AOITYOHold Research Memo(1):2018年12月期上期の業績は計画を下回る減収減益
[18/10/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
AOI TYO Holdings<3975>は、(株)AOI Pro. と(株) ティー・ワイ・オー(TYO)の経営統合により設立された共同持株会社である。主力のテレビCMの企画・制作を始め、広告主直接取引やオンライン動画などのデジタルコンテンツを軸とした「ソリューション事業」などを手掛けている。業界大手2社の経営統合によりテレビCM制作においてはトップシェアを握る。
インターネットを中心としたメディア(媒体)やデバイス(スマートフォンやタブレットなど)の多様化に加え、通信速度やデータ解析、VR(仮想現実)※2やAR(拡張現実)※3などのテクノロジーの進化により業界環境が大きく変化するなかで、これまでのテレビCM 制作では大きな成長は見込みにくくなる一方、広告に関連する事業領域は、その手法や構造変化を伴いながらも拡大していくものと予想されていることが経営統合に至った背景である。経営資源の結集及び有効活用により、スケールメリットやシナジー創出を実現し、新たな価値創造と事業拡大のスピードを速めるところに狙いがあると考えられる。
※1 実行利益とは、売上高から外部支出原価を差し引いた数値である。
※2 VR(仮想現実)とは、仮想世界を含めたあらゆる体験を、時間や空間を超えてまるで現実世界のように表現する技法やその手法のこと。
※3 AR(拡張現実)とは、現実世界で人が感知できる情報に「何かの情報」を加え、現実を「拡張」表現する技術やその手法のこと。
2018年12月期上期の業績は、売上高が前年同期比8.5%減の30,864百万円、営業利益が同26.0%減の1,746百万円と計画を下回る減収減益となった。プリントレス化による影響は想定よりも小さかったものの、採算性重視の収益管理の徹底や働き方改革への対応に伴う受注コントロール、一部案件の売上計上のずれ込み等により「広告映像制作事業」が大きく縮小した。一方、成長領域と位置付ける「ソリューション事業」については堅調に推移。また、「海外事業」は、マレーシアの大手広告制作会社を連結子会社化したことなどにより大きく伸びている。一方、利益面では、減収による収益の下押しにより減益となったものの、採算性重視の収益管理の徹底に伴う実行利益率の改善により、減益幅は限定的な範囲に抑えることができたと言える。また、出資・業務提携戦略の推進や「5G時代に向けた動画広告への取り組み」などにおいても、今後の事業拡大に向けて一定の成果を残した。
2018年12月期の業績予想について同社は、期初予想(売上高予想のみ)を減額修正した。修正後の業績予想として、売上高を前期比9.2%減の64,000百万円(修正幅 ▲6,000百万円)、営業利益を同17.7%減の3,800百万円と減収減益を見込んでいる。期初予想の段階でプリントレス化の影響や働き方改革への対応等により減収減益を見込んでいたが、そこからさらに売上高予想を減額修正したのは、上期業績の未達分を反映したことや、下期業績についても、無理に売上高の規模を追わない方針(採算性重視の案件選別)のもと、保守的な前提を置いているものとみられる。一方、利益予想を据え置いたのは、実行利益率の改善や、期初予想に入っていなかった映画への出資に関わる配当収入※を見込んでいることが理由である。
※「第71回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門にて最高賞であるパルム・ドールを受賞した「万引き家族」(是枝裕和監督作品)などが含まれている。
同社は、中長期的な成長イメージとして、「ソリューション事業」と「海外事業(中国・東南アジア)」が業績の伸びをけん引する方向性を描いている。一方、従来の主力事業である「広告映像制作事業」は、採算性重視の徹底及び効率化を図り、プリントレス化に対応した筋肉質な組織づくりを進めながら着実な成長を目指す方針である。また、2021年12月期の目標として、ROEを12%以上、EBITDAを80 億円(2018年12月期のEBITDA予想5,230百万円を基準とした3年間の平均成長率17.0%)と掲げている。
弊社でも、同社が拡大を図る「ソリューション事業」の領域は、ポテンシャルの大きな市場である上、同社が培ってきた映像制作における経験や知見が差別化要因として生かせることや、同社の信用力(ブランド力)及び財務力が大きなアドバンテージとなる可能性が高いと評価している。足元では、実行利益率の改善や将来を見据えた取り組みなどに進展がみられるが、経営統合や成長領域への積極投資が具体的にどのような成果を生み出していくのか、特に、新たな価値創造の部分(VR技術やデータ活用など)に今後も注目したい。
■Key Points
・2018年12月期上期の業績は計画を下回る減収減益
・プリントレス化の進展や働き方改革への対応がマイナス要因となる一方、実行利益率の改善及び将来を見据えた出資・業務提携戦略の推進では一定の成果
・2018年12月期の業績予想(売上高予想のみ)を減額修正
・「ソリューション事業」や「海外事業」が中長期的な業績の伸びをけん引する成長イメージ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<MH>
