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シノケンG Research Memo(9):業界環境に不透明感が強まるが、収益成長見通しは変わらず

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2018年12月期の業績見通し
シノケングループ<8909>の2018年12月期の連結業績は、売上高が前期比13.3%増の120,000百万円、営業利益が同4.5%増の13,500百万円、経常利益が同8.2%増の13,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.4%増の9,200百万円と期初会社計画を据え置き、過去最高業績を連続で更新する見通しだ。下期についても第2四半期までと状況は変わらず、豊富な受注残を背景としたアパート販売の拡大と、関連するストックビジネス(不動産管理関連事業、エネルギー事業)の積み上げによる収益拡大が続く。

ここ最近、スルガ銀行(株)や同業他社による不適切な融資問題の発覚によって、金融機関からの融資審査の厳格化や個人のアパート経営に対する投資熱の冷え込みなどを懸念する向きが強まっているが、足元の同社の受注状況について見れば、従来と変わりなく都心部を中心に堅調に推移しているもようで、豊富な受注残を背景に2018年12月期の業績は会社計画どおり推移するものと予想される。

同社は「頭金ゼロでもできるアパート経営」をスローガンに会社員や公務員を顧客対象として、投資用不動産を販売するビジネスモデルとなっているため、金融機関の融資審査が厳しくなればマイナスに働くのは事実だが、こちらも直近において融資条件に何ら変更はない。これは同社が創業来28年間積み上げてきた実績(累計販売5,000棟超で、経営破綻したケースは過去1例もない)や、98%以上の高い平均入居率を実現できる運営ノウハウ、ビジネスモデルが評価され、複数の金融機関と独占提携ローンを組むなど強固な信頼関係が構築されていることが背景にある。また、従来から法令遵守に努めていることに加え、不正行為を未然に防ぐ社内の管理体制もすでに構築されている。具体的には、資料の受領段階から審査、引渡までのすべてのプロセスにおいて、販売部門とは独立した組織である融資管理専門部署が必要な手続きを行い、金融機関に対しても一貫して窓口として対応することで、融資審査を通過させるための不正行為を発生させない業務手順および体制を構築している。同社が28年間、同事業を主力事業として成長を続けてきたのも、こうした社内のコンプライアンス意識や管理体制の徹底に取り組んできたことが大きいと弊社では考えている。

しかしながら、業界全体で見れば個人の貸家経営に対する金融機関の融資が厳しくなっているのも事実。日銀の調べによれば、2017年1月-3月以降、個人への貸家業に対する新規融資額は前年同期比でマイナス成長が続いており、不正融資問題が社会問題化したことで今後もマイナスが続く可能性が高い。ただ、今回の件で市場が一時的に冷え込むことは、同社にとっては逆にチャンスであるとも言える。同社は現在、アパートREITの組成を準備しており、そのための土地の仕込みを行っている段階にある。対象物件は競争が激しい東京23区内に限定したものとなっているが、今回の件で同業他社では投資意欲が低下しているほか、銀行からの融資が下りずに土地を手放すといったケースが出始めており、従来よりも土地が仕込みやすくなってきたためだ。

なお、同社は2018年11月に東京本社を設置(二本社制導入)し、現在の東京オフィスを移転、東京・浜松町の新オフィスに移転する。首都圏での一層の業容拡大を図ることや、営業力や情報収集・発信力、IR等の諸活動の強化、多様な人材の確保を目的としており、オフィススペースは現在の1.5倍となる約800坪に拡張する。


国内初となるアパート向けREITで資産規模1,000億円超を目指す
2. アパート専門REITに進出
同社は国内初のアパート向けREITに進出することを発表した。2018年3月に(株)シノケンアセットマネジメントで組成して機関投資家に販売した「HTT-1号ファンド」(約30億円)が利回り5%台で推移するなど好評だったことから、私募REITに必要なライセンスの取得準備に着手しており、ライセンス取得後にシノケンリート投資法人(仮称)を設立し、まずは2019年3月を目途に総資産70億円程度の私募REITの組成を目指して行く。また、その後も積極的に物件取得を進め、総額300億円程度の資産規模になった段階で東京証券取引所に上場し、その後も毎年150〜200億円程度の規模で継続的に資産規模を拡大し、早期に1,000億円程度のREITへ成長させることを目標として掲げている。

同社はREITを立ち上げることによって3つの事業成長機会を創出できると考えている。第1に、販売領域の拡大による不動産販売事業の成長加速である。REITの対象となる物件は、東京23区内の駅徒歩10分圏で従来は同社の対象外であった価格帯の物件となる。このため一般個人投資家向け商品とのカニバリゼーションは発生せず、不動産販売事業においてREITへの物件販売分については新規の上乗せ要因となる。具体的には、23区内では従来、1棟1億円前後の物件を中心に販売していたが、REIT向けでは1.2〜1.5億円程度の物件を目安としている。なお、資産規模が拡大していけば将来的にその他のエリアにも対象を広げていくことになるが、その際も個人投資家向けの価格帯よりも高価格帯の物件を対象に展開していく予定にしている。また、運用利回りについては従来と大きな違いはないが、アパートの規模がやや大型化することによって建築コストに占める共有部分のコスト比率が低下し原価率が低減するほか、営業費用(人件費や広告宣伝費等)も低く抑えることができることから、物件販売の収益性は向上することが予想される。

第2の成長機会としては、REIT向けアパートの販売増に伴い、ストックビジネスの成長スピードも加速することが挙げられる。従来の個人投資家向けアパートは1棟当たり約4〜8戸であったが、REIT向けは最大20戸程度の規模が想定されるため、賃貸管理や家賃等の保証債務、保険サービス並びにLPガス・電力の契約件数の増加ペースも加速することが想定される。また、REIT資産の運用・管理に伴う手数料収入も入ることになる。年間の運用手数料については資産規模の1%程度が業界平均となっており、REIT販売時の販売手数料などが加わることになる。

第3の成長機会としては、REITの上場による顧客層の拡大が挙げられる。従来は、会社員や公務員などの個人投資家が対象であったが、REITでは国内外の機関投資家や個人投資家に販売できることになる。属性によりローン審査が通らなかった見込み客、あるいは既に複数棟所有しており追加ローンが組めない顧客等でもREITが上場すれば少額資金で投資運用が可能となり、機関投資家から少額投資の個人投資家まで顧客層が一気に拡大することになる。

国内のREITに関してはオフィスビルや商業施設、ホテル、レジデンスなど用途特化型の商品が多く組成されているがアパート特化型の商品がまだないこと、また、レジデンス系では東京23区内にエリアを絞ったREITが無いこと、さらに利回りも5%台と高いことから機関投資家のニーズも大きいと見られ、土地の仕込みさえ順調に進めば会社目標を達成する可能性は高く、2019年12月期以降の同社業績のけん引役になると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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