アーバネット Research Memo(4):賃貸需要や投資意欲が好調である一方、用地取得には一層困難な状況が続く
[18/09/07]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業界環境
アーバネットコーポレーション<3242>の基軸事業である都内の投資用ワンルームマンションは、入居者及び投資家双方の堅調な需要に支えられて好調に推移している。東京都総務局の公表データによると、同社が供給エリアとしている東京23区の人口は、東京都への転入超過等を背景として増え続けている。特に、若年層を含め、晩婚化や離婚率の増加などを背景として単身世帯の増加が目立っており、今後もワンルームマンションの賃貸需要を支えていくものと考えられる。また、投資家サイドでも、将来の年金受給や老後の生活不安を抱えた20〜30代の個人投資家からの需要が拡大していることに加え、キャッシュ・フローが比較的安定した安全な投資対象として賃貸収益物件が再評価されてきたことも追い風となっている。最近では、基礎控除が引き下げられた相続税対策として高齢者が現金で購入するケースやマイナス金利政策等を背景とした国内外の機関投資家からの引き合いも根強い。
一方、首都圏における投資用マンションの供給戸数は、2007年をピークとしてリーマンショックによる金融の引き締めや事業者の倒産・撤退に加え、自治体のワンルームマンション建築規制(最低面積の規定、付帯設備の設置等)の強化などにより減少傾向をたどったが、2010年に底を打ち、ここ数年は金融機関のスタンスの変化や根強い需要に支えられて好調に推移してきた。直近でも都心エリアにおける地価上昇等の影響により2017年は一旦落ち込んだものの、2018年の上半期は再び拡大ペースに転じている。プレイヤーについては、販売だけを手掛ける会社が数多く見られるものの、同社のように設計・開発に特化する相当規模の同業他社(特に上場会社)は見当たらない。
業界における課題については、開発面では、都心用地の高騰が続くなか、大手デベロッパーのワンルーム市場への進出やホテル業者による土地取得意欲の高まりも重なり、都心の中小事業用地取得は厳しい状況が続いている一方、供給エリアの見直し(西高東低に変化の兆し)なども進んでいる。特に、価格上昇の激しい都心から、交通利便性が高い23区の周辺部である城東(足立区、葛飾区、墨田区等)や城北(板橋区、北区等)地域に需要が拡大する傾向がみられる。また、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設ラッシュの影響を受け、人手不足や人繰りの影響による工期の長期化も一層深刻となっている。
販売面に目を向けると、分譲マンションについては、資産性や利便性重視の傾向から郊外型ファミリーマンションの苦戦が続く一方、女性の社会進出の動きなどにより、コンパクトマンションの需要は強いものの、供給不足の状態が続いている。その一方で、投資用マンションについては、若年層は減少傾向にあるがそれ以外の単身所帯は増加することが見込まれ、市場は緩やかに拡大する見通しであり、若年労働力確保や学生確保のための社員寮・学生寮ニーズの拡大も期待されている。また、年金支給開始年齢の引き下げや支給額の減額などへの不安は潜在的に存在し、安定的な収益が期待できる都心の資産性の高い投資用不動産への需要も根強い。
■アーバネットコーポレーション<3242>の業績動向
1. 過去の業績推移
過去の業績推移を振り返ると、主力である投資用ワンルームマンションにおける販売戸数の拡大が同社の業績をけん引してきた。2011年6月期に業績が落ち込んでいるのは、2008年のリーマンショックの影響などによる金融引き締めを背景として、しばらく開発物件を凍結していたことによるものである。しかし、2011年6月期をボトムとして、金融緩和の動きとともに、順調に開発物件を積み上げることで業績は回復から拡大基調をたどっており、2017年6月期は6期連続の増収増益を実現するとともに、過去最高の売上高と営業利益を更新した。特に、投資用ワンルームマンションの売れ行きが好調であることや、海外投資家等への1棟一括直接販売による販売単価の上昇もあいまって、経常利益率は12%を超える高い水準にまで上昇した。ただ、2018年6月期の業績が一旦後退したのは、仕入れペースを若干抑えたことや、早期資金回収を優先して1棟一括直接販売を減らしたことなどが理由である。もっとも、2019年6月期以降は、再び増収増益基調へ向かう見通しとなっている。
