ダイキアクシス Research Memo(7):環境創造開発型企業としてESGに配慮した経営による発展を目指す(2)
[18/09/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ダイキアクシス<4245>の中長期の成長戦略
海外事業は、売上高を2015年12月期の602百万円から1,224百万円へと3ヶ年で倍増を見込んでいたが、目標が前倒しで達成されたため、2018年12月期の予算は1,712百万円に引き上げられた。海外売上高比率を2015年12月期の1.9%から4.8%への拡大することになる。
以下に国別の進展状況を説明する。
(1) インドネシア
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。営業拠点を設ければ受注につながる状況にある。2015年8月に同社のグループ会社であることを明確にするため、子会社の商号を変更した。日系メーカーとの競争では、日本からの輸入製品に15〜20%の関税がかかるため現地生産が有利に働く。
東急不動産(株)は、2018年12月の完工を目指して首都ジャカルタに商業棟を含む大規模マンション(2棟、381戸)を開発している。同社は、同プロジェクトに参加し、FRP円筒の浄化槽10本を納入する。イオンモール<8905>のほか、新たに日系大手自動車メーカーの工場、LNGプラントからの受注に成功した。
(2) ミャンマー
経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタ<6326>と同社が認定メーカーとなっている。
2016年1月にミャンマーにおける販売代理店として1社と契約し、納入実績ができた。国内最大都市ヤンゴンの開発許認可当局YCDCは、7.5階以上の新規開発申請建物に浄化槽・排水処理施設を義務付けた。市郊外にニュータウン開発が進行しており、ヤンゴンの人口は550万人から2040年には1,000万人を超えると予想されている。第2の都市であるマンダレーは、最後の王朝があった観光都市であり、観光資源保存のため環境改善を推進している。現在、インドネシアから製品を輸入しているが、旺盛な需要に対応するため現地生産への転換を検討中だ。
(3) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。インドの下水道普及率は約15%にとどまる。2014年10月に発表された「クリーン・インディア」プロジェクトでは、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年までに約3兆5,000億円を投じて、1億2,000万家庭に専用トイレを設置するという目標を掲げている。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。人口の約48%、農村では約67%が専用のトイレを持っていないため、「屋外排泄」が恒常化しており、公衆衛生の脅威になっている。また、学校に男女別のトイレがないため、女子生徒が通学を断念する事態に陥っている。さらに、夜間の屋外排泄が女性に対する性的暴行を引き起こす原因となっている。
同社は、2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10m3/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。
同社は、2016年に1社と、さらに2017年に4社と地域別の販売代理店契約を締結した。デンマークの世界的ポンプメーカーの代理店であるBI Marketing Pvt. Ltd.と、その親会社で大型水処理事業を行うHECSと浄化槽等の販売店契約を締結した。
2017年4月にインド全土で排水量2,000m3以上の不動産に対し、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化された規制をクリアできない。トライアルマーケティングを行った結果、多くの需要が見込めると判断した。
2018年7月にシンガポールの地域統括子会社を通じて100%出資の子会社「DAIKI AXIS INDIA」を設立した。同子会社は、インド国内における浄化槽の製造・販売・施工・維持管理を手掛ける。
インドにおける事業展開のフェーズ1として、生産委託という形でカプセルタイプの中・小型浄化槽の現地生産を開始する。ローカルのプラスチック製品製造会社である「Jyoti Plastics Works Pvt Ltd.」とパートナーシップを結び、同社から金型等の製造設備を提供し、技術指導をする。北部の一部地域を除き、インドネシア向けに開発したローコストの製品仕様が使える。2018年秋に、ムンバイにおいて小型浄化槽の生産を開始する。年間生産能力は、中・小型中心のカプセル浄化槽100台を見込む。現在、引き合いは活発で、月30件ほど寄せられている。現地生産が始まれば、インドネシアからの輸入品を代替する。浄化槽は、輸送費などを考慮すると消費地に近いところに生産拠点を設けることが望ましい。インドは国土が広大で、州政府の力が強いため、将来、各地に生産拠点を設けて、進出した地域から市場開拓をすることを検討する。販売代理店をさらに増やす意向だ。
計画のフェーズ2では、同社インド子会社と現地協力会社とで新たに合弁会社を設立し、円筒タイプの排水処理システムの製造や大型排水処理システムの工事に参入する。新市場開拓は、通常、小型製品から始まり、中型・大型へと引き合いが広がる。インドにおいても、これまでのパターンで市場浸透を図る。
(4) 中国
