トライSTG Research Memo(8):リスティング広告の自動最適化プラットフォーム「AdScale」の提供を開
[18/10/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■トライステージ<2178>の今後の見通し
2. 事業セグメント別見通し
(1) ダイレクトマーケティング支援事業
a) テレビ事業
テレビ事業を展開するトライステージ単体の2019年2月期売上高は前期比10.7%減の29,667百万円、営業利益で同17.2%減の805百万円となる見通し。期初計画(売上高30,594百万円、営業利益712百万円)に対して、売上高は下方修正となるが、営業利益は上方修正となる。売上高の下方修正については、下期の一部の既存クライアントのメディア出稿意欲が期初想定を下回っており、これら落ち込みをカバーするだけの新規クライアントの寄与を見込んでいないことが要因となっている。ただ、雑貨関連でいくつか新商材の取扱いを開始しており、これら商材の反響次第では上乗せ要因となる可能性もある。
一方、営業利益については粗利益率が想定以上に改善していることが増額要因となる。2019年2月期上期の粗利率は11.8%であったが、下期も売上高は上期比で減少するものの仕入枠の適正化と業務効率の向上に取り組むことで粗利率は同水準を見込んでいる。前年同期の10.0%から1.8ポイントの上昇となるが、13〜14%の水準が適正と考えており、なお改善余地はあると見られる。
収益性改善施策として、営業面では取引ルールの適正化、業務標準化と効率化、営業教育プランの策定と実行による人材育成に取り組み、メディアの仕入適正化については全体最適を考えた割振り施策(商品ベース、未実施企画優先、直近効果を加味)、業務効率化(データ考査施策、放送予定管理システム※)を進めていく。また、外部委託しているコンタクトセンター業務に関しては、センターの集約や運営状況の可視化による運用効率の向上(稼働率改善、高価改善)を継続して取り組んでいく。課題は新規クライアント獲得後の育成(ヒット商品の創出に向けたマーケティング施策の実行)が挙げられる。
※放送予定管理システムとは、顧客の月額出稿予算額を入力すれば、当該案件に関する最適な放送枠や時間のリストが明示されるだけでなく、コールセンターの最適な人員体制まで判別できるシステムで、従来の属人的な作業を自動化することで生産性の向上が見込まれている。
b) Web事業
Web事業については2019年2月期上期売上高が未達(計画1,697百万円→実績1,319百万円)となったものの、通期では33億円弱と前期比で約3割増収を見込んでいる。下期だけで見ると20億円弱の売上を見込んでいることになる。2018年9月に提供を開始したリスティング広告自動最適化プラットフォーム「AdScale(アドスケール)」の販売増を見込んでいる。「AdScale」はオランダのAdScaleBV(以下、AdScale)が開発したプラットフォームで、世界唯一の自動施策レコメンド機能、AsScaleの独自開発した入札・予算最適化アルゴリズムにより、リスティング広告の運用効率を飛躍的に改善する効果が見込まれている。既に、海外では4千社以上の企業で利用されており、導入1ヶ月程度で導入前と比較して20〜40%のパフォーマンス向上を実現していると言う。
リスティング広告の運用に関しては人的リソースも多く割かれるため、自動最適化できる同プラットフォームの需要は大きいと見られる。実際、海外で同サービスを既に利用している企業からの引き合いもあり、今後のWeb事業をけん引する新商材として注目される。アドフレックスではAdScale以外にもAIを活用したサービスを開発・提供する企業との連携を進めながらサービス品質の向上を図り、売上成長に拍車をかけていく戦略となる。高成長を実現するための先行投資として、営業スタッフだけでなくコンサルタントやエンジニア等の採用も積極的に進めていくため、2019年2月期の営業利益に関しては若干の赤字を見込んでいる(2018年2月期は82百万円の利益)。
その他の事業戦略としては、顧客企業に対してテレビ、Webを活用した効率的なマーケティング施策の提案力向上により、新規顧客の開拓並びに既存顧客との取引拡大を図り、売上拡大と合わせて顧客分散化による収益基盤の安定性向上に取り組んでいく。課題は、成長を実現していくための人材の確保が挙げられる。
(2) DM事業
