同社は自社設計士のクオリティを高めて高効率かつ工期短縮に寄与するような設計を進めている。また、販売時の価格はコスト積み上げ方式ではなく収益還元法で決定しているため、建築コストの変動はそのまま同社の粗利益率に影響を与える。そのため低コスト設計も重要なテーマだ。同社は約20%の販売利益率(粗利益ベース)を目標としているが、現状はおおむね達成できているもようだ。
販売では、収益還元法で価格設定し、土地建物一体で投資家に販売している。同社は販売と同時に賃料保証で一括借上げし、ストレージの運用へと移行することになる。販売活動自体は土地を仕入れて建築確認が下りた段階で着手するのが一般的。賃料保証ということもあって投資家の需要は強く、建物完成前に販売が終了しているケースがほとんどだ。現状の課題は銀行の融資姿勢の変化で、投資家側に融資が付かず商談が前に進まないケースが出てきている点だ。
この点については、同社は不動産投資を目的とする私募ファンドへの販売を行うなど、出口戦略の多様化に努めている。これまで、同社のストレージ商品への投資を主たる目的とする私募ファンドは2件組成されており、総計で7棟の土地付きストレージをファンドに販売してきている。私募ファンドの組成は今後も続く見込みで、当面は2018年11月〜12月頃に組成予定の第3号ファンドが注目点だ。同社は2018年12月下期にさらに35棟(通期ベースでは50棟)を出店予定で、大量出店の大きな受け皿としての役割が期待されている。
エンドユーザーの集客においては、近隣の駐車場料金等を精緻に調査して適切な料金設定に努めている。その上で必要な広告宣伝やキャンペーンを実施して早期の損益分岐点超えを目指している。損益分岐点となる稼働率は平均的には70%に設定されているもようで、これはコンテナタイプの80%よりも低い水準だ。それゆえ本質的な収益性は土地付きストレージがコンテナタイプを上回ることになる。
ストレージ運用においては、賃料収入が売上高、投資家への賃料保証分の払い出しが売上原価となり、その差が粗利益となるが、粗利益率はおおむね20%に設定されている。同社は現在、積極的な出店を続けており、開店当初ゆえに低稼働率の新規店舗の割合が相対的に高くなっているため、利益率が低く見えている状況にある。しかしながら損益分岐点を超えてきた3年目以降の物件は、賃料収入の粗利益に加えてエンドユーザーからの管理料や「安心保証パック」料金といった付随収入が入るため、一般に思われているよりも高い利益率となっている。
日々の運営・管理における取り組みでは、在宅勤務者の活用やRPA導入による業務自動化などがある。時間を区切って在宅で業務を行っているパート従業員は、正社員よりも業務に集中できる環境にあるため、その利点を生かすのが狙いだ。
以上のような施策を通じて同社は、土地付きストレージの出店を加速し、中期経営計画の数値ビジョン達成を図る方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<NB>
2. ストレージ事業の成長戦略
(1) ストレージ市場の状況
国内のストレージ市場(コンテナ収納、レンタル収納の賃料収入)の市場規模は、2017年において約657億円だったと推測されている。同年におけるエリアリンク<8914>のストレージの賃料収入(管理費等も含む)は、不動産運用サービスセグメントの中のストレージ運用の売上高9,886百万円であった。これをもとに、同社のストレージ市場における市場シェアは15.1%と推計されている。
国内ストレージ市場については2020年には約778億円にまで拡大するという見方があり、2017年を起点として2020年までの3年間の年平均成長率は5.8%となる。前述のように、同社はストレージ運用の売上高について年平均10.6%の成長を計画しており、市場見通しや同社の収益計画に基づく2020年12月期の同社の市場シェアは17.2%に高まることになる。
ストレージ事業では米国が日本に大きく先行している。同社の調査・推計によれば、2015年におけるストレージの供給量(室数)は、米国が約2,000万室であったのに対して、日本のそれは約45万室であり、その差は約44.4倍であった。同時期における世帯数は、米国の約1億1,459万世帯に対し日本は約5,641万世帯で、その差は約2.0倍であった。世帯数を供給室数で割ると、米国が6世帯に1室の割合であるのに対して日本は125世帯に1室の割合であり、ストレージの普及度合いが両国で大きな開きがあることが分かる。
日本と米国とでは住宅事情やライフスタイルが異なるため、ストレージの普及度合いが米国並みになるとは断言できないが、日本よりも住宅の面積が広いとみられる米国において、日本以上にストレージが普及している現状は興味深く、示唆に富んでいると言えるだろう。
(2) 不動産投資としてのストレージの特長・強み
沿革の項でも述べたように、同社は設立以来、不動産投資という大きな枠の中で様々な業態を展開したが、現在ではストレージ事業に集中している。その大きな理由として同社は、ストレージが不動産投資における選択肢として普及が進むと考えていることを挙げている。
同社のこうした見方は説得力があると弊社では考えている。不動産投資において最も重要なのは集客であるが、この点でストレージは大きなアドバンテージがあると考えられる。前述のように、米国と比較した場合日本のストレージの認知度や普及度はまだ低い。住宅事情なども含めて考えれば、社会構造的にストレージへの潜在需要は非常に大きいと言えるだろう。日本は人口減少のステージに入ったが、人口減少の進行がストレージ市場の需給バランスに与える影響は、居住用不動産に対するそれよりも小さいと弊社では見ている。また、人口減少下でも居住用不動産とストレージの競合は起こらないと考えられる。アパートの居住者が、隣室が空室になったからと言って物置代わりにそこを借りるケースは極めてまれだろう。
