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アーバネット Research Memo(5):堅調な不動産市場を追い風に高い業績水準を維持

注目トピックス 日本株
■業績動向

2. 2018年6月期決算の概要
アーバネットコーポレーション<3242>の2018年6月期の業績は、売上高が前期比9.6%減の16,085百万円、営業利益が同31.0%減の1,668百万円、経常利益が同33.3%減の1,440百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同32.5%減の988百万円と減収減益となったが、計画を上回る着地である。

減収となった最大の理由は、「不動産開発販売」の縮小である。自社開発による投資用マンション等の販売戸数が556戸※(前期比43戸減)に減少したほか、海外投資家等への1棟一括直接販売が2棟136戸(前期は4棟232戸)と少なかったことが販売単価を押し下げた。ただ、これらはすべて想定内である。また、「不動産仕入販売」も買取再販が4戸(前期は5戸)に減少したことから減収となった。一方、「その他」(不動産賃貸事業等)は、賃貸収益物件の追加取得やホテル事業への参入によりストック収益(賃料収入)が拡大し、まだ小規模ながら大幅な伸び率(前期比19.5%増)を実現している。

※ファミリー型の分譲マンション(1棟51戸)の販売を含む。


利益面でも、減収による収益の押し下げに加えて、1棟一括直接販売が少なかったことが売上総利益の低下(常態化)を招いたが想定内。販管費についても、今後の業容拡大に向けた人員増※により人件費が拡大したものの、仲介手数料(支払手数料)等の減少など費用削減を図ったことから計画を上回る利益水準を確保した。

※期末の連結社員数(契約社員を含む)は38名から45名に増加。


財務面では、「販売用不動産」や「仕掛販売用不動産」、「固定資産」の増加等により総資産は28,527百万円(前期末比21.1%増)に拡大した一方、自己資本は内部留保の積み増しにより7,442百万円(同7.7%増)であったことから、自己資本比率は26.1%(前期末は29.3%)に若干低下した。それに伴って、有利子負債は長短合わせて18,508百万円(前期末比24.1%増)に拡大している。ただ、流動比率は212.7%と高い水準にあり財務の安全性に懸念はない。また、2018年4月には、シンジケーション方式(オリックス銀行のほか5行)によるコミットメントライン20億円を設定。安定的・機動的な資金調達を実施することにより、資金需要の変化に柔軟に対応できる体制を整えることが目的である。「固定資産」の増加分(前期末比1,608百万円増)は既存の宿泊施設や賃貸収益物件の取得のほか、新たなホテル開発プロジェクト(開発用地)によるものである。

キャッシュ・フローの状況については、営業キャッシュ・フローが今後の成長に向けた「仕掛販売用不動産」の増加(積極的な用地仕入を含む)等によりマイナスとなったほか、投資キャッシュ・フローも賃貸収益物件の取得等によりマイナスとなった。一方、財務キャッシュ・フローはシンジケートローン等による長期借入金の増加により大きくプラスとなり、「現金及び現金同等物」の残高は若干増加している。

3. 主な活動実績
(1) 自社開発物件のパイプライン
2018年6月期は、前述のとおり、自社開発の投資用マンション11棟(489戸)、分譲マンション1棟(51戸)、アパート1棟(6戸)、テラスハウス2棟(10戸)の合計556戸を販売。一方、今後の成長につながる開発用地の仕入れにも積極的に取り組み、2019年6月期の販売分647戸に加えて、2020年6月期以降の販売分880戸を積み上げており、当面、増収増益基調が継続する見通しとなっている。全般的に都心のマンション用地は仕入れが難しい環境にあるものの、同社は過去の実績などにより、仕入れ面においてもアドバンテージを発揮できていると言える。

(2) ストックビジネスの強化
安定収益源や融資担保の確保を目的とするストックビジネスの強化についても、賃貸収益物件を追加取得※1するとともに、新たにホテル事業へも参入した。なお、ホテル事業については、まずは既存6施設の取得及び賃貸※2からスタートしたが、2018年6月には自社開発ホテルプロジェクト(第1号)についても公表している※3。

※1 登戸にある中古ワンルームマンション1棟を取得。
※2 ホテル事業への進出に当たって、まずは既存6施設(静岡県、三重県、滋賀県、奈良県のロードサイド)の取得及び賃貸からスタートした。
※3 投資用ワンルームマンションを開発するために取得していた東京都大田区西蒲田のプロジェクト用地をホテル事業における自社開発プロジェクト第 1号へと転換(利便性の高さなどがホテル事業に適していたことが理由)。


以上から、2018年6月期の業績を総括すると、ここ数年の拡大基調から一旦後退する格好となったが、その背景には、1〜2年前の用地仕入れ段階において、仕入ペースを若干抑えたことや、販売面でも早期資金回収を優先するために、海外投資家等への1棟一括直接販売を減らしたこと※が影響しており、同社の慎重な判断(景気変動への備え)によるものと言える。したがって、外部環境(堅調な不動産市場)や内部要因(同社の成長性など)の変調を反映したものではない。また、減収減益となったものの、売上高は高い水準(過去3番目)を維持しており、依然として好調な業績が継続していると評価するのが妥当だろう。仕入れの状況についても、堅調な不動産市場を見据えた柔軟な対応により、再び積極姿勢に転じており、今後の成長に向けたパイプラインの積み上げにもしっかりと取り組むことができた。さらには、賃貸収益物件の追加取得やホテル事業など、将来の安定収益源となるストックビジネスの強化においても一定の成果を残すことができたと評価できる。

※海外投資家等への1棟一括直接販売は、販売会社への卸販売に比べて販売価格が高くなる一方、売却の時期は完成後が基本となるため、資金回収の期間は長くなる傾向がある。


■業績見通し

2019年6月期の業績予想についてアーバネットコーポレーション<3242>は、売上高を前期比9.1%増の17,550百万円、営業利益を同4.9%増の1,750百万円、経常利益を同4.8%増の1,510百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同4.1%増の1,030百万円と見込んでおり、再び増収増益基調へ向かう見通しとなっている。

自社開発の投資用マンション等の販売戸数が647戸(前期比91戸増)※に拡大する想定である。また、利益面でも増収による増益を見込んでいるが、人員増に伴う人件費の拡大等により営業利益率は若干低下する見通しとなっている。

※投資用マンション10棟(599戸)、アパート5棟(45戸)、テラスハウス3戸の内訳となっている。


弊社でも、計画の前提となる販売戸数647戸のうち、既に599戸が契約済み(契約見込み)となっていることから、業績予想の達成は可能であるとみている。また、買取再販や仲介手数料など、期初予想に入っていない取引の積み上げにより上振れとなる可能性にも注意が必要である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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