DM事業の2019年2月期売上高は前期比で若干の増収増益となる見通しだ。期初計画では売上高で前期比2.8%減の16,666百万円、営業利益で同20.3%減の217百万円と減収減益を見込んでいたが、第2四半期までの計画上振れ分が増額要因となる。とはいえ、直近の取扱通数が値上げの影響等により伸び悩んできているのも事実。このため、下期は前年同期比で減収減益を見込んでいる。
下期以降の取り組み施策としては、DMの値上げや総量規制と言った外部環境の変化を新規顧客開拓の好機として捉えていくほか、トータルサービスへのシフト(DM制作・データ加工・印刷等の川上領域への展開)による収益性向上に引き続き取り組んでいく。ただ、川上領域への展開についてはここ数年来、取り組んでいるものの具体的な成果は見えて来ず、今後の課題ともなっている。
(3) 海外事業
海外事業については収益低迷が続いており、2019年2月期も営業損失が続く見通しだ。現在、選択と集中も含めた事業戦略の抜本的な見直しを進めているが、東南アジアにおける通販市場そのものは今後も成長が期待でき、同社にとって重要な市場であるとの認識に変わりない。調査会社の予測によれば、2022年までの通販市場の年平均成長率はシンガポールで11.5%、タイで4.8%、インドネシアで20.2%となっており、とりわけEC市場の高成長が予測されている。このため、今後はEC・リアル店舗とも連携したオムニチャネル戦略や、新商材の発掘などを進めていくことが重要と思われる。また、日本の商材についても現地のニーズ分析を行い、需要が見込まれる商材を投入していくことになると予想される。
(4) 通販事業
通販事業の2019年2月期期初計画は売上高で前期比10倍増の680百万円、営業損失で283百万円(前期は237百万円の損失)を見込んでいたが、売上高については上期の流れを引き継ぎ計画比で下回るほか、営業損失についても4億円弱と若干拡大する見込みとなっている。広告宣伝費を投下すればある程度の売上拡大は可能と見られるが、全体的に業績が落ち込んでいることもあって、現段階では慎重に事業を進めていく可能性が高いと弊社では見ている。
(5) その他事業
その他事業の2019年2月期期初計画は売上高で前期比20.6%増の1,677百万円、営業利益で同66.1%増の38百万円を見込んでいたが、「日本百貨店さかば」の費用増もあって計画を下回る可能性が高い。なお、「日本百貨店」についても店舗のスクラップ&ビルドを検討しており、各店舗の収益力強化に取り組んでいく方針となっている。そのほか、卸売の強化やフランチャイズ展開の検討、海外子会社等への商品の供給などにも引き続き注力し、収益拡大を目指していく。
直近の業績動向を鑑み、中期経営計画は2019年春までに見直す予定
3. 中期経営計画について
2021年2月期までの中期経営計画「Tri’s vision 2021」では、グループビジョンとして「ダイレクトマーケティングからダイレクトデータマーケティング(DDM)へ」を掲げ、2021年2月期の経営数値目標として、連結売上高600億円、営業利益率4.5%を掲げていたが、直近の業績動向を鑑みて、2019年2月期の決算発表までにグループ成長戦略も含めて見直し、改めて発表する予定となっている。
なお、主力のダイレクトマーケティング支援事業において掲げたダイレクトデータマーケティング(以下、DDM)基盤の構築については、継続して取り組んでいく予定になっている。DDM基盤の構築によって、新規顧客の獲得とLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現し、収益を拡大していく戦略となる。DDMとは同社が保有する各種メディアの膨大なデータやコールセンターで蓄積したコンタクト履歴、顧客情報等と、クライアント企業が保有するカスタマーデータを統合し、カスタマーデータプラットフォーム(以下、CDP)を構築、これにBI(ビジネスインテリジェンス)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールを連携することで、クライアント企業の売上最大化につながるマーケティング施策を実現するシステムとなる。
DDMの構築スケジュールとしては、1年目でシステムの要件・定義を行い、2年目に一部顧客の試験運用を開始、検証を進めながら導入方針を決定し、3年目からの本格導入開始を目指している。DDM基盤を構築し、各事業へのサービス提供にも有機的に連動させることで、グループ全体の企業価値向上にもつなげていく。現時点では主要顧客へのヒアリングを基に、システムの要件・定義を固めている段階で、予定どおりの進捗となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 事業セグメント別見通し
(1) ダイレクトマーケティング支援事業
a) テレビ事業
テレビ事業を展開するトライステージ単体の2019年2月期売上高は前期比10.7%減の29,667百万円、営業利益で同17.2%減の805百万円となる見通し。期初計画(売上高30,594百万円、営業利益712百万円)に対して、売上高は下方修正となるが、営業利益は上方修正となる。売上高の下方修正については、下期の一部の既存クライアントのメディア出稿意欲が期初想定を下回っており、これら落ち込みをカバーするだけの新規クライアントの寄与を見込んでいないことが要因となっている。ただ、雑貨関連でいくつか新商材の取扱いを開始しており、これら商材の反響次第では上乗せ要因となる可能性もある。
一方、営業利益については粗利益率が想定以上に改善していることが増額要因となる。2019年2月期上期の粗利率は11.8%であったが、下期も売上高は上期比で減少するものの仕入枠の適正化と業務効率の向上に取り組むことで粗利率は同水準を見込んでいる。前年同期の10.0%から1.8ポイントの上昇となるが、13〜14%の水準が適正と考えており、なお改善余地はあると見られる。
収益性改善施策として、営業面では取引ルールの適正化、業務標準化と効率化、営業教育プランの策定と実行による人材育成に取り組み、メディアの仕入適正化については全体最適を考えた割振り施策(商品ベース、未実施企画優先、直近効果を加味)、業務効率化(データ考査施策、放送予定管理システム※)を進めていく。また、外部委託しているコンタクトセンター業務に関しては、センターの集約や運営状況の可視化による運用効率の向上(稼働率改善、高価改善)を継続して取り組んでいく。課題は新規クライアント獲得後の育成(ヒット商品の創出に向けたマーケティング施策の実行)が挙げられる。
※放送予定管理システムとは、顧客の月額出稿予算額を入力すれば、当該案件に関する最適な放送枠や時間のリストが明示されるだけでなく、コールセンターの最適な人員体制まで判別できるシステムで、従来の属人的な作業を自動化することで生産性の向上が見込まれている。
b) Web事業
Web事業については2019年2月期上期売上高が未達(計画1,697百万円→実績1,319百万円)となったものの、通期では33億円弱と前期比で約3割増収を見込んでいる。下期だけで見ると20億円弱の売上を見込んでいることになる。2018年9月に提供を開始したリスティング広告自動最適化プラットフォーム「AdScale(アドスケール)」の販売増を見込んでいる。「AdScale」はオランダのAdScaleBV(以下、AdScale)が開発したプラットフォームで、世界唯一の自動施策レコメンド機能、AsScaleの独自開発した入札・予算最適化アルゴリズムにより、リスティング広告の運用効率を飛躍的に改善する効果が見込まれている。既に、海外では4千社以上の企業で利用されており、導入1ヶ月程度で導入前と比較して20〜40%のパフォーマンス向上を実現していると言う。
リスティング広告の運用に関しては人的リソースも多く割かれるため、自動最適化できる同プラットフォームの需要は大きいと見られる。実際、海外で同サービスを既に利用している企業からの引き合いもあり、今後のWeb事業をけん引する新商材として注目される。アドフレックスではAdScale以外にもAIを活用したサービスを開発・提供する企業との連携を進めながらサービス品質の向上を図り、売上成長に拍車をかけていく戦略となる。高成長を実現するための先行投資として、営業スタッフだけでなくコンサルタントやエンジニア等の採用も積極的に進めていくため、2019年2月期の営業利益に関しては若干の赤字を見込んでいる(2018年2月期は82百万円の利益)。
その他の事業戦略としては、顧客企業に対してテレビ、Webを活用した効率的なマーケティング施策の提案力向上により、新規顧客の開拓並びに既存顧客との取引拡大を図り、売上拡大と合わせて顧客分散化による収益基盤の安定性向上に取り組んでいく。課題は、成長を実現していくための人材の確保が挙げられる。
(2) DM事業
DM事業の2019年2月期売上高は前期比で若干の増収増益となる見通しだ。期初計画では売上高で前期比2.8%減の16,666百万円、営業利益で同20.3%減の217百万円と減収減益を見込んでいたが、第2四半期までの計画上振れ分が増額要因となる。とはいえ、直近の取扱通数が値上げの影響等により伸び悩んできているのも事実。このため、下期は前年同期比で減収減益を見込んでいる。
下期以降の取り組み施策としては、DMの値上げや総量規制と言った外部環境の変化を新規顧客開拓の好機として捉えていくほか、トータルサービスへのシフト(DM制作・データ加工・印刷等の川上領域への展開)による収益性向上に引き続き取り組んでいく。ただ、川上領域への展開についてはここ数年来、取り組んでいるものの具体的な成果は見えて来ず、今後の課題ともなっている。
(3) 海外事業
海外事業については収益低迷が続いており、2019年2月期も営業損失が続く見通しだ。現在、選択と集中も含めた事業戦略の抜本的な見直しを進めているが、東南アジアにおける通販市場そのものは今後も成長が期待でき、同社にとって重要な市場であるとの認識に変わりない。調査会社の予測によれば、2022年までの通販市場の年平均成長率はシンガポールで11.5%、タイで4.8%、インドネシアで20.2%となっており、とりわけEC市場の高成長が予測されている。このため、今後はEC・リアル店舗とも連携したオムニチャネル戦略や、新商材の発掘などを進めていくことが重要と思われる。また、日本の商材についても現地のニーズ分析を行い、需要が見込まれる商材を投入していくことになると予想される。
(4) 通販事業
通販事業の2019年2月期期初計画は売上高で前期比10倍増の680百万円、営業損失で283百万円(前期は237百万円の損失)を見込んでいたが、売上高については上期の流れを引き継ぎ計画比で下回るほか、営業損失についても4億円弱と若干拡大する見込みとなっている。広告宣伝費を投下すればある程度の売上拡大は可能と見られるが、全体的に業績が落ち込んでいることもあって、現段階では慎重に事業を進めていく可能性が高いと弊社では見ている。
(5) その他事業
その他事業の2019年2月期期初計画は売上高で前期比20.6%増の1,677百万円、営業利益で同66.1%増の38百万円を見込んでいたが、「日本百貨店さかば」の費用増もあって計画を下回る可能性が高い。なお、「日本百貨店」についても店舗のスクラップ&ビルドを検討しており、各店舗の収益力強化に取り組んでいく方針となっている。そのほか、卸売の強化やフランチャイズ展開の検討、海外子会社等への商品の供給などにも引き続き注力し、収益拡大を目指していく。
直近の業績動向を鑑み、中期経営計画は2019年春までに見直す予定
3. 中期経営計画について
2021年2月期までの中期経営計画「Tri’s vision 2021」では、グループビジョンとして「ダイレクトマーケティングからダイレクトデータマーケティング(DDM)へ」を掲げ、2021年2月期の経営数値目標として、連結売上高600億円、営業利益率4.5%を掲げていたが、直近の業績動向を鑑みて、2019年2月期の決算発表までにグループ成長戦略も含めて見直し、改めて発表する予定となっている。
なお、主力のダイレクトマーケティング支援事業において掲げたダイレクトデータマーケティング(以下、DDM)基盤の構築については、継続して取り組んでいく予定になっている。DDM基盤の構築によって、新規顧客の獲得とLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現し、収益を拡大していく戦略となる。DDMとは同社が保有する各種メディアの膨大なデータやコールセンターで蓄積したコンタクト履歴、顧客情報等と、クライアント企業が保有するカスタマーデータを統合し、カスタマーデータプラットフォーム(以下、CDP)を構築、これにBI(ビジネスインテリジェンス)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールを連携することで、クライアント企業の売上最大化につながるマーケティング施策を実現するシステムとなる。
DDMの構築スケジュールとしては、1年目でシステムの要件・定義を行い、2年目に一部顧客の試験運用を開始、検証を進めながら導入方針を決定し、3年目からの本格導入開始を目指している。DDM基盤を構築し、各事業へのサービス提供にも有機的に連動させることで、グループ全体の企業価値向上にもつなげていく。現時点では主要顧客へのヒアリングを基に、システムの要件・定義を固めている段階で、予定どおりの進捗となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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