アウトソシング Research Memo(4):M&Aやオーガニックな成長で9期連続の増収、過去最高の営業利益を更新
[18/11/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 過去の業績推移
これまでの業績を振り返ると、景気変動の影響を受けながらも、製造工程の外注化ニーズに対応する形で人材提供数(外勤社員数)の拡大を図ってきたことがアウトソーシング<2427>の成長をけん引してきた。特に、2012年12月期以降、同社の業績が大きく伸びているのは、国内メーカーによる海外生産移管や国内産業構造の変化(鉱工業からIT産業や土木建築産業へのシフト)への積極的な対応を図ることにより、「海外事業」や「国内技術系」が順調に拡大してきたことが寄与している。足元では全般的な人手不足感や労働者派遣法の改正に伴う規制緩和により人材派遣市場全体が活況を呈しているなかで、積極的なM&Aを通じたグループシナジーの創出を含め、景気変動の影響を受けない事業構造への変革を進めることにより、オーガニックな成長を実現してきたと言える。
財務面では、M&Aを含めた積極的な投資により有利子負債は拡大傾向にある。特に、2016年12月期は投資総額約430億円のM&Aを実施したことにより、有利子負債残高は大きく拡大し、「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」も8.5%に低下した。ただ、2017年1月に発行した新株予約権により約105億円の資金調達を実現しており、2017年12月末の「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」は20.0%に回復。また、2018年10月には公募増資を実施し、更なる成長に向けて財務基盤の強化を図っている。
2. 2018年12月期上期決算の概要
2018年12月期の上期業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比31.5%増の139,099百万円、営業利益が同41.3%増の4,908百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同48.9%増の2,069百万円と期初予想を上回る増収増益となり、売上収益、利益ともに過去最高(上半期ベース)を更新した。
売上収益はすべての事業が順調に拡大した。好調な外部環境や独自戦略の進展が業績の伸びをけん引している。特に、国内においては、労働法改正や自動運転車等による産業界のパラダイムチェンジが特需的ニーズを生み出すなかで、「国内製造系アウトソーシング事業」がPEOや外国人技能実習生等の高付加価値スキームにより伸長したほか、「国内技術系アウトソーシング事業」についても新卒採用や独自スキームによる技術者採用が奏功した。また、「国内サービス系アウトソーシング事業」については、グループシナジー創出により国内米軍施設向けが大きく拡大している。海外においても、労働力が潤沢な国から逼迫(ひっぱく)する国へとグローバル規模で人を流動化するスキームの確立や安定的な公共関連サービスの伸びにより、「海外製造系及びサービス系事業」及び「海外技術系事業」がともに好調に推移している。
利益面でも、新卒採用※の拡大に伴う配置前教育コストやOTTOを始めとしたM&A関連費用など、今後の成長に向けた先行費用を積極投入したものの、事業規模の拡大や高単価受注の拡大により大幅な増益を実現。営業利益率も3.5%(前年同期は3.3%)に改善している。
※2018年4月入社の新卒採用は全体で1,400名(前年は550)。
【3Q決算フォローアップ】
第3四半期の業績においても、引き続き売上収益、利益ともに過去最高(3Qベース)を更新した。売上収益が前年同期比33.6%増の221,058百万円、営業利益が同38.4%増の9,283百万円となり、順調な進捗が確認された。営業利益率は4.2%と大きく伸長している。
財政状態は、資産合計が、M&A(OTTOの連結化)による影響を含め、「営業債権及びその他の債権」や「のれん」等の増加により前期末比25.2%増の156,072百万円に拡大した一方、「親会社の所有者に帰属する持分」は企業統合に伴う「その他の資本剰余金」の減少(会計処理上のもの)等により同25.4%減の18,607百万円に縮小したことから、「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」は11.9%(前期末は20.0%)に低下した。また、「のれん」計上額は前期末比23.2%増の48,334百万円に拡大した。