中国では大連に100%子会社を有し、エンジニアリング会社として活動している。日系企業からの指名で大型案件を獲得している。
2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。習氏の「重要指示」と伝えられた「トイレ革命」では、観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきことと言及されており、都市部以外でも下水処理施設の導入が急がれる機運となった。中国においては2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1〜2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。
2018年7月に、家庭用合併処理浄化槽の製造を行う合弁会社「凌志大器浄化槽江蘇有限公司」を設立した。出資比率は、現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)が51%、同社が49%のため、同社にとって持分法適用関連会社となる見込みだ。拠点とする宜興市は「国家環境保護モデル都市」に選ばれており、上海、蘇州を含む太湖エリアに入る。合弁先は、下水処理施設(腐敗槽)で20年の実績を持つ。同工場の製品は、それぞれの出資会社に供給される。中国の農村で設置されている腐敗槽は汚水処理に対応するものの、生活排水までは処理できず、水質基準をクリアするには不十分だ。そのため、一般家庭3〜4世帯ごとに腐敗槽を設置し、後処理を合併浄化槽がする仕組みとなる。原水が日本と異なるため、中国仕様の製品を開発する。
パートナーの敷地内に、同社の生産技術を導入した新工場を建設する。年間生産能力は、最大5,000台を計画している。同社の日本の年間生産規模は12万〜13万台で、そのうち小型製品は6,000〜7,000台になる。中国は1ヵ所であるが、日本では生産拠点は複数ヵ所に分散している。
(5) その他の地域
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。
スリランカでは、現地業者と販売代理店契約を締結した。展示会と新聞広告を積極的に活用し、DaikiAxisブランドの浸透を図る。小型製品に関しては日本から輸出しており、すでに3コンテナ分を販売した。引き合いも強く、需要拡大を見込む。
2017年8月に、アフリカのケニア向けに初出荷をし、搬入・据付工事を完了した。ナイロビの新規代理店から引き合いが急増しているものの、大統領選挙をめぐる混乱が発生して停滞している。アルジェリアは、引き渡しが2018年12月期第3四半期に予定されている。アフリカ全域での拡販の可能性を視野に入れてマーケティングを継続している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<MH>
海外事業は、売上高を2015年12月期の602百万円から1,224百万円へと3ヶ年で倍増を見込んでいたが、目標が前倒しで達成されたため、2018年12月期の予算は1,712百万円に引き上げられた。海外売上高比率を2015年12月期の1.9%から4.8%への拡大することになる。
以下に国別の進展状況を説明する。
(1) インドネシア
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。営業拠点を設ければ受注につながる状況にある。2015年8月に同社のグループ会社であることを明確にするため、子会社の商号を変更した。日系メーカーとの競争では、日本からの輸入製品に15〜20%の関税がかかるため現地生産が有利に働く。
東急不動産(株)は、2018年12月の完工を目指して首都ジャカルタに商業棟を含む大規模マンション(2棟、381戸)を開発している。同社は、同プロジェクトに参加し、FRP円筒の浄化槽10本を納入する。イオンモール<8905>のほか、新たに日系大手自動車メーカーの工場、LNGプラントからの受注に成功した。
(2) ミャンマー
経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタ<6326>と同社が認定メーカーとなっている。
2016年1月にミャンマーにおける販売代理店として1社と契約し、納入実績ができた。国内最大都市ヤンゴンの開発許認可当局YCDCは、7.5階以上の新規開発申請建物に浄化槽・排水処理施設を義務付けた。市郊外にニュータウン開発が進行しており、ヤンゴンの人口は550万人から2040年には1,000万人を超えると予想されている。第2の都市であるマンダレーは、最後の王朝があった観光都市であり、観光資源保存のため環境改善を推進している。現在、インドネシアから製品を輸入しているが、旺盛な需要に対応するため現地生産への転換を検討中だ。
(3) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。インドの下水道普及率は約15%にとどまる。2014年10月に発表された「クリーン・インディア」プロジェクトでは、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年までに約3兆5,000億円を投じて、1億2,000万家庭に専用トイレを設置するという目標を掲げている。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。人口の約48%、農村では約67%が専用のトイレを持っていないため、「屋外排泄」が恒常化しており、公衆衛生の脅威になっている。また、学校に男女別のトイレがないため、女子生徒が通学を断念する事態に陥っている。さらに、夜間の屋外排泄が女性に対する性的暴行を引き起こす原因となっている。
