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プラッツ Research Memo(5):製品価格の低下圧力と原材料価格上昇に対抗すべく、生産体制を抜本的に見直しへ

注目トピックス 日本株
■中期経営計画と中長期の成長戦略

4. 製品のコストダウンへの取り組み
製品のコストダウンの取り組みは、プラッツ<7813>にとっては生命線とも言える。会社概要の項で述べた同社の低価格戦略は競合他社に比べて低コストの生産体制を構築できたことが大きな要因だった。しかしながら、競合他社が同社を意識した低価格品を投入して価格差が縮小しつつあることに加え、介護保険の制度改定の影響(詳細は後述)もあって、価格低下圧力は着実に強まっている。一方原価面では鋼材をはじめとした原材料価格の値上がりが続いている。その結果、利幅は上下からのプレッシャーにさらされている。こうした状況を打開するためには、生産体制の抜本的な見直しが必要ということだ。

前述のように、同社の生産体制は、同社が商品開発や設計、部品や資材の発注を行い、生産は外部に委託するという、いわゆるファブレス体制だ。メインの生産委託先工場として在ベトナムのSHENGBANG METALとしたことで低コスト体質を獲得した。同社はその後SHENGBANG METALに出資して持分法適用関連会社とし、品質管理などの支援・指導を強化して低コストと高品質を両立させてきた。その基盤をより確固たるものにするのが今中期経営計画の目標だ。

今回のコストダウンへの取り組みの具体策や詳細は明らかにされていない。これまでの経緯や実績から判断して、これまでどおりベトナムが生産の主要拠点であり、その中でSHENGBANG METALの果たす重要性も変更はないと弊社では考えている。こうした大枠を維持しつつも、コストダウンへの施策として同社がどのような大胆な策を打ち出すか、今後の推移を見守りたい。


国内のレンタル市場向け販売を中核としつつ、海外市場や医療用介護ベッドの販売拡大で成長加速を目指す
5. 販売市場別計画
(1) 福祉用具流通市場
福祉用具流通市場の売上高は、2019年6月期が4,670百万円、2020年6月期が4,800百万円と計画されており、前回の計画からそれぞれ、30百万円、50百万円引き下げられた。また、2021年6月期については5,200百万円を計画している。福祉用具流通市場では、価格下落圧力が強まっており、その点を考慮したことが前回に比べて売上計画の引き下げにつながったと弊社ではみている。

価格下落圧力の強まりは、2018年の介護保険制度改定の影響だ。福祉用具流通市場は、前述のように、在宅の要介護認定者向けのレンタル介護ベッドの市場だ。2018年の改定では、介護ベッドを含む福祉用具の貸与価格(レンタル料金)に上限が設定された。具体的には「全国平均貸与価格+1標準偏差」が上限価格とされた。正規分布の場合は上位16%が「全国平均貸与価格+1標準偏差」を超えることになり、この価格で貸与しようとする場合は保険給付適用外となる。

ポイントは、この全国平均貸与価格が“商品ごと”に行われるということだ。同社はレンタル市場向けに「MioLet II」と「Rafio」を展開しているが、それぞれの全国平均価格が算出され、上限価格が設定されることになる。したがって、それぞれの商品について、これまで全国平均価格に対して1標準偏差を超える価格で貸与していたレンタル業者は同じ製品についてより安価での購入を希望することになり、これが値下げ圧力の高まりとなるという構図だ。同社は介護ベッド事業の参入以来、競合他社と比較して同機能であればより低価格の商品を投入することを基本戦略としているが、今回の改定では、他社比高コストパフォーマンスという強みを生かしきれないということが、価格下落圧力の織り込みにつながったとみられる。