一方、財務面では、開発物件の積み上げなどに伴い有利子負債残高も増加しているが、内部留保の蓄積に加え、2015年6月には新株発行(約13億円)を実施したことにより、自己資本比率は30%前後で推移してきた。なお、2014年6月期以降、その他(固定資産)が拡大しているのは、安定収益源の確保や融資担保となる賃貸収益物件の取得を進めてきたことによるものである。前述のとおり、2018年6月末時点における自社保有の賃貸収益物件は6棟となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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アーバネットコーポレーション<3242>の基軸事業である都内の投資用ワンルームマンションは、入居者及び投資家双方の堅調な需要に支えられて好調に推移している。東京都総務局の公表データによると、同社が供給エリアとしている東京23区の人口は、東京都への転入超過等を背景として増え続けている。特に、若年層を含め、晩婚化や離婚率の増加などを背景として単身世帯の増加が目立っており、今後もワンルームマンションの賃貸需要を支えていくものと考えられる。また、投資家サイドでも、将来の年金受給や老後の生活不安を抱えた20〜30代の個人投資家からの需要が拡大していることに加え、キャッシュ・フローが比較的安定した安全な投資対象として賃貸収益物件が再評価されてきたことも追い風となっている。最近では、基礎控除が引き下げられた相続税対策として高齢者が現金で購入するケースやマイナス金利政策等を背景とした国内外の機関投資家からの引き合いも根強い。
一方、首都圏における投資用マンションの供給戸数は、2007年をピークとしてリーマンショックによる金融の引き締めや事業者の倒産・撤退に加え、自治体のワンルームマンション建築規制(最低面積の規定、付帯設備の設置等)の強化などにより減少傾向をたどったが、2010年に底を打ち、ここ数年は金融機関のスタンスの変化や根強い需要に支えられて好調に推移してきた。直近でも都心エリアにおける地価上昇等の影響により2017年は一旦落ち込んだものの、2018年の上半期は再び拡大ペースに転じている。プレイヤーについては、販売だけを手掛ける会社が数多く見られるものの、同社のように設計・開発に特化する相当規模の同業他社(特に上場会社)は見当たらない。
業界における課題については、開発面では、都心用地の高騰が続くなか、大手デベロッパーのワンルーム市場への進出やホテル業者による土地取得意欲の高まりも重なり、都心の中小事業用地取得は厳しい状況が続いている一方、供給エリアの見直し(西高東低に変化の兆し)なども進んでいる。特に、価格上昇の激しい都心から、交通利便性が高い23区の周辺部である城東(足立区、葛飾区、墨田区等)や城北(板橋区、北区等)地域に需要が拡大する傾向がみられる。また、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設ラッシュの影響を受け、人手不足や人繰りの影響による工期の長期化も一層深刻となっている。
販売面に目を向けると、分譲マンションについては、資産性や利便性重視の傾向から郊外型ファミリーマンションの苦戦が続く一方、女性の社会進出の動きなどにより、コンパクトマンションの需要は強いものの、供給不足の状態が続いている。その一方で、投資用マンションについては、若年層は減少傾向にあるがそれ以外の単身所帯は増加することが見込まれ、市場は緩やかに拡大する見通しであり、若年労働力確保や学生確保のための社員寮・学生寮ニーズの拡大も期待されている。また、年金支給開始年齢の引き下げや支給額の減額などへの不安は潜在的に存在し、安定的な収益が期待できる都心の資産性の高い投資用不動産への需要も根強い。
■アーバネットコーポレーション<3242>の業績動向
1. 過去の業績推移
過去の業績推移を振り返ると、主力である投資用ワンルームマンションにおける販売戸数の拡大が同社の業績をけん引してきた。2011年6月期に業績が落ち込んでいるのは、2008年のリーマンショックの影響などによる金融引き締めを背景として、しばらく開発物件を凍結していたことによるものである。しかし、2011年6月期をボトムとして、金融緩和の動きとともに、順調に開発物件を積み上げることで業績は回復から拡大基調をたどっており、2017年6月期は6期連続の増収増益を実現するとともに、過去最高の売上高と営業利益を更新した。特に、投資用ワンルームマンションの売れ行きが好調であることや、海外投資家等への1棟一括直接販売による販売単価の上昇もあいまって、経常利益率は12%を超える高い水準にまで上昇した。ただ、2018年6月期の業績が一旦後退したのは、仕入れペースを若干抑えたことや、早期資金回収を優先して1棟一括直接販売を減らしたことなどが理由である。もっとも、2019年6月期以降は、再び増収増益基調へ向かう見通しとなっている。
一方、財務面では、開発物件の積み上げなどに伴い有利子負債残高も増加しているが、内部留保の蓄積に加え、2015年6月には新株発行(約13億円)を実施したことにより、自己資本比率は30%前後で推移してきた。なお、2014年6月期以降、その他(固定資産)が拡大しているのは、安定収益源の確保や融資担保となる賃貸収益物件の取得を進めてきたことによるものである。前述のとおり、2018年6月末時点における自社保有の賃貸収益物件は6棟となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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