ストレージはまた、初期投資や維持管理の点でも利点が多いと考えられる。これは、アパートやマンションなどの居住用不動産への投資と比較するとわかりやすいだろう。居住用不動産には水回りが不可欠なのは言うまでもない。内装にも一定水準の投資が必要となる。また入居者が退去した場合には原状回復費用が必要となる。それに対して、ストレージは収納対象がモノであるため、これらの負担は基本的に不要だ。
立地についてもストレージは優位がある。駅や商店街からの距離は問題にはならない。商圏は半径2km程度と考えられるが、自動車利用を前提に生活道路沿いなど利用のしやすさ、アクセスのしやすさが重要なポイントとなる。こうしたストレージの特性は、土地の確保において居住用や駐車場などとの競合が少なく、相対的に安価な土地を、合理的な価格で取得・活用できる点で初期投資の抑制と投資利回り向上に寄与すると期待される。
(3) ストレージ事業の特長・強み
同社のストレージ事業は屋外型コンテナタイプなど大きく3つの形態に分かれるが、以下では現在同社が最も注力する土地付きストレージについて述べる。
土地付きストレージは、同社が一旦土地を取得してその上にストレージの上物を建築し、土地建物一体で投資家(富裕層、事業会社等)に売却し、それを賃料保証で一括借り上げして運用(募集・運営・管理)収入を得るという事業モデルだ。それゆえ一連のプロセスとして、土地仕入からエンドユーザー集客後の運営管理まで、大きく5つのプロセスに分けられる。
土地仕入は事業のスタートで非常に重要な部分だ。前述のように立地の特性が居住用や駐車場用の用地とは重ならないため、実態に即した合理的な価格で仕入れが可能とみられる。仕入用の資金については、2018年6月の増資に加えて銀行借入などによって対応している。土地仕入については建物完成後の集客を念頭に、非常に細かいガイドラインを設定し、厳格に審査を行っている。2018年12月期は50棟の出店計画に対してそのすべての土地の調達を上期中に終えており、下期は2019年12月期の出店用地の確保に取り組んでいる。
上物の建築では立地条件(周辺環境、用途地域・地域地区等)に応じて鉄骨造と木造(ツーバイフォー工法)を適宜使い分けている。コンテナタイプに比べて工期が長く、それだけ資金効率が悪いことになる。同社は自社設計士のクオリティを高めて高効率かつ工期短縮に寄与するような設計を進めている。また、販売時の価格はコスト積み上げ方式ではなく収益還元法で決定しているため、建築コストの変動はそのまま同社の粗利益率に影響を与える。そのため低コスト設計も重要なテーマだ。同社は約20%の販売利益率(粗利益ベース)を目標としているが、現状はおおむね達成できているもようだ。
販売では、収益還元法で価格設定し、土地建物一体で投資家に販売している。同社は販売と同時に賃料保証で一括借上げし、ストレージの運用へと移行することになる。販売活動自体は土地を仕入れて建築確認が下りた段階で着手するのが一般的。賃料保証ということもあって投資家の需要は強く、建物完成前に販売が終了しているケースがほとんどだ。現状の課題は銀行の融資姿勢の変化で、投資家側に融資が付かず商談が前に進まないケースが出てきている点だ。
この点については、同社は不動産投資を目的とする私募ファンドへの販売を行うなど、出口戦略の多様化に努めている。これまで、同社のストレージ商品への投資を主たる目的とする私募ファンドは2件組成されており、総計で7棟の土地付きストレージをファンドに販売してきている。私募ファンドの組成は今後も続く見込みで、当面は2018年11月〜12月頃に組成予定の第3号ファンドが注目点だ。同社は2018年12月下期にさらに35棟(通期ベースでは50棟)を出店予定で、大量出店の大きな受け皿としての役割が期待されている。
エンドユーザーの集客においては、近隣の駐車場料金等を精緻に調査して適切な料金設定に努めている。その上で必要な広告宣伝やキャンペーンを実施して早期の損益分岐点超えを目指している。損益分岐点となる稼働率は平均的には70%に設定されているもようで、これはコンテナタイプの80%よりも低い水準だ。それゆえ本質的な収益性は土地付きストレージがコンテナタイプを上回ることになる。
ストレージ運用においては、賃料収入が売上高、投資家への賃料保証分の払い出しが売上原価となり、その差が粗利益となるが、粗利益率はおおむね20%に設定されている。同社は現在、積極的な出店を続けており、開店当初ゆえに低稼働率の新規店舗の割合が相対的に高くなっているため、利益率が低く見えている状況にある。しかしながら損益分岐点を超えてきた3年目以降の物件は、賃料収入の粗利益に加えてエンドユーザーからの管理料や「安心保証パック」料金といった付随収入が入るため、一般に思われているよりも高い利益率となっている。
日々の運営・管理における取り組みでは、在宅勤務者の活用やRPA導入による業務自動化などがある。時間を区切って在宅で業務を行っているパート従業員は、正社員よりも業務に集中できる環境にあるため、その利点を生かすのが狙いだ。
以上のような施策を通じて同社は、土地付きストレージの出店を加速し、中期経営計画の数値ビジョン達成を図る方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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