同社は、2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10m3/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。
同社は、2016年に1社と、さらに2017年に4社と地域別の販売代理店契約を締結した。デンマークの世界的ポンプメーカーの代理店であるBI Marketing Pvt. Ltd.と、その親会社で大型水処理事業を行うHECSと浄化槽等の販売店契約を締結した。
2017年4月にインド全土で排水量2,000m3以上の不動産に対し、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化された規制をクリアできない。トライアルマーケティングを行った結果、多くの需要が見込めると判断した。
2018年7月にシンガポールの地域統括子会社を通じて100%出資の子会社「DAIKI AXIS INDIA」を設立した。同子会社は、インド国内における浄化槽の製造・販売・施工・維持管理を手掛ける。
インドにおける事業展開のフェーズ1として、生産委託という形でカプセルタイプの中・小型浄化槽の現地生産を開始する。ローカルのプラスチック製品製造会社である「Jyoti Plastics Works Pvt Ltd.」とパートナーシップを結び、同社から金型等の製造設備を提供し、技術指導をする。北部の一部地域を除き、インドネシア向けに開発したローコストの製品仕様が使える。2018年秋に、ムンバイにおいて小型浄化槽の生産を開始する。年間生産能力は、中・小型中心のカプセル浄化槽100台を見込む。現在、引き合いは活発で、月30件ほど寄せられている。現地生産が始まれば、インドネシアからの輸入品を代替する。浄化槽は、輸送費などを考慮すると消費地に近いところに生産拠点を設けることが望ましい。インドは国土が広大で、州政府の力が強いため、将来、各地に生産拠点を設けて、進出した地域から市場開拓をすることを検討する。販売代理店をさらに増やす意向だ。
計画のフェーズ2では、同社インド子会社と現地協力会社とで新たに合弁会社を設立し、円筒タイプの排水処理システムの製造や大型排水処理システムの工事に参入する。新市場開拓は、通常、小型製品から始まり、中型・大型へと引き合いが広がる。インドにおいても、これまでのパターンで市場浸透を図る。
(4) 中国
中国では大連に100%子会社を有し、エンジニアリング会社として活動している。日系企業からの指名で大型案件を獲得している。
2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。習氏の「重要指示」と伝えられた「トイレ革命」では、観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきことと言及されており、都市部以外でも下水処理施設の導入が急がれる機運となった。中国においては2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1〜2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。
2018年7月に、家庭用合併処理浄化槽の製造を行う合弁会社「凌志大器浄化槽江蘇有限公司」を設立した。出資比率は、現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)が51%、同社が49%のため、同社にとって持分法適用関連会社となる見込みだ。拠点とする宜興市は「国家環境保護モデル都市」に選ばれており、上海、蘇州を含む太湖エリアに入る。合弁先は、下水処理施設(腐敗槽)で20年の実績を持つ。同工場の製品は、それぞれの出資会社に供給される。中国の農村で設置されている腐敗槽は汚水処理に対応するものの、生活排水までは処理できず、水質基準をクリアするには不十分だ。そのため、一般家庭3〜4世帯ごとに腐敗槽を設置し、後処理を合併浄化槽がする仕組みとなる。原水が日本と異なるため、中国仕様の製品を開発する。
パートナーの敷地内に、同社の生産技術を導入した新工場を建設する。年間生産能力は、最大5,000台を計画している。同社の日本の年間生産規模は12万〜13万台で、そのうち小型製品は6,000〜7,000台になる。中国は1ヵ所であるが、日本では生産拠点は複数ヵ所に分散している。
(5) その他の地域
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。
スリランカでは、現地業者と販売代理店契約を締結した。展示会と新聞広告を積極的に活用し、DaikiAxisブランドの浸透を図る。小型製品に関しては日本から輸出しており、すでに3コンテナ分を販売した。引き合いも強く、需要拡大を見込む。
2017年8月に、アフリカのケニア向けに初出荷をし、搬入・据付工事を完了した。ナイロビの新規代理店から引き合いが急増しているものの、大統領選挙をめぐる混乱が発生して停滞している。アルジェリアは、引き渡しが2018年12月期第3四半期に予定されている。アフリカ全域での拡販の可能性を視野に入れてマーケティングを継続している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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