主な事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 「国内技術系アウトソーシング事業」は、売上収益が前年同期比39.6%増の32,547百万円、営業利益が同83.7%増の2,285百万円とおおむね計画どおりの増収増益となった。新卒採用が順調に増加したことに加え、未経験者を教育して配属するKENスクールや業界淘汰の取り込み※1による技術者採用が奏功した。2018年6月末の外勤社員数は10,943人(前期末比2,227人)と大きく拡大したが、そのうち2018年4月入社の新卒採用が1,050人※2と大幅に増加したほか、KENスクールによる教育後配置人数が734人(通期計画は1,500人)、業界淘汰の取り込みでも360人(通期計画は650人)とすべての施策が順調に進捗している。したがって、技術者の採用難が成長を抑える要因となっている技術系派遣業界のなかにおいて、同社は独自スキームの活用等により多くの採用を実現し、今後の業績拡大に向けても弾みを付けたと評価できる。また、利益面でも、大規模な新卒採用による配置前教育コスト※3が一時的に増加したものの、順調に配属が進んだことや契約単価の向上等により吸収し、大幅な増益を実現することができた。セグメント利益率も7.0%(前年同期は5.3%)に改善している。
※1 労働者派遣法の改正に伴って事業継続が困難となる同業者の取り込み。
※2 前年(2017年4月入社)の新卒採用は550名であった。
※3 季節要因として、第2四半期(4月−6月)は新卒採用者の配属までの人件費や研修費用等、先行費用が発生する。特に、今期は新卒採用者が大きく増加したため、その影響も大きかったが、増収により吸収することができた。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比40.8%増の51,373百万円、営業利益が同62.9%増の4,052百万円と順調に増収増益となった。KENスクールや業界淘汰の取り込み等いずれも計画以上に採用が進捗し、3Q末においてすでに期末の在籍人数計画11,534人を上回る外勤社員数12,138人に達している。セグメント利益率も7.9%に伸長した。
(2) 「国内製造系アウトソーシング事業」は、売上収益が前年同期比27.7%増の28,785百万円、営業利益が同75.4%増の2,738百万円とおおむね計画どおりの増収増益となった。国内生産が堅調に推移するなかで、労働者派遣法の改正に伴う期間工から派遣活用への転換ニーズに対応したPEOスキームが順調に伸びている。2018年6月末の外勤社員数は11,826人(前年同期末比1,531人増)と増加した。一方、旧セグメントに当たる管理業務受託については、メーカーの期間工活用ニーズは縮小傾向にあるものの、その代替として外国人技能実習生の管理等を代行するビジネスが本格化しており、2018年6月末の管理人数は6,716人(前年同期末比3,236人増)に大きく拡大した。また、利益面でも、PEOや外国人技能実習生等の高付加価値スキームの拡大により大幅な増益を実現し、セグメント利益率も9.5%(前年同期は6.9%)に大きく改善している。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比27.2%増の44,638百万円、営業利益が同72.2%増の4,378百万円と増収増益になった。外国人技能実習生の管理受託が加速し、3Q末の管理人数は7,467人と大幅増となった。管理人数の期末計画は7,989人だが、計画以上に進捗しており、10,000人を超える見込みとなった。外国人技能実習生の管理業務委託は利益率も高く、粗利率は35%超、営業利益率は20%超であり、その拡大に伴いセグメント利益率も9.8%に上昇した。
(3) 「国内サービス系アウトソーシング事業」は、売上収益が前年同期比100.0%増の9,249百万円、営業利益が同129.0%増の657百万円と計画を上回って大きく拡大した。2017年4月に買収したAECが期初から寄与したことやグループシナジー創出が業績拡大につながった。特に、同社がグループ入りしたことにより入札時に必要なボンド(保険)が拡充し、米軍施設の建設物や設備改修・保全業務の受注が大きく伸びているようだ。また、米軍基地内の福利厚生施設向け人材派遣事業等においても、国内グループ各社のネットワーク活用により、全国各地20ヶ所超の主要米軍施設へと展開中である。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比58.7%増の13,394百万円、営業利益が同69.5%増の1,044百万円と増収増益になった。例年を大きく上回る沖縄への台風襲来により工事の一時停止が重なり売上計画を下回ったものの、4Q以降にキャッチアップする見通しだという。
(4) 「海外製造系及びサービス系事業」は、売上収益が前年同期比25.4%増の52,102百万円、営業利益が同11.8%減の1,398百万円と増収減益となった。各国の景気動向がおおむね高水準で推移するなかで、欧州、豪州、南米、アジアにおいて製造系、サービス系ともに順調に拡大した。特に、製造系はグローバルな人材の流動化が進捗。サービス系では、景気の影響を受けにくい各国政府系機関等への人材サービスやペイロール事業が拡大している。また、オランダのOTTOを子会社化(2018年5月2日付)したことも短期間(約2ヶ月間)ながら上期業績(約77億円の増収要因)に寄与したようだ。一方、利益面で減益となったのは、2018年1月のドイツでの労働関連法改正に伴う対応等によるものである。ただし、第2四半期には回復しており、計画を上回る利益水準を確保している。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比34.4%増の85,850百万円、営業利益が同1.4%減の2,791百万円となった。1月のドイツでの法改正に伴う影響については、色濃く影響が残った上期の前年同期比11.8%減から、3Qでは1.4%減まで回復している。また、2018年8月に英国の政府向けに経理等の高度人材を派遣するALLEN LANE LIMITED社が新規連結され、景気変動の影響を受けにくく安定している公共関連サービスも拡大している。
