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Jトラスト Research Memo(3):金融事業がグループ全体の中核事業(1)

注目トピックス 日本株
■事業概要

同社グループは、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。Jトラスト<8508>では日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業、非金融事業の5事業セグメントを展開するが、メインとなる金融3事業が営業収益全体の9割近くを占める。今後も、日本金融事業を基盤に、アジア諸国の金融事業における買収・再生・健全化を通じて、顧客に喜ばれる地域密着型の金融グループとして成長を目指す方針である。

1. 日本金融事業
2019年3月期より、セグメントの呼称を国内金融事業から日本金融事業に変更した。同事業には、信用保証業務を中心に事業展開する(株)日本保証、クレジット・信販業務のJトラストカード(株)、サービサー業務のパルティール債権回収(株)などがある。国内の消費者金融市場が縮小するなか、2015年9月には実質的に無担保ローン事業から撤退し、不動産関連の保証業務及び債権買取回収業務に注力する体制を整備した。日本金融事業は、同社グループの強みが生かせる分野を中心に緩やかに成長することで、同社グループ全体の利益を下支えする役割を担っている。

不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価、審査と信用保証を担い、銀行が融資を行う。主に地域銀行数行と提携して、賃貸住宅ローン(アパートローン)保証業務を中心に、順調に保証残高を伸ばしており、2018年6月の保証残高は1,597億円、前年同月比62%増と増加を続けており、現時点でデフォルトはない。同社の保証する物件は、東名阪福の都市部、徒歩10分程度の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は98%以上を維持している。保証料が高いその他の保証取扱(個人事業主への融資保証等)は、近年、競争が激化していることから取扱いを抑え、現在は保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることで利益を確保する方針である。なお、最近の動きとしては、日本保証では2017年12月より、(株)西京銀行が取り扱うローン商品「海外不動産担保ローン」にかかる保証業務を開始した。さらに、2018年7月には新たに京浜急行電鉄<9006>・湘南信用金庫と連携し、リバースモーゲージローンへの保証業務を開始した。こうした提携先の拡大と商品の多様化により、今後も保証残高が積み上がると見られる。

一方、債権買取回収業務については、同社グループの強みは多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。回収力の強さは、金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位性となり、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かした事業拡大を進めていく方針だ。パルティールが取り扱う請求可能債権残高は2018年6月時点で7,738億円と、前年同月末比で448億円増加している。これに、日本保証が(株)武富士より承継した簿外債権(請求可能債権)の約1,400億円を加えると、サービサー事業における債権残高は9,000億円を超える。こうした国内事業での債権回収力の強さは、韓国やインドネシアでも生かされている。

2. 韓国及びモンゴル金融事業
2019年3月期より、セグメントの呼称を韓国金融事業から韓国及びモンゴル金融事業に変更した。韓国では、ソウルを中心に貯蓄銀行業とリース業、債権回収事業を展開し、市場環境に合わせた柔軟かつ迅速な対応により利益の最大化を図っている。中核のJT親愛貯蓄銀行(株)とJT貯蓄銀行(株)のほか、リース業のJTキャピタル(株)やサービサー事業(債権回収事業)のティーエー資産管理(株)を保有する。同社グループでは、日本でのオペレーションノウハウを生かし、これまでに確立した事業基盤を有機的に連携することで、韓国及びモンゴル金融事業をグループにとっての第2の収益の柱と位置付けている。

韓国では、2015年3月期までのM&Aなどにより総合金融グループとしての事業基盤を確立した。同社グループが日本国内で培った審査力・回収力・マーケティング力などのオペレーションノウハウは、韓国での金融事業における大きな成果につながっている。新規に貯蓄銀行のライセンスを取得し、2012年に営業を開始したJT親愛貯蓄銀行は、日本の信用金庫・信用組合などの規模感で地方銀行に相当する業務を行っているが、2年程で通期黒字化に成功した。

JT親愛貯蓄銀行とJT貯蓄銀行の店舗網は韓国全土の70%をカバーし、2行合算の資産規模は韓国貯蓄銀行中でトップ3に位置する。今後は、新規貸付金額の増加を通じて営業資産の更なる積み上げを図るとともに、優良なローンの増大により収益性を向上させる方針だ。実際、月間新規貸付が過去最高を記録するなど順調に伸びており、それに伴い営業資産も着実に増加している。さらに、大企業向けローン、有担保ローン、政府保証付きローンなどについても注力し、貸出ポートフォリオの安定化も図っていく方針だ。

また、JT親愛貯蓄銀行は、韓国消費者フォーラムが主催する「2018大韓民国ファーストブランド大賞」の貯蓄銀行部門において3年連続で大賞を受賞し、同銀行が消費者から高い評価を得ていることが示された。

貯蓄銀行2行の2019年3月期第1四半期の平均貸出金利は12.30%、平均預金金利は2.48%であった。上限金利の引き下げや優良資産へのシフトに伴い貸出金利は預金金利を上回るペースで低下傾向にあるが、依然として10%近い預貸金利ざやが確保されている。加えて、貯蓄銀行及びキャピタルの貸出残高も2018年6月には38,487億ウォン(約3,770億円)と順調に拡大し、また、延滞率は2014年6月の26.40%から2018年6月には4.77%に低下している。

なお、韓国金融当局により、高金利貸出の貸倒引当率が引き上げられ、また個人向けローンの貸出量が制限された。韓国では段階的に貸出上限金利の引き下げが行われている。2016年3月には上限金利が34.9%から27.9%に引き下げられ、2018年2月にはさらに24.0%に引き下げられた。将来的には20%近くまで低下する見通しだ。こうした規制環境変化のなか、同社グループでは、リスクの低い中・低金利帯の債権を大きく伸ばし、規制強化の影響の小さい大企業向け融資や優良な融資案件を増やすなど、先手を打った戦略を展開している。すなわち、貸出金利の低下分を貸出残高の拡大と与信コストの減少によりカバーする方針だ。以上から、同社では、この規制の影響で2018年3月期以降は韓国での金融事業の利益成長は従来の想定よりは抑えられるものの、安定した利益を確保するとみている。

さらに、同社グループは、2018年5月にモンゴルのファイナンス会社Capital Continent Investment NBFIを子会社化した。2018年3月末の貸付残高は約11億円と小規模であるが、グループ傘下に入ったことで今後の成長が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)



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