一方、数量の面ではこれまでと基本的な構図は変わっていない。高齢化社会の進行とそれに伴う要介護認定者の増加、加えて医療・介護の在宅シフトの推進という国の施策もあって、特殊寝台(介護ベッド)貸与件数は右肩上がりが続いている。2014年3月起点に、2018年3月までの4年間の年平均成長率は4.2%となっている。一方で、1件当たり単位数(レンタル価格)は同期間に910.8点から876.8点へと年率0.9%で下落している。この下落ペースが加速する可能性が出てきたというのがこれまでの議論だ。弊社では、市場の成長(台数ベース)に加えて、低価格戦略を武器に同社がシェアアップを実現できるとみており、低価格化が進行したとしても、売上計画の達成は十分可能だとみている。

(2) 医療・高齢者施設市場
医療・高齢者施設市場の売上高は、2019年6月期を1,170百万円、2020年6月期を1,480百万円、2021年6月期を1,840百万円と計画している。従来計画との比較では、2019年6月期について30百万円引き下げられたが、2020年6月期については80百万円引き上げられた。

2016年に医療用ベッドに参入したことで、このセグメントは、医療と介護の両分野にまたがることとなった。現状では医療用ベッドの販売ペースは当初の想定よりも遅れているとみられ、それが今回の予想の修正の要因とみられる。

今後の売上高については、介護用ベッドと医療用ベッドの2つの製品が組み合わさることで増収率が従来計画よりも拡大するという構図を描いているとみられる。介護ベッドのみの場合は年率15%〜20%の成長ペースだったものが、医療用ベッドの成長が加わることで、25%前後の成長率に引き上げられたということだ。

同社の医療用ベッド拡販への取り組みは前述のとおりだ。2018年6月期までの累計販売台数は数百台程度と弊社ではみているが、これが1,000台を超えてくると地域によっては存在感や知名度も高まり、販売に弾みがついてくるものと期待している。同社の医療・高齢者施設市場の売上計画からは、2021年6月期に医療用ベッドが大きく伸長すると想定していることが読み取れる。2019年6月期及び2020年6月期はそれに向けた体制強化と販売の進捗に注目したい。

(3) 海外市場
海外市場について同社は、2019年6月期を320百万円、2020年6月期を460百万円、2021年6月期を700百万円と計画している。前回計画との比較では、2019年6月期が80百万円、2020年6月期が240百万円、それぞれ下方修正されている。

海外市場はかねてより成長が期待されてきた。その中核は、高齢者人口が圧倒的に多い中国だ。同社はこの需要を取り込むべく、現地に代理店網を整え拡販を狙ってきた。しかし実際は、成長率こそ他の市場セグメントよりも高いものの、同社の期待には常にショート(未達)してきた。2018年6月期も同様であり、それを受けて、2019年6月期及び2020年6月期の計画が引き下げられたものと思われる。しかしながら、現在では前述の上海偉賽との業務提携により、海外事業の成長加速への期待が高まっている状況だ。

2021年6月期までの3ヶ年の海外事業の売上高計画の合計は1,480百万円となっている。2018年6月期実績の180百万円を起点に、これが年間30%増収を続けると2021年6月期までの3年間の合計は933百万円となる。一方、上海偉賽との業務提携が計画どおり進めば、前述のように1,000百万円(3年間累計)と試算される。同社は上海偉賽との業務提携の効果をかなり控え目に織り込んだことが推定され、これは今後の上振れ要因になってくる可能性があると弊社ではみている。

(4) 家具流通市場
家具流通市場の売上高計画は、今回の中期経営計画では大きく引き下げられ、2019年6月期から2021年6月期の3ヶ年は売上高が160百万円で横ばいと計画されている。

これは自費で介護ベッドを購入しようとする層が減少し、要介護認定されてからレンタルで利用しようという意識が高まったことが背景にある。同社が九州地区の大手ホームセンターをメインの販売経路としていることもあり、この市場は現状維持へと目標を切り替えた。

要支援1・2と要介護1の認定者数(309.6万人)は要介護認定者総数(654.8万人)の47%に達することから、自費で介護ベッドを購入しようという層は一定数存在し、またその数も年々増加していることを考えると、同社の横ばい計画は多少控え目ではないかと弊社ではみている(数字は厚生労働省「介護給付費等実態調査月報」平成30年3月審査分)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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