AOI TYO Holdings<3975>は、(株)AOI Pro. と(株) ティー・ワイ・オー(TYO)の経営統合により設立された共同持株会社である。主力のテレビCMの企画・制作を始め、広告主直接取引やオンライン動画などのデジタルコンテンツを軸とした「ソリューション事業」などを手掛けている。業界大手2社の経営統合によりテレビCM制作においてはトップシェアを握る。
インターネットを中心としたメディア(媒体)やデバイス(スマートフォンやタブレットなど)の多様化に加え、通信速度やデータ解析、VR(仮想現実)※2やAR(拡張現実)※3などのテクノロジーの進化により業界環境が大きく変化するなかで、これまでのテレビCM 制作では大きな成長は見込みにくくなる一方、広告に関連する事業領域は、その手法や構造変化を伴いながらも拡大していくものと予想されていることが経営統合に至った背景である。経営資源の結集及び有効活用により、スケールメリットやシナジー創出を実現し、新たな価値創造と事業拡大のスピードを速めるところに狙いがあると考えられる。
※1 実行利益とは、売上高から外部支出原価を差し引いた数値である。
※2 VR(仮想現実)とは、仮想世界を含めたあらゆる体験を、時間や空間を超えてまるで現実世界のように表現する技法やその手法のこと。
※3 AR(拡張現実)とは、現実世界で人が感知できる情報に「何かの情報」を加え、現実を「拡張」表現する技術やその手法のこと。
2018年12月期上期の業績は、売上高が前年同期比8.5%減の30,864百万円、営業利益が同26.0%減の1,746百万円と計画を下回る減収減益となった。プリントレス化による影響は想定よりも小さかったものの、採算性重視の収益管理の徹底や働き方改革への対応に伴う受注コントロール、一部案件の売上計上のずれ込み等により「広告映像制作事業」が大きく縮小した。一方、成長領域と位置付ける「ソリューション事業」については堅調に推移。また、「海外事業」は、マレーシアの大手広告制作会社を連結子会社化したことなどにより大きく伸びている。一方、利益面では、減収による収益の下押しにより減益となったものの、採算性重視の収益管理の徹底に伴う実行利益率の改善により、減益幅は限定的な範囲に抑えることができたと言える。また、出資・業務提携戦略の推進や「5G時代に向けた動画広告への取り組み」などにおいても、今後の事業拡大に向けて一定の成果を残した。
2018年12月期の業績予想について同社は、期初予想(売上高予想のみ)を減額修正した。修正後の業績予想として、売上高を前期比9.2%減の64,000百万円(修正幅 ▲6,000百万円)、営業利益を同17.7%減の3,800百万円と減収減益を見込んでいる。期初予想の段階でプリントレス化の影響や働き方改革への対応等により減収減益を見込んでいたが、そこからさらに売上高予想を減額修正したのは、上期業績の未達分を反映したことや、下期業績についても、無理に売上高の規模を追わない方針(採算性重視の案件選別)のもと、保守的な前提を置いているものとみられる。一方、利益予想を据え置いたのは、実行利益率の改善や、期初予想に入っていなかった映画への出資に関わる配当収入※を見込んでいることが理由である。
※「第71回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門にて最高賞であるパルム・ドールを受賞した「万引き家族」(是枝裕和監督作品)などが含まれている。
同社は、中長期的な成長イメージとして、「ソリューション事業」と「海外事業(中国・東南アジア)」が業績の伸びをけん引する方向性を描いている。一方、従来の主力事業である「広告映像制作事業」は、採算性重視の徹底及び効率化を図り、プリントレス化に対応した筋肉質な組織づくりを進めながら着実な成長を目指す方針である。また、2021年12月期の目標として、ROEを12%以上、EBITDAを80 億円(2018年12月期のEBITDA予想5,230百万円を基準とした3年間の平均成長率17.0%)と掲げている。
弊社でも、同社が拡大を図る「ソリューション事業」の領域は、ポテンシャルの大きな市場である上、同社が培ってきた映像制作における経験や知見が差別化要因として生かせることや、同社の信用力(ブランド力)及び財務力が大きなアドバンテージとなる可能性が高いと評価している。足元では、実行利益率の改善や将来を見据えた取り組みなどに進展がみられるが、経営統合や成長領域への積極投資が具体的にどのような成果を生み出していくのか、特に、新たな価値創造の部分(VR技術やデータ活用など)に今後も注目したい。
■Key Points
・2018年12月期上期の業績は計画を下回る減収減益
・プリントレス化の進展や働き方改革への対応がマイナス要因となる一方、実行利益率の改善及び将来を見据えた出資・業務提携戦略の推進では一定の成果
・2018年12月期の業績予想(売上高予想のみ)を減額修正
・「ソリューション事業」や「海外事業」が中長期的な業績の伸びをけん引する成長イメージ
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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