(5) 「海外技術系事業」は、売上収益が前年同期比19.2%増の16,165百万円、営業利益が同46.1%増の664百万円と増収増益となった。欧州・豪州にて、景気の影響を受けにくい各国政府・地方自治体からの独自開発のシステムを活用したBPOによる業務受託や公共施設での各種アウトソーシング事業、金融機関からの業務受託が拡大している。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比19.7%増の25,470百万円、営業利益が同36.2%増の1,148百万円と増収増益になった。2018年9月に豪州政府やインフラ系企業を中心にICTコンサルティングやエンジニアのトレーニングを行うPROJECT MANAGEMENT PARTNERS PTY LIMITED社が新規連結され、今後は、同社を活かして豪州においてもKENスクールモデルを展開し、差別化を図って事業拡大するとしている。
3. 2018年12月期上期の総括
以上から、2018年12月期の上期を振り返ると、業績面で計画を上回ったことに加えて、戦略面でも今後の事業拡大に向けて進捗の確認ができたところは大いに評価できる。特に、人材の採用難が課題となっている業界において、PEOスキームやKENスクール等が計画どおりに進んでいることを始め、1)需要拡大が見込める外国人技能実習生への対応ニーズもしっかりと取り込めていること、2)グループシナジー創出により米軍施設向けが新たな主力事業となってきたこと、3)海外事業についても安定している公共関連サービスの拡大に加えて、グローバル規模での人材流動化スキームが確立してきたことにより、国内事業と肩を並べる主力事業に成長してきたところは特筆すべきであり、国内経済の成熟化や景気変動による影響を受けない事業構造の変革が順調に進んでいるものと評価しても良いだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<MH>
1. 過去の業績推移
これまでの業績を振り返ると、景気変動の影響を受けながらも、製造工程の外注化ニーズに対応する形で人材提供数(外勤社員数)の拡大を図ってきたことがアウトソーシング<2427>の成長をけん引してきた。特に、2012年12月期以降、同社の業績が大きく伸びているのは、国内メーカーによる海外生産移管や国内産業構造の変化(鉱工業からIT産業や土木建築産業へのシフト)への積極的な対応を図ることにより、「海外事業」や「国内技術系」が順調に拡大してきたことが寄与している。足元では全般的な人手不足感や労働者派遣法の改正に伴う規制緩和により人材派遣市場全体が活況を呈しているなかで、積極的なM&Aを通じたグループシナジーの創出を含め、景気変動の影響を受けない事業構造への変革を進めることにより、オーガニックな成長を実現してきたと言える。
財務面では、M&Aを含めた積極的な投資により有利子負債は拡大傾向にある。特に、2016年12月期は投資総額約430億円のM&Aを実施したことにより、有利子負債残高は大きく拡大し、「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」も8.5%に低下した。ただ、2017年1月に発行した新株予約権により約105億円の資金調達を実現しており、2017年12月末の「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」は20.0%に回復。また、2018年10月には公募増資を実施し、更なる成長に向けて財務基盤の強化を図っている。
2. 2018年12月期上期決算の概要
2018年12月期の上期業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比31.5%増の139,099百万円、営業利益が同41.3%増の4,908百万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同48.9%増の2,069百万円と期初予想を上回る増収増益となり、売上収益、利益ともに過去最高(上半期ベース)を更新した。
売上収益はすべての事業が順調に拡大した。好調な外部環境や独自戦略の進展が業績の伸びをけん引している。特に、国内においては、労働法改正や自動運転車等による産業界のパラダイムチェンジが特需的ニーズを生み出すなかで、「国内製造系アウトソーシング事業」がPEOや外国人技能実習生等の高付加価値スキームにより伸長したほか、「国内技術系アウトソーシング事業」についても新卒採用や独自スキームによる技術者採用が奏功した。また、「国内サービス系アウトソーシング事業」については、グループシナジー創出により国内米軍施設向けが大きく拡大している。海外においても、労働力が潤沢な国から逼迫(ひっぱく)する国へとグローバル規模で人を流動化するスキームの確立や安定的な公共関連サービスの伸びにより、「海外製造系及びサービス系事業」及び「海外技術系事業」がともに好調に推移している。
利益面でも、新卒採用※の拡大に伴う配置前教育コストやOTTOを始めとしたM&A関連費用など、今後の成長に向けた先行費用を積極投入したものの、事業規模の拡大や高単価受注の拡大により大幅な増益を実現。営業利益率も3.5%(前年同期は3.3%)に改善している。
※2018年4月入社の新卒採用は全体で1,400名(前年は550)。
【3Q決算フォローアップ】
第3四半期の業績においても、引き続き売上収益、利益ともに過去最高(3Qベース)を更新した。売上収益が前年同期比33.6%増の221,058百万円、営業利益が同38.4%増の9,283百万円となり、順調な進捗が確認された。営業利益率は4.2%と大きく伸長している。
財政状態は、資産合計が、M&A(OTTOの連結化)による影響を含め、「営業債権及びその他の債権」や「のれん」等の増加により前期末比25.2%増の156,072百万円に拡大した一方、「親会社の所有者に帰属する持分」は企業統合に伴う「その他の資本剰余金」の減少(会計処理上のもの)等により同25.4%減の18,607百万円に縮小したことから、「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」は11.9%(前期末は20.0%)に低下した。また、「のれん」計上額は前期末比23.2%増の48,334百万円に拡大した。
主な事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 「国内技術系アウトソーシング事業」は、売上収益が前年同期比39.6%増の32,547百万円、営業利益が同83.7%増の2,285百万円とおおむね計画どおりの増収増益となった。新卒採用が順調に増加したことに加え、未経験者を教育して配属するKENスクールや業界淘汰の取り込み※1による技術者採用が奏功した。2018年6月末の外勤社員数は10,943人(前期末比2,227人)と大きく拡大したが、そのうち2018年4月入社の新卒採用が1,050人※2と大幅に増加したほか、KENスクールによる教育後配置人数が734人(通期計画は1,500人)、業界淘汰の取り込みでも360人(通期計画は650人)とすべての施策が順調に進捗している。したがって、技術者の採用難が成長を抑える要因となっている技術系派遣業界のなかにおいて、同社は独自スキームの活用等により多くの採用を実現し、今後の業績拡大に向けても弾みを付けたと評価できる。また、利益面でも、大規模な新卒採用による配置前教育コスト※3が一時的に増加したものの、順調に配属が進んだことや契約単価の向上等により吸収し、大幅な増益を実現することができた。セグメント利益率も7.0%(前年同期は5.3%)に改善している。
※1 労働者派遣法の改正に伴って事業継続が困難となる同業者の取り込み。
※2 前年(2017年4月入社)の新卒採用は550名であった。
※3 季節要因として、第2四半期(4月−6月)は新卒採用者の配属までの人件費や研修費用等、先行費用が発生する。特に、今期は新卒採用者が大きく増加したため、その影響も大きかったが、増収により吸収することができた。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比40.8%増の51,373百万円、営業利益が同62.9%増の4,052百万円と順調に増収増益となった。KENスクールや業界淘汰の取り込み等いずれも計画以上に採用が進捗し、3Q末においてすでに期末の在籍人数計画11,534人を上回る外勤社員数12,138人に達している。セグメント利益率も7.9%に伸長した。
(2) 「国内製造系アウトソーシング事業」は、売上収益が前年同期比27.7%増の28,785百万円、営業利益が同75.4%増の2,738百万円とおおむね計画どおりの増収増益となった。国内生産が堅調に推移するなかで、労働者派遣法の改正に伴う期間工から派遣活用への転換ニーズに対応したPEOスキームが順調に伸びている。2018年6月末の外勤社員数は11,826人(前年同期末比1,531人増)と増加した。一方、旧セグメントに当たる管理業務受託については、メーカーの期間工活用ニーズは縮小傾向にあるものの、その代替として外国人技能実習生の管理等を代行するビジネスが本格化しており、2018年6月末の管理人数は6,716人(前年同期末比3,236人増)に大きく拡大した。また、利益面でも、PEOや外国人技能実習生等の高付加価値スキームの拡大により大幅な増益を実現し、セグメント利益率も9.5%(前年同期は6.9%)に大きく改善している。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比27.2%増の44,638百万円、営業利益が同72.2%増の4,378百万円と増収増益になった。外国人技能実習生の管理受託が加速し、3Q末の管理人数は7,467人と大幅増となった。管理人数の期末計画は7,989人だが、計画以上に進捗しており、10,000人を超える見込みとなった。外国人技能実習生の管理業務委託は利益率も高く、粗利率は35%超、営業利益率は20%超であり、その拡大に伴いセグメント利益率も9.8%に上昇した。
(3) 「国内サービス系アウトソーシング事業」は、売上収益が前年同期比100.0%増の9,249百万円、営業利益が同129.0%増の657百万円と計画を上回って大きく拡大した。2017年4月に買収したAECが期初から寄与したことやグループシナジー創出が業績拡大につながった。特に、同社がグループ入りしたことにより入札時に必要なボンド(保険)が拡充し、米軍施設の建設物や設備改修・保全業務の受注が大きく伸びているようだ。また、米軍基地内の福利厚生施設向け人材派遣事業等においても、国内グループ各社のネットワーク活用により、全国各地20ヶ所超の主要米軍施設へと展開中である。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比58.7%増の13,394百万円、営業利益が同69.5%増の1,044百万円と増収増益になった。例年を大きく上回る沖縄への台風襲来により工事の一時停止が重なり売上計画を下回ったものの、4Q以降にキャッチアップする見通しだという。
(4) 「海外製造系及びサービス系事業」は、売上収益が前年同期比25.4%増の52,102百万円、営業利益が同11.8%減の1,398百万円と増収減益となった。各国の景気動向がおおむね高水準で推移するなかで、欧州、豪州、南米、アジアにおいて製造系、サービス系ともに順調に拡大した。特に、製造系はグローバルな人材の流動化が進捗。サービス系では、景気の影響を受けにくい各国政府系機関等への人材サービスやペイロール事業が拡大している。また、オランダのOTTOを子会社化(2018年5月2日付)したことも短期間(約2ヶ月間)ながら上期業績(約77億円の増収要因)に寄与したようだ。一方、利益面で減益となったのは、2018年1月のドイツでの労働関連法改正に伴う対応等によるものである。ただし、第2四半期には回復しており、計画を上回る利益水準を確保している。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比34.4%増の85,850百万円、営業利益が同1.4%減の2,791百万円となった。1月のドイツでの法改正に伴う影響については、色濃く影響が残った上期の前年同期比11.8%減から、3Qでは1.4%減まで回復している。また、2018年8月に英国の政府向けに経理等の高度人材を派遣するALLEN LANE LIMITED社が新規連結され、景気変動の影響を受けにくく安定している公共関連サービスも拡大している。
(5) 「海外技術系事業」は、売上収益が前年同期比19.2%増の16,165百万円、営業利益が同46.1%増の664百万円と増収増益となった。欧州・豪州にて、景気の影響を受けにくい各国政府・地方自治体からの独自開発のシステムを活用したBPOによる業務受託や公共施設での各種アウトソーシング事業、金融機関からの業務受託が拡大している。
【3Q決算フォローアップ】
3Qの売上収益は前年同期比19.7%増の25,470百万円、営業利益が同36.2%増の1,148百万円と増収増益になった。2018年9月に豪州政府やインフラ系企業を中心にICTコンサルティングやエンジニアのトレーニングを行うPROJECT MANAGEMENT PARTNERS PTY LIMITED社が新規連結され、今後は、同社を活かして豪州においてもKENスクールモデルを展開し、差別化を図って事業拡大するとしている。
3. 2018年12月期上期の総括
以上から、2018年12月期の上期を振り返ると、業績面で計画を上回ったことに加えて、戦略面でも今後の事業拡大に向けて進捗の確認ができたところは大いに評価できる。特に、人材の採用難が課題となっている業界において、PEOスキームやKENスクール等が計画どおりに進んでいることを始め、1)需要拡大が見込める外国人技能実習生への対応ニーズもしっかりと取り込めていること、2)グループシナジー創出により米軍施設向けが新たな主力事業となってきたこと、3)海外事業についても安定している公共関連サービスの拡大に加えて、グローバル規模での人材流動化スキームが確立してきたことにより、国内事業と肩を並べる主力事業に成長してきたところは特筆すべきであり、国内経済の成熟化や景気変動による影響を受けない事業構造の変革が順調に進んでいるものと評価